空流部屋
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かつては所属力士が20人いる比較的規模の大きい部屋だったが、空流旭の妻の没後経営が悪化。鯉太郎が入門したころには、所属力士は4名のみ、自前の洗濯機もなく、建物の半分を壊して駐車場として貸し出す貧乏弱小部屋となっていた。しかし仁王(阿形)らの活躍によって徐々に勢いを盛り返し、親方の代替わりのころには三役力士となった白水、幕内に上がった鯉太郎と松明(常松)3名の関取を擁して人気も上々、弟子が増えて経営も軌道に乗り、部屋をビル仕立てに改築している。 鮫島 鯉太郎(さめじま こいたろう) 主人公。本名も同じ。山形県出身。身長は176センチと力士としては比較的小柄かつ痩せ型。髪型は当初は金髪だったが入門と同時に丸刈りにされ、序の口時は黒髪の坊主。序二段にかけて徐々に髪が伸びて幕下時にはオールバックとなり、王虎との幕下優勝決定戦後に髷を結った。 人品に問題はありながら、その圧倒的実力のため横綱も近いと囁かれた名大関・火竜の息子。荒くれながら土俵上で誰よりも輝いて見えさた父を心から尊敬していたが、その憧れの父はある夜一般人への暴行事件を起こし、あっけなく除名処分されてしまう。その後酒に溺れ、かつてのファンにも軽蔑に満ちた視線を向けられるほど堕落した父の姿を見て激怒、もはや『偽物』と化した父に引導を渡すためぶちかまし勝負を挑むが幼い少年の身では敵うはずもなく敗北、額に大きな傷を作る。火竜の死後斎藤家に引き取られてからは、庭の樹にひたすらぶちかましを行う独自の稽古を日課としていたため身体能力は高い。巡業のイベントで学生横綱、猛虎を吹き飛ばした際、空流親方に目を付けられその場でスカウトされる。 普段から負けず嫌いで直情的だが、幼少期の経験から凄まじい怒りの感情を内に秘めており、亡き父や親しい人間が貶められると我を忘れて怒り狂うなど激発することも多かった。しかし空流部屋の面々と接するうちに様々なことを学び落ち着きをみせるようになってゆく。野次の飛び交う場内を美しい柏手一つで静まらせるなど、父がついに最期まで会得することのできなかった品格が既に備わり始めているような描写さえある。 父火竜の角界追放に前後したマスコミ報道の変貌ぶりを知っているため、マスコミそのものと父を角界から追放するよう理事の中でもひときわ強く働きかけた(実際は、そうせざるを得ないように圧力をかけられていた)虎城親方を不信・敵視していた。一度悩むと思い詰めてしまう癖があり、稽古もオーバーワークになりがちなため兄弟子たちから心配されている。元不良であるため言葉遣いはなっていないが良くも悪くも素直な性格で、先輩や親方のアドバイスには真摯に耳を傾け実行するため部屋内では新入りとして可愛がられていた。 相撲の型は押し、四つ相撲。幼少期に斉藤家に引き取られて以来毎日のように鍛え上げたぶちかましと張り手によっていつもバチバチに相手へとぶつかっていく。しかし体重の影響を受ける押し相撲を得意としながら太りにくいという、スタイルと矛盾した体質に悩み、吐くまで大量に食べて無理に身体を作ろうとしたことや、不眠不休のオーバーワークでスタイルを崩してしまった(この件は後に吽形に「相撲取りの身体を作るトレーニングをしなければダメだ」と苦言を呈された)ことがある。その強さや性格から教習所では恐れられながらも一目置かれる存在であったが、当初は組んだ際の脆さをつけこまれると弱いという弱点もあった。しかし部屋の先輩力士の吽形との特訓で投げ技(下手投げ)を身に付け、実戦を通して技を磨き上げていく。BURSTからは下手投げの他、吽形を彷彿とさせる技巧を見せており「空流で吽形の血がもっとも濃い」と仁王から評されている。さらに「最後の十五日」では、大山道との取り組みにおいて自然と身に着けた絶妙な引き技を披露している。 「BURST」では幕下に昇進し、常松・大吉の二人の新弟子の教育係を任され、悩みながらも二人の指導に励んでいる。五月場所では同期に遅れながらも一気に幕下まで出世してきた王虎との因縁が再び注目され、王虎と常松の挑発に乗せられる形で「王虎に負けたら廃業」と宣言。王虎との取組では下手投げと小手投げの打ち合いの末に敗れ、言葉通りに廃業するべきか苦悩していたが椿の叱咤によって立ち直り宣言を撤回、いつも通りに場所へと臨んだ。その後偶然に呼び戻しのヒントを掴み、現役時代に呼び戻しを得意としていた空流親方の指導によりぶちかまし、下手投げに次ぐ新たな得意技として会得した。千秋楽には王虎らと共に優勝決定戦に進出、岩の藤と闘海丸を破って王虎との再戦に臨み、連戦による疲労をものともせず互角の勝負を展開。精神的に大きく成長した王虎を取り直しの一番の末に破り幕下優勝を飾った。 「最後の十五日」では幕内へと昇進。体格をものともせず真正面からぶつかり合う取り口などから、悪役扱いされていた過去とは異なり押しも押されもせぬ人気力士となっており、白水・松明と共に「空流三人衆」と称されていた。その実力も皆から一目置かれるほどのものとなり、幕内力士として異色と言えるほど小柄な体格ながらそのぶちかましの威力は大関を怯ませるほどに成長している。人間性も入門時と比べて別人のように成熟し、感情を荒らげることなく周囲の面倒をよく見てファンサービスも怠らなくなった。化粧廻しは火竜のものを修繕せずそのまま使用している。一方、幕内力士として非常に小柄にも関わらずどんな相手とも真正面からぶつかり合うために怪我が多く、出場した取組の勝率は非常に高いものの場所後半から休場することが珍しくなく、番付は前頭下位に定着、自らを「相撲に選ばれていない」と評していた。 九月場所では親友の飛天翔と同じく慢性外傷性脳症と思しき症状も現れていたが、日を追うごとに力士として超人的な成長を見せ、最終的には満身創痍ながら全勝で十三日目を終わり、十四日目に横綱・泡影との取組が決定した場面で物語は終了した。 仁王 剛平(におう ごうへい)/ 阿形 剛平(あぎょう ごうへい) 空流部屋の部屋頭。本名・高杉(たかすぎ)剛平、東京都出身、20歳。幕下までは阿形、関取となって以降は仁王の四股名を使っている。 子供のころから有り余る力を持ち、そのためにどんなスポーツをやっても周囲がついていけず孤立、その噂を聞いた空流親方に大相撲にスカウトされた。初めて部屋を訪れた時に吽形と出会い、互いの気性の荒さからいきなり激しい殴り合いになったが、周囲に誰も理解者がいなかった互いの境遇を知り、その後は同期・同い年の親友同士になった。 豪放・粗野な性格で口が悪く、弟弟子を「チンコ虫」や「ウンコチンチン」呼ばわりするなど下品な面もあるが、面倒見はよく稽古も熱心で皆に慕われている。四つ相撲を得意とし、日本人離れした怪力で体格で勝る相手でも真正面からねじ伏せる豪快な相撲を見せる一方で、寄り切りの時に勇み足で白星をこぼすことも多い。何事に対してもストイックな吽形に対して、相撲を心から楽しんでいる様子が見られる。 鯉太郎と白水が序二段優勝戦を争った九月場所で、幕下全勝優勝をかけて吽形と対決。鯉太郎・白水戦を超える壮絶なぶつかり合いの末に、吽形の会心の投げを力づくで破って勝利した。その後十両昇格を機に、引退する吽形も共に背負うという意味も込め、四股名を「阿形」から「仁王」へと改めた。 「BURST」ではそれまでと比べてモミアゲが伸び、五月場所の前には十両から幕内への昇格が決定していた。「最後の十五日」の回想ではまだムラがあり十両と幕内を行ったり来たりする実力だったが、空流親方に恩返しをしようと奮起し、やがて2年で関脇に昇進。綱取りを狙う怪力の外国人大関・天鳳を真正面から力でねじ伏せ、大関昇進が目前に迫るだけでなく将来の横綱とまで期待されるようになっていた。しかし親方が突然の事故で亡くなり、空流部屋を残すために部屋を継ぐ資格のある人間が自分以外にいなかったことから、親方の墓前で自ら髷を落とし引退、惜しまれながら空流の名跡を継いだ。全盛期に引退したためか腕力は全く衰えておらず、引退して3年が経過してもなお空流部屋の中では最も強いという。今も衰えてない腕力を見た常松からは「今からでも綱取り行けるんじゃないですかね」と言われている。 親方となってからは口下手ですぐ手が出てしまう性格が災いして弟子たちとの意思疎通に苦しむようになり、アナウンサーである真琴に指南を受けるようになる。九月場所九日目の夜、真琴と二人きりとなった際にプロポーズし、ゆくゆくはという形で了解を得た。現役時代はエロ本をこよなく愛し、取組前もモチベーション高めるために読んでいたが、親方となってからは弟子の指導のため自己啓発本などを読むようになる。 吽形 亘孝(うんぎょう のぶたか) 空流部屋所属の力士。本名・吉田(よしだ)亘孝。 岩手県出身、20歳。 元々は進学校に通う優等生だったが、レールの上を走るような生き方に疑問を覚え、暴力事件を起こして誰にも引き留められることなく高校を退学、勘当同然に家を飛び出し、阿形と同期に空流部屋に入門した。父親は岩手県議会議員。目が細く穏やかな外見で普段の物腰も丁寧だが、阿形に負けず劣らず気性が激しい。阿形を恐れる力士からは、その穏やかな表情から「仏サマ」「大仏」などと呼ばれるが取組後に、認識を正される。阿形も初対面のとき、吽形を「大仏」と呼んでいる。 親友である阿形と同じく力と才能に恵まれ、ストイックに稽古に臨む姿勢で実力も伸び、阿形よりも早く幕下まで出世していたが、大鵠との一番で膝を壊されて長期休場し、鯉太郎入門時には三段目となっていた。その後名古屋場所で幕下に返り咲き、因縁の大鵠を倒した後幕下優勝を飾り、次の九月場所では十両への昇進も決定的にしていた。しかし大鵠に壊された膝が限界を迎え、全勝同士で臨んだ阿形との壮絶な優勝決定戦に敗れた後、十両昇進を待たず現役を引退、帰郷した。現役時代の最高位は東幕下四枚目。 本来は四つ相撲を得意としていたが、休場明けからしばらくは膝への負担を考慮して押し相撲に徹していた。力押しの多い阿形に対して様々な技を駆使して攻めることが多く、投げを覚えた後の鯉太郎の成長に大きな影響を及ぼしている。また自分で自分を追い込みやすい性格が鯉太郎と似ているためしばしば親身なアドバイスを送り、時に厳しい言葉も投げかけていた。酒癖が悪く、酔って居酒屋を半壊させた経歴を持つ。 「BURST」には登場しない。「最後の十五日」では親方の葬儀に参列した後、仁王と二人で親方の墓に参り、空流部屋を継ぐべく墓前で髷を切る仁王の姿を見届けた。 川口 義則(かわぐち よしのり) 空流部屋所属の力士。鯉太郎、白水の兄弟子。鯉太郎と白水、椿からは「川さん」、阿形と吽形からは「川ちゃん」と呼ばれている。足技を得意とする。 全作通して一言も喋らず全く表情が変化せず、何を考えているのか他人には全く分からない。川口義則という名前も仮名とされていて、カニが好物という以外その正体は一切不明。登場する時は常にカメラ目線、目を開けたまま眠るなど奇行が目立つが、他人には神々しい奇妙なオーラを感じさせる。取組では相手不意を衝くような戦法で白星を挙げているが、そのように勝つと見せかけてあっさり負けることも多い。わずかに生えてきた白水の髪を夜な夜な剃っている。 番付は一貫して三段目。「最後の十五日」では主に白水の付き人を努めており、横綱戦を前にガチガチな白水を独特の術式でその緊張を和らげた。 白水 英樹(しらみず ひでき) 空流部屋所属の力士。本名同じ。東京都出身、18歳。190センチという長身で体格に恵まれている。兄弟子である川口からスカウトされ入門。体格とリーチを生かした突き押し相撲を得意とし、懐が深く投げにも強い。 根は真面目な性格で兄弟子を慕ってはいるが、一言多い性格のお調子者でいつも阿形に些細な悪態をついては小突かれている。鯉太郎の入門時には教育係をしていた。序二段時代に髷を結えるようになったが、その祝いの席で酔った吽形にバリカンで頭を刈られ、それを誤魔化すために月代を剃りあげることになってしまい、(川口に夜な夜な剃られ、全く生えてこないので)以後髪型はそのままとなっている。 鯉太郎の入門当初は、真面目すぎる性分を気に掛け時に叱咤激励してやるなど良き兄弟子となる一方で、実力が思うように伸びず、急成長する鯉太郎のことを常に意識し、九月場所で鯉太郎に番付を抜かれた時には部屋に籠って悔し涙を流していた。やがて阿形と吽形の指導で、ゴリラという掛け声から繰り出す強烈な「ゴリラ張り手」を身に着け、鯉太郎と同じく序二段として臨んだ九月場所では大学相撲の猛者だった田上を下して自信をつけた。しかしその後の天雷戦で圧力に恐怖し変化したことで再び自信を喪失。鯉太郎に厳しく非難されたこともあって廃業まで考えるようになったが、吽形の膝が限界を迎えていることを知って奮起。全勝同士で迎えた鯉太郎との序二段優勝戦を激しいぶつかり合いの末に鯉太郎の会心の下手投げを破って制し、鯉太郎と和解すると同時に力士としてそれまで以上に大きな成長を遂げた。 「BURST」では鯉太郎と同じく幕下に昇進。190cmあった身長は更に伸びたらしく、ナマズのような口髭を生やし「関取に一番近い男」を自称、実際に元十両を張り手一発で沈めるなど、鯉太郎からも「まだ幕下にいるのがおかしいんだよ、あの人は」とまで言われていた。王虎との全勝対決では、小手投げで腕を折られながらも放った強烈な張り手を受け意識が朦朧とした王虎に髷を掴まれ、王虎の反則負けという形ながら勝利を収め王虎の連勝記録をストップさせた。この取組での負傷により以降は休場、入院して手術に臨んだが肘の靱帯には損傷がなかったため力士生命に影響はなかった。その際、折れた骨はより丈夫になって再生すると医者から教えられ、大喜びするような図太さも持っている。 「最後の十五日」では仁王の現役時代から入幕しており、劇中では西小結に昇進している。月代はそのままで口髭だけでなく顎鬚も生やし、ファンからは「殿」と呼ばれている。部屋頭かつ小結という立場でありながら元仁王の空流親方からは相変わらず弄られ続けている。 九月場所八日目に横綱・泡影に挑むも会心の張りを絶妙のタイミングで受け流され敗戦、直後に親方が十文字に批難されているのを聞いてしまい、翌日恥をかかせまいと稽古に励んでいたところへ、口下手なアドバイスを受けたせいで親方と感情的に衝突してしまう。頭に血が上ったまま九日目の大関・天鳳との取組に臨み、親方への当てつけから強烈な一撃にこだわり窮地に陥る。しかし窮地に陥って初めて稽古でのアドバイスの真意を悟り、「コゴリラ」と名付けた細かい張り手の連打でピンチを脱出、それからタイミングを見計らっての会心の一撃で逆転し土俵外への突き落としで勝利したに見えたが、空流親方による物言いで天鳳が最後に繰り出した上手投げが決まっていたと判断され、惜しくも敗れた。取組後、敗れはしたもののその内容を親方に賞賛され、部屋頭として大きな自信を身に着け仁王を超える決意を新たに固めた。 天鳳との取組後、空流親方の前で、真琴に告白しようと親方と真琴を呼び出すが、白水を待っている間に親方が真琴にプロポーズし、OKを出したことから失恋する。 月代部分は意図的に残しているものではなく、実際は寝ている間に川口に剃られ続けているために生えてこないように見えている。本人は全く気付いておらず、少し気にしている描写もある。 松明 洋一(まつあかり よういち)/ 常松 洋一(つねまつ よういち) 「BURST」より登場した新弟子。元学生横綱で、普段は眼鏡をかけ空流部屋の人間からは常(ツネ)と呼ばれている。幕下までは本名の常松で土俵に上がっていた。 右のカチ上げから入る立合いが得意パターンで、右肩に大きなコブがある。得意技の小手投げは王虎が見習って身に着けたほどの切れ味を持ち、また事前に対戦相手のデータを集めて傾向と対策を立ててから取組に臨んでいる。作者曰く「インテリ力士」。 虎城の付け人だった父・松明(たいまつ)に相撲を教わり、中学2年生で中学横綱となったことで虎城に見込まれ、以来虎城部屋の稽古に参加するようになる。やがて大学に入り学生横綱になったが、虎城と王虎を倒すため、それまで付き合いの深かった虎城部屋を蹴って空流部屋に入門した。 家族に暴力を振るい続け蒸発した父を深く軽蔑しており、学生横綱になったのも父のいた序二段・三段目を嫌い幕下付出から始める資格を得るためだった。その一方で、虎城との初対面時に父親を侮辱されたことに対して根強い反感を持ち続け、それが空流部屋に入門する大きなきっかけのひとつとなるなど、父親に対して複雑な感情を抱いている。また父がいなくなった後の家庭が貧しい生活を強いられたことから相撲を母と妹を養うための金儲けの手段として捉えている部分が大きく、金銭に対する執着心が非常に強い。虎城部屋に入らなかったのにも王虎を倒して名を売るためという目論見があった。 入門当初は普段時だけでなく土俵の上でも慇懃無礼な振る舞いが目立ち、周囲の人間を見下し部屋の稽古にも参加せず一人で稽古を続けていた。幕下付出として迎えた初めての場所では、初土俵で元十両の大森海に圧勝するなど順調な取組を見せていたが、鯉太郎を倒して勢いに乗る王虎との対戦で、会場を盛り上げるための手を抜いた取組に終始された挙句得意の小手投げで敗れ、続く石川戦では立合いの張り手の一撃で組み付く前に失神し優勝戦線から脱落。悔し涙を流しながら空流部屋で強くなる決心を固め、親方や鯉太郎ら兄弟子に対して敬意を払うようになった。 「最後の十五日」では前頭六枚目に昇進し、父のものと読みを変えた同じ字の四股名「松明(まつあかり)」を十両時代から名乗っている。周囲との関係は良好になり鯉太郎や白水とともに熱心に稽古に励み、対戦相手のデータを自身や鯉太郎たちの取組に役立てるなど、空流部屋の参謀として信頼されている。ファンにサインをねだられて金銭を要求する素振りを見せるなど、金に対する執着は消えていない。関取になってからは空流部屋には住んでおらず、マンションで母・妹と3人で暮らしている。 九月場所九日目の夜、空流部屋を訪ねてきた父と再会、開口一番金銭を要求してきた姿に激怒するも、翌日行われる関脇・百雲戦を見に来ることを条件に金を渡すことを約束。百雲との取組では父に己の歩んだ生き様を示すべく、対戦相手を壊すことをいとわない百雲の非情な攻撃に一歩も引かず高度な技の応酬を繰り広げるもやがて左肘と右肩を負傷、打ち下ろしの張り手を受けてなお闘志は揺らがなかったが、傷ついて垂れた腕が土俵について敗れた。取組後、一歩も引かない熱戦に心動かされた父と国技館の外で一番相撲を取り、自分の人生に逃げずに立ち向かうよう父に告げ、相撲を残してくれた感謝の言葉と共に父に大金を手渡し和解した。 「BURST」連載時の初登場シーンは、ふてぶてしいアンコ型の巨漢として描かれていた。次回から容姿が変更されて若干細身になり、単行本でも初登場の場面は差し替えられている。 丸山 大吉(まるやま だいきち) 「BURST」より登場した新弟子。17歳。 空流部屋後援会の武川社長の甥で、高校にも通わない引きこもりのオタクだった。身長187センチ、体重139キロと非常に大柄な体格だったため、根性を鍛え直すために武川社長に無理矢理空流部屋に入門させられる。常松とは同期。 当初はそれまでと全く環境の違う相撲部屋の生活についていけず、指導係の鯉太郎の厳しい叱咤に対する愚痴をマスコミにこぼすなど問題を起こしていたが、鯉太郎の人となりに触れて反省し、やがて部屋の一員として溶け込んでいった。初土俵の取組は、内容的には勝っていたが不浄負けでこぼしてしまう。 「最後の十五日」では序二段に昇進しており、常松を「常ちゃん」と親しく呼んでいる。部屋の稽古にもついていけるようになった一方で、九月場所では初日から2連敗と結果が出せないでいるが、教えられた通り前に出る相撲を実践した結果引き技で負けたため、鯉太郎からは前向きに受け止められている。また精神的に追い詰められていた巨桜丸を叱咤激励し立ち直らせるなど、人間的にも大きく成長した。 豆助(まめすけ) 「最後の十五日」より登場した新弟子。番付は序の口。元暴走族で人相が悪く口調も乱暴。大相撲巡業の土俵で鯉太郎に敗れ、鯉太郎を慕って空流部屋に入門した。 目丸手(メガンテ) 「最後の十五日」より登場した新弟子。番付は序二段。片言で喋るアフリカ系力士。部族に伝わるハゲ、打ち身、擦り傷、切り傷など、様々な怪我に効くという秘伝の妙薬で鯉太郎の傷の手当てに一役買っている。 空流 旭(くうりゅう あさひ) 空流部屋の親方。現役時代の四股名は春風、最高位は小結。本名・奥村(おくむら)旭。石川県出身、51歳。 坊主頭に近い短髪の総白髪で右目の瞳が描かれておらず、右目は失明していると示唆される回想がある。しばしば激情的な一面が表に出るが、基本的に飄々とした性格で弟子から慕われている。一方で一人娘の椿を溺愛しており、娘の恋愛に関する話題に激しく動揺する一面もある。大の酒好きで夜には顔や鼻を赤らめている場面が多く、朝から酒を飲んでいることもある。好きな酒は麦焼酎。 神事としての一面が忘れ去られつつあり、また弟子に対する体罰に過敏になっている角界の現状を憂慮している。「生きるのに不器用な人間の希望でありたい」という目標を持って部屋を運営しており、鯉太郎や阿形・吽形をスカウトして厳しい基礎稽古を積ませ、やがて妻(おかみ)の没後傾いていた部屋の経営を自力で立て直した。 現役時代は虎城と同時代に活躍し、大横綱だった虎城から小兵ながら最も多くの白星を上げ『虎城キラー』の異名を誇った。そのため虎城からは、引退して互いに親方になった後も部屋ごと目の敵にされている。虎城を倒した時の決まり手は全て得意技の呼び戻しだったという。 「最後の十五日」では現役時代の自分を超える番付に昇進し、大関取りのかかるところまで来た仁王の成長を心から喜んでいたが、新寺親方と祝杯を上げに行って一人で帰宅する途中、脱法ドラッグ吸飲者による自動車の暴走事故に巻き込まれ帰らぬ人となった。死後、空流の年寄名跡は引退した仁王が継承し、部屋の稽古場には遺影が祀られている。 奥村 椿(おくむら つばき) 本作のヒロイン。空流旭の娘。年齢は鯉太郎と同い年。母の死後、おかみ代わりとして父と共に空流部屋を切り盛りしている。 稽古に励む部屋の力士たちを間近に見ており、その苦労や成長をよく理解している。普段は持ち前の気の強さで強面の力士達を引っ張っており、廃業を考えていた白水や鯉太郎を叱咤し立ち直らせたこともある。時が進むにつれ、鯉太郎に特別な想いを寄せる描写が増えている。「BURST」以降描写はないが、料理はかなり苦手だった。 床上手(とこじょうず) 空流部屋所属の床山。階級は二等床山。本名・山岡薫(やまおか かおる)、神奈川県出身で自称24歳。 ショートボブの髪型にミニスカートをはいたおかまで、阿形からは化物呼ばわりされている。体を触るだけで、力士の体質がある程度わかる。部屋ではちゃんこ番も担当している。 「最後の十五日」では一等床山に昇格している。
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