歴史学者とは? わかりやすく解説

歴史家

(歴史学者 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/30 13:07 UTC 版)

歴史学者(れきしがくしゃ)は、歴史を後世に残すべく、叙述(文章化)する人のことである。また、残された史料を元に歴史を研究し、その成果を論文や著作として著す人の事も指す。

概要

近代以降、学問として歴史学が確立してからは歴史学者という呼称へ移行した。しかし、一般的に両者の区別は厳密であるとはいえず、歴史研究者の中で論争の的になることもある。一般的には歴史を研究している人や歴史に詳しい人を指す場合が多く、郷土史家なども歴史家の一種である。また、大学教員ではない在野の歴史家のことを特に歴史研究家と呼ぶこともある。

歴史学者は自己の生きている時代性や、自己の問題意識にもとづき、自由に研究対象を選択することができるが、複数の史料(文献の形式以外のものも含む)を分析しながら、「正確に」事象やその因果関係を叙述することは、常に容易な作業ではない。

歴史

西洋で最古の歴史家としてあげられるのは、「歴史の父」とも言われるヘロドトス紀元前485年頃 - 紀元前420年頃)である。

彼はペルシア戦争を物語的に叙述したが、その手法は人々のギリシア神話の世界観に基づくものが多く、物語に偏りがちであるため、実証主義的な歴史家としては『戦史』を著したアテナイトゥキディデス紀元前460年頃 - 紀元前395年)が最古といえる。トゥキディデスは複数の史料を元にし、20代の頃に自身が従軍しスパルタに敗北を喫したペロポンネソス戦争を詳細に記述した。彼が用いた史料の中には、彼が実際に見聞したペリクレスの演説も含まれているが、彼自身の創作という説もある。彼の目的は、戦争の因果関係を明らかにすることであり、同時代の経済政治都市のありようをありのままに記そうとすることだった。

18世紀-19世紀歴史学の確立により、これ以降の歴史研究者は「歴史学者」と呼ばれることとなる。最初の歴史学者として名前があげられるのは主にギボン1737年 - 1794年)やランケ1795年 - 1886年)である。イギリスのギボンは文明論的歴史観に基づき大著『ローマ帝国衰亡史』を著したが、当時の啓蒙主義世界観から自由になることはできなかった。

これに対し、ドイツのランケは同時代のヘーゲルの「歴史は世界精神の実現へと収れんしていく過程」であるとする弁証法歴史哲学や、中世のキリスト教中心的史観、ルネサンス期の教訓主義などを批判し、政治史や外交史を中心に「客観的歴史叙述」に徹する姿勢を貫いた。彼の手法としてあげられるのは、厳密かつ広範囲な史料批判(一次史料としての日記や備忘録、外交記録、当事者や周辺の人々の証言などを含む)とロマン主義を統合させ、対象とする時代の普遍的概念を描きながらも、個別の事象をありのままに記そうと試みたことだろう。ランケの歴史研究、および歴史教育の手法は、彼が教壇に立っていたベルリン大学を中心に、ドイツのみならずヨーロッパ全土、アメリカにも多大な影響を与えた。「歴史の父」と呼ばれるヘロドトスに対し、ランケが「近代歴史学の父」「客観的歴史叙述の父」と呼ばれる理由はそこにある。

後年、ランケの世界観はヨーロッパ中心史観や史料至上主義であると批判されることもあるが、歴史家と歴史学者の呼称の区分は、ランケ以前・ランケ以降でされることが多く、便宜的に19世紀以前・以降で区分をすることもある。

20世紀以降の歴史学者は、戦間期のアナール学派の台頭により、個別の事件性や通史ではなく、農政史、出版史、物価史、人口史、経済史心性史などの社会学的テーマ史や、社会学文化人類学経済学民俗学などを取り入れる学際性を重視する傾向にある。

脚注

注釈

出典

関連項目


歴史学者

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 03:06 UTC 版)

東京外国語大学の人物一覧」の記事における「歴史学者」の解説

安藤更生 - 美術史早稲田大学教授 石井米雄タイ語中退) - タイ研究京都大学名誉教授前神田外大学長、前大学共同利用機関法人人間文化研究機構機構長 石田勇治(ドイツ語)- ドイツ現代史東京大学大学院総合文化研究科教授 今井昭夫 - ベトナム近現代史東京外国語大学教授 臼井佐知子 - 中国近現代史明清史、東京外国語大学名誉教授 大久保教宏スペイン語) - ラテンアメリカ史、慶應義塾大学教授義塾賞 尾形希和子大学院) - 西洋美術史沖縄県立芸術大学教授 岡本良知ポルトガル語) - 日欧交渉史、亜細亜大学教授 蒲生礼一 - イスラーム学東京外国語大学名誉教授 川島真中国語) - 中国外交史、東京大学大学院総合文化研究科教授元日現代中国学会理事長サントリー学芸賞 川添裕英米語) - 日本文化史家芸能研究者横浜国立大学名誉教授 川本邦衛中国語) - ベトナム研究慶應義塾大学名誉教授 金七紀男ポルトガル語ブラジル語) - 東京外国語大学名誉教授、元天理大学教授 工藤光一フランス語) - フランス近代史、元東京外国語大学教授 国本伊代スペイン語) - ラテンアメリカ近現代史中央大学名誉教授 古賀十二郎 - 長崎学先駆者 後藤政子スペイン語) - ラテンアメリカ現代史神奈川大学名誉教授 後藤雄介スペイン語) - ラテンアメリカ思想文化史、早稲田大学教育総合科学学術院教授 清水廣一郎イタリア語) - イタリア史、元一橋大学経済学部教授サントリー学芸賞 清水透スペイン語) - ラテンアメリカ社会史慶應義塾大学名誉教授 鈴木茂(ポルトガル・ブラジル語) - ブラジル近現代史東京外国語大学教授歴史学研究会編集長 立石博高 - スペイン近代史東京外国語大学学長 月脚達彦朝鮮語) - 朝鮮近代史東京大学大学院総合文化研究科教授 友常勉大学院) - 近代日本思想史東京外国語大学教授 中村平治インド語) - インド史東京外国語大学名誉教授 内藤雅雄印パ語) - インド史東京外国語大学名誉教授 早川二郎ロシア語) - 日本史 藤井毅印パ語) - 南アジア近現代史東京外国語大学教授 二木博史モンゴル語) - モンゴル史、東京外国語大学名誉教授モンゴル国北極星勲章 前嶋信次フランス語) - イスラーム史学者慶應義塾大学名誉教授 松浦寿夫フランス語) - フランス美術史東京外国語大学教授 松田康博大学院) - アジア政治外交研究安全保障論東京大学東洋文化研究所教授中曽根康弘賞優秀賞 尹明淑日本語) - 日本近現代史、忠南大学校国家戦略研究所主任研究員中国慰安婦問題研究センター客員研究員 横山和加子スペイン語) - ラテンアメリカ史、慶應義塾大学名誉教授 渡辺克義ロシア語) - ポーランド史山口県立大学教授

※この「歴史学者」の解説は、「東京外国語大学の人物一覧」の解説の一部です。
「歴史学者」を含む「東京外国語大学の人物一覧」の記事については、「東京外国語大学の人物一覧」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「歴史学者」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

歴史学者

出典:『Wiktionary』 (2021/08/21 10:35 UTC 版)

名詞

歴史 学者 (れきしがくしゃ)

  1. 歴史学研究する科学者

類義語


「歴史学者」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「歴史学者」の関連用語

歴史学者のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



歴史学者のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの歴史家 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの東京外国語大学の人物一覧 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの歴史学者 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS