帝国主義 帝国主義の概要

帝国主義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/19 05:50 UTC 版)

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1898年当時の帝国主義列強勢力図

用語

「帝国主義」(imperialism)という用語が使われたのは19世紀後半以降だが、歴史用語では古代中国の帝国、シュメールバビロニア帝国、エジプト王朝アレクサンドロス大王の帝国、ローマ帝国などにも使用されている[13]。「15~18世紀の西欧諸国によるアジアインドアメリカでの領土獲得や,19世紀後半から激化した植民地政策は帝国主義的な支配といえる」とされている[13]

「帝国主義」の用語が現在の意味で最初に普及したのは1870年代のイギリスで、否定的な意味合いで使用された[14] 。この用語はナポレオン三世による他国への軍事的干渉を通じた政治的支援を説明するために使用された[14]。またこの用語は、19世紀から20世紀にかけて特にアジアやアフリカでの列強による政治的および経済的な支配に対して使用された。

「帝国主義」を権力分析の用語として用いた著名な例は、カール・マルクスの時代に見られる[11]

この用語の正確な意味は学者による議論が続いている。本来は列強による植民地主義を指して使用されたが、広義には単なる膨張主義や覇権主義を指して使用されている。またウラジーミル・レーニンは著書「帝国主義論」で帝国主義は資本主義の最終段階と定義した。複数の学者はより広義に、帝国の中心部と周辺部で組織された支配と従属のあらゆるシステムを説明するために使用しており、この定義では新植民地主義も含まれる。

日本では"imperialism"は「帝政」[11][7]、「帝位[6]など、"imperialist"は「帝国主義者」「皇帝支持者」「帝政主義者」[8][15]などとも訳される。

概要

19世紀から20世紀にかけて、列強と呼ばれる西欧諸国は、特にアジアやアフリカにおいて植民地獲得競争を行った。それらを政体や国号を問わず「帝国」と呼ぶ用語には、スペイン帝国ポルトガル海上帝国オランダ海上帝国デンマーク植民地帝国スウェーデン植民地帝国ロシア帝国イギリス帝国大英帝国)、フランス植民地帝国ベルギー植民地帝国ドイツ植民地帝国イタリア植民地帝国アメリカ帝国大日本帝国、更には社会主義国に対する社会帝国主義などがある。

ホブスンは植民地主義を、余剰資本の投下先という経済的側面の他に、植民地が社会的地位の高い職を提供するという社会的側面についても指摘したが、19世紀中葉以降の植民地獲得、特に移民先として不適切なために余剰人口の捌け口とは成り得ない熱帯地域での拡張を、帝国主義として批判の対象とした。ボブスンの研究はレーニンに多くの影響を与えた。

レーニンの帝国主義論では、帝国主義とは、資本主義の独占段階(最終段階)であり、世紀転換期から第一次世界大戦までを指す時代区分でもあり、列強諸国が植民地経営や権益争いを行い世界の再分割を行っていた時代を指す。この時期のみを帝国主義と呼ぶのか、その後も帝国主義の時代に含めるのかについては論争がある。レーニンによれば、高度に資本主義が発展することで成立する独占資本が、市場の確保や余剰資本の投下先として新領土の確保を要求するようになり、国家が彼らの提言を受けて行動するとされる。いくつもの国家が帝国主義に従って領土(植民地)を拡大するなら、世界は有限であるから、いつかは他の帝国主義国家から領土(植民地)を奪取せねばならず、世界大戦はその当然の帰結である、とする。レーニンの『帝国主義論』は、世界大戦の結果としての破局が資本主義体制の破局につながると指摘した。この様な経済決定論的なレーニンの主張はしばしば「ホブスン=レーニン的」帝国主義とも評されるが、必ずしも両者の主張は同一ではない。

ギャラハー=ロビンソンによる「自由貿易帝国主義(Imperialism of free trade)」論は、非公式帝国(informal empire)という概念を用い、自国の植民地以外への投資を説明している。彼らの論によれば、自由貿易の堅持や権益の保護、情勢の安定化といった条件さえ満たされるのならば、植民地の獲得は必ずしも必要ではなく、上記の条件が守られなくなった場合のみ植民地化が行われたとされる。ギャラハー=ロビンソンは現地の情勢と危機への対応に植民地化の理由を求めたため、それ以降「周辺理論」と呼ばれる、植民地側の条件を重視する傾向が強くなった。

それに対し、再び帝国主義論の焦点を「中心」に引き戻したのがウォーラステインによる世界システム論であり、ケイン=ホプキンズによるジェントルマン資本主義(gentlemanly capitalism)である。ウォーラステインはしばしば余りに経済決定論的過ぎるとして批判されるが、ケイン=ホプキンズはホブスン以来の社会的側面に再び注目し、本国社会における政治的・社会的要因を取り上げた。これらの研究は第二次大戦後、脱植民地化が進むにつれ指摘される様になった新植民地主義 (Neocolonialism(間接的に政治・経済・文化を支配する)の影響を受けたものである。

大英帝国の支配下にあった地域



注釈

  1. ^ 原文:"Imperialism ... An imperial system of government; the rule of an emperor"[5].

出典

  1. ^ 吉家清次. 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンク. 2019年3月5日閲覧。
  2. ^ a b 精選版 日本国語大辞典. コトバンク. 2019年3月5日閲覧。
  3. ^ a b デジタル大辞泉. コトバンク. 2019年3月5日閲覧。
  4. ^ a b c 大辞林 第三版. コトバンク. 2019年3月5日閲覧。
  5. ^ a b Simpson & Weiner 2004, p. 712.
  6. ^ a b 陳 2013, pp. 53-54.
  7. ^ a b https://ejje.weblio.jp/content/imperialism
  8. ^ a b 竹林 2002, p. 1231.
  9. ^ 淡路 1980, p. 104.
  10. ^ 今井 1991, pp. 33-34.
  11. ^ a b c d 植村 1997, p. 13.
  12. ^ 吉家 2019.
  13. ^ a b Britannica 2019.
  14. ^ a b Magnusson, Lars (1991) (Swedish). Teorier om imperialism. Södertälje. p. 19. ISBN 978-91-550-3830-4 
  15. ^ https://ejje.weblio.jp/content/imperialist
  16. ^ 小林康夫・船曳健夫編『知の論理』173 - 183頁 東京大学出版会
  17. ^ 「ナショナリズム 1890-1940」 p66-69 オリヴァー・ジマー 福井憲彦訳 岩波書店 2009年8月27日第1刷
  18. ^ 「帝国と帝国主義」p27 木畑洋一(「帝国と帝国主義 21世紀歴史学の創造4」木畑洋一・南塚信吾・加納格著 所収)有志舎 2012年9月30日第1刷
  19. ^ 「帝国と帝国主義」p29 木畑洋一(「帝国と帝国主義 21世紀歴史学の創造4」木畑洋一・南塚信吾・加納格著 所収)有志舎 2012年9月30日第1刷
  20. ^ 「新書アフリカ史」第8版(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p288
  21. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p30-31 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  22. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p32 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  23. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p32-33 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  24. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p114-115 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  25. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p36-37 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  26. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p39-42 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  27. ^ 『物語 ベルギーの歴史 ヨーロッパの十字路』p77 松尾秀哉 中央公論新社 2014年8月25日発行
  28. ^ 「南北・南南問題」p11 室井義雄 山川出版社 1997年7月25日1版1刷発行
  29. ^ 「南北・南南問題」p13 室井義雄 山川出版社 1997年7月25日1版1刷発行
  30. ^ 「商業史」p247 石坂昭雄、壽永欣三郎、諸田實、山下幸夫著 有斐閣 1980年11月20日初版第1刷
  31. ^ 「商業史」p245 石坂昭雄、壽永欣三郎、諸田實、山下幸夫著 有斐閣 1980年11月20日初版第1刷
  32. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p66 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  33. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p67 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  34. ^ 「帝国主義」(ヨーロッパ史入門)p73-74 アンドリュー・ポーター著 福井憲彦訳 岩波書店 2006年3月28日第1刷
  35. ^ 『鉄路17万マイルの興亡 鉄道からみた帝国主義』p62 クラレンス・B.デイヴィス, ケネス・E.ウィルバーン・Jr. 編著 原田勝正・多田博一監訳 日本経済評論社 1996年9月25日第1刷
  36. ^ 「新版 エジプト近現代史 ムハンマド・アリー朝成立からムバーラク政権崩壊まで」p122 山口直彦 明石書店 2011年10月25日新版第1刷発行
  37. ^ 「新版 エジプト近現代史 ムハンマド・アリー朝成立からムバーラク政権崩壊まで」p150 山口直彦 明石書店 2011年10月25日新版第1刷発行
  38. ^ 「新版 エジプト近現代史 ムハンマド・アリー朝成立からムバーラク政権崩壊まで」p151 山口直彦 明石書店 2011年10月25日新版第1刷発行
  39. ^ 「パナマを知るための55章」p98-100 国本伊代・小林志郎・小澤卓也著 明石書店 2004年8月31日初版第1刷発行
  40. ^ 「新書アフリカ史」第8刷(宮本正興・松田素二編)、2003年2月20日(講談社現代新書)p291
  41. ^ 「アフリカ経済論」p51 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
  42. ^ 「帝国と帝国主義」p41 木畑洋一(「帝国と帝国主義 21世紀歴史学の創造4」木畑洋一・南塚信吾・加納格著 所収)有志舎 2012年9月30日第1刷
  43. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p207 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
  44. ^ 「世界地理大百科事典1 国際連合」p318 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  45. ^ 「世界地理大百科事典1 国際連合」p310 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  46. ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p208 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行





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