著作権法上の著作権の制限との関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/24 00:33 UTC 版)
「シュリンクラップ契約」の記事における「著作権法上の著作権の制限との関係」の解説
使用許諾契約の中には、著作権法が認める著作権の制限(著作権法30条から50条)を否定する内容を含む場合がある。しかし、著作権法は著作権の支分権として使用権を認めていない。つまり、著作権者に使用権は認められていない。したがって、シュリンクラップ契約(開封契約)において、もともと著作権者にない「使用権」を他者に「許諾」するということは法律的には意味がない。結局、シュリンクラップ契約は、使用を許諾ないし制限する契約ではなく、複製を許諾ないし制限する契約と解するほかない。 プログラムの著作物の場合は、著作物の複製物の所有者は、利用に必要と認められる限度において当該著作物を複製することが可能であり(著作権法47条の3第1項)、複数のコンピュータにインストールする場合を除き、プログラムをインストールして実行することやバックアップをすること自体は複製権の侵害行為に該当しない。また、個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用する場合(私的使用の場合)には、原則として複製をすることについて著作権者の許諾を得る必要はない(30条1項)。 シュリンクラップ契約は、以上のような著作権法上認められた複製の制限を内容とすることが多いが、上記の著作権制限規定は任意法規であると理解されている。そのため、シュリンクラップ契約が有効に成立すれば、著作権者が複製について自由にコントロールできることになる。しかし、業務目的で複数のコンピュータにインストールすることが複製権の侵害になることは契約をしなくても当然のことであり、バックアップや私的使用のための複製まで契約によって制限する必要性は乏しいのではないかという指摘もされている。 もっとも、複製権との抵触を避ける目的でプログラムを一本だけ購入し、 LAN を用いてプログラムを使用する行為については疑義が存在する。日本の著作権法では、1997年の法改正により公衆送信権の一類型としての送信可能化権の制度が新設され(23条1項括弧書)、プログラムの著作物については同一構内における送信行為も公衆送信に該当するものとされた(2条1項7号の2、23条1項括弧書き)。しかし、同一事業所内で複数の従業員が使用する目的で LAN を用いる場合が「公衆」によって受信されえる状態と言えるか、という問題がある。この点については、一本の複製物が通常予定している程度の人数を超えてソフトが送信される場合には「公衆送信」に該当するという見解も示されているものの、法的にはグレーゾーンである。このような場合には、LAN を用いてプログラムを使用することについて契約を締結することも必要になり、市販のプログラムの場合はシュリンクラップ契約の手法を採るメリットも大きい。
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