フェアユース関連以外
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 21:16 UTC 版)
「著作権法の判例一覧 (アメリカ合衆国)」の記事における「フェアユース関連以外」の解説
判例の通称判決年裁判所(判例集番号)争点著作タイプ判決訴訟概要と判決要点特筆性ニコルズ対ユニバーサル・ピクチャーズ裁判(Nichols v. Universal Pictures Corp.) 1930 2d Cir.(45 F.2d 119) アイディア・表現二分論、言語著作物における実質的類似性(英語版) 文章(舞台劇・映画) 合法 小説や脚本などの言語著作物から、逐語的ではなくコンセプトを利用した場合の不正盗用判定方法として「抽象化テスト」を確立した判例。舞台劇『Abie's Irish Rose(英語版)』の作者アン・ニコルズ(英語版)が、1926年公開のサイレント映画『The Cohens and Kellys(英語版)』の製作者であるユニバーサル・ピクチャーズに盗用されたと主張。舞台劇は、ユダヤ人男性とアイルランド人女性の格差婚、そして両家を巻き込んだ葛藤を描く。映画は、男女の出身設定が逆転しているものの、同類のテーマ性であるが、(アイディア・表現二分論で定めるところの) アイディアでしかなく、著作権保護の適用となるオリジナル表現ではないと判示された。同様にシェイクスピアの手法、アインシュタインの相対性理論、ダーウィンの進化論を下敷きにする行為も著作権侵害にならないと例示された。 アルフレッド・ベル対カタルダ・ファインアーツ裁判(Alfred Bell & Co. Ltd. v. Catalda Fine Arts, Inc.) 1951 2d Cir.(191 F.2d 99) 二次的著作物、美術複製の保護要件 美術(版画) 違法 メゾティント銅版を手掛けるイギリス人のアルフレッド・ベルは、著作権の保護期間が切れてパブリック・ドメイン (公有) に帰している名画を元に版画を制作し、アメリカ合衆国著作権局に著作権登録済であった。この版画を元にカタルダ社がリトグラフ化して販売した。カタルダは著作権侵害か、またベルの美術複製作品はそもそも著作権保護の対象なのかが問われた。メゾティント銅版を創作するには工具と複雑なスキルを要し、また色の選択などに創作性が認められることから、ベルの作品に著作物性があると判示された。詳細背景は 一審 を、美術複製の保護要件については「#ダーラム対トミー裁判」も参照のこと。 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ対CBS裁判(Warner Brothers Pictures, Inc. v. Columbia Broadcasting Systems, Inc.) 1954 9th Cir.(216 F.2d 945) アイディア・表現二分論、キャラクターの保護要件 文章(小説・映画) 訴訟概要を参照 ハードボイルド探偵小説『マルタの鷹』に登場する探偵サム・スペードを巡る裁判。作者ハメットはノップフ社(英語版)から単行本を出版し、ハメットとノップフは映画・ラジオ・テレビ番組化権をワーナーに譲渡した。その後、ハメットは別小説でもスペードなどのキャラクターを再登場させ、同様に映画化などの権利をCBSに譲渡したことから、ワーナーがキャラクターの独占権を主張した。漫画などのキャラクターと異なり、言語著作物のキャラクターは著作権保護されないとの判示。しかしこの基準は厳格すぎるとして、後の判事や法学者から否定的な意見もある。 モリシー対P&G裁判(Morrissey v. Procter & Gamble Co.) 1967 1st Cir.(379 F.2d 675) アイディア・表現二分論 (マージ理論) 企画(アイディア) 合法 マージ理論のリーディング・ケース。モリシーは販売促進用の宝くじを企画・運営していたが、応募者が氏名、住所、社会保障番号などを記入するその運用方法が、P&G主催の宝くじと類似しているとして提訴した裁判。アイディアを利用するにあたって、作品の複製を必要とする場合は、その複製行為は著作権侵害にあたらないとされ、既にくじの引き方というアイディアが枯渇しているものにまで著作権による独占を認めることは、社会的な損失になると判断された。 ハーバート・ローゼンタール・ジュエリー対カルパキアン裁判(Herbert Rosenthal Jewelry Corporation v. Kalpakian) 1971 9th Cir.(446 F.2d 738) アイディア・表現二分論 デザイン(実用品) 合法 宝飾メーカー同士の争い。宝石に金をあしらったミツバチ型の宝飾ピンを著作権登録済だったハーバートが、そのデザインを盗用されたとしてカルパキアンを提訴した。カルパキアンは自然界のミツバチを研究してデザインしており、両社とも実物のミツバチに似てはいるものの、デザインの盗用は否定された。また、アイディア・表現二分論に基づき、アイディア (ミツバチ型のピンを作る発想) とその表現 (出来上がったピンのデザイン) が不可分であることから、表現を模倣しても著作権侵害に当たらないと判示した。 レイヤー対CTW裁判(Reyher v. Children's Television Workshop) 1971 2d Cir.(533 F.2d 87) アイディア・表現二分論 (ありふれた情景の理論)、実質的類似性(英語版) (抽象化テスト) 文章(テレビ) 合法 「#ニコルズ対ユニバーサル・ピクチャーズ裁判」(1930年) と類似のケース。児童向けテレビ番組『セサミストリート』で描かれた芝居のプロットが、レイヤーの執筆した民話 (ロシア人の子供) と類似しているとして、同番組を製作するChildren's Television Workshop(英語版) (現: Sesame Workshop) を提訴した。両作品に共通するのは迷子の子供が親と再会するというプロットであり、迷子の子供であれば必然的結末であるとされた。プロット以外では「雰囲気、細部、性格付け」に類似性がないとも判示された。当判決でも抽象化テストによってこれらの実質的類似性が判断された。原告は最高裁に上訴したものの、移送令状(英語版) (ラテン語: certiorari) は却下されて二審で確定した。 モンティ・パイソン対ABC裁判(Gilliam v. American Broadcasting Companies, Inc.) 1976 2d Cir.(538 F.2d 14) 著作者人格権 (同一性保持権) 映像(テレビ) 違法 著作者人格権のリーディング・ケース。モンティ・パイソン脚本・出演のテレビ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』(英国BBCにて原放送) が、米国ABCでも放送された際に一部内容が改変されたため、原著作物の同一性保持権が損なわれたとしてメンバーのテリー・ギリアム他がABCを提訴。一審は同一性の毀損を認めるも、改変の許諾・調整によってABCの放送に遅れが生ずると実損害が発生するとの理由から、実質敗訴。しかし二審は、編集カットによってモンティ・パイソンのブランドが毀損するとして勝訴の判決を下した。なお当時の米国はベルヌ条約を批准していなかったことから、同条約が求めていた著作者人格権を米国著作権法上で明文化しておらず、人格権侵害はもっぱらコモンローに基づく司法判断に委ねられていた。そのため、人格権侵害が認められたケースは本件含めて非常に少ない。これが仮に、著作者人格権が明文化された1989年以降に提訴されていたら棄却されていただろうとも指摘されている。なぜならば、同権を謳う第106A条は狭義の視覚芸術著作物に限定されていることから、テレビ番組には適用不可と判断されうるためである。 ダーラム対トミー裁判(Durham Industries, Inc. v. Tomy Corp.) 1980 2d Cir.(630 F.2d 905) 二次的著作物、美術複製の保護要件 キャラクター(玩具) 合法 ディズニーのキャラクターであるミッキーマウス、ドナルドダックおよびプルートがパブリック・ドメインに帰していたことから、玩具メーカー2社が同キャラクターそっくりのぜんまい式玩具を同時期に製造し、日系企業トミー (現タカラトミー) がダーラムを著作権侵害で提訴した。本件では映画やコミック本に登場する二次元キャラクターを三次元の小さなプラスチック玩具に作り替えただけでは、芸術的な創作性は認められないとの理由から、玩具自体の著作物性が否定された。美術複製の保護要件については「#アルフレッド・ベル対カタルダ・ファインアーツ裁判」も参照のこと。 Apple Computer対フランクリンコンピュータ裁判(Apple Computer, Inc. v. Franklin Computer Corp.) 1983 3d Cir.(714 F.2d 1240) 著作物の定義、アイディア・表現二分論 コンピュータ・プログラム(デジタル) 違法 1980年の著作権法改正でコンピュータ・プログラムが著作権保護対象に加わった直後の判決。プログラミング言語で書かれたソースコードだけでなく、0と1の数字だけで機械的に変換表現されるオブジェクトコードや、OSやROM (半導体チップの記憶媒体) に保存されたプログラムにまで著作権保護がおよぶと判示された。1981年当時、Appleは年間40万台以上のパソコンを製造・販売していた。被告のフランクリン社製パソコンは1000台未満しか売れていなかったが、Apple製とのソフトウェアの互換性を売りにしていた。フランクリンがAppleのOSを不正盗用したとして、14のプログラムを対象に著作権と特許権侵害、不正競争防止違反、および不正流用で提訴。フランクリンはAppleの著作権登録に手続の不備があるとして、著作権保護対象ではないと抗弁したほか、訴訟対象を14から3プログラムに絞るよう要請した。フランクリンはAppleからの流用を認めた上で、互換性を担保するには必要不可欠な行為だとも主張した。しかし両社の製品は酷似していることから、被告の損害立証なしで一時差止命令を下した。 コロンビア映画対レッド・ホーン他裁判(Columbia Pictures Industries, Inc. v. Redd Horne, Inc.) 1984 3d Cir.(749 F.2d 154) 公衆実演権、公衆展示権 映像(ビデオ) 違法 ビデオレンタル・販売店が店内に視聴ブースを設けており、ブース内飲食も販売していたことから、著作権の一種である公衆実演権や公衆展示権の侵害に該当するとして提訴された事件である。このブースは個室であることから「公衆」(public) なのかが問われたが、不特定多数が来店すること、来店目的がビデオテープに限定されていること、映像の送信は個室ではなく店内で一括管理されていたことが考慮され、実演権・展示権侵害と判示された。その後もビデオ鑑賞の「公衆」の定義が問われた判決が複数ある。ホテルのフロントで借りたビデオテープをホテル部屋内のVTRで宿泊客が鑑賞したケースは合法、ビデオのVTR再生ではなくオンデマンド配信でホテルの部屋内で鑑賞したケースは違法となっている。 ウォーカー対タイム・ライフ・フィルムズ裁判(Walker v. Time Life Films Inc.) 1986 2d Cir.(784 F.2d 44) アイディア・表現二分論 (ありふれた情景の理論) 映像(映画) 合法 1976年出版・ウォーカー著『Fort Apache』が1981年映画『アパッチ砦・ブロンクス』 (原題: Fort Apache, The Bronx) に盗用されたとして提訴した。両作とも黒人と白人警官の死亡事件で始まり、闘鶏、飲酒、部品を盗まれた車、売春、ネズミが登場するが、これらはニューヨーク州サウス・ブロンクスでたびたび報道されている事実であり、その設定に著作物性はないとし、「ありふれた情景の理論」の立場が取られた。en: Fort Apache, The Bronx#Legal issuesも参照。 ウィラン対ジャスロー歯科研究所裁判(Whelan Associates, Inc, v. Jaslow Dental Laboratory, Inc.) 1986 3d Cir.(797 F.2d 1222) 著作物の定義、アイディア・表現二分論 ソフトウェア(デジタル) 違法 プログラムの著作物の保護対象の捉え方が単純かつ広すぎるとして、後の判例 (特に#コンピュータ・アソシエイツ対アルタイ裁判) で批判を受けたことでも知られる。歯科用機材を製造するジャスロー社向けに、内蔵プログラムをウィラン社が開発した (Strohl社を間に挟んだ再委託)。ジャスロー社はIBM製「Series/1」(パソコンよりも前世代に登場したミニコンピュータ) を所有していたことから、ウィラン社はこれに対応して専用プログラミング言語のEDL(英語版)でソースコードを記述した。しかしパソコン上でも稼働できるように、ジャスロー社が後からより汎用的なプログラミング言語であるBASICを使って書き換えた。これを受けてウィラン社がジャスロー社を提訴した。当判決ではプログラムの目的・機能は「アイディア」(著作権保護の対象外) とした上で、プログラムの「構造、処理手順および構成」(structure, sequence, and organization) は「表現」であるとして著作権保護を認めた。 データイースト対エピックス裁判(Data East USA, Inc. v. Epyx, Inc.) 1988 9th Cir.(862 F.2d 204) アイディア・表現二分論 (ありふれた情景の理論)、ルック・アンド・フィール ゲーム(デジタル) 合法 日本のゲーム会社データイーストがリリースした「空手道」(日本国外ではKarate Champの名称) が、イギリスのシステムⅢソフトウェア社からライセンス許諾を受けているカリフォルニア州企業エピックス社のゲーム「World Karate Champion」に盗用されたとして提訴。白と赤の空手着を身にまとった対戦相手、主審による勝者宣言、対戦ごとに異なる背景シーン、ボーナス・フェーズなどの設定が似ていたが、空手対戦ゲームという所与のアイディアから必然的に発生する標準的な表現にまで、著作権の保護を与えられないとされた。 キー出版対チャイナタウン・トゥデイ出版裁判(Key Publications, Inc. v. Chinatown Today Publishing Enterprises, Inc.) 1991 2d Cir.(945 F.2d 509) アイディア・表現二分論 (額の汗の法理) 文書(イエローページ) 違法 電話帳を巡る「#ファイスト判決」と類似争点。キー出版はニューヨークの中国系米国人向けにイエローページを年次発行していた。チャイナタウンの事業者の住所・電話番号などが英語と中国語で併記されており、掲載件数は9000件以上、260以上の独自カテゴリで分類されていた。一方、チャイナタウン・トゥデイ社もイエローページを出版しており、こちらは約2000件掲載 (うち約1500件はキー出版のものと重複)、28カテゴリ分類であった。キー出版社長のMs. Maはチャイナタウン・トゥデイ社の株式5割を保有していたことから、キー出版が著作権侵害でチャイナタウン・トゥデイ社と大株主のMaを提訴した。キー出版のカテゴリは「豆腐 & もやし店」のような独自性の高いものが含まれていたことから、ファイスト判決とは異なってデータの選択・整理・配列に創作性が認められ、著作権侵害判定となった。 アタリゲームズ対オマーン裁判(Atari Games Corp. v. Oman) 1992 D.C. Cir.(979 F.2d 242) アイディア・表現二分論、編集著作物 ゲーム(デジタル) 訴訟概要を参照 アタリ社製ゲームのブロックくずし (BREAKOUT) を視聴覚著作物のカテゴリで著作権登録申請するも、幾何学模様と色使いがシンプルなどの理由から著作物性を認めず、著作権局長(英語版)のラルフ・オマーン(英語版)が2度却下した。画面上に表示される色付きブロック自体には著作物性はないものの、音響を伴って連続した映像 (編集著作物) としては創作性があり、著作物性があると判示された。 コンピュータ・アソシエイツ対アルタイ裁判(Computer Associates International, Inc. v. Altai, Inc.) 1992 2d Cir.(982 F.2d 693) 著作物の定義、アイディア・表現二分論 ソフトウェア(デジタル) 合法 「#ウィラン対ジャスロー歯科研究所裁判」を批判してプログラムの著作権保護の対象を絞り込んだことで知られる。コンピュータ・アソシエイツ (CA) 社はIBM製品メインフレーム (大型汎用コンピュータ) 上で動作するジョブ管理システム「CA-SCHEDULER」とそのサブプログラムである「ADAPTER」を開発した。このADAPTERは3つのOS上で稼働できる機能 (各OSに合わせてシステム的に翻訳する機能) を有するが、単独ではなくあくまでCA-SCHEDULERに付属して動作する。アルタイ社はCA社出身のプログラマを雇い、ADAPTERとほぼ同じソースコードの「OSCAR 3.4」を別途開発させた。後にアルタイ社はほぼ複製だと気づき、一から別のプログラマに「OSCAR 3.5」を開発させたものの、CA社がシステム構造 (structure) の実質的類似性(英語版)を理由に提訴した。本件では抽象化・排除・比較テスト(英語版) (別称: 3ステップ・テスト) を用いて、プログラムの非言語的な要素をどこまで著作権保護すべきか大きな指針を示したとされる。結果、ジョブ管理の手法に著作権侵害や類似性は認められないと判示された。 ガルーブ対任天堂裁判(Lewis Galoob Toys, Inc. v. Nintendo of America, Inc.) 1992 9th Cir.(964 F.2d 965) 翻案権 ゲーム(デジタル) 合法 任天堂のゲームを機能拡張 (enhance) するデバイス "Game Genie" を玩具メーカーのガルーブ(英語版)社が開発したことから、これが任天堂のゲームの翻案権 (二次的著作物を無断で他者に創作されない権利) 侵害に該当するかが問われた。Game Genie はゲーム主人公キャラクターのライフを増やしたり、キャラの動きを速くしたり、障害物の上をキャラが飛び越えられるなどモード変更を可能とする。Game Genie は視聴覚的な表示を変更しているだけであり、既存の著作物たる任天堂のゲーム形式そのものに組み込まれているわけではなく、二次的著作物の無断作成に当たらないと判示された。 ゲイツ・ラバー対バンドー化学裁判(Gates Rubber Company v. Bando Chemical Industries, Ltd., et al) 1993 10th Cir.(9 F.3d 823) アイディア・表現二分論 ソフトウェア(デジタル) 合法 機械用ベルト製造の競合同士の争い。ベルト製品開発用のソフトウェアに関する詳細設計やソースコードなどを元ゲイツ従業員が持ち出し、転職先のバンドー (日系企業の米国支部) で類似ソフトウェアを開発したとして、不正競争防止法違反、企業秘密の不正流用および著作権侵害でゲイツが提訴した。本件では著作権法上の実質的類似性(英語版)を検証する上で、抽象化・排除・比較テスト(英語版) (別称: 3ステップ・テスト) の手法を確立させたとして知られている。 ABKCO対ステラー裁判(ABKCO Music, Inc. v. Stellar Records, Inc.) 1996 11th Cir.(96 F.3d 60) 強制許諾 音楽(デジタル) 違法 ロックバンドのローリング・ストーンズの複数楽曲を伴奏とボーカルが入った状態で無断複製し、歌詞字幕を映像として被せて個人カラオケ用CD-ROM「CD + G's」を作成したとして、著作権者ABKCOレコードがステラー社を提訴した。商業用カラオケ店で歌詞付き映像を流す場合は、著作権法に則ってライセンス許諾が必要とされており、ストーンズのこれら楽曲は元々ABKCOがライセンス拒否してきたものである。しかし著作権法 第115条 では事前通告の上で法定のライセンス料を支払えば、著作権者の許諾なしで楽曲を使用できると定めている。複製・頒布にあたってはメロディの基調や特徴をアレンジすることは禁じられているものの、単にカバー曲を創作するだけならばライセンス料を支払えば合法であることから、第115条の強制許諾の範囲が本件では問われた。一審ではABKCO勝訴で一時的差止命令が下り、二審でもステラーの行為は第115条の範囲を超えていると判示された。 キング牧師相続人対CBS裁判(Estate of Martin Luther King, Jr., Inc. v. CBS, Inc.) 1999 11th Cir.(194 F.3d 1211) コモンロー・コピーライト、発行 (publication) の定義 映像(演説) 違法 公民権運動家・キング牧師が1963年に行った有名な演説 "I Have a Dream" をCBS社が1994年製作ドキュメンタリーに無断で使用したことから訴訟に至った。当時の演説はテレビやラジオ、新聞などで全米中に報道されたことから、パブリックドメインに帰しており、著作権保護の対象外であるとCBSは抗弁した。一審はこれを認めたものの、二審ではコモンロー上の著作権によって保護されるとして一審の判決を覆した。コモンロー・コピーライトは主に未発行の著作物保護に用いられており、発行によってコモンロー・コピーライトによる保護は消滅することから、発行の定義が問われた。当判決では「一般的な発行」(general publication) と「制限的な発行」(limited publication) を峻別した上で、前者のみがコモンロー・コピーライトを消滅させると判断された。そして演説などの実演 (performance) はたとえ聴衆の数が多くとも、前者には該当しないと判示された。1976年の著作権法改正によって、未発行の著作物も連邦法で保護されるようになったが、以降も未固定の著作物 (口頭による会話など) はコモンロー・コピーライトによる保護が認められている。 キャピトル・レコード他対アロージャン裁判(Capitol Records Inc. v. Alaujan) 2009 D. Mass.(593 F. Supp. 2d 319) 法定損害賠償、フェアユース 音楽(インターネット) 違法 アメリカレコード協会 (RIAA) に加盟する音楽レーベル各社は2003年以降、約4万人の個人を相手に著作権侵害で個別訴訟を起こしていた:63。P2Pを使って楽曲を無断でファイルシェアしていた個人の多く (特に大学生ら) は和解となったものの、一部は法廷に争いが持ち込まれた。いずれも著作権法 第504条(c) が定める法定損害賠償の範囲が過度に高額であり、かつ法定損害賠償が非商用の侵害行為にも適用されるのは法的手続上、違憲であるとして反論している。トマス・ラゼット訴訟 (24楽曲をKaZaAを使ってシェア) を例にとると、その賠償金額は一審の陪審が最初の審理で22万2千ドル、二度目では192万ドルとしたが判事が5万4千ドルに減額。陪審は三度目に150万ドルとしたが再び判事が5万4千ドルに減額したことから、原告団が控訴した。最終的に最初に陪審が示した22万2千ドル (1曲あたり9,250ドル) で決着した:3–4。またテネンバウム (大学生) のケースではハーバード大学ロースクール教授チャールズ・ネッスン(英語版)が無償で訴訟代理人を務め、フェアユースの観点から法定損害賠償金額の高ぶれを訴えた。一審では当初、陪審による総額150万ドルの賠償金額が判事によって5万4千ドルに減額され、二審では67万5千ドルで最終決着した:292。 キャピトル・レコード他対トマス・ラゼット(Capitol Records, Inc. v. Thomas-Rasset) 2012 8th Cir.(No. 11-2820) :65–71 ソニーBMG他対テネンバウム裁判(Sony BMG Music Entertainment v. Tenenbaum) 2013 1st Cir.(No. 12–2146) :64–65 サルの自撮り裁判(Naruto, et al. v. Slater, et al.) 2018 9th Cir.(No. 16-15469) 人間以外の著作者、パブリックドメイン 画像(デジタル) 訴訟概要を参照 英国人写真家スレイターがインドネシア滞在中、カメラとリモコンを意図的に放置したところ、クロザルが自撮りをしたことから各種メディアにこの写真画像が取り上げられた。サルに著作権はないとして、このメディア掲載画像がウィキメディア・コモンズ上でパブリックドメイン作品として公有された。スレイターは自身に写真の著作権が帰属すると主張してウィキメディア財団と対立。さらに、動物の倫理的扱いを求める人々の会 (PETA) は動物にも著作権が認められると主張し、サルをNarutoと名付けて代理訴訟を起こした。一審はPETAの訴えを棄却し、二審への控訴中に当事者間で和解が成立した。 電子フロンティア財団対米国政府裁判(Green, et al. v. U.S. Department of Justice, et al.) 2016年から係争中 D. D.C.(未掲載) 言論の自由、デジタルミレニアム著作権法 (DMCA) の合憲性 - 未決 インターネット上の自由権を擁護する非営利組織の電子フロンティア財団 (EFF) は科学者らを代表する形で、DMCAが憲法修正第1条で定められた言論の自由に違反すると主張。DMCAによって改正追加された米国著作権法 第1201条 では、海賊版などを取り締まる目的でコピーガードやアクセスコントロールを解除することを禁じている。しかし電子機器や工業用品の多くがソフトウェアを内蔵する今日において、これらメーカーから独立した第三者機関が修理や不具合の原因究明 (リバースエンジニアリング) を行おうとしても、第1201条に抵触してしまうからである。EFFは司法省、アメリカ議会図書館およびアメリカ合衆国著作権局 (略称: USCO) を提訴。USCOは2018年、EFFからの嘆願書の一部を受け入れ、Amazon Echoや車載ソフトウェア、個人用デジタル端末などに限定して、内蔵ソフトウェアの修繕や除去 (いわゆる脱獄) などを認めた。
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