歴史学者からの批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 02:36 UTC 版)
現代史家の秦郁彦は、『日本国紀』は評論家の江藤淳と同様にウォー・ギルト・インフォメーション・プログラムを過大評価していると指摘した上で、「陰謀史観的だ」と評している。 中世史研究者の呉座勇一は、西尾幹二の『国民の歴史』に比べれば穏健であるとした上で、「研究者の中には、暗殺(毒殺)されたと見る者も少なくない」と足利義満暗殺説を記述していることが象徴的であるとして、「古代・中世史に関しては作家の井沢元彦氏の著作に多くを負っている」が、井沢の説であることを明示せずに有力説であるかのように示していると指摘している。また刀伊の入寇の際の対応など、平安時代の貴族が退廃的であったことや、足利義政が政治から離れたという理解は古い伝統的な歴史観であると指摘し、「日本史学界の守旧性を激しく批判し、新しい歴史像の提示を謳っているのだが、彼らの歴史理解は実のところ古い」と指摘している。また近現代史においても「ベトナムとカンボジアとラオスを植民地としていたフランス」を相手に「植民地解放のため」日本が戦ったという記述など致命的な錯誤がみられ、短い時間とはいえずさんな校閲を行った、「監修」を自認する戦史研究家である久野の責任についても指摘している。そして、『中央公論』2019年6月号掲載の論稿のなかで、同書の総合的な特徴として「教科書と大差ない淡白な通史的叙述と面白エピソード・豆知識、そして愛国談義が雑然と並んでいる。百田氏にこれらを統合する知的体力がないからである」と評し、同じ本の中で矛盾した記述をしているのにその点に無頓着なのは「そもそも百田氏が日本通史に全然関心を持っていない」からではないか、その根拠としてフランシスコ・ザビエルとルイス・フロイスを取り違えた記述があるとの指摘に対して百田が「どっちにしても外人や」と発言していることを挙げている。そして日本通史に関心がないのに通史の本を出したのは、数ある「ネットウヨ本」と一線を画すかのような装丁、タイトルで同趣旨の本を出せば売れるだろうとの商業的動機からではないかと推測している。 宝島社は2019年8月21日に『百田尚樹「日本国紀」の真実』を出版し、秦のインタビュー、「全正誤表」と題した一覧表を掲載している。また『日本国紀』の内容だけでなく、百田個人や版元社長である見城徹の批判を行っている。
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