厠とは? わかりやすく解説

かわ‐や〔かは‐〕【×厠/×圊】

読み方:かわや

川の上設けた川屋の意とも、家の外側設けた側屋の意ともいう》便所


こう‐や〔かう‐〕【×厠】

読み方:こうや

《「かはや」の音変化便所


1.厠へ流れ入る矢。

『古事記』中巻 美女セヤダタラヒメが厠にいた時、美和大物主(オホモノヌシ)の神が丹塗りとなって溝を流れ下り、彼女の陰部突いた。セヤダタラヒメは驚いたが、その矢を床の辺に置くと、美しい男変じた。男とセヤダタラヒメは結婚して女児生まれた〔*女児イスケヨリヒメは、成長後神武天皇皇后になった〕。

★2.厠にかけた弓矢

『古事記』中巻 春山の壯夫(かすみをとこ)が、(つる)で作った衣服弓矢を身につけて伊豆志袁登賣(いづしをとめ)の家へ行くと、彼の衣服弓矢も、藤の花になった壯夫弓矢を、伊豆志袁登賣の厠に掛けておく。伊豆志袁登賣は花(=弓矢)を見て不思議に思い自分の部屋持ち帰る壯夫その後について部屋入り伊豆志袁登賣と交わって子供ができた。

★3a.厠に出る幽霊

現代民話考』松谷みよ子)7「学校ほか」第1章怪談」の6 昭和20年1945)頃。女学校体育館の裏手に木造便所があった。女学生電球使って自慰をしていたところ、誤って怪我をしてしまった。女学生は「痛いよう、痛いよう」と言いながら死んでいった。その後、時々、便所の方から痛み訴える声が聞こえしばらくの間、その便所使用禁止になった大分県)。

薯蕷やまのいも)を用い死んでしまったという物語もある→〔手〕2の『古事談』巻1-1

★3b.厠に出る妖怪

トイレの花子さん水木しげる図説日本妖怪大鑑』) 花子さんは、学校女子トイレ出没する誰もいないトイレの戸を叩きながら「花子さん、いますか?」と尋ねると、中から「は~い」と返事をする。おかっぱ頭少女姿を現すこともある。便器の中から青い手が出るともいう。問いかけに対してコックリさんのように、イエスなら1回ノーなら2回と、ノック回数答えてくれる、という話もある。

★4a.厠の神

紫姑神(しこしん)伝説 紫姑(しこ)はたいへん美しい娘だったので、県知事の妾(しょう)になり、寵愛された。知事の妻は嫉妬の鬼化し正月15日に厠の中で紫姑を殺した。これを見た天の神が紫姑を憐れみ、彼女を厠の神とした。以来人々は紫姑の姿を絵に描き、厠や豚小屋貼って祀(まつ)るようになった

和漢三才図会巻第81家宅類「厠」 厠の精を「倚(い)」という。青衣着て白杖持っている。その名を知っていて、名前で呼びかければ、「倚」は姿を消す。名前を知らず呼びかければ、呼んだ人は死ぬ。新築した室には、3年間「倚」が居ない。人を見ると、「倚」は自分の面(おもて)を掩(おお)い隠す。もし人が「倚」の面を見ることができれば、福がある。

★4b.厠に住む鬼。

『今昔物語集』巻7-21 宋の時代恵果和尚が厠の前で1人の鬼に出会った。鬼は「前世で私は寺の事務僧だったが、過ちがあったので、現世は、厠で糞を食う鬼になってしまった」と言い、「この苦を救い給え」と請う恵果和尚は、鬼のために法華経書写し、供養する。後、恵果和尚夢に鬼が現れ、「おかげで鬼の境涯脱することができました」と、礼を述べた

★4c.厠の幽霊とりつかれた人。

赤伝唐代伝奇士人赤が、厠の幽霊とりつかれた。彼は肥甕に抱きついてゲラゲラ笑い、「のような香気が立ち昇る部屋で、わしの妻になる美女会っていたのだ」と友人説明する。そして、「ここは天帝の住む清都と変わらない。きさまの住む浮世ふりかえれば、肥甕みたいに見える」と言った方々転地し祈祷をしても、赤の病は治らず、とうとう肥甕の中に身を沈め死んでしまった。

★4d.厠の中に置かれた人。

史記呂后本紀」第9 漢の高祖微賤であった頃からの妻呂后は、高祖の寵をうけた戚夫人怨んだ高祖没した後、呂后戚夫人の手足を断ち切り眼球くり抜き飲ませて唖(おし)にし、便所中に置いて「人豚」と名づけた。

★5a.厠から手が出て、尻をなでる。

諸国百物語42話 某家の雪隠化け物がおり、風の吹く時は、毛の生えた手で尻をなでるという。ある人が「化け物正体見届けてやろう」と雪隠入り化け物の手捕らえてみると、それは薄(すすき)の穂であった雪隠の下に生えた薄が、風になびいて尻にさわるのを、毛の生えた手がなでる、と皆が思い込んだのである

*厠から手が出て陰部をさわる→〔河童〕5の『夜窓鬼談』(石川鴻斎上巻河童」。

★5b.厠から手が出て、人を引きずりこむ

トイレ手が出る日本現代伝説『幸福のEメール』) ある田舎学校では、昔、右から3番目のトイレ便器から青い手が出てきて、入っている人の足をつかみ、便器中に引きずりこんだそうだ。その学校建っていた土地は、もとは墓地だった。

トイレからナイフ持った手が出て、人を刺す→〔言挙げ〕5bの赤いはんてん松谷みよ子現代民話考』7「学校ほか」第1章怪談」の6)。

★5c.厠にいる人が、天狗さらわれる

現代民話考』松谷みよ子)1「河童天狗神かくし第3章の1 明治初期新潟。「之助」という屋号の家に、オモという若嫁がいた。ある吹雪の夜遅く風呂から上がって腰巻をつけただけで、玄関近く便所小用足し行き忽然と姿を消してしまった。天狗が、湯上り半裸体オモ見て欲情しさらって行った思われた。以来猛吹雪を「オモ荒れ」と呼んだり、「腰巻1つ便所に行くと天狗さらわれると言われるようになった新潟県東頸城郡松代町池尻)。

★5d.厠にいる人が、ほととぎす声を聞く

酉陽雑俎巻16-603 厠にいる人が、杜鵑ほととぎす)の声を聞くのは不吉である。これを調伏する方法は、大声応答することだ〔*『太平広記』463所引の『酉陽雑俎』では、「大声ではなく声」。鳴き真似をして応答せよ、というのである〕。

夏目漱石俳句に、「ほととぎす厠なかばに出かねたり」がある。

★6.厠にいる人を襲って殺す。

『古事記』中巻朝夕食事の席に出て来ない大碓命教えさとせ」と、父景行天皇小碓命(後のヤマトタケル)に言う。小碓命は、兄大碓命が厠に入った所を捕え、手足をもぎ取り包んで投げ棄てた〔*『日本書紀』には、ヤマトタケルが兄を殺す物語はない〕。

『古事記』下巻 隼人はやひと)の曾婆訶理(そばかり)は、墨江中王(すみのえのなかつみこ)の寵臣だった。しかし曾婆訶理は、主君墨江中王が厠に入るのをうかがって、矛で刺し殺した〔*『日本書紀』12第17代履中天皇即位前紀(A.D.399)では、隼人刺領巾(さしひれ)が、厠にいる住吉仲皇子を、矛で刺し殺す〕。

★7.厠の中の人を見る。

『共同生活』大江健三郎勤務先職員トイレ自涜する青年がいた。ある日隣の女子用個室の下から、誰かが手鏡使って青年自涜覗き見た。同じ職場30歳過ぎの女事務員らしかった。ところが、人員整理退職者選出せねばならなくなった時、女事務員は青年指さして、「この男はトイレ覗きながら厭らしいことをしていたわ。クビになるべきよ」と言った青年抗議するが、馘首かくしゅ)されてしまった。

天狗大坪砂男) (僕が)温泉宿の厠の戸を開けた時、喬子(たかこ)は洋褌を着了して立ち上がる所だった。ちらりと目に入ったのは、純白のブルーマースを穿(うが)った2本のすらりと肥えた下肢だ。(僕が)失礼を詫びても、喬子許そうとしないそれならば喬子は死なねばならず、彼女の下肢白日に曝(さら)されねばならない竹藪仕掛けによって、喬子身体は宙を飛んだ頭部は沼に没入し、白い2本の脚が青空向けて開いた

★8.厠へ流し捨てる。

下水溝ワニ(ブルンヴァン『消えるヒッチハイカー』) フロリダへ旅行した人たちが、ワニ赤ん坊ペットとしてニューヨークへ持ち帰るワニ大きくなると、飼い主持て余してトイレ流してしまう。真っ暗な下水溝の中で、ワニたちは生きのび繁殖する。陽の当たらぬ場所で生まれ育った盲目白いワニたちが、今、ニューヨーク下水溝泳ぎまわっている。

★9.貸し雪隠

雪隠成仏川端康成嵐山花見女客当て込んで百姓八兵衛1回3文(もん)の貸し雪隠造り大もうけした。これをうらやむ男が、新たに茶席風の高級雪隠を建て、「1度8文」の看板を出す。妻は「こんなに高くては、借り手はいない」と言うが、案に相違して次々女たち借りに来る。その日、男は3文を払って八兵衛雪隠居座り誰も使えないようにしていたのだ。しかし1日中狭い所でしゃがんでいたため、男は雪隠の中で死んでしまった。


読み方:はばかり

  1. 厠と云ふことの婦人語。

分類 東京婦人

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便所

( から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/11 16:53 UTC 版)

便所(べんじょ、: toilet トイレット、lavatory)は、排泄する場所[1]。トイレットを短縮して「トイレ」、英語のlavatory[2] 同様の「お手洗い」、「water closet ウォーター・クローゼット」を略して「WC」など様々な呼び方がある




「便所」の続きの解説一覧

出典:『Wiktionary』 (2021/04/08 21:52 UTC 版)

発音(?)

熟語


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