著作権の制限
しかし、この原則をいかなる場合にも当てはめることは、文化的所産である著作物の公正で円滑な利用を妨げることとなり、ひいては、文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反することにもなりかねません。そこで、著作権法では、一定の場合に限り、著作権者の権利を法律上制限して著作権者の了解を得ることなく、著作物を利用できることとする例外ルールを定めており、それを著作権の制限といっています。例えば、「私的使用のための複製」、「教科書等への掲載」、「図書館等における複製」、「営利を目的としない上演等」、「引用」などがあります。
ただし、こうした例外は著作権者の権利を不当に害することのないよう、また、あくまでも「例外」の措置であるので、その条件を厳格に運用する必要があります。
著作権の制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 04:14 UTC 版)
著作物の利用や使用について、その便宜上必要とされる範囲または著作権者の利権を害しない範囲において著作権が制限されることがある。これは、著作権というものが、公共性の高い財産権であることに由来する。おもなものは以下の通り。 法規概要詳細30条 私的使用を目的とした複製 個人的に又は家庭内、或いはこれに準ずる限られた範囲内において使用する場合は、権利者の承諾を得なくても複製を行うことが出来る。ただし、複製を行う装置・媒体がデジタル方式の場合は「補償金」を権利者に払わなければならないとされる(一般に「補償金」はそれらの装置や媒体を購入する時の値段に含まれる。詳しくは私的録音録画補償金制度を参照)。また、技術的保護手段(いわゆる「コピーガード」)を回避しての複製を意図的に行うことは、私的使用であっても権利者の承諾が必要としている。30条を強行規定であると考える立場からは「私的複製・バックアップコピーに対し制限を加えるような契約条項は無効である」との見解もあり、2014年現在経済産業省では、30条の解釈について任意規定・強行規定の両論併記の形を取っている。 30条の2 付随対象著作物の利用 平成24年法改正で新設。写真の撮影、録音又は録画において、主となる著作物に写り込みまたは入り込んだ付随対象著作物に対する制限を規定した。以下の要件が必要である(1)対象とする事物又は音から分離することが困難であること(2)付随して対象となるものであり、軽微な構成部分であること(3)付随対象著作物の種類や用途、複製や翻案の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないものであること。 31条 図書館における複製 図書館の果たすべき役割が達成されるようにするため、著作権法施行令第一条の三で定められた図書館(公立図書館、国立国会図書館及び社団法人、財団法人並びに日本赤十字社の設置する図書館、大学図書館など)において、利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(判例(多摩市立図書館事件)により当該著作物の半分以下。発行後相当期間を経過した(次の号が発行された)定期刊行物に掲載された個個の著作物にあっては、その全部)の複製物を1人につき1部提供する場合、図書館資料の保存の必要性がある場合、他の図書館等の求めに応じて絶版等の理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合、権利者の承諾がなくても複製が出来る。ただし、いずれも営利を目的としない場合に限られる。 32条 引用 公表された著作物は自由に引用して利用することが出来る。ただし、それは公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道・批評・研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならないとされる。 38条 営利を目的としない上演等 私人が所有する家庭用のDVD、ビデオテープ等については頒布権は消尽するとされている。 営利を目的とせず(非営利)、聴衆・観衆から料金を受けず(無償)、かつ実演家・口述家が報酬を受けない(無報酬)場合には、公表された著作物を上演・演奏・上映・口述することができる。実際には、非営利の要件は厳しく、商品の宣伝に著作物を使用する場合は、非営利とは認められない。また、観客等からだけでなく、開催者から実演家に報酬など直接の対価がある場合も認められない。(1項)具体的には、学校の運動会などがこれに該当する。 営利を目的とせず(非営利)、聴衆・観衆から料金を受けない(無償)場合には、放送・有線放送される著作物を受信して有線放送し、自動公衆送信し、または受信装置により公に伝達することができる。ここでの自動公衆送信については、それによる受信対象地域が放送対象地域に限定されている必要がある。この規定は放送等と同時に伝達することを要件としており、放送等を録画・録音して事後に再度伝達する事は含まれない。また、「受信装置により公に伝達」とは、受信装置により通常の方法で伝達されることを想定しており、受信装置以外の特殊な方法、装置を用いて伝達範囲を拡大することなどは認められない。なお、通常の家庭用受信装置(テレビ、ラジオなど)により公に伝達する場合は、非営利・無償の要件は適用されない。よって、営利目的の店舗等に置かれている家庭用テレビ・ラジオによる伝達は権利の対象とならない。(2項) 営利を目的とせず(非営利)、貸与を受ける者から料金を受けない(無償)場合には、映画の著作物以外の著作物の複製物(権限者による複製物であって、私的使用を目的とした複製(30条)により増製されたものではない)を公衆に貸与することができる。図書館等が無償で著作物を貸与できるようにするための規定であるが、主体は限定されていないため、私人間における非営利・無償の貸与も対象となる。なお、DVDなど映画の著作物については適用されないため、図書館で映画を公衆に貸与する場合、図書館から著作権者に著作権料が支払われている。(3項) 映画の著作物に関しては、権限者による複製物の頒布(譲渡、貸与)も頒布権が及ぶが、図書館ほか政令で定める公的な視聴覚施設間における無償の頒布は、補償金を権利者に支払うことにより認められる。(4項) 42条の2 行政機関情報公開法等による開示のための利用 行政機関の長、独立行政法人等又は地方公共団体の機関若しくは地方独立行政法人は、行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法又は情報公開条例の規定により著作物を公衆に提供し、又は提示することを目的とする場合には、それぞれの法令で定める方法により開示するために必要と認められる限度で著作物を利用することができる。なお、行政機関以外では、最高裁判所は「最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱」に、衆議院事務局は「衆議院事務局の保有する議院行政文書の開示等に関する事務取扱規程」に基づき情報公開制度を実施しているが、本条による著作物の利用を行えないため、国の機関以外の者が作成した著作物について、著作権を理由に不開示決定することが可能となる。 46条 公開の美術の著作物等の利用 屋外に恒常的に設置された美術の著作物や建築の著作物は利用できる。ただし、制限には例外があり、専ら販売目的での美術の著作物の複製等、利用が認められないものがある。
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