フェア‐ユース【fair use】
公正利用(フェアユース)(こうせいりよう)
フェアユース
【英】fair use
フェアユースとは、米国の著作権法第107条において規定されている、著作権のある著作物に対する排他的権利の制限に関する条項である。
米国著作権法では、著作権者に対する著作物の独占的利用を原則的に認めるが、フェアユースの条文では、著作権のある著作物であっても公正な使用(fair use)は著作権の侵害行為とならない(not an infringement of copyright)ということが規定されている。
著作物を使用する場合、それがフェアユースに該当するか否かを判断するには、「使用の目的・性質」「著作物の性質」など、少なくとも4つの要素を考慮する必要がある。条文で規定されていえるのフェアユースの指針のみであり、具体的な基準が明記されているわけではない。使用者は各自の判断で、著作物をフェアユースとして使用する。その使用がフェアユースとして適法であるか否かの最終的な判定は、権利者から訴えられた場合に、司法機関において判例などを基に検討される。
日本の著作権法では、著作権法30条以下に「著作権の制限」に関する項目が存在するが、個別の事項が明記されており拡大解釈の余地がないなど、必ずしも米国のフェアユースに対応するものではない。2008年後半以降、文化庁を中心としてフェアユースの考え方の国内導入を検討している。これは「日本版フェアユース」と呼ばれている。
参照リンク
U.S. Copyright Office - Copyright Law - (英語。フェアユースを規定した状況本文)
U.S. Copyright Office - Fair Use - (英語。フェアユースについて)
外国著作権法令集-排他的権利の制限:フェア・ユース - (社団法人 著作権情報センター)
フェアユース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 08:09 UTC 版)
フェアユース(英語:fair use、公正利用とも訳される)とは、アメリカ合衆国の著作権法などが認める著作権侵害の主張に対する抗弁事由の一つである。同国の著作権法107条(合衆国法典第17編第107条 17 U.S.C. § 107、107条の参考日本語訳)によれば、著作権者の許諾なく著作物を利用しても、その利用が4つの判断基準のもとで公正な利用(フェアユース)に該当するものと評価されれば、その利用行為は著作権の侵害にあたらない。このことを「フェアユースの法理」とよぶことがある。
注釈
- ^ 調査等とあるように、指し示されている以外の目的で複製等を行った場合にもフェアユースは認められうる[4]。
- ^ 例えばアタリゲームズ対米国任天堂裁判では、著作物を不正に入手したことが考慮され、フェアユースの成立を否定した[5]。ただし、5つ目以降の要素が検討された裁判例はごくわずかである[5]。
- ^ 未公開の著作物を著作者の許諾なしに出版し、フェアユースの適用を求めたが却下された事例として知られる、ハーパー・アンド・ロー対ネイションエンタープライズ裁判でも、「必ずしも決定的でないとしても、鍵となる要素」としている[15]。
- ^ ただし、本件では、仮に日本国内でフェアユースが認められていたとしても、4要素に照らしてフェアユースは成り立たないとした判決が出されている[39]。
- ^ 著作性を有する書が飾られた部屋で照明器具のカタログを作成するため、撮影を行っていたところ、前述書が写り込んでしまった事例[42]。写り込んだ書の大きさが極めて小さく、「墨色の冴えと変化、筆の勢いといった美的要素を直接感得することは困難である」として著作権侵害を否定した[43]。
- ^ 「市バス車体事件」[45]や「バス車体絵画事件」[42]とも呼ばれる。車体に美術の著作物(絵)が描かれた横浜市営バスの車両を撮影し、教育を目的とする書籍の形態で出版された事例[46]。東京地裁は、バスに描かれた絵が、継続的に運行されており不特定多数の目に触れるものであったことなどを理由に、著作権法第46条に定める「屋外の場所に恒常的に設置されているもの」であると認定し、著作権侵害を否定した[47]。
- ^ 例えばコンピュータの修理のためにデータのバックアップを取ることは、著作権法第47条の3(当時、2015年現在では第47条の6)が施行されるまで違法であるとされていた[37]。
出典
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- ^ “公正利用なら許諾不要に 著作権保護の新制度審議へ”. 共同通信. (2009年3月16日) 2009年3月16日閲覧。
- ^ “「日本版フェアユース」の対象は 報告書まとまる”. ITmedia. (2010年1月20日) 2010年2月17日閲覧。
- ^ “著作物の許可ない利用反対 日本新聞協会など7団体”. 朝日新聞 朝刊 (朝日新聞社). (2016年10月25日)
- 1 フェアユースとは
- 2 フェアユースの概要
- 3 1992年の改正
- 4 参考文献
- 5 参考資料
フェアユース (総論)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 23:22 UTC 版)
「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事における「フェアユース (総論)」の解説
「フェアユース」および「著作権法の判例一覧 (アメリカ合衆国)#フェアユース関連」も参照 著作物そのものはパブリック・ドメインに帰しておらず保護期間内であっても、一定の条件を満たしていれば著作者に無断で利用しても著作権侵害とはならない。その代表例がフェア・ユース (公正利用) である。 フェアユースの利用シーンとしては「批評、解説、ニュース報道、教育、研究または調査」が例示されており、また最終的には「使用の目的・性質」(非営利の教育やパロディによる変形的利用(英語版)など)、「著作物の内容」、「量・質の両側面から著作物が使用された割合」、「使用によって著作物の市場価値にどの程度影響を及ぼすか」などを考慮して総合して判断される。条文ではincludingやsuch asといった表現が使われていることから、これら利用シーンや考慮点はあくまで例示である点に留意が必要である (第107条)。 これら4基準のうち、特に第1基準の変形的利用、および第4基準の市場代替性が重視される傾向にあると指摘されている。第1基準で商用目的であったにもかかわらず、同じく第1基準の変形的利用が優先して認められた結果、フェアユース判定となった「キャンベル対エイカフ・ローズ・ミュージック裁判」(1994年最高裁判決) などが知られている。本件は映画の主題歌『Oh, Pretty Woman』のパロディ曲を巡る争いである。
※この「フェアユース (総論)」の解説は、「著作権法 (アメリカ合衆国)」の解説の一部です。
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フェアユース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:55 UTC 版)
「フィールド対Google事件」の記事における「フェアユース」の解説
法廷は以下を判示し、被告のフェアユースの抗弁を認めた。記述上一部は省略したが、法廷はフェアユースの認定に際し多数の判例を引用している(フェアユースが法で定められるものではなく、判例の積み重ねにより形成されたものであることの証左である)。 フェアユースとは合衆国法典第17編第107条 17 U.S.C. § 107に規定される著作権侵害に対する制定法上の抗弁である。フェアユース法理は権利者以外の者が権利者の承諾無く合理的な方法で著作物の限定的な権利を得ることを認め、場合によっては著作権法により築き上げられる有益な創作活動を萎縮させてしまわないよう同法の厳格な適用を法廷が回避することを許容するものである。 ある特定の著作物の利用がフェアユースとの資質があるか否かを分析する上で、著作権法は少なくとも4つの因子(factor)を分析するよう法廷に指示している。 利用の目的及び性格(purpose and character)、例えば利用が営利的性質または非営利的教育目的のどちらであるか、など。 「権利者の著作物」(the copyrighted work)の性質(nature) 「権利者の著作物」全体から利用した部分の量及びその本質性(amount and substantiality) 利用による「権利者の著作物」に対する潜在的な市場への影響、または「権利者の著作物」の価値に対する影響。以上、17 U.S.C. § 107。法廷は「分析を行う際には以上に挙げた因子が最終的、確定的であるとするのではなく、著作権法の理念に照らし衡平を図ら」なければならない。 いずれの因子も決定的(dispositive)ではない場合、過去に裁判所は第1番目の因子及び第4番目の因子に最も重きを置いてきた。
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