武器 歴史

武器

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 05:07 UTC 版)

歴史

武器の発展に影響を与える戦術や技術の変遷等、歴史的背景については軍事史も併せて参照のこと。

石器・自然物

中石器時代の石器

武器の歴史は古く、人類の祖先が二足歩行をはじめた猿人時代から武器を使用していた。木、骨、石などを手に握り狩猟に用いたと考えられているが、それらは遺物として残りにくく、出土してもそれと明確に判別できないため推測の範囲にとどまっている。旧石器時代には、石斧、握斧やナイフ、手斧、棍棒中石器時代には弓矢が発明された。ヘビ毒やアルカロイド等の毒物を塗布しての利用も行われた。石、木やつたなどの自然物、動物の革や骨角やスジを用いて武器が作成され、加工や組み合わせの工夫もされたが、武器としては脆弱で耐久性に難があるため、投射するか、罠で捕まえた動物に対して使用される程度であったと考えられている。

金属精錬技術が伝わらなかった地域や、鉱石に恵まれなかった地域ではその後も自然物を使った武器が使われ続けた。代表的な地域としてオーストラリアや太平洋諸国、アメリカ大陸があげられる。

自然物の中でも、木は調達が簡単で安価かつ軽量と性質に長所が多いため、金属が発達しても広く使われ続けている。

新石器時代(紀元前8500年頃)に原始的な定住農業が始まると共に戦争の規模が拡大し、武器も対人用途を重視するようになっていった。

日本では、旧石器時代から狩猟用や生活用具としての石器がみられ、縄文時代には狩猟用や生活道具としての石器や弓矢が発明されている。とくに弥生時代中期になると畿内に突如として重さも重く、深く突き刺さりやすい形の石器(石鏃)が大量につくられた。石槍も発達した。この事情から弓矢が狩猟用から武器に変質したと考えられる。また、金属器では銅鏃・鉄鏃、銅剣・銅矛・銅戈(どうか)、鉄剣・鉄戈などがある。しかし、青銅製や鉄の武器は実用よりも祭祀用に使われることが多く、弓矢が武器の中心を占めていたのではないかと推測できる。

金属製武器の登場

紀元前4世紀頃の古代ギリシャで製造された製の

紀元前6000年 - 5000年ごろからメソポタミア文明で銅の冶金技術が発達するが、材質として柔らかすぎるため儀式用の短剣などを造るにとどまっていた。紀元前3500年頃にスズとの合金青銅が発見されると、銅に比べ十分な硬さをもち、研磨や鋳造・圧延等の加工が可能であったため、大型の金属製刃をもつ戦斧などが登場した。本格的な鉄器・鉄製武器の登場は、紀元前1500年頃にヒッタイト文明が精錬技術を得たのに発する。それまでも隕石に含まれる鉄(隕鉄)はあったものの、ごく少量の利用にとどまっていた。青銅と比べ含有鉱石が多く安価で大量に生産できたので、ヒッタイト文明が周囲諸国を滅ぼした大きな原動力となった。紀元前1200年頃にヒッタイト文明が滅亡すると、秘匿されていた製鉄技術は世界へ広がっていった。その後、鋼や刃を強化する数々の技術(焼入れ、焼き直しなど)が発見され、鉄製武器は武器の主役となった。

ただし、融点が低く自然発見がたやすかった銅は、生産性でこそ鉄に劣っていたものの、初期の鋳鉄と比べれば強度に差は認められなかった。春秋戦国時代に中国を統一したは、成熟した技術で造られた青銅製の武器を使用して、鉄製武器を使用する周辺国を打ち破っている。その剣の切れ味は鉄と同程度であったと伝えられている。また、青銅は戦場の主流から退いたものの、精錬の仕方により白銀色や黄金色の光沢を持つため、その後も儀式用や装飾性の強い武器に用いられた。地域によっては、青銅と鉄の伝播時期が重なり、青銅器時代が短期間で終わった文明や、青銅器時代そのものが存在しない地域もあった。

鉄の登場以降、戦術の変遷や流行、地域性にも左右されるが、防具の重装化とそれに対する武器の大型化が進んでいった。武器の技術的な伝播と発展に大きな影響を与えた国家の興亡では、前述のヒッタイト文明の製鉄技術、十字軍によるイスラーム諸国とカトリック諸国の戦争や、モンゴル帝国による東西の技術交流があげられる。

銃の登場

元寇モンゴル帝国が使用したとされる火器「てつはう」

13世紀後半の中国で誕生したが、15世紀前半のアナトリアで改良され、武器のあり方を大きく変化させた。中国で使用されていた火器が、13世紀のモンゴル帝国の遠征と交易によって中東へと伝播して、アナトリアで銃が発展したと考えられている。

銃は従来の武器に比べ、格段に優れた点と欠点をもっていた。重装化された鎧を貫く高い破壊力を有した。一方、装弾の手間による射撃間隔の長さ、水気に弱いといった特徴がある。近接攻撃力と防御力および突破力に欠ける弱点があった。

火器の発展に伴い近接武器も大型の近接武器は姿を消し、軽い刀剣類が主流となる。銃の長所を伸ばし弱点を補う改良と運用の研究が行われ、軍隊の中心武器へと比重を高めていくことになる。初期では銃兵による射撃、射撃の間隙(かんげき)を突く騎兵、長槍を装備した槍兵による防御を組み合わせて運用されたが、銃剣の発明により銃兵が白兵戦に対応可能となったため槍兵は姿を消した。17世紀に片手で操作できる本格的な小型拳銃(ピストル)が誕生すると、馬上射撃用として普及し抜剣突撃戦術と併せて騎兵の有用性を高めた。

その後も、弾薬自体を複数備えるリボルバーや連装化、装填する弾薬と火薬を梱包する薬莢と実包の登場。弾道を安定させるライフリング、先込めに比べ装填が楽な後装式など、次々に改良が行われた。

15世紀末に始まるヨーロッパ人による植民地経営にも携行され、殺害や戦闘に用いられた。特に金属製の剣や銃は金属技術を持たない文明を圧倒し、文明の滅亡と大規模な殺戮を生んだ。

近代

第一次世界大戦ドイツ軍が使用したMG08 水冷式機関銃
第一次世界大戦
1914年から始まった第一次世界大戦は、据え付け式の大型銃器や、火砲、兵器が次々と登場した世界規模の大戦争である。この時の先進国の軍隊の多くはボルトアクション方式の後装式ライフル銃を標準装備としていた。自動拳銃の黎明期にあたり、連射が可能な銃も登場しはじめた。機関銃の弾幕により騎兵の突撃はほぼ無力化された。歩兵の突撃も困難であったため要塞戦、塹壕戦が発生した。塹壕突破には、迫撃砲クロスボウによる爆発物投擲、爆薬戦車のような兵器、化学兵器(毒ガス)の散布など様々な武器兵器が使用され、塹壕の中ではナイフや即席の棍棒、スコップを使用する格闘戦がしばしば発生した。特に主戦場となったヨーロッパ地域では総力戦の様相を呈した。武器の精密化がすすんで構造的な遊びが少なくなり、他の弾薬が使用出来なくなったことや、連射性能の向上により弾薬消費量が増大したことから、深刻な弾薬不足が生じた。中でも弾丸はあるのに規格が合わず使えない状況から、弾薬規格を共通化する概念が生まれた。
ごく初期の航空戦は飛行機が偵察任務を目的とし武装が施されていなかったため、パイロットが銃で撃ちレンガや爆弾を投擲する攻撃が行われた。
第二次世界大戦
第二次世界大戦中期からは、機械によって装填を行う自動式小銃も本格的に用いられはじめる。特にドイツでは歩兵用としてバランスのとれたアサルトライフルの基本概念が確立されたが、実戦配備が1942年後半と遅く従来のボルトアクション式ライフルを代替することはなかった。地上での戦闘は飛行機による航空支援のもと、戦車・火砲と歩兵の随伴が基本となったが、戦場での中核を占める兵器に対抗する武器も開発され、バズーカを始めとする無反動砲や、パンツァーファウストのような携帯式グレネードランチャーが対戦車武器として使用された。
第一次世界大戦を先訓として弾薬規格を絞り込む動きはあったものの、銃のテクノロジー自体が模索状態であり様々な新型銃が生産された。政治的理由も重なり、前大戦と同様に弾の規格が合わない状況が至る所で発生した。

第二次大戦後

5.56x45mm NATO弾NATO加盟国の各国で標準化されており、多くの小火器で使用できる。

第二次大戦後、共産主義陣営(東側)と資本主義陣営(西側)の対立(冷戦)が生じた。これにより武器の技術や規格は大まかに東側(共産主義)と西側(資本主義)に分かれることとなった。この東西両陣営と、さらに異なったイデオロギーをもつイスラム国家は、植民地の民族独立運動や第三世界の国家運営に介入し、武器の供与などを行ったため、紛争を拡大させ慢性的な紛争地域やゲリラやテロを生む土壌を作った。

大戦後に活発化した民族独立運動では、第二次世界大戦により現地に残されていた武器や兵器、対立勢力から供与された武器が闘争に使用された。

第二次世界大戦中に発明された武器の研究が進み、アサルトライフルは歩兵の標準装備として各国で採用された。同大戦中期 - 末期に開発されたロケット・ミサイル技術が著しい発展をみせ、個人携行できる軽量火砲もまた改良された。対空、対地、対戦車など各種のランチャーは、第四次中東戦争においては多数の戦車を撃破した。これらは個人装備としては割高だが、兵器に対してはコスト面で圧倒的に有利なため、戦車不要論や戦車の重装甲化の大きな要因となった。弾薬は、9x19mmパラベラム弾やNATO弾のように陣営毎に共通化が押し進められたが、輸出・供与先の状況によっては相手側陣営の弾薬を使用できるモデルも作成された。素材の研究が進み、鉄に変わる新たなる材質としてアルミニウム合金ステンレス鋼のような合金やポリカーボネートカーボンなども利用されるようになった。

アサルトライフルの口径では7.5mm前後の大口径と5.5mm前後の小口径があり、有用性について意見が分かれていたが、ベトナム戦争においてアメリカが使用した大口径銃は、取り回しが悪く面制圧能力の低さを露呈した。代わりに用いた小口径銃は取り回しのよさ、面制圧能力に加え、大口径のアドバンテージと見られていた殺傷力でもそれほどの差をみせなかったため、小口径が主流となっていった。

狙撃銃は、工作技術の上昇により自動装填でもかなりの精度を持たせることができるようになった。そのため、精度ではやや劣るものの、連射力を併せ持たせた小銃からの改造銃や自動装填方式をとる狙撃銃も登場した。ただし精密な製造ゆえに高価なことや、やはり精密さで劣ることもあり、ボルトアクション式と並列して運用されている。

戦場以外では組織的犯行による、ハイジャック事件や凶悪事件への対応などから、警察や特殊部隊、諜報機関が使用する武器の需要が高まった。閉所での扱いに優れる短機関銃や、小型の拳銃が開発され、携行性の良さから、戦車兵や航空兵が持つ補助武器としても運用されている。

警察用の標準拳銃では弾詰まりに強く信頼性の高いリボルバーが採用されていたが、自動拳銃の信頼性が増したため装弾数の多い自動拳銃へ切り替えた国が多い。

先進国では人道意識の高まりもあり、「非人道的兵器」、つまり大量破壊や、無差別攻撃を行うもの、戦後復興を著しく阻害する武器等に制限が課せられるケースが増えた。そのため、対象を絞りピンポイントで破壊・無力化する「より人道的な武器」へ進化する流れも生まれた。特に対人地雷は、無計画な使用で民間人に被害を与えることから、無線送信による所在確認や、タイマーによる動作停止が組み込まれた安全に留意したものが登場している。








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