レアアース
英語:rare earth elements
元素のうち、元素周期表の第3族に属する17種の元素の総称。スカンジウム(Sc)とイットリウム(Y)に、周期表のランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)を合わせた17元素。
レアアースは、他の金属に微量だけ混ぜると、各金属の性質を飛躍的に向上させることができるという共通した特徴を持っている。強力な永久磁石や、青色の蛍光灯など、レアアースにより実現可能となった技術は枚挙に暇がない。そして、その多くが電気自動車やFPD、DVDなどのようなハイテク製品の製造に欠かせない技術となっている。
レアアースの産出は1980年代半ば以降、中国が9割以上のシェアを持っている。他の地域でも産出されないことはないが、安価で大量に産出する中国の台頭によってほとんどが市場を撤退している。
2000年代後半、中国は自国産業の発展による需要拡大に伴いレアメタルの輸出を大幅に削減しつつあり、ハイテク産業の動向や貿易摩擦に関する懸念が起こりつつある。
レア‐アース【rare earth】
読み方:れああーす
「希土類元素」に同じ。
レアアース
レアアースとはレアメタル(希少金属)と呼ばれる合計47の金属元素のうち、化学的性質がよく似た17種類に対する総称。ネオジム、ジスプロシウム、ランタン、セリウム、イットリウムなどが該当します。
これらを、各種ハイテク製品の材料に添加することで、製品の機能アップや新機能の付加が図られることが分かってきました。代表例がハイブリッド車や電気自動車用のモーター。磁石部分にネオジム、ジスプロシウムを加えることでパワー(磁力)と耐熱性に優れたモーターが誕生します。
レアアースの年間産出量は世界全体で12万トンほど。そのうち実に約97%を中国が占めて、完全な一国寡占状態にあります。その中国がこの7月に、今年1年間のレアアース輸出量を昨年比4割削減すると表明しました。「大量の採掘は生態環境を破壊する」というのが理由です。日本政府は輸出削減の見直しを強く要請しました。
一方、企業サイドでは、以前から中国一国に依存するリスクを見越して、レアアースの代替や使用量削減につながる材料・技術の研究開発に取り組んできています。その成果がここへきて明らかになってきました。
TDKや日立製作所は、ネオジム系磁石と遜(そん)色のない性能を引き出せるフェライト磁石を開発、それによりレアアースの使用量を減らしていきます。三菱電機、日立金属、信越化学工業、帝人、ダイキン工業などでも同様のレアアース・フリーの強力磁石の研究開発に力を入れ、成果を挙げつつあります。
こうした技術開発の一方で、リサイクルによりレアアースを確保する取り組みにも拍車がかかっています。ネオジム合金を扱う昭和電工や中央電気工業は、ベトナムにリサイクル工場を設けてグローバルなリサイクルを推進。日立グループでは高効率なリサイクル技術の実用化を目指しており、信越化学ではリサイクル対象品目を拡充しています。
レアアースを産出量ベースで見ると、中国の寡占となりますが、埋蔵量では中国が36%ほど。以下、ロシア、米国、オーストラリア、インドと続きます。そこで大手商社などが中国以外の各国でのレアアース鉱山の開発計画を練っています。レアアースを巡る様々な動きが、さらに賑やかになるのは間違いなく、ここ当分、目が離せません。
(掲載日:2010/09/27)
希土類元素
(レアアース から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/24 01:49 UTC 版)
希土類元素(きどるいげんそ、英: rare-earth elements・REE)またはレアアースは、31鉱種あるレアメタルの中の1鉱種で[1]、スカンジウム 21Sc、イットリウム 39Yの2元素と、ランタン 57La からルテチウム 71Lu までの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である(元素記号の左下は原子番号)。周期表の位置では、第3族のうちアクチノイドを除く第4周期から第6周期までの元素を包含する。なお、希土類・希土と略しており、かつて稀土類・稀土とも書き、それらは英語名の直訳であり、比較的希な鉱物から得られた酸化物から分離されたことに由来している。
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- 1 希土類元素とは
- 2 希土類元素の概要
- 3 用途
- 4 産地
- 5 脚注
- 6 外部リンク
「レアアース」の例文・使い方・用例・文例
- 南(みなみ)鳥(とり)島(しま)近海でレアアースが見つかる
- 東京大学の加藤泰(やす)浩(ひろ)教授が率いる研究チームは先日,日本の排他的経済水域内でレアアースの大鉱床を発見した。
- レアアースはさまざまなハイテク製品を作るのに欠かせないものだ。
- 試料を分析することで,同チームはその泥が高濃度のレアアースを含んでいることを発見した。
- 研究チームは,レアアースの鉱床が少なくとも1000平方キロの地域に広がっていると考えている。
- レアアースの総量は日本の年間消費量の220倍以上に相当すると推定されている。
- 現在,世界の製造業で使用されているレアアースの大部分は中国で産出されているため,レアアースのために多くの国は中国に頼らざるを得ない。
- 日本の排他的経済水域内でレアアースの大鉱床が発見されたことでこうした状況が変わるかもしれない。
- 最近の研究で,この島の周辺の海底に巨大なレアアース鉱床があることがわかった。
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