虎城部屋
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現役時代大横綱と謳われた虎城が親方を務める部屋。物語開始当初は十両2人が所属していたが、親方の虎城が放任主義であるためにこの2人を中心とした兄弟子たちの横暴が目立っていた。「BURST」ではこの十両2名の引退で部屋の勢いが傾きかけたが、新たに部屋頭となった猛虎が幕内に昇進したことでかつて以上の勢いを取り戻した。虎城親方が目をかけた力士には四股名に「虎」の文字が与えられる。 王虎 剣市(おうこ けんいち) 虎城の息子で、虎城部屋の力士。本名・後藤(ごとう)剣市。東京都出身、17歳。相撲の型は四つ相撲。得意技は小手投げ。 身長195センチメートル、体重120キログラム(入門時)。 自分を特別な存在だと信じ込み、他人は虫けらか、自分が利用する道具ほどにしか思っていないという、極めて傲慢な性格の持ち主である上、マスコミの前では謙虚で器の大きい人間として振る舞い、計算ずくで鯉太郎に殴られ怪我をした振りをするなど、父・虎城以上に腹黒く、自己演出に長けている。そして傲慢な性格に見合うだけの圧倒的実力を持ち合わせ、頭も切れる。父のことを「パパ」と呼び、新弟子ながら部屋の中でも太々しい態度を取るため、同部屋の関取らから敬遠される。空流部屋の面々からは、親子揃って「腹黒狸」「役者になればいいのに」などと言われていた。 しかし、後述の鯉太郎との取組による敗北後の引きこもり、周囲を煽って自身を過剰なまでに精神的に追い込んでのモチベーションの維持、自身の予想を遥かに上回る取組相手の奮闘や気迫にうろたえ飲まれてしまうなど、精神面においては父親の虎城親方や宿敵・鯉太郎の師である空流親方にも危ぶまれており、田上からは「誰よりも繊細で臆病」とまで言われている。 鯉太郎のことは「おいしい奴」と考え、自分がヒーローとして祭り上げられるために最大限利用する腹積もりであったが、彼との初の取り組みで敗北。その後は鯉太郎に対する恨みと屈辱から個室に引きこもり、鯉太郎との取り組みで怪我をした腕の傷みから暴れだすなど荒んでいた。しかし猛虎が十両に昇進したため虎城との約束どおり付け人にするために叱責され、猛虎に利用される立場にありつつも、共に喰うか喰われるかという歪な関係ということを承知しながら渋々付け人になることを了承し、復帰した。 第一部の最終話にて、2期遅れで相撲教習所へと顔を出し、蒼希狼と石川を稽古場であっさり倒した後、本場所で惨敗を喫した鯉太郎にすら圧勝し、本場所での雪辱戦に至るまで無敗で勝ち上がることを宣言、BURSTでそれを実現し再戦することとなる。 相撲を始めた動機は幼少期の王虎にとって陰で敗北に怯えるだけの「偽者」にしか見えなかった父・虎城の影を払拭する(王虎は全盛期の虎城を知らない)ためであり、相撲自体は寧ろ嫌いであった。初めは父の名声を箔付けとして番付を駆け上がりつつ最後には「本物」であることを示すつもりであった。 「BURST」では前相撲での怪我で出遅れながらも、序の口から三段目まで全ての取組に勝利し幕下まで一気に出世、五月場所では優勝の最有力候補と目されるだけでなく連勝記録をどこまで伸ばすにも注目されていた。その期待通りに連勝を重ね、負けたら廃業と互いに宣言して臨んだ因縁の鯉太郎戦を制し、さらに常松と天雷も破って勢いに乗っていたが、全勝同士で臨んだ白水との取組で、小手投げで腕を折られながらなおも気迫で向かってくる白水に気圧され、髷を掴んで引き倒し反則で敗れてしまう。この敗戦をきっかけに精神面の弱さが表に現れるようになり、優勝決定戦の第一回戦で石川を故意に壊そうとしたことで「壊し屋」としての本性が観客にも知れてしまい、一気に悪役に転じてしまう。しかし直後の鯉太郎との再戦で、愚直に向かってくる鯉太郎の姿に取組相手と真正面から向き合おうとしてこなかった自分の弱さを悟り成長。呼び戻しと小手投げの打ち合いにより同体で土がつき、取り直しの一番で立合いを制され、寄り切りで敗れた。取り直しの際には鯉太郎ともう一番取れることを純粋に喜び、別人のように晴れやかな闘志みなぎる表情で土俵に上っていた。 「最後の十五日」では大関に昇進、黄金世代と呼ばれる同期の中でも出世頭として幕内で活躍している。野心だけでなく相撲に対する真摯さも表に出るようになるなど立居振舞いも大きく変わり、部屋の弟弟子からは恐れられつつも尊敬され慕われる存在となったが、一方で鯉太郎の実力を誰よりも認めながら、本人に相対した時は無条件で激情を露わにし互いに喧嘩腰で衝突している。 天雷を破った鯉太郎と九月場所十二日目に対戦、父親の代から因縁を持つライバル同士の四度目の対決として大きく脚光を浴びる。取組は立ち合い直後から白熱し、死を厭わない覚悟すら受け止める力士としての器に鯉太郎のさらなる力が目覚め、互いにまわしを取り合っての力勝負を展開。鯉太郎の全てを飲み込んで勝つと思われた瞬間、さらに力が目覚めて盛り返してきた鯉太郎に逆に飲み込まれ、全てを託すように寄り切りで敗れた。取組後、勝った鯉太郎には王虎から飲み込んだ気迫が力強くみなぎり、全てを飲み込まれた王虎は別人のように精根尽き果て「今場所はここで終わりだ」と稲虎(田上)らに告げていた。 虎城 昇(こじょう のぼる) 虎城部屋の親方で王虎の父親。現役時代は横綱・虎城として優勝25回という大記録を残し、引退後に一代年寄・虎城として部屋を興した。大相撲協会理事も務める。左耳の上半分が欠けている。本名・後藤(ごとう)昇、青森県出身、55歳。 表面は紳士的な好人物で相撲に対する観察眼に優れ、現役時代の威光もあって様々な人間の尊敬を集めているが、一方で自分に対立する人間に対して謀略を働かせ、自分の意にそぐわない弟子に対する苛立ちを隠さずストレートな罵倒をぶつけるなど、狭量で陰湿な一面もある。特に火竜に対しては思い出すだけで吐き気を催すほどの嫌悪感を抱いており、そのため火竜の息子である鯉太郎も一方的に嫌悪している。虎城部屋の規模は大きいが親方本人が滅多に稽古を見ないため、猛虎と王虎の入門までは稽古場には緊張感が欠けていた。技術指導は非常に高度な内容を含んでいるが、擬音混じりの感覚的な言葉ばかりを使うため、火竜や王虎、猛虎などごく一部の人間にしか理解できない。 現役時代は実力も人品も申し分ない正々堂々とした模範的な力士で、付け人・弟弟子だった火竜にも慕われ、虎城もまた火竜を心から可愛がっていた。しかし横綱となって以降、横綱の地位と権威を守るために出稽古などで有望力士を叩きのめして気力を削ぐようになり、かつてのような土俵の上で全力を出し切る取組を見せることがなくなった。そのことで火竜と激しく対立、稽古場で壮絶にぶつかり合いかつての自分を取り戻したかに見えたが、それでもプライドを守るため大横綱を演じる道を選び、左耳を自ら引きちぎって火竜と訣別した。力の衰えた現役末期は、プレッシャーに押し潰され家庭で妻に泣きつくことが多くなり、その姿を日常的に見ていた見た息子・剣市から「偽物」と軽蔑されるようになった。 引退後、かつての自分が捨てた正々堂々とした相撲で横綱まで上り詰めようとし、自分を超える横綱になるとまで噂されるようになった火竜を許せずにいた。火竜暴行事件の一報を聞いた時には火竜を救うべく奔走しようとしていたが、後援会長に火竜追放のチャンスだとそそのかされ、結果として火竜を角界から追放することとなってしまう。なおこの事件の被害者のチンピラたちは、この後援会長が日頃から疎ましく思っていた火竜の綱とりを阻止するために雇ったものであった。火竜の死後ひとり墓に参り、かつて訣別してまで歩んだ生き様を死ぬまで貫き火竜を否定し続けると墓前に告げ、その死を悼み涙していた。そのためか幼い剣市には「自分のようになるな」と諭し、力士となって以降も「死んだ目で相撲をとってほしくない」と願っていた。 「BURST」では王虎の出世を喜びながらも、その実力に反して精神面が未熟であることに強い危機感を抱いていた。幕下優勝決定戦での鯉太郎との一番では、「決めろ!火竜の息子!」と、鯉太郎を応援する。亦、王虎が成長したことで、二人がかつて自分が歩めなかった正々堂々とした楽しい相撲をとれるようになると期待を寄せるようになり、鯉太郎に対する憎しみが消えた。 「最後の十五日」ではかつての様な陰険さは薄れ、更に大相撲協会の理事長となっており様々な改革にも着手している。相撲中継の解説も務め、幕内力士となった鯉太郎について口では否定的な発言をしているが、内心では成長を認め応援し注目している。一方で無茶な取り組みを重ねて消耗してゆく鯉太郎を見かね、生中継の解説席を放り出してまで個人的に引退を勧め、それでもなお土俵から降りようとしない姿を見て王虎に引導を渡すよう含めるなど、並ならぬ心配も寄せていた。 猛虎 哮(もうこ たける) 虎城部屋の力士。本名・小林(こばやし)哮。熊本県出身、24歳。 小学生のころは運動が苦手だったが、テレビで当時横綱だった虎城のインタビューを見て相撲と虎城に憧れを抱くようになり、中学生から始めた相撲で瞬く間に実力をつけて大学で学生横綱となり、虎城から直々にスカウトされ入門した。幕下のころから当たりの強さだけなら関取クラスと空流親方に評され、また緊張感の欠けていた虎城部屋の稽古場に兄弟子ふたりを再起不能にするほどの猛稽古を持ちこみ、増長していた王虎を正面からたしなめるなど、積極的に部屋を引っ張っている。そのため兄弟子からは目をつけられているが、弟弟子にはその熱心な姿勢で慕われている。 地方巡業の土俵で不良少年だった鯉太郎に負け、以来虎城から冷遇されていたが、幕下時代に「十両に昇進したら王虎を付け人にしてほしい」と申し出、その場所で阿形を破って幕下全勝優勝を飾り言葉通りに十両に昇進。前相撲で鯉太郎に負けた悔しさから引きこもる王虎を付け人にし、力士として立ち直らせた。「BURST」では幕内に昇進して虎城部屋の部屋頭となり、王虎や田上を連日の苛烈な稽古で鍛え、虎城からも大きな期待をかけられている。 力士としての野心に溢れ、王虎を付け人としたのは自分が現役時代の虎城の地位である、「横綱」まで上り詰めるべく利用するためと公言している。一方で熱心に相撲に励む者への敬意も忘れず、惜しくも幕下優勝を逃した竹虎の引退を頭を下げて見送り、鯉太郎に敗れて自信を失い引退しようとした田上を殴りつけ叱咤し立ち直らせている。 「最後の十五日」では大関に昇進。王虎と並び、横綱・泡影を倒せる可能性を秘めた力士と期待されている。他の実力派力士より才能に劣るという自覚から努力に努力を重ね、共に部屋を牽引してきた王虎もその貪欲さを鯉太郎に重ねて敬意を払うようになり、のみならず虎城の擬音混じりの指導を完全に理解できるようになって大きく実力をつけたため、虎城から「自分の相撲を理解できた弟子は猛虎だけ」とまで絶賛されている。 王虎を破った鯉太郎と九月場所十三日目で対戦。相手の距離感を狂わせ衝撃を消す独特の取り口と、虎城も認めた理想的な体の使い方で一方的に追い詰めたが、我欲を切り離し体に任せるまま動くようになった鯉太郎に互角の戦況に持ち込まれ、それでもなお鯉太郎の力を飲み込みとどめの上手投げを放った瞬間、前空流親方直伝の呼び戻しを受けて敗れた。取組後、死力を振り絞ってなお敗れたことに満足感を覚えそうになる自分を抑え、敗戦の悔しさを胸に再び虎城を目指す決意を固めて土俵を下りた。 田上 大(たうえ まさる) 虎城部屋の力士で、鯉太郎や王虎の同期。本名同じ。北海道出身、22歳。相撲の型は押し相撲。 全日本相撲選手権大会でベスト8になった実力者だが、大学の恩師には「幕下に上がるのも厳しいだろう」旨を告げられその反対を押し切って大相撲に入った。直接対決前の最序盤は鯉太郎を「ソップ」体型と見て甘く見ていたところがあった。空流部屋と敵対する虎城部屋の力士だが、互いの初土俵の相手として真っ向からぶつかり合い、その縁から認め合い鯉太郎とは仲がいい。同期の中では常識的な人物で、しかし決して気弱なわけではなく王虎のなだめ役になることが多い。剛毛で直毛という髪質のため、髷を結えるようになるまでは独特の髪型になっていた。 「BURST」では恩師の憂いに反して王虎らと共に幕下に昇進しているが、猛虎や王虎の猛稽古についていけず、虎城には「何が何でも勝つという気持ちが足りない、頑張った気になっているだけだ」と叱責され、自分の力の限界に苦悩していた。そこを王虎や大鵠に唆される形で、五月場所では手にバンデージを硬く巻いたり立合い前に突っ掛けて相手にダメージを与えたりといった、ダーティな相撲に手を染めかけてしまう。しかし鯉太郎との取組で、猛稽古のおかげで以前は苦戦していた鯉太郎と互角に戦えるようになっていたことに気付き、自分を恥じて改めて正々堂々と挑戦。不慮の事故により鯉太郎の指を折ってしまい、さらにその状態の鯉太郎に力およばず敗北してしまったために完全に自信を失い、猛虎に土下座して廃業を申し出たが、鉄拳まじりの叱咤に立ち直り、廃業を撤回した。 「最後の十五日」では十両に昇進し四股名を「稲虎」と改め、弟弟子たちからは優しい兄貴分として慕われている。引退する飛天翔の支度部屋での胴上げに参加した他、回想シーンでは幕下だったころに虎城らの前で来日してきたばかりの巨桜丸と手合わせを行った。 竹虎 昌雄(たけとら まさお) 虎城部屋の幕下力士。入門して15年になるベテラン。 指導員として虎城部屋から相撲教習所に派遣され、虎城の命令で鯉太郎に嫌がらせじみたしごきを課し続けた。しかしその全てを受け止め貪欲に強くなろうとする鯉太郎を見て、相撲に対する自分の情熱が薄くなっていることに気付き引退を決意。鯉太郎のぶちかましを正面から止めるなど実力は充分あり、引退場所となった名古屋場所では初日から6連勝で吽形と優勝争いを演じる。吽形との全勝対決では虎城から吽形の故障箇所を狙い撃ちするよう命令されるも逆らって正々堂々と挑み、激闘の果てに惜敗し優勝を逃した。 鯉太郎潰しに失敗して以来虎城からは冷遇されていたが、それでも虎城に対する尊敬の念を持ち続けていた。引退の際には猛虎から吽形との取組を絶賛され、土俵入りの姿で頭を下げて見送られ「せっかくの大銀杏が…俺なんかのために…勿体ねぇ…」と感激のあまり涙していた。本来は穏やかな性格であり、心ない一部の関取には軽んじられているものの猛虎や田上など後輩からの人望は厚い。
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