フェアユース採用の評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 23:22 UTC 版)
「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事における「フェアユース採用の評価」の解説
「en: Limitations and exceptions to copyright」も参照 米国著作権法の第107条では、著作物を無断で利用しても著作権侵害に当たらないケースを抽象的・一般的な基準で定めたフェアユースの法理が採用されている。一方、米国以外の国々では、米国型のフェアユースとは異なり、個別ケースを具体的に列挙する方式をとることも多く、米国との比較を通じて、フェアユース導入の是非が議論されている。たとえば欧州連合 (EU) の場合、2001年のEU情報社会指令により個別列挙を21ケースに限定し、さらにEU加盟国の国内法でこの21ケース以外を追加規定することを禁じている。しかし、フェアユースを導入している米国よりも、導入していない欧州の方が、インターネットを介した著作権侵害の件数が多いとの指摘がなされ (2013年時点での比較)、フェアユースの効用を評価する意見もある。その一方で、たとえばGoogleサジェスト機能 (オートコンプリート機能) が著作権法上の複製権侵害に該当するかについて、欧州各国の司法判断は分かれており、社会的な公平性の観点からもフェアユース導入の是非が論じられている。 フェアユースの法理を採用するかは、法的な安定性と柔軟性のどちらを重視するかに依存する。EUのように限定列挙すれば、著作権者にとっては著作財産権の価値が高まると同時に、著作物の創作のための投資と回収の見通しが立ちやすくなる。一方で米国のように一般的な基準を設け、個別判断は裁判所に任せることで、著作物の内容や流通経路といった社会的・技術的な変化にも対応しやすくなるメリットが考えられる。日本においても、過去にはフェアユース導入に否定的だったが、現代のインターネットによる著作権侵害の技術的複雑化を受け、司法判断に委ねるべきだと見解を翻す識者がいる。その一方で、著作権侵害のリスクをとっても起業し、問題が起これば事後的に司法で解決する米国のスタイルは、リスクテイクに慎重な日本の企業文化に馴染まないとして、日本版フェアユース導入への慎重論も根強い。
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