版元とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 社会 > 人間関係 > > 版元の意味・解説 

版元


はん‐もと【版元/板元】

読み方:はんもと

図書などを出版する所。出版元発行所

「版元」に似た言葉

版元

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/13 08:34 UTC 版)

版元(はんもと)とは、図書など印刷物の出版元・発行元のこと。近現代の出版業界の業界用語においては「出版社」のことを指す場合が多い。

概要

「元」は網元の「元」と同じ用法と言える。同様に「版元」とは印刷物を製作するために不可欠な「版」を持っている事業主のことを指す。これは必ずしも書籍の出版のみを示すものではない。例えば、江戸時代には版木の製作から印刷・販売までが一貫して行われており、版木を所有していた書物問屋(一般書)や地本問屋浮世絵)などを指して「(板いたの元もと)で『板元(はんもと)』」と呼んでいた。後に板が木を使わなくなり「版」に変わる。各問屋ごとに株仲間を作って活動していた。

著作権

江戸時代の板木の売買

出版物の元となる板木の売買が行われていた[1]文書が残されていて[2][3]版権無体財産権として売買・抵当の対象になっていた事例として取り上げられている[2]

著者は無報酬

しかしながら、売れっ子作者を除いて著作者に報酬が支払われることはなかったさまが次のように述べられている。

草双紙の最も流行を極めしものは天明年間に売り出したる喜三二が『文武二道万石通』、春町が『鸚鵡返し文武の二道』、および参和が『天下一面鏡の梅鉢』の黄表紙にて、発兌の当日は版元鶴屋の門前に購客山の如く、引きも切らざりしかば製本の暇さへなく摺り上げしばかりの乾きもせざる本に表紙と綴系とを添へて売り渡せり。 草双紙が如何に流行せしかを見るに足るもの有らん。然るに書肆の作者に酬ゆることは極めて薄く、ただ年始歳暮に錦絵絵草 紙などを贈るに止まり、別に原稿料として作者に酬ゆることはなかりしなり。たまたま当たり作あるも、其の作者を上客となし画工彫刻師等を伴い遊里に聘してこれを饗応するにあらされば、絹一匹または縮緬一反を贈り以て其の労に酬ゆるに過ぎず、未熱の作者に至りては入銀とて二分ないし三分を草稿に添へて而して書肆な出版を請ふものあるに至れり。されば当時の作者は皆他に生計の道を立てて戯作は真の慰みものとなせしなり。
江戸時代戯曲小説通志、[4]

著作権概念の移入

明治維新と西洋文明の移入にともない、著作権の概念が次第に浸透してくる。英語ではコピーライト、すなわち複製権と言うように、出版の権利とは、オリジナルの複製を大量に作成し、流通させる権利であり、そこに利益を獲得する構造がある。

近代の大量生産技術においては、版の所持が大量複製の必要条件であり、「版を所有すること」と「複製・頒布権」は分かちがたく結びついていた。このため出版権の移転とは、版を移転することであった。

福沢諭吉の闘い

福沢諭吉の著作を無断複製したものに対して、敢然として対応し海賊版の出版をやめさせたのが、その嚆矢である。

版の保存と判例

版の物理的な保管場所は印刷所であることが多かった。出版社と印刷会社が別会社であってもその方法を採る場合が多く、しかし版の保管コストを出版社側が支払うことは皆無に近く、半ば慣行として印刷会社によるサービスの範囲内で行われていた。重版の声がかからないと見越して印刷会社が版を廃棄することはためらわれる傾向があった。ところが不慮のことで印刷会社が原版を失ってしまったことに対して、出版社側から賠償請求の訴訟を起こされた例があるが、自らに有利な商慣行に基づく出版社側の甘えであり、保管料を払っていない以上は正当な主張とは認めがたい、という判決が下っている。

「版の所有=出版の権利および能力」という図式、すなわち情報の複製・頒布に対する版の必要性は、現代に入りコンピュータや情報通信技術の発達により崩れつつある。現在、基本的には紙の本の印刷には版が必要であるが、オンデマンド印刷と呼ばれる技術の中には版を用いないものがあり、版元という語が本来の意味から次第に離れていく萌芽を示しているのかもしれない[5]

出典

  1. ^ 橋口侯之介. “江戸時代の出版事情から見た和本調査の 方法について”. 誠心堂書店. 2024年8月14日閲覧。
  2. ^ a b 金田平一郎第2章 債権関係の客体 第4節 無体財産権』法務庁資料統計局資料課〈近世債権法 (司法資料 ; 第298号)〉、1948年、37 -39頁https://dl.ndl.go.jp/pid/1281220/1/27 
  3. ^ 井上和雄 編『慶長以来書賈集覧 : 板木市場之売買控 せり帳』(書籍商名鑑 増訂版)、トビラ次の図版頁頁https://dl.ndl.go.jp/pid/12278150/1/5 
  4. ^ 双木園主人 編述『江戸時代戯曲小説通志 : 2篇 前篇(第2冊)』誠之堂書店、1894年、61 - 62頁https://dl.ndl.go.jp/pid/993589/1/2 
  5. ^ 橋口侯之介『和本と電子書籍 第11回 近世から近代へ 明治20年問題態』成蹊大学 日本探求特別講義B 2013年後期〈江戸の古本屋 多様な業態〉http://www.book-seishindo.jp/seikei_tanq/tanq_2013B-11.pdf 

参考文献

板木に関するもの

版元、書肆、板木の売買

著作権に関するもの

関連項目

外部リンク


版元

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 23:48 UTC 版)

浪花百景」の記事における「版元」の解説

版元は大坂北浜石川和助石和)。 2枚の「もくじ」には「平野町 石和 淀屋橋」という記載がある。平野町は、現在の大阪市中央区平野町にあたる。

※この「版元」の解説は、「浪花百景」の解説の一部です。
「版元」を含む「浪花百景」の記事については、「浪花百景」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「版元」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

版元

出典:『Wiktionary』 (2018/07/06 06:13 UTC 版)

名詞

はんもと

  1. 歴史江戸時代書籍の他、瓦版浮世絵等の出版行いその責任負った者。
  2. 書籍制作売り出している会社出版社等の俗称

「版元」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



版元と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「版元」の関連用語

版元のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



版元のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
実用日本語表現辞典実用日本語表現辞典
Copyright © 2024実用日本語表現辞典 All Rights Reserved.
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの版元 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの浪花百景 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの版元 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS