怒りの日とは? わかりやすく解説

いかり‐の‐ひ【怒りの日】

読み方:いかりのひ

《(ラテン)Dies Irae

最後の審判の日のこと。

カトリック教会で、レクイエム死者のためのミサ)に用いられ続唱最後の審判の日に向けた祈りで、「怒りの日」の句で始まる。


怒りの日

作者朝松健

収載図書邪神帝国
出版社早川書房
刊行年月1999.8
シリーズ名ハヤカワ文庫JA


怒りの日

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/13 15:17 UTC 版)

怒りの日
楽曲
ハンス・メムリンク作の祭壇画(中央部のみ) 最後の審判 (ハンス・メムリンク)英語版(1467年 - 1471年)

怒りの日(いかりのひ、ディエス・イレDies irae)とは終末思想の一つで、キリスト教終末論において世界の終末、キリストが過去を含めたすべての人間を地上に復活させ、その生前の行いを審判し、の主催する天国に住まわせ、永遠の命を授けられる者と地獄で永劫の責め苦を加えられる者に選別するとの教義思想。または、それが行われる日。その様子については、新約最後の書、幻視ヨハネによる『ヨハネの黙示録』(アポカリプス)に詳述されている。また、マタイによる福音書25章、第二テサロニケ1章、旧約のイザヤ63章にも記されている。ただし、ミサで用いられるラテン語の詞はトッマーソ・ダ・チェラーノ英語版の作詞と考えられ、聖書から直接とられた聖句ではない。

典礼

現在、レクイエムミサセクエンツィアでは用いられるが、ローマ・ミサ典礼書英語版1970年)では使われない。

「怒りの日」には、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトジュゼッペ・ヴェルディなどの有名な曲があり、その重要な役割はよく知られているが、第二バチカン公会議以降は通常のミサでは使われなくなった。ただし、レクイエムやアドベント聖歌では現在も使われる。また、ラテン語を典礼に使う伝統カトリックはこれを用いている。

歌詞

  ラテン語(原文)[1] 日本語訳[2] イエズス会によるの公式漢文翻訳(1670)[3]
01 Dies iræ, dies illa
Solvet sæclum in favilla,
Teste David cum Sibylla.
怒りの日なる彼の日は、世界を灰に帰すべし、
ダヴィドとシビルとの告げし如く。
世界燬日。哀哉凶哉。
達未徳王。童女共証。
02 Quantus tremor est futurus,
Quando Judex est venturus,
Cuncta stricte discussurus!
人々の震慴驚怖(おそれおののき)は幾何ぞや、
何事をも厳しく糺し給はむとて、
判官(さばきぬし)の来り給う時。
審判生死。下降之時。
詳詢徳慝。顫慄至哉。
03 Tuba mirum spargens sonum,
Per sepulchra regionum,
Coget omnes ante thronum.
奇しきラッパの響き、奇なる箛笛(ラッパ)の響、
各地の墓に鳴り渡るや、
人々皆主の寳坐(みくら)の下に集められん。
吹号厳響。四方八極。
墓中蒼生。座前雲集。
04 Mors stupebit et natura,
Cum resurget creatura,
Judicanti responsura.
死と生とは驚愕(おどろ)かん、
人類(ひとびと)のかく蘇りて、
判官(さばきぬし)に答えんとするとき。
霊復原身。答主判訊。
死也性也。不勝驚駭。
05 Liber scriptus proferetur,
In quo totum continetur,
Unde mundus judicetur.
かき記るされたる書物持ち出されん、
其中(そのうち)に凡て世の審かるべき事あり。
将啓巨冊。一一詳録。
生霊善悪。各被判断。
06 Judex ergo cum sedebit,
Quidquid latet apparebit:
Nil inultum remanebit.
判官(さばきぬし)の坐し給うや、
隠匿(かく)れたるもの悉く顕(あらわ)れ、
一(いつ)として報(むくい)なきものなからむ。
審判者主。威厳座位。
諸慝顕然。無一逃鑑。
07 Quid sum miser tunc dicturus?
Quem patronum rogaturus,
Cum vix justus sit securus?
嗚呼、爾時(そのとき)我は如何なる不幸と謂わむ、
誰をたよりて保護者と頼まむ、
義人すら尚心安らかざれば。
孑然一人。夫復何言。
義人不穏。求誰保主。
08 Rex tremendæ majestatis,
Qui salvandos salvas gratis,
Salva me, fons pietatis.
恐るべき御稜威の王、かしこき稜威(みいづ)の大王、
救わるるものを御恵(めぐみ)によりて、
救い給うが故に、御慈悲をもて我を救い給え。
皇皇巍巍。仁慈之泉。
恵然福人。伏乞救吾。
09 Recordare, Jesu pie,
Quod sum causa tuæ viæ:
Ne me perdas illa die.
思い出したまえ、記憶(おぼ)え給え、
慈悲深きイエズスよ、
世に降誕(くだ)り給えるは我が為めなるを、
かの日に於ても我を亡し給わざれ。
慈主耶穌。憶念吾為。
尓路之故。末日勿亡。
10 Quærens me, sedisti lassus:
Redemisti Crucem passus:
Tantus labor non sit cassus.
主は我を索(もと)めんとて疲労(つか)れて坐し給い、
十字架の苦(くるしみ)を受て贖い給えば、
かかる労苦を無益(むだ)ならざらしめ給え。
昔尓覓吾。疲倦歇息。
釘死救贖。勿辜尓楚。
11 Juste Judex ultionis,
Donum fac remissionis,
Ante diem rationis.
報(むくい)を与え給う最(いと)も正しき判官(さばきぬし)、
赦宥(ゆるし)を賜われかし、
審判(さばき)の日に先(さきだ)ちて。
至公之主。福善禍悪。
審判之先。乞賜罪赦。
12 Ingemisco, tamquam reus:
Culpa rubet vultus meus:
Supplicanti parce, Deus.
我は罪人(つみびと)にて嘆き、
我過失(わがあやまち)を赤面して、祈り奉る、
嗚呼天主我を赦免(ゆる)し給え。
負罪罪人。呻呼龥天。
満面羞慚。伏祈赦吾。
13 Qui Mariam absolvisti,
Et latronem exaudisti,
Mihi quoque spem dedisti.
主はマダレナの罪を赦し、
又盗賊の願(ねがい)をも聴容れ給いしにより、
我にも希望(のぞみ)を抱かしめ給えり。
昔瑪利亜。蒙尓大赦。
盗賊亦然。賜予有望。
14 Preces meæ non sunt dignæ;
Sed tu bonus fac benigne,
Ne perenni cremer igne.
我祈祷(わがいのり)は聴きいれらるるに足らざれども、
主は慈悲深くましませば、
我を熄(き)えざる火に焼けざらしめ給え。
予祈匪虔。望尓垂憐。
勿令予霊。曁身永燬。
15 Inter oves locum præsta.
Et ab hædis me sequestra,
Statuens in parte dextra.
主よ我を主の左側なる山羊よりはなれしめ、
右側なる羊の群に加い給え。
望尓使予。入綿羊桟。
別於山羊。置之右側。
16 Confutatis maledictis,
Flammis acribus addictis,
Voca me cum benedictis.
呪われたもの、呪咀(のろ)わるる者を退け、
はげしき火刑に処(さだ)め給わんとき、
祝福(めぐ)まるる者とともに我を招き給え。
已遂禍種。永入猛火。
使予偕善。永享真福。
17 Oro supplex et acclinis,
Cor contritum quasi cinis,
Gere curam mei finis.
御前(みまえ)に俯伏(ひれふ)し
灰の如く碎(くだ)かれたる心をもて
偏(ひとえ)に希(こいねが)い奉る、
嗚呼我終遠(わがおわり)を計い給え。
予身伏地。心痛悚懼。
祈尓俯憐。永日護予。
18 Lacrimosa dies illa,
Qua resurget ex favilla,
Judicandus homo reus.
Huic ergo parce, Deus:
涙の日、悲嘆の日なるかな、人土より蘇りて。
犯せし罪を審(さばか)るべければ、
嗚呼天主よ之(これ)を赦し給え。
火中蒼生。将復原体。
聴主審判。凶哉彼日。
19 Pie Jesu Domine,
Dona eis requiem. Amen.
慈悲深き主イエズスよ、
彼等に安楽を与え給え。アメン、
祈望天主。赦衆夙犯。
耶穌惻憫。息止安所。

旋律

The Dies Irae appears as this melody in musical notation.

グレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律は、修道士セラノのトーマス(1250年没)によって選定され、レクイエムの怒りの日で歌われていた。

クラシック音楽での使用

ベルリオーズの「幻想交響曲」(1830年)の第5楽章、リストの「死の舞踏」(1849年)に引用されてから「死」をあらわすものとしてクラシック音楽の作曲家によってしばしば引用されるようになった。他に「怒りの日」の旋律を用いた音楽の例として下記のものが挙げられる。

近年の世俗使用

格闘ゲーム『餓狼伝説』シリーズでは、ヴォルフガング・クラウザーのテーマ曲としてモーツァルトレクイエムにおけるそれが使われている[5]

近年ではベルイマンの映画『第七の封印』において、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が中世の壁画をもとに再現された死の行進のシーンで使われている。また、映画『シャイニング』冒頭にはグレゴリオ聖歌の「怒りの日」の旋律が主題に使われているベルリオーズ幻想交響曲の第5楽章が、『バトル・ロワイアル』のCM、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の予告編などではヴェルディレクイエムのそれが使われた。ブライアン・デ・パルマの『愛のメモリー』では、主人公のマイケル・コートランドがサンドラ・ポルティナーリと、彼女の母マリアの墓参りをする時に使われている。

ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』では、天野正道の新曲が用いられた。CDインデックスでは「歌詞・クレゴリオ聖歌 怒りの火-Dies Irae-より」と表記された。

Dies irae -Also sprach Zarathustra-』シリーズとして、「Dies irae」をこのままタイトルに使用しているアドベンチャーゲームも存在している。また、当ゲームのアニメ版でもモーツァルト・ヴェルディのレクイエムで共に使用されている。

比較宗教学の考察

同様の思想はゾロアスター教をはじめユダヤ教イスラム教などにも見られ、多神教世界観から二神教、一神教的世界観へ変遷していく中で唯一神の絶対正当性を保証するために考え出されたのではないかとされている。

脚注

  1. ^ https://la.wikisource.org/wiki/The_seven_great_hymns_of_the_mediaeval_church/Dies_Ir%C3%A6/Tommaso
  2. ^ https://w.atwiki.jp/oper/pages/2484.html
  3. ^ https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/btv1b90061045/f349.item.r=btv1b90061045
  4. ^ Sofia Moshevich (2015). Shostakovich's Music for Piano Solo: Interpretation and Performance. Indiana University Press. pp. 35,36 
  5. ^ 餓狼伝説2オリジナルサウンドトラック ポニーキャニオン

関連項目

外部リンク


怒りの日

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/06 23:34 UTC 版)

エジプト革命 (2011年)」の記事における「怒りの日」解説

野党勢力25日大規模デモ直後より、金曜礼拝には人が多く集まることを狙い礼拝行われる1月28日にもデモ実施することを呼びかけIAEA前事局長であり民主化勢力指導的立場にあったモハメド・エルバラダイ前日エジプト帰国しデモ参加する意向表明した。また国内比較穏健とされるイスラーム主義組織であり、国内最大野党勢力でもあるムスリム同胞団もこのデモへの支持表明こうした動き当局警戒強化行い、特にカイロ市各地には軍の特殊部隊配置された。 28日インターネット携帯電話携帯メール遮断された。これは政府サービス停止命じたとされている。 28日金曜礼拝が行われたが、その際には靴を履いたままの者が目立った。靴を履いたままでの礼拝緊急時にのみ許されるという。礼拝終了直後からムバーラク退陣求める声があちこち叫ばれ各地数千から数万人が集まりデモ発生した。この行動は後に「怒り金曜日」と名付けられた。事態弾圧のために軍が出動したが、その一方で鎮圧する側の警官隊中には命令拒否したり、制服脱いで反政府デモ参加する者も現れたり、民衆握手を交わす兵士の姿も見られた。デモ支持表明していたムスリム同胞団幹部少なくとも20人が相次いで逮捕された。デモにはサッカー応援団加わり警官隊衝突したムバーラクカイロアレクサンドリアスエズにおいて午後6時から翌日午前7時までの間、夜間外出禁止令出し直後対象全土広げられた。だがデモ隊はこれを無視警察署警察車両放火され、ムバーラクの「独裁象徴とされるカイロ国民民主党本部ビルデモ隊放火し炎上雄叫び上げ参加者現れた。カイロ上空には軍のヘリコプター旋回し機関銃搭載した軍の装甲車市街十数展開するなど戦場様相呈し無政府状態となった市内では略奪行為相次いだ。 この日のデモは、これまでの中で最大規模のものに発展し、この日だけで死者38人、負傷者は1,000人を数えたこうした中で与党内部からも、大統領に対して大胆な改革を行うよう求める声も出始めた。

※この「怒りの日」の解説は、「エジプト革命 (2011年)」の解説の一部です。
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