パガニーニの主題による狂詩曲とは? わかりやすく解説

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ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

英語表記/番号出版情報
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲Rapsodie sur un theme de Paganini Op.43作曲年1934年 

作品解説

2010年3月 執筆者: 岡田 安樹浩

1934年11月7日ルツェルン湖畔の別荘にて完成されたこの作品ラフマニノフ注いだ時間は、わずか数週間であったという。独奏ピアノオーケストラという「ピアノ協奏曲」のスタイル作曲された「狂詩曲」は、パガニーニによる独奏ヴァイオリンのための「24のカプリース奇想曲)」から第24番主題をもとに、24変奏繰り広げる壮大な変奏曲」である。
作品成立のおよそ10年前にあたる1924年2月12日ラフマニノフニューヨークでガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』の初演聴いている。「ラプソディ狂詩曲」というタイトルや「ピアノ協奏曲」のスタイル、そして時折ジャズにおわせる和音進行あらわれることは、ラフマニノフ自身ジャズに対してネガティヴ発言残してはいるものの、ガーシュウィン作品意識していたことをうかがわせる

序奏第1変奏主題パガニーニによる主題断片による8小節間の序奏(4分の2拍子 Allegro vivace イ短調)に続いて、まず第1変奏がおかれ、その後ようやく本来の主題ヴァイオリントゥッティあらわれる。
2-6変奏独奏ピアノ技巧的パッセージ中心に音形的な変奏追及される。
第7変奏テンポ落とし主題8分音符主体の音形的変奏に「ディエス・イレ怒りの日)」の主題組み込まれる
8-9変奏第8変奏テンポをもとに戻し第7変奏での8分音符主体の音形が引き継がれ第9変奏では8分3連音符主体となってリズム的に切迫してゆく。
第10変奏:4分の4拍子となり、ふたたびディエス・イレ主題バス声部あらわれる。
第11変奏:4分3拍子Moderatoテンポ落とし弦楽トレモロ木管楽器による和声主題の音形を背景に、独奏ピアノによる自由な楽想展開される
第12変奏ここから調性ニ短調となり、「メヌエットのテンポで」という指示のもと、第2ヴァイオリン性格的伴奏の上メヌエットというよりはスケルツォ風のリズミカルなパッセージ展開されるなか、時折主題断片が顔をのぞかせる
第13変奏弦楽器群のトゥッティによる主題の音形変奏に、独奏ピアノによる最強奏の和音音楽切迫感与える。
第14-15変奏:はじめて長調へと転じヘ長調)、主題8分音符の3連音符変形されており、この断片が、独奏ピアノによるカデンツァによって開始される第15変奏のなかにあらわれる。
16-17変奏:4分の2拍子となり、前の変奏におけるヘ長調ドミナント役割果たしここから変ロ短調転じる主題原型断片的にあらわれるも、4分の4拍子となる第17変奏では、独奏ピアノ流動的な音形が主体となって動機的な要素は一層希薄になる
18変奏4分の3拍子で平行長調である変ニ長調転じるテンポAndante落とし主題動機反行形カンタービレ風の旋律へと変容する。この変奏はしばし独奏曲として抜粋演奏されることもあるが、調性動機変奏方法前後の関係から徐々に変化させてゆく作曲者意図考慮すべきであろう。しかしこのことは、第18変奏それほどまでに主題動機甘美魅力的な旋律へと変容させていることを逆説的に物語っている。
19-21変奏テンポVivace速めて6小節間奏挟み、もとの調性であるイ短調回復し拍子は4分の4拍子へと変化する独奏ピアノアクセントづけされた8分3連音符変奏主体となり、続く第20変奏ではテンポをさらに速めて第7変奏特徴的だった装飾的なリズム主体となる。そして第21変奏ではふたたび8分3連音符主体とし、独奏ピアノによるユニゾンパッセージ背景に、主題動機断片的にあらわれる。
22変奏16分音符4つという主題動機構成するリズム抽出され、これが8分3連音、そして4分3連音へと変容してゆく。主題動機そのものリズムのみが抽出され動機対立するなか、後者変容過程淘汰され独奏ピアノ技巧的パッセージ背景主題動機繰り返しあらわれる。
第23-24変奏独奏ピアノカデンツァ挟み主題独奏ピアノオーケストラトゥッティによるフィナーレへと昇華する金管楽器群によって高らかに奏されるディエス・イレ主題もくわわり、和音連打交差するラフマニノフ典型的な技巧的パッセージとともに頂点を築く。しかし終結直前に弱奏へ転じラフマニノフ華々しく楽曲を結ぶ際に常套的に用いるダクテュルス・リズム(ジャン・ジャジャ・ジャン)を避けかのように主題動機一瞬回想弦楽ピッツィカートによって楽曲閉じる。


パガニーニの主題による狂詩曲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/23 14:12 UTC 版)

音楽・音声外部リンク
全曲を試聴する
Rachmaninow:Rhapsodie über ein Thema von Paganini - キリル・ゲルシュタイン(P)、エドワード・ガードナー指揮hr交響楽団による演奏。hr交響楽団公式YouTube。
Rachmaninoff:Rhapsody on a Theme of Paganini - アンナ・フェドローヴァP)、ジェラルド・オスカンプ(Gerard Oskamp)指揮Philharmonie Südwestfalenによる演奏。AVROTROS Klassiek公式YouTube。
Rachmaninoff Rhapsody on a Theme of Paganini - デニス・マツーエフ(P)、レナード・スラットキン指揮ロシア国立交響楽団による演奏。当該ソリスト自身の公式YouTube。
S.Rachmaninoff. Rhapsody on a Theme of Paganini - アレクサンダー・マロフェーエフ(Alexander Malofeev;P)、チョン・ミョンフン指揮RAI国立交響楽団による演奏。当該ソリスト自身の公式YouTube。

ピアノとオーケストラのための『パガニーニの主題による狂詩曲』(ロシア語: Рапсодия на тему Паганини для фортепиано с оркестром フランス語: Rapsodie sur un thème de Paganini pour Piano et Orchestre作品43は、セルゲイ・ラフマニノフ1934年に作曲した25部から成る変奏曲形式の、ピアノを独奏楽器とする協奏的狂詩曲である。

作曲の経緯

ロシア革命の混乱の最中に母国を離れたラフマニノフは、帰国することもかなわずアメリカ合衆国でピアニストとしての生活を送るようになった。彼はアメリカでピアニストとしての名声を獲得する反面、演奏家活動に多くの時間が割かれることとなった。加えてロシアを離れたことで母国を喪失したという思いも強く、想像力の枯渇を感じるなどして作曲にはなかなか取り組めなかった。そんな中、1931年に夏の休暇を過ごすためにスイスルツェルン湖畔に建てた別荘で1934年6月3日に作曲を開始し、同年8月18日に仕上げられたのがこの曲である。初演は1934年11月7日ボルチモアにてラフマニノフのピアノ独奏、ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団により行われた。

後にこの作品はミハイル・フォーキンによってバレエ化された。その際ラフマニノフはフォーキンに「超絶技巧と引き換えに悪魔に魂を売ったと噂されたニコロ・パガニーニの伝説を筋立てとして利用してはどうか」という提言をしている。

楽器編成

当楽曲では独奏ピアノと管弦楽が配置される。このうち、管弦楽の編成内容を以下にて示す[1]

編成表
木管 金管
Fl. 2 Hr. 4 Timp. Vn.1
Ob. 2 Trp. 2 B-Dr.1、S-Dr.1、Cymb.1、S-Cymb.1、Tri.1、Glsp.1 Vn.2
Cl. 2 Trb. 3 Va.
Fg. 2 Tub. 1 Vc.
Picc.1、E-Hr.1Cb.
その他Hp.1

なお、演奏時間は、22~25分程度である[1][2]

楽曲構成

パガニーニ『24の奇想曲』第24曲の主題提示部分。この主題を用いて当楽曲を作曲した。

主題と24の変奏から成る。一般の変奏曲と異なり、第1変奏のあと、第2変奏の前に主題を置いている。

主題は、パガニーニのヴァイオリン曲『24の奇想曲』第24番「主題と変奏」の「主題」を用いている。すなわち、パガニーニと同じ主題を使って別の変奏を試みているのである。イ短調

序奏:Allegro vivace イ短調 2/4
主題の部分の動機が3回繰り返される。
第1変奏:Allegro vivace イ短調 2/4
オーケストラによって主題が間欠的に演奏される。
主題:L'istesso tempo イ短調 2/4
ピアノが主題を間欠的に演奏する中、ヴァイオリンが主題を演奏する。第1変奏が主題を間欠的に演奏しているため、この主題が、あたかもこの第1変奏の変奏であるかのように聞こえる。
第2変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
ピアノとオーケストラが役割を交代する。後半になって変奏曲らしい装飾が十分に聞かれるようになる。
第3変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
オーケストラが細かく動く中、ピアノがゆったりとオブリガードを演奏する。
第4変奏:Più vivo イ短調 2/4
いくらか急にテンポを増す。動機を2つのパートが素早く掛け合いを行う。
第5変奏:Tempo precedente イ短調 2/4
歯切れの良いリズムになる。
第6変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
同一のテンポながら、オーケストラの動きが止まり、ピアノもひとフレーズごとに動きが緩やかになる。
第7変奏:Meno mosso, a tempo mederato イ短調 2/4
いよいよテンポが遅くなり、グレゴリオ聖歌の『レクイエム』の「怒りの日」のテーマをピアノが演奏する。ラフマニノフが生涯にわたってこだわり続けたこのテーマは、この曲にあっては前述のパガニーニの伝説に登場する悪魔を示していると言われる。
第8変奏:Tempo I イ短調 2/4
最初のテンポに戻り、下から突き上げるようなリズムがあがってくる。
第9変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
逆付点リズムのような3連符の鋭いリズムで「怒りの日」を変奏する。
第10変奏:Poco marcato イ短調 4/4
「怒りの日」の変奏。クライマックスで3/4拍子と4/4拍子が交代する変拍子となる。静まって次の変奏を迎える。
第11変奏:Moderato イ短調 3/4
ヴァイオリンとヴィオラが静かに同音を細かく反復する(トレモロ)中、ピアノが動機を幻想的に繰り返す。後半は拍子を失い、カデンツァ的に演奏される。そのピアノをハープのグリッサンドが飾る。
第12変奏:Tempo di minuetto ニ短調 3/4
はじめてイ短調以外の調で奏される。「メヌエットのテンポ」とはいうもののあまりメヌエットらしさはない。後半のホルンのオブリガードが印象的。
第13変奏:Allegro ニ短調 3/4
3拍子に変えられはするものの、主題がヴァイオリンなどにより比較的はっきりと現れる。
第14変奏:L'istesso tempo ヘ長調 3/4
初めて長調が現れる。主題は鋭く角張って変奏される。
第15変奏:Più vivo scherzando ヘ長調 3/4
前半はピアノだけで演奏される。ピアニスティック(ピアノ技巧的)な演奏が聞かれる。
第16変奏:Allegretto 変ロ短調 2/4
一転して陰鬱に動機を繰り返す。
第17変奏:Allegretto 変ロ短調 4/4(12/8)
ピアノが低音でもぞもぞと動く中、オーケストラが動機のあとの部分を繰り返す。
”パガニーニの主題”の反行形(譜例下;第18変奏にて)
第18変奏:Andante cantabile 変ニ長調 3/4
主題は別として、この曲の中で特に有名な部分である。しばしば単独で演奏される。ポップスへの編曲例も多い。パガニーニの主題の反行形(上下を反対にした形)[註 1]を、最初はピアノが独奏で演奏し、オーケストラが受け継ぐ。
第19変奏:A tempo vivace イ短調 4/4
最初の調に戻り、夢が覚めたような印象を与える。ピアノがすばしこく上下へ動き回る。手の大きいラフマニノフならではの奇抜な演奏手法である。
第20変奏:Un poco più vivo イ短調 4/4
ヴァイオリンがもぞもぞも動き回る中、ピアノが歯切れ良く鋭い音を出す。
第21変奏:Un poco più vivo イ短調 4/4
ピアノが低音を蠢きながらときどきおどかすように高音に現れる。
第22変奏:Un poco più vivo (Alla breve) イ短調 (4/4)
ピアノが重く鋭く和音を刻む。最後はピアノのカデンツァとなって、動機を繰り返す。
第23変奏:L'istesso tempo イ短調 2/4
主題が明確に現れた後で、ピアノとオーケストラの掛け合いとなり、最後にはカデンツァ風となる。
第24変奏:A tempo un poco meno mosso イ短調〜イ長調
ピアノが弱奏ですばやく動き回る。10度を超える難しい跳躍をスケルツァンド風に演奏する。金管楽器が「怒りの日」を短く奏した後、トゥッティ で盛り上がるが、最後はピアノが主題の断片を極めて弱く演奏して曲を閉じる。

パガニーニの主題による狂詩曲を題材にした作品

テレビドラマ(韓国)
ポピュラー音楽
第18変奏を取り上げたもの

脚注

注釈

  1. ^ ラフマニノフの友人であるニコライ・メトネルの『お伽話ソナタ』第2楽章の主題提示とも酷似している。

出典

  1. ^ a b 柴辻純子(音楽評論家). “Program notes 楽曲紹介” (PDF). 『月刊オーケストラ』2018年2月号. 読売日本交響楽団. p. 11. 2018年11月17日閲覧。
  2. ^ 岡田安樹浩. “ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 Op.43 イ短調”. ピアノ曲事典. PTNA. 2018年11月17日閲覧。

参考文献

  • ミニチュアスコア ワーナーブラザーズパブリケイションズ
  • 『最新名曲解説全集10 協奏曲III』音楽之友社、1980年、29頁

関連楽曲

  • ヴィトルド・ルトスワフスキ『パガニーニの主題による変奏曲』 - オリジナルは2台ピアノだが、1978年にピアノと管弦楽のために編曲された。
  • その他のパガニーニ「カプリース第24番」による編曲は24の奇想曲を参照のこと。

外部リンク


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