オーケストラ 編成

オーケストラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/03 08:38 UTC 版)

編成

第1ヴァイオリンからコントラバスまでの弦五部は多くの場合、各部の人数が演奏者に任されているが、現代では一般的に次のようなパターンがある。

管楽器の規模の例 第1ヴァイオリン 第2ヴァイオリン ヴィオラ チェロ コントラバス プルト比率
二管編成 8型 8人 6人 4人 3人 1~2人 4:3:2:1:1
二管編成 10型 10人 8人 6人 4人 2~4人 5:4:3:2:1
二管編成 12型 12人 10人 8人 6人 4人 6:5:4:3:2
三管編成 14型 14人 12人 10人 8人 6人 7:6:5:4:3
四管編成 16型 16人 14人 12人 10人 8人 8:7:6:5:4
四管編成 18型 18人 16人 14人 12人 8~10人 9:8:7:6:5
五管編成 20型 20人 18人 16人 14人 10人 10:9:8:7:5

管楽器は原則として楽譜に書かれた各パートを1人ずつが受け持つ。ただし実際の演奏会では、倍管といって管楽器を2倍にしたり、「アシスタント」と呼ばれる補助の奏者がつくこともある。

楽譜に示されたオーケストラの編成の規模を示すのに、二管編成、三管編成、四管編成という言葉が使われる。いずれも木管楽器の各セクションのそれぞれの人数によっておおよその規模を示す。

中世音楽

この時代の西洋にはオーケストラは存在しないと言われている。しかし西洋以外では、当時の中国宮廷音楽は数百人の合奏による音楽が演奏されていることを示す資料が発掘されている[3]

ルネサンス音楽

モンテヴェルディはスコア序文に楽器編成を書いた世界初の作曲家である。そこにはオーケストラの黎明期の編成が記されている[4]

バロック音楽

バロック期のオーケストラでは、管楽器は各パート1名、ヴァイオリンは2パート2〜3名ずつ、ヴィオラ、チェロ2名、コントラバス、ファゴット、鍵盤楽器各1名という程度の規模が多く、大規模でも総勢20名程度のものであった。弦楽を含めた全てのパートを各1名で奏することもある。そのため、バロック期のオーケストラは室内楽あるいは室内管弦楽の範疇とされることもある。なお、1749年ヘンデルによって作曲された管弦楽組曲王宮の花火の音楽」では、大国イギリスの国家行事という特殊事情もあり、現在考えても膨大な100人という規模の楽団によって、式典の屋外会場[5]で盛大に演奏された(参照:巨大編成の作品#番付外)。

次に示すのは、18世紀前半頃の後期バロック音楽J.S.バッハテレマンヘンデル等の盛期)の曲に多く見られる、規模の大きめな管弦楽編成の例である。

古典派音楽の二管編成

古典派二管編成は、フルートオーボエクラリネットファゴットが各2名(ピッコロが加わるなどの多少の増減はあり得る)で、ホルントランペットも2名程度、ティンパニ弦楽五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)である。この編成に見合う弦楽五部の人数は「12型」[注 4]で6-5-4-3-2プルト[注 5]程度であり、オーケストラ総勢で60名ほどになる。

モーツァルト交響曲第1番を父レオポルトの指導の下で作曲した際の編成は「オーボエ2、ホルン2、弦五部」であった。

以下は、古典派音楽の盛期頃(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン)に多く見られる編成の例である。ただし、この頃は標準編成なるものは存在せず、オーボエ2とホルン2と弦五部に加え「パトロンからの命令」で決まった編成が多い。

盛期ロマン派音楽の二管編成

後期ロマン派二管編成は、フルートオーボエクラリネットファゴットが各2名(それぞれの派生楽器であるピッコロイングリッシュホルンバスクラリネットコントラファゴットへの持ち替えもありうる)で、ホルンが4名、トランペットが2~3名程度、さらにトロンボーンが3名、チューバが加わる。ティンパニの他に若干の打楽器が4名程度加わる。さらに編入楽器としてハープが加わる。弦楽五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)である。この編成に見合う弦楽五部の人数は現代のコンサートにおける標準的な編成で「14型」[注 6]で7-6-5-4-3プルト程度であり、オーケストラ総勢で80名ほどになる。チャイコフスキーの作品は、現在このくらいの規模で演奏される。

音響空間次第で、弦の数を変えることは可能である。結果的に、二管編成を完成させた時期はチャイコフスキーが活躍した時代である。多くの作曲家がこの編成をベースに協奏曲を書いている。

  • 木管楽器
    • フルート 2 ピッコロへの持ち替えあり
    • オーボエ 2 イングリッシュホルンへの持ち替えあり
    • クラリネット 2 バスクラリネットへの持ち替えあり
    • ファゴット 2 コントラファゴットへの持ち替えあり
  • 金管楽器
    • ホルン 4
    • トランペット 2
    • トロンボーン 3
    • チューバ 1
  • 打楽器
  • 編入楽器
  • 弦楽器

ロマン派から近代にかけての三管編成

三管編成は、フルートオーボエクラリネットファゴットが各2名にそれぞれの派生楽器が加わって、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの各セクションが3名となる。ホルンは4名程度、トランペットトロンボーンが各3名程度、チューバ1名となる。打楽器もティンパニ1〜2人を含む6名程度、編入楽器はハープ1名にさらにチェレスタが加わることがある。この編成に見合う弦楽五部の人数はいわゆる「16型」[注 7]8-7-6-5-4プルト程度であり、総勢90名ほどである。

ワーグナーの「ジークフリート」はその最初の完全な形[6]といわれている。

日本のオーケストラは三管に対して伝統的に16型で対応してきた(1980年代まで)が、近年では世界的な常識にあわせ14型に直しているオーケストラが優勢になった。結果的に三管編成を完成させた時期はラヴェルが活躍した時代である。最終的に、オーケストラに最も適したサイズとされ国際的な標準になった。近年は、14型を下回る3管編成も珍しくなくなってきている[7]

近代から20世紀中葉までの四管編成

四管編成では、フルートオーボエクラリネットファゴットの各セクションが4名となる。ホルンも4から8人、トランペットトロンボーンが3〜4人、チューバが1〜2人。打楽器もティンパニ1〜2人を含む7名程度。編入楽器は4名程度。弦楽五部もいわゆる「18型」[注 8]の9-8-7-6-5プルト程度となり、総勢100名にものぼる。ワーグナーマーラーストラヴィンスキーベルクの作品には、この規模の作品が多い。その最初の形はベルリオーズレクイエム作品5や同じくテ・デウムであるが、当時はいわゆる倍管機能のユニゾンで、後年ワーグナーがその「ニーベルングの指環」や「パルジファル」でその編成を機能的にほぼ組織化した。

国際的には四管編成には16型で対応しており、18型は稀である。ホルンが4から8人に増えるのは、ホルンは通常1パートを2人で編成する為、四管編成だと倍の8人となる。その他ワーグナーやブルックナーなどの曲でホルン奏者の一部がワグナーチューバに持ち替える為、奏者が多数必要となる。チューバの本数が増えない理由は、増数したトロンボーンがバストロンボーンやコントラバストロンボーン、チンバッソなどチューバの音域を賄える楽器である為にチューバの数が増えないと考えられる。かつては3台ハープや3台ピアノも普通に見られたが、現在ではハープや鍵盤が二台を越えることはほとんどない。結果的に、四管編成を完成させた時期はリヒャルト・シュトラウスが活躍した時代である。

20世紀以降の五管以上の編成

四管編成よりさらに大きく、各セクションが5人平均となるもの(五管編成相当)もある。ここでは、各セクション4本ずつのスタンダードの木管楽器の上に、ピッコロイングリッシュホルンバスクラリネットコントラファゴットが加わった形が多い。ホルンは8人以上。トランペットは5から6人。トロンボーンは差が大きく3人から5人。チューバは2人以上が多い。打楽器は7人以上。弦楽合奏は「20型」[注 9]の10-9-7-6-5プルトが一般的でさらにオルガンピアノチェレスタ・4人以上のハープギターマンドリンが付くこともある。リヒャルト・シュトラウスマーラーストラヴィンスキーの他に、シェーンベルクヴァレーズケージ等がいる。管弦楽は120名を超える。

なお、これよりもさらに大きな編成で書かれた巨大編成の作品もある。リヒャルト・シュトラウスの「タイユフェ」作品52、ヴァレーズの「アメリカ」(1922年版)、メシアンの「アッシジの聖フランシスコ」や「閃光」、ハヴァーガル・ブライアン交響曲黛敏郎の「涅槃交響曲」などがそれにあたる。なおこのような木管楽器の編成は、各セクションが同程度の人数というような形式にあまり当てはまらず、フルートクラリネットが多くなる割りには、オーボエファゴットはあまり多くならない傾向があり、金管楽器も相当変則的になり、国際的な基準というものはない。

20世紀後半以後の一管編成

最も小さな編成に、木管楽器が1人ずつ程度の編成[注 10]がある。ワーグナーの「ジークフリート牧歌」は、基本的に木管各1名、ホルン2、トランペット1、打楽器は無しで、弦もワーグナー自宅での初演時は1人ずつであった。これは20世紀後半の室内オーケストラを先取りするものであったが、当時は「オーケストラ」とはみなされていなかった。

ウェーベルンの「5つの小品」作品10のように多くの打楽器鍵盤楽器が入っていたり、同じく作品21や29、シェーンベルク室内交響曲第1番のような変則的なものも多い。しかし、この「変則」的な組み合わせが20世紀後半の音楽では優勢になる。室内オペラはこの編成で書かれることがある。

戦後はシェーンベルクに倣い、管楽器の数が弦楽器を上回った室内オーケストラは、20世紀後半以降数多い。ヘンツェのレクイエムは弦楽器の量を管楽器が優に上回る典型例である。




注釈

  1. ^ イタリア語発音: [orˈkɛstra] オルストゥラ
  2. ^ 英語発音: [ˈɔːrkɪstrə] ーキストゥラ
  3. ^ 団員は解散に対抗して自主的演奏団体としてのニュー・フィルハーモニア管弦楽団を結成
  4. ^ 第1ヴァイオリンが12名
  5. ^ Pult:譜面台のことで、2人で1つの譜面台を見ることから、1プルトは2名に相当する
  6. ^ 第1ヴァイオリンが14名
  7. ^ 第1ヴァイオリンが16名
  8. ^ 第1ヴァイオリンが18名
  9. ^ 第1ヴァイオリンが20名
  10. ^ 一管編成相当

出典

  1. ^ 吉田秀和は著書『ヨーロッパの響、ヨーロッパの姿』において、欧州のオペラ上演の半数以上がドイツで行われていると述べている
  2. ^ 中日新聞、2020年4月18日朝刊13面
  3. ^ Sharron Gu. A Cultural History of the Chinese Language. McFarland & Company. p. 24. ISBN 978-0-78646-649-8
  4. ^ Monteverdi's Orchestra in L'Orfeo:Instruments Named in the 1615 Edition”. people.fas.harvard.edu. Harvard University. 2020年8月27日閲覧。
  5. ^ ニューグローブ音楽辞典・王宮の花火の音楽の項
  6. ^ リヒャルト・シュトラウス補筆ベルリオーズの管弦楽法、譜例1
  7. ^ セントラル愛知交響楽団”. www.caso.jp. www.caso.jp. 2020年8月27日閲覧。
  8. ^ 木下正道・オーケストラのためのサラユーケル・武満徹作曲賞本選会
  9. ^ 江原修・「Les Fleaux」・日本音楽コンクール本選会
  10. ^ ウニヴェルザール出版社の「Coro」スコア序文
  11. ^ The world’s greatest orchestras”. グラモフォン (雑誌). 2014年11月15日閲覧。



オーケストラ!

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/29 05:24 UTC 版)

オーケストラ!』(原題: Le Concert)は、2009年フランス映画




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