教訓主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/24 19:09 UTC 版)
教訓主義(きょうくんしゅぎ、英語: didacticism、ダイダクティシズム)とは、文学その他の芸術の中で、教育的で有益な特質を強調する芸術観のこと。詩であれば教訓詩(didactic poetry)、戯曲であれば教訓劇(didactic play)。
概略
教訓主義芸術は本質的にエンターテインメントや芸術家の個人的な目標の追求を許さない。
批評とアドバイスを列挙したアレキサンダー・ポープの『批評論』(1711年出版)はその一例といえる。
「didactic(教訓的)」という語は、有益で事実に基づく(かつ/もしくはその他の)教育的情報を詰め込みすぎたテキスト(ならびにその延長として映画やテレビのようなメディア)、時には読者(視聴者)の楽しみを損なうもの指すこともある。対義語は「non-didactic(非教訓的)」である。もし作者がメッセージの伝達以上に芸術的な特質や技巧を大事だと考えたら、たとえその作品が教育的に有益なものでも、「non-didactic」と見なされる。
最良の詩のほとんどすべて教訓的だとする意見もあった。それに対して、エドガー・アラン・ポーは『詩の原理』(1850年出版)の中で、教訓主義を「異端」の最たるものと呼んでいる。
古代ギリシア・ローマの教訓詩は、叙事詩の文体(ヘクサメトロス)をとる場合が多く、内容は哲学・系譜学・科学技術など多岐にわたった[1][2][3]。
教訓主義といわれる作品の一覧
ギリシア・ローマ
- ヘシオドス『神統記』『仕事と日』[1][2]
- アラトス『星辰譜』[2][3]
- ニカンドロス『有毒生物誌』『毒物誌』[3]
- オッピアノス『漁夫訓』[3]
- パルメニデス『自然について』
- ルクレティウス『事物の本性について』[2]
- ウェルギリウス『農耕詩』[2]
- マニリウス『アストロノミカ』
その他
- ジャータカ(5世紀)
- ジョン・バニヤン『天路歴程』(1678年)
- 作者不詳『靴ふたつさん』(1765年)
- イグナツィ・クラシツキ『ミコワイ・ドシフィヤトチンスキの冒険』(1776年)
- パーシー・ビッシュ・シェリー『女王マッブ』(1813年)
- アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』(1957年)
- ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』(1991年)
教訓劇は道徳またはテーマの使用を通して観客に教える。
音楽における教訓主義には、グイード・ダレッツォがソルフェージュの音名(solfège syllables)を教えるために使った『聖ヨハネ賛歌』がある。
関連項目
脚注
「教訓主義」の例文・使い方・用例・文例
教訓主義と同じ種類の言葉
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