民主共和制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/23 09:46 UTC 版)
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民主共和制(みんしゅきょうわせい、英語: Democratic republic)とは、民主主義と共和主義の特徴を併せ持つ政治体制である。
日本語では「民主共和政」とも訳され、この制度を採用する国は「民主共和国」と呼ばれる。
民主共和国では、国民が政府に権限を与え、その範囲内で政治が行われている。通常、政府の権限は国民の権利を超えないよう制限される。「共和」と「民主」の理念が社会に根付き、国民がその原理や仕組みを理解することが重要とされる[1]。また、国民は政府を監視し、必要に応じて権力の乱用を防ぐ役割を果たす[2][3]。こうした仕組みによって国民は民主主義の理念の下、政治や外交・経済・文化政策に積極的に関与するようになる。
一般に、民主共和国では道徳意識が高く、国民の幸福度も比較的高い傾向がある。これは国民投票の積極的な活用や、共和制による権力分散が影響していると考えられる[4]。また、人権の尊重も民主共和制の大きな特徴の1つである[5][6][7]。
なお、民主共和政を採用している国でも、全ての国民が選挙権を持つとは限らない。投票年齢[8]のほか、犯罪歴や収監状況などによって制限される場合がある[9]。
定義
「民主」と「共和」の定義は重複する部分も多いが、民主国家は必ず共和制を採用するわけではなく、共和国も必ず民主制を採用するわけではない。例えばイギリスでは、チャールズ3世が国王に就いているため共和制ではないが、国王より国民の権力が大きい立憲君主制を採用しており、民主的である[10][11]。また中華人民共和国は、共和制を自称しており皇帝も存在しないが、習近平総書記という個人による独裁体制となっている[12][13]。
イギリスの定義
オックスフォード英語辞典に拠ると、「共和」と「民主」の定義は以下の通りである。
- 共和
- 民主
アメリカの定義
UCLAロースクールのEugene Volokhによると、米国が多様な政治的側面を持ち、単一の政体に収めることが難しいため、立憲共和制、民主共和制、さらには複数の政治形態が融合したものと見ることが出来る[16]。具体的には[17][18]
- 立憲共和制:米国は憲法に基づいた政府運営を行い、『憲法』に従って権力の分立が行われている。これは立憲共和制の特徴である。
- 民主共和制:本稿で言う民主共和制は、間接民主制(代表者を選出して政治を委任するシステム)にあたる。また、選挙人団制度(Electoral College)や連邦制(州と地方自治体で直接民主制を採用する場面)を通じて、民主主義の要素が強調されている。
- 直接民主制 vs 間接民主制:地方や州レベルで直接民主制(例えば住民投票やイニシアティブ)が行われる一方で、全国規模では間接民主制を採用する。
- 裁判制度と法学独立:米国の裁判制度は、憲法に基づいた法学独立が特徴であるが、陪審制(jury trial)の採用により、民主主義的な要素も持ち合わせる。
前述のように、米国では民主共和制は単一の政体では無く、むしろ民主体制の特徴の1つとみなされている。
歴史と使い分け
20世紀以前は「民主共和制」と「民主共和国」という2つの用語は、解釈不一致のことが頻発していた[要校閲]。
アメリカ
アメリカ独立革命の以前、イギリスやポーランド・リトアニア共和国のように君主の権力が弱く、国会の権力が強いヨーロッパの国家は君主共和制と呼ばれ、「民主制」より「共和制」という言葉で形容することのほうが多かった[19]。アメリカ独立のあと、代表民主制を使っているため、 民主共和国が頻繁に使われ、民主共和制はほとんど使わなくなった[要校閲]。ジョン・アダムズは、1784年で提案した連邦法改革の草案で以下のように述べている。
アジア
中華民国は、自国がアジアで最古の民主共和国であったと主張している。しかし、中華民国が中国大陸に領土を持っていた時代に行っていた政治体制は全て独裁共和制であり、民主制でなかった。民主制になったのは、台湾島へ撤退した後の1990年代以降のことである[21]。
アフリカ
1822年で建国されたリベリアも、自国がアフリカで最古の民主共和国であったと主張している。しかしリベリアは、定期的にクーデター等が発生しており政治的に安定しているとは言えず、アメリカのような安定的な民主共和国とは言いづらい[22]。
民主共和国という国名を持つ国
事実上の独裁国家
「民主共和国」という語を正式な国名に使ったまま、権威主義的な政治体制を敷く国家は珍しくない[23]。アメリカの国際NGO団体であるフリーダム・ハウスによると、「民主共和国の本質は自由主義と憲政主義」であることから、ある国家が本当に民主共和国か否かについては、判断しにくいことではない[24][要校閲]。
20世紀の共産主義国家
第二次世界大戦後、多くの共産党政権は「民主共和国」を国名に入れていた。これらの国々はマルクス・レーニン主義の一党独裁国家であり[25]、民主制にとって最も重要な言論の自由がなかった。以下のような国々がこれに当てはまる。
- ドイツ民主共和国(東ドイツ)
- ソマリア民主共和国[26]
- ベトナム民主共和国(北ベトナム)
- イエメン人民民主共和国(南イエメン)
- アフガニスタン民主共和国
- エチオピア人民民主共和国[27]
21世紀以降
2024年の現在でも、民主共和国を名乗る独裁制の国家が多く存在している。そのような国々は自由選挙を実施しておらず、民主主義指数において「独裁政治体制」または「混合政治体制」と評価される。以下のような国家がこれに当てはまる。
- アルジェリア民主人民共和国[28]
- コンゴ民主共和国[28]
- エチオピア連邦民主共和国[28]
- 朝鮮民主主義人民共和国[28](北朝鮮)
- ラオス人民民主共和国[28]
- サハラ・アラブ民主共和国(西サハラ)
本物の民主共和国
国名に「民主共和国」を用いており、実際に民主共和制を敷いている国家も存在する。そのような国々は自由選挙を実施し、言論の自由があり、民主主義指数において「完全民主主義」または「欠陥民主主義」と評価される。これに当てはまる国家は以下の3つしかない。
脚注
- ^ Steven G. Gey (1993年). “The Unfortunate Revival of Civic Republicanism Steven G. Gey” (英語). JSTOR. 2025年3月11日閲覧。
- ^ “What Is Democracy? - Democratic Government”. web-archive-2017.ait.org.tw. 2024年9月21日閲覧。
- ^ Fowler, Michael W. (2015). “A Brief Survey of Democracy Promotion in US Foreign Policy”. Democracy and Security 11 (3): 227–247. ISSN 1741-9166 .
- ^ James Carpenter. “Thomas Jefferson and the Ideology of Democratic Schooling” (英語). Binghamton University. 2025年3月11日閲覧。
- ^ “The Forum: Global Challenges to Democracy? Perspectives on Democratic Backsliding”. Journal Article. 2024年9月21日閲覧。
- ^ “Is Democracy the Answer?”. Marina Ottaway. 2024年9月21日閲覧。
- ^ “From Democratic Theory to Democratic Governance Theory: Implications to the Political Development of the Macao SAR”. LIU Qian*. 2024年9月21日閲覧。
- ^ “Voter Registration Age Requirements by State”. USA.gov. 2017年12月3日閲覧。
- ^ “Characteristics of Democratic Republic”. Government VS. softUsvista Inc. 2023年4月4日閲覧。
- ^ “The role of the Monarchy”. Royal websites. 2024年9月21日閲覧。
- ^ UCL (2021年11月8日). “What is the role of the monarchy?” (英語). The Constitution Unit. 2024年9月21日閲覧。
- ^ Gueorguiev, Dimitar D. (2018-06-01). “Dictator’s Shadow” (英語). China Perspectives 2018 (1-2): 17–26. doi:10.4000/chinaperspectives.7569. ISSN 2070-3449 .
- ^ “CHINA’S DUAL STATE REVIVAL UNDER XI JINPING”. viewcontent.cgi. 2024年9月21日閲覧。
- ^ “republic | Definition of republic in English by Oxford Dictionaries”. Oxford Dictionaries | English. 2017年12月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年12月4日閲覧。
- ^ “democracy | Definition of democracy it English by Oxford Dictionaries”. Oxford Dictionaries | English. 2016年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年12月4日閲覧。
- ^ Volokh, Eugene (2015年5月13日). “Is the United States of America a republic or a democracy?” (英語). The Washington Post. ISSN 0190-8286 2017年12月3日閲覧。
- ^ “Legislative Search Results”. www.congress.gov. 2025年3月17日閲覧。
- ^ “You searched for Democratic republic - Page 2 of 70” (英語). SCOTUSblog. 2025年3月17日閲覧。
- ^ “Democracy or republic?”. Britannica. 2022年7月22日閲覧。
- ^ Adams, John (1851) (英語). The Works of John Adams, Second President of the United States: With a Life of the Author, Notes and Illustrations. Little, Brown. p. 109 . "in a simple or representative democracy but by consent of the majority."
- ^ Yongnian, Zheng; Fook, Lye Liang; Hofmeister, Wilhelm (2013-10-23) (英語). Parliaments in Asia: Institution Building and Political Development. Routledge. ISBN 9781134469659
- ^ “Elections history in Africa's oldest democratic republic: Liberia” (英語). euronews. (2017年10月8日) 2017年12月3日閲覧。
- ^ “EIU Democracy Index 2016”. infographics.economist.com. 2017年12月3日閲覧。
- ^ “Freedom in the World 2017” (英語). freedomhouse.org. 2017年12月3日閲覧。
- ^ “Berlin Wall – Cold War”. history.com. HISTORY TV. 2017年12月3日閲覧。
- ^ “Somali Democratic Republic”. www.onwar.com. 2019年2月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年12月4日閲覧。
- ^ Clapham, Christopher (1987-06-01). “The constitution of the people's democratic Republic of Ethiopia”. Journal of Communist Studies 3 (2): 192–195. doi:10.1080/13523278708414865. ISSN 0268-4535.
- ^ a b c d e “The World Factbook — Central Intelligence Agency” (英語). www.cia.gov. 2017年12月3日閲覧。
外部リンク
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民主共和制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 18:46 UTC 版)
美麗島事件をきっかけに、1987年に蔣介石の息子で総統(大統領)職を世襲した蔣経国が戒厳を解除。続いて李登輝政権下の1996年に、国民党一党独裁(党国体制)による寡頭共和制は終わり、複数政党制と大統領制を主体とした民主共和制に変わった(総統民選期の中華民国)。 その経済や貿易規模も大きいことなどから、日本やアメリカ、イギリスやフランスなどをはじめとする主要国とは国交こそないものの、形式上非政府組織の窓口機関を通じて外交業務を行っているため、事実上の国交があると言える状態にある。世界貿易機関 (WTO) のように、主権国家ではなく、領域を代表するものとして中華民国政府の加盟を認めた国連機関もある。 21世紀初頭では、大統領制の議会制民主主義を主体とした民主共和制国家として、台湾海峡を挟んで中国大陸と接している台湾島・澎湖諸島(台湾省・台湾地区)および福建省沿岸の金門島・馬祖島(金馬地区)、南シナ海の東沙諸島および南沙諸島の太平島を実効支配している。
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