フェアユースとは? わかりやすく解説

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公正利用(フェアユース)(こうせいりよう)


米国著作権法には、その著作物を公正利用する行為には著作権の効力及ばないという包括的な規定がある(米国著作権法107条)。たとえば、相手自分プログラム複製しているかどうか判断する目的で行う複製許されていると考えられる

これに対して日本の著作権法には、公正利用の場合包括規定がなく、公正利用と考えられる場合具体的に限定列挙している(著作権法第30条49条)。なお、これらの行為例示的に挙げたのである考え著作権法第1条の“文化的所産公正な利用留意しつつ”という記述根拠に、公正利用を認めるべきだとする意見もある。


フェアユース

別名:公正使用公正な使用
【英】fair use

フェアユースとは、米国の著作権法107条において規定されている、著作権のある著作物対す排他的権利制限に関する条項である。

米国著作権法では、著作権者対す著作物独占的利用原則的に認めるが、フェアユースの条文では、著作権のある著作物であっても公正な使用fair use)は著作権の侵害行為とならないnot an infringement of copyrightということ規定されている。

著作物使用する場合、それがフェアユースに該当するか否か判断するには、「使用目的・性質」「著作物性質」など、少なくとも4つの要素考慮する必要がある条文規定されていえるのフェアユースの指針のみであり、具体的な基準明記されているわけではない使用者各自判断で、著作物をフェアユースとして使用する。その使用がフェアユースとして適法であるか否か最終的な判定は、権利者から訴えられ場合に、司法機関において判例などを基に検討される

日本の著作権法では、著作権法30条以下に「著作権の制限に関する項目が存在するが、個別事項明記されており拡大解釈余地がないなど、必ずしも米国のフェアユースに対応するものではない。2008年後半以降文化庁中心としてフェアユースの考え方国内導入検討している。これは「日本版フェアユース」と呼ばれている。


参照リンク
U.S. Copyright Office - Copyright Law - (英語。フェアユースを規定した状況本文
U.S. Copyright Office - Fair Use - (英語。フェアユースについて)
外国著作権法令集-排他的権利の制限:フェア・ユース - (社団法人 著作権情報センター

フェアユース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 08:09 UTC 版)

フェアユース英語fair use公正利用とも訳される)とは、アメリカ合衆国の著作権法などが認める著作権侵害主張に対する抗弁事由の一つである。同国の著作権法107条(合衆国法典第17編第107条 17 U.S.C. § 107107条の参考日本語訳)によれば、著作権者の許諾なく著作物を利用しても、その利用が4つの判断基準のもとで公正な利用(フェアユース)に該当するものと評価されれば、その利用行為は著作権の侵害にあたらない。このことを「フェアユースの法理」とよぶことがある。


注釈

  1. ^ 調査とあるように、指し示されている以外の目的で複製等を行った場合にもフェアユースは認められうる[4]
  2. ^ 例えばアタリゲームズ対米国任天堂裁判英語版では、著作物を不正に入手したことが考慮され、フェアユースの成立を否定した[5]。ただし、5つ目以降の要素が検討された裁判例はごくわずかである[5]
  3. ^ 未公開の著作物を著作者の許諾なしに出版し、フェアユースの適用を求めたが却下された事例として知られる、ハーパー・アンド・ロー対ネイションエンタープライズ裁判でも、「必ずしも決定的でないとしても、鍵となる要素」としている[15]
  4. ^ ただし、本件では、仮に日本国内でフェアユースが認められていたとしても、4要素に照らしてフェアユースは成り立たないとした判決が出されている[39]
  5. ^ 著作性を有する書が飾られた部屋で照明器具のカタログを作成するため、撮影を行っていたところ、前述書が写り込んでしまった事例[42]。写り込んだ書の大きさが極めて小さく、「墨色の冴えと変化、筆の勢いといった美的要素を直接感得することは困難である」として著作権侵害を否定した[43]
  6. ^ 「市バス車体事件」[45]や「バス車体絵画事件」[42]とも呼ばれる。車体に美術の著作物(絵)が描かれた横浜市営バスの車両を撮影し、教育を目的とする書籍の形態で出版された事例[46]。東京地裁は、バスに描かれた絵が、継続的に運行されており不特定多数の目に触れるものであったことなどを理由に、著作権法第46条に定める「屋外の場所に恒常的に設置されているもの」であると認定し、著作権侵害を否定した[47]
  7. ^ 例えばコンピュータの修理のためにデータのバックアップを取ることは、著作権法第47条の3(当時、2015年現在では第47条の6)が施行されるまで違法であるとされていた[37]

出典

  1. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, pp. 672–673.
  2. ^ a b エリック・J・シュワルツ 2004, p. 291.
  3. ^ ロバート・ゴーマン、ジェーン・ギンズバーグ 2003, p. 639.
  4. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, p. 674.
  5. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 23.
  6. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, pp. 22–23.
  7. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 30.
  8. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 31.
  9. ^ 横山久芳 2009, p. 54.
  10. ^ エリック・J・シュワルツ 2004, p. 299.
  11. ^ a b c 八代英輝 2004, p. 163.
  12. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, pp. 62–63.
  13. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, p. 681.
  14. ^ a b c d e 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 33.
  15. ^ a b マーシャル・A・リーファー 2008, p. 682.
  16. ^ マーシャル・A・リーファー 2008, p. 685.
  17. ^ 横山久芳 2009, p. 56.
  18. ^ a b エリック・J・シュワルツ 2004, p. 295.
  19. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 10.
  20. ^ 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 26.
  21. ^ 横山久芳 2009, p. 55.
  22. ^ 椙山敬士 2009, p. 78.
  23. ^ a b c Hugenholtz 2013, p. 26.
  24. ^ Hugenholtz 2013, p. 27--著者はこの21条件を「ショッピングリスト」(shopping list) と評して揶揄している。
  25. ^ EUの新しい著作権指令について教えてください”. Europe Magazine (駐日欧州連合代表部の公式ウェブマガジン). 駐日欧州連合代表部 (2019年8月29日). 2019年9月15日閲覧。
  26. ^ 中山信弘 2014, pp. 396–397.
  27. ^ a b Hugenholtz 2013, pp. 27–28.
  28. ^ van der Noll 2012, p. 12.
  29. ^ a b ティナ・ハート、リンダ・ファッツァーニ、サイモン・クラーク 2006, p. 264.
  30. ^ ティナ・ハート、リンダ・ファッツァーニ、サイモン・クラーク 2006, p. 265.
  31. ^ a b M.F.フリント、C.D.ソーン 1999.
  32. ^ a b 山本隆司、奥邨弘司 2010, p. 11.
  33. ^ Fair Use under Israel's New Copyright Act”. Tony Greenman (Mar, 2008). 2008年3月閲覧。
  34. ^ Israel now has the right copyright law”. The Jerusalem Post (Mar 26, 2008 21:08). 2008年8月20日閲覧。
  35. ^ The Football Association Premier League Ltd. v. Ploni and others”. 2010年1月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年11月16日閲覧。
  36. ^ Israeli Judge Permits Unlicensed Sports Event Streaming—FAPL v. Ploni (Guest Blog Post)”. Technology and Marketing Law Blog (2009年9月21日). 2015年11月16日閲覧。
  37. ^ a b フェアユース研究会 2010, p. 3.
  38. ^ 東京地方裁判所平成7年12月18日判決 平成6年(ワ)9532号” (PDF). 最高裁判所. p. 7. 2014年11月25日閲覧。
  39. ^ 椙山敬士 2009, pp. 74–75.
  40. ^ a b 斉藤博 2007, p. 224.
  41. ^ 東京高等裁判所判決平成14年2月18日 平成11年(ネ)5641号” (PDF). 最高裁判所. 2014年11月25日閲覧。
  42. ^ a b 横山久芳 2009, p. 50.
  43. ^ フェアユース研究会 2010, p. 34.
  44. ^ 東京地方裁判所平成13年7月25日判決 平成13年(ワ)56号” (PDF). 最高裁判所. 2014年11月25日閲覧。
  45. ^ フェアユース研究会 2010, p. 38.
  46. ^ 奥田百子 2012, p. 146.
  47. ^ 奥田百子 2012, pp. 146–147.
  48. ^ 横山久芳 2009, pp. 49–52.
  49. ^ “公正利用なら許諾不要に 著作権保護の新制度審議へ”. 共同通信. (2009年3月16日). https://web.archive.org/web/20090320032846/http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031601000648.html 2009年3月16日閲覧。 
  50. ^ “「日本版フェアユース」の対象は 報告書まとまる”. ITmedia. (2010年1月20日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1001/20/news087.html 2010年2月17日閲覧。 
  51. ^ “著作物の許可ない利用反対 日本新聞協会など7団体”. 朝日新聞 朝刊 (朝日新聞社). (2016年10月25日) 


「フェアユース」の続きの解説一覧

フェアユース (総論)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 23:22 UTC 版)

著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事における「フェアユース (総論)」の解説

「フェアユース」および「著作権法の判例一覧 (アメリカ合衆国)#フェアユース関連」も参照 著作物そのものパブリック・ドメイン帰しておらず保護期間であっても一定の条件満たしていれば著作者無断利用して著作権侵害とはならない。その代表例がフェア・ユース (公正利用) である。 フェアユースの利用シーンとしては「批評解説ニュース報道教育研究または調査」が例示されており、また最終的には「使用目的・性質」(非営利教育パロディによる変形利用英語版)など)、「著作物内容」、「量・質の両側面から著作物使用され割合」、「使用によって著作物市場価値にどの程度影響を及ぼすか」などを考慮して総合して判断される条文ではincludingsuch asといった表現使われていることから、これら利用シーン考慮点はあくまで例示である点に留意が必要である (第107条)。 これら4基準のうち、特に第1基準変形利用、および第4基準市場代替性が重視される傾向にあると指摘されている。第1基準商用目的であったにもかかわらず同じく第1基準変形利用優先して認められ結果、フェアユース判定となったキャンベルエイカフ・ローズ・ミュージック裁判」(1994年最高裁判決) などが知られている。本件映画主題歌Oh, Pretty Woman』のパロディ曲を巡る争いである。

※この「フェアユース (総論)」の解説は、「著作権法 (アメリカ合衆国)」の解説の一部です。
「フェアユース (総論)」を含む「著作権法 (アメリカ合衆国)」の記事については、「著作権法 (アメリカ合衆国)」の概要を参照ください。


フェアユース

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:55 UTC 版)

フィールド対Google事件」の記事における「フェアユース」の解説

法廷は以下を判示し、被告のフェアユースの抗弁認めた記述一部省略したが、法廷はフェアユースの認定際し多数判例引用している(フェアユースが法で定められるものではなく判例積み重ねにより形成されたものであることの証左である)。 フェアユースとは合衆国法典第17編10717 U.S.C. § 107規定される著作権侵害対す制定法上の抗弁である。フェアユース法理権利者以外の者が権利者承諾無く合理的な方法著作物限定的な権利を得ることを認め場合によっては著作権法により築き上げられる有益な創作活動萎縮させてしまわないよう同法厳格な適用法廷回避することを許容するのである。 ある特定の著作物利用がフェアユースとの資質があるか否か分析する上で著作権法少なくとも4つ因子factor)を分析するよう法廷指示している。 利用目的及び性格purpose and character)、例え利用営利的性質または非営利教育目的のどちらであるか、など。 「権利者著作物」(the copyrighted work)の性質nature) 「権利者著作物全体から利用した部分の量及びその本質性(amount and substantiality) 利用による「権利者著作物」に対す潜在的な市場への影響、または「権利者著作物」の価値対す影響。以上、17 U.S.C. § 107法廷は「分析を行う際には以上に挙げた因子最終的確定的であるとするのではなく著作権法理念照らし衡平を図ら」なければならないいずれの因子決定的(dispositive)ではない場合過去裁判所第1番目の因子及び第4番目の因子に最も重きを置いてきた。

※この「フェアユース」の解説は、「フィールド対Google事件」の解説の一部です。
「フェアユース」を含む「フィールド対Google事件」の記事については、「フィールド対Google事件」の概要を参照ください。

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フェアユース

出典:『Wiktionary』 (2020/03/17 14:06 UTC 版)

名詞

フェアユース

  1. 一定の利用方法範囲内著作権法認める、著作物無断利用形態。特に米国著作権法107条が規定するものを指し利用形態細かな定めがなく柔軟性がある一方で判例積み重ねでしか合法範囲明確にならないといった特徴を持つ。

語源

英語 fair use仮名転写

翻訳



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