価格高騰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 00:52 UTC 版)
また、医薬品価格の上昇、とくに一部医薬品の高額化は全世界的な問題となっている。研究開発費の高騰により、画期的な一部の新薬は非常に高額なものとなり、日本でも2019年には1回の投与に3000万円を超える薬品も出現した。同年にはアメリカでゾルゲンスマが承認され、価格は212万5000ドルと日本円で2億円を超える額となった。ゾルゲンスマは日本でも2020年の保険適用時に薬価が1億6707万円となり、初の1億円超えの薬となった。 この医薬品の高騰が特に問題となっているのはアメリカである。同国の薬価は世界で最も高く、1人あたり国民の医薬品出費も最も大きくなっている。アメリカは薬価基準制度が存在しないため価格の値上げが行いやすく、新規薬のみならず従来から使用されている薬においても大幅な値上げが行われることがある。2015年にはマーティン・シュクレリがエイズ治療薬であるダラプリムの価格を一気に55倍に引き上げ、アメリカのみならず全世界から強い批判を浴びた。このほかにも2010年代後半には薬価の高騰がさらに加速し、各社が大幅な値上げを行った。このため薬価引き下げが政治的焦点のひとつとなり、2019年には民主党が薬価引き下げ法案の提出の動きを見せ、また2020年にはドナルド・トランプ大統領が薬価引き下げを指示する大統領令に署名したものの、実現性は薄いとみられている。 日本の医療保険制度においては、薬価基準制度が存在しており、薬品価格の高騰には規制がかけられている。患者の自己負担は薬価の3割(障害者や高齢者の場合は2割や1割に減額される)であり、残りの7割が医療保険から支払われる。しかし日本においても、高額医薬品の保険適用による、医療保険制度への財政負担も問題となりつつある。そのため、国は医療保険財政の改善策として、先発医薬品に比べ薬価が低く同等の効果を持つ後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進策と、薬局やドラッグストアなどで自分で選んで購入する一般用医薬品(市販薬)(このときに購入する医薬品をOTC医薬品と呼ぶ)の利用促進策に取り組んでいる。
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