著作権法を根拠とした禁止措置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:27 UTC 版)
「映画の盗撮の防止に関する法律」の記事における「著作権法を根拠とした禁止措置」の解説
本法律を適用するまでもなく、日本の著作権法によれば、海賊版を作成し、流通させる目的をもって映画を録画・録音する行為は原則として著作権侵害にあたり(著作権法21条)、刑事罰の対象である(著作権法119条1項)。一方で、著作権法30条1項によれば、著作権者に無断で著作物を複製しても、その目的が著作物の私的使用であるならば著作権侵害とならない。 著作権法30条1項の存在は、著作権法を根拠とする映画盗撮の取り締まりを困難にしていた理由の一つであると指摘されていた。実際には海賊版の作成が目的で盗撮が行われていたとしても、盗撮者が本条文を盾として「録画・録音の目的は私的使用(家に持ち帰ってもう一度鑑賞し、保存しておくなど)である」と主張した場合、その主張を覆すことは容易ではなかった。海賊版業者はこういった事情を熟知しており、盗撮の実行者に対して、劇場の職員から行為を制止された場合には私的複製であると反論するように教育しているともいわれていた。実際に、暴力団関係者と思われる者が映画館の客席に堂々と三脚を立てて録画を行い、劇場の職員が制止しても「おまえは著作権法を知らないのか、これはおれたちが撮って私的に楽しむんだ、だからどこがいけない」と開き直られる事例もあったという。 著作権法には、映画館における録画・録音の時点では私的使用の目的があったとしても、その複製物を販売したり、複製した映画をネット配信したりするなど、私的使用の範囲を越えて利用した場合には、映画館で行われた録画・録音も複製(著作権法21条)とみなされて、結果として複製権侵害となる規定がある(著作権法49条1項1号)。しかし、映画館での録画・録音行為が事後的に著作権侵害となったところで、一旦、ネットに海賊版が流出してしまうと、全ての複製物を回収することは事実上不可能であり、権利者の救済を十分に図れないという問題があった。
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