瓦版とは? わかりやすく解説

かわら‐ばん〔かはら‐〕【瓦版】

読み方:かわらばん

江戸時代天災地変火事心中などの事件速報記事にして街頭で売り歩いた印刷物。ふつう半紙一枚刷り原版として木版が残るが、もとは粘土に文字や絵を彫り、瓦のように焼いて作ったという。読み売り


瓦版

読み方:カワラバン(kawaraban)

新聞祖型となる木版一枚摺印刷物


瓦版(かわらばん)

瓦版はわが国における新聞ルーツとされるもので、1615年大阪夏の陣伝えたものが現存する最古のものであると言われている。瓦版はこうした大事件火事地震などのニュース絵入り1枚刷り販売された。なぜ瓦版というかはっきりしていないが、初期の頃粘土焼き固めたのようなものを板木代わりに使っていたことからきているという説もある。
しかし瓦版といった名称が一般的になったのは、明治以降のことであり、それまで街頭で大きな声で読みながら売っていたいたことから、読売よみうり)という名で知られていた。ちょうど大きさが瓦と同じ程度であったので収集家達が、その大きさから瓦版と言うようになったとも想像できる


瓦版

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/26 09:07 UTC 版)

瓦版を売る読売の姿。なお、時代劇などでは左側の姿でしばしば登場するが、このように顔を露わにするのは明治維新直前まで無く、右のように編笠を被って顔がわからないように売った[1]

瓦版(かわらばん)は、江戸時代日本で普及していた、時事性・速報性の高いニュースを扱った印刷物をいう。天変地異大火心中などに代表される、庶民の関心事を盛んに報じた。街頭で読み上げながら売り歩いたことから、読売讀賣)ともいう。木版摺りが一般的。粘土文字を彫り、のように焼いて作ったため、そう呼ばれる。原版として木版の残る。瓦版という名称は幕末ころの文献に初めて見られ、「読み売り」の粗末なものに対する蔑称として用いられていた[2]

概要

最初の瓦版は1615年元和元年)の大坂夏の陣の結末を報じた『安部之合戦之図」と『大坂卯年図』が知られ、ともに現存するが、当時のものであるとする直接の証拠はない。多くの場合、挿絵を中心に説明文を書き添えたもので、形態は大小さまざまな木版一枚刷りと、半紙二つ折りを数枚綴じたものとがある。事件発生の都度、街頭で読み売りされたため「読み売り」または「辻売りの絵草紙」などとも呼ばれた。1673年延宝元年)の出版規制令では、「噂事,人の善悪」に関する出版が規制項目となったことで瓦版も規制対象となる。1684年貞享元年)の町触では、より明確に「当座のかわりたる事」等の出版が禁止され、や橋のたもとなどでの販売行為が処罰対象となる。享保改革では特に好色物が厳重に規制され、その出版は一時危機的となるが、他方、忠孝慈善等の趣旨に沿う内容のものは積極的に奨励された[2]

街頭での読み売りのほか、露店や絵草紙店での店頭売りがあった。価格は紙幅の大小により幅があったが、幕末の短期間を除き江戸時代を通じて変わらず、初期で3文、明和(1764年-72)の四文銭流通の後は4文となる。明治新聞雑誌流行期にも瓦版は需要を残し、その終末は明治20年代であった[2]

内容的には妖怪出現など(例として「大猫」項を参照)、娯楽志向のガセネタも含め、仇討ち心中火事刑死などの新奇な事件を街頭で読み売りした。主題としては、八百屋お七の刑死や心中事件のような好色物が好まれた。吉凶予言因果応報、神仏の奇瑞霊顕なども人気であった[2]。多くは一枚摺り。絵入りのものなどもあり、幕末期には多く出版され、浮世絵師歌川国芳らが描いていた。これらは無許可で出版される摺物であった。明治初期までは出版されることがあったというが、その後は新聞の登場などにより衰退した。現存する最古の瓦版は大坂の陣を記事としたものである[3]

天和から元禄1681-1704年間)にかけて盛んに刷られたとみられるが、その時期の瓦版はほとんど残っていない[4]。古いもので宝暦年間(1751-64年間)から現存してくる[4]享保7年2月1722年の3月か4月)[* 1]の法令中に「筋無き事並に心中の読売を禁じる」があり、享保9年6月1724年の7月か8月)[* 2]の法令にも、「御曲輪内での読売をしてはならぬ」との法が出されている[4]。裏を返せば、この時期(享保年間)に盛んに読まれていたということであるが、現存するものは残されていない[4]

確実に大量出版されるようになった時期は、天保の改革期(1831-1845年間)以降とされる[5]

安政江戸地震1855年)の直後に出た瓦版「関東江戸大地震并(ならびに)大火方角場所附」では被害状況や幕府が被災者のために作った「お救小屋」の位置などが書かれている[6]

幕末にもなると江戸城下馬先において、大名行列相手に瓦版売りが名物となった[7]

近代初期に入った段階でもマスメディアは瓦版を利用しており、1885年明治18年)の大阪洪水の翌86年において、『洪水志』の発刊にともなって、石版画14枚を抽入している。写真そのものがまだ高価で普及度も低い段階であり、写真の代替として石版画の瓦版が登場した[8]

語源

瓦版の語源は以下のように諸説あるがはっきりしていない。

  • 粘土板を用いて刷ったかのような粗悪な出来栄えである[9]
  • 木版の代わりに粘土板を用いて印刷した[10]
  • 紙の大きさがと同じくらいである。
  • 河原者が作った。

「瓦版」という呼称自体は幕末の文献より確認され[11]、初期においては、「絵草紙」と呼び[12]、「読売」とも呼ばれた(前同事典)。

  • 奇説としては何等かの名前が訛って当て字を入れられた可能性がある。

例:厠(かわや、トイレの意)に使うもの→厠版→瓦版

なお、例については紙質が悪かったことから例えば使用後は尻拭き等の使い道しか無かったのでは無いか?等の類推である。前例としては、江戸時代の九州にあったとされる、えのころ(犬ころの意)飯等がある。

現代

現代日本語としては、掲示板様の告知・報道様式を指す雅称として「瓦版」「かわら版」という語が用いられる例は多い。

脚注

注釈

  1. ^ 旧暦の享保7年2月1日と2月30日(同月最終日)は、新暦グレゴリオ暦)では1722年3月17日と4月15日。
  2. ^ 旧暦の享保9年6月1日と6月30日(同月最終日)は、新暦(グレゴリオ暦)では1724年7月20日と8月18日。

出典

  1. ^ 森田健司 「江戸時代における「かわら版販売者」の形装」『大阪学院大学通信』第46巻第12号、2016年3月1日、pp.1-27.
  2. ^ a b c d かわら‐ばん〔かはら‐〕【瓦版】”. コトバンク. 2024年9月24日閲覧。
  3. ^ 『精選版日本国語大辞典』「大坂安部之合戦之図」と「大坂卯年図」とする。
  4. ^ a b c d 稲垣史生三田村鳶魚 江戸武家辞典』 青蛙房 新装版2007年 p.260.
  5. ^ 全国歴史教育研究協議会編 『日本史Ⓑ用語集』 山川出版社 16刷1998年(1刷1995年) p.160
  6. ^ 港区立 港郷土資料館へ行ってみよう! 第11号”. 東京都港区立港郷土資料館. 2019年10月25日閲覧。
  7. ^ 根岸茂夫 『大名行列を解剖する 江戸の人材派遣』 吉川弘文館 (第1刷2009年)第2刷2010年 p.72
  8. ^ 北原糸子 『メディア環境の近代化 災害写真を中心に』 御茶の水書房 2012年 p.29.p.30に「大洪水細見之図」、p.31に「大阪市街浸水地の図」が掲載されている。
  9. ^ 『精選版日本国語大辞典』では、そうした説があるが確証はないとする。
  10. ^ 『日本大百科全書』では、そうした説もあるが不明確とする。
  11. ^ 『精選版日本国語大辞典』
  12. ^ 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』

関連項目

外部リンク


瓦版

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 08:58 UTC 版)

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