三度目
★1.三度目にはじめて成功する・願いが叶うなど、前二回とは異なった状況になる。
『イソップ寓話集』(岩波文庫版)173「木樵とヘルメス」 斧を川に落とした木こりに、ヘルメス神は1度目は金の斧、2度目は銀の斧を見せ、3度目に、木こりが落とした鉄の斧を示す。木こりが「これが私の斧だ」と言うと、ヘルメス神は木こりの正直さを誉め、斧を3つとも与える〔*日本の昔話『金の斧』では、池の中から美しい女が出て来て、木こりに金の斧を見せる〕→〔真似〕1。
『白雪姫』(グリム)KHM53 継母(妃)が物売りの婆さんに化け、白雪姫が留守番をする小人たちの家へ、やって来る。継母は、1度目は胸紐で白雪姫を絞めつけて絶息させ、2度目は毒の櫛を白雪姫の髪にさして倒す。しかし2度とも、小人たちが白雪姫を蘇生させる。継母は、3度目は百姓女に化けて、毒りんごを白雪姫に与える。白雪姫は死に、小人たちが白雪姫をガラスの柩に入れる。
『杜子春』(芥川龍之介) 杜子春は、1度目は夕日に映る自分の影の頭の所を堀り、2度目は胸の所を掘って宝を得て、大金持ちになるが、2度とも使い果たす。3度目には、彼は金持ちではなく、仙人になることを願う。
『ペンタメローネ』(バジーレ)第5日第9話 王子が老婆からもらった3つのシトロンを切ると、美女が現れ飲み物を請う。1つ目・2つ目のシトロンの時は、見とれているうちに美女は消え、3つ目でようやく王子は美女に水を与えて、彼女と結婚する。
『列女伝』巻1「母儀傳」11「鄒孟軻母」 孟子の家は墓に近かったので、孟子は幼い頃、葬儀や納棺の真似をして遊んだ。母が「ここは息子を置いておく所ではない」と考え、市場のそばに引っ越した。すると孟子は商人の真似をした。母は再び引っ越し、学校のそばに住んだ。孟子は長じて大学者になった。
*3度目にようやく対面できる→〔分割〕8の『三国志演義』第37~38回。
*3度目に、まともな人間を造ることができた→〔猿〕7dの『ホーキング、宇宙と人間を語る』第6章。
★2.同じことがらが三度繰り返され、三度目にそれを受け入れる。
『法華経』「方便品」第2 霊鷲山(りょうじゅせん)上の世尊は、仏の永遠の生命について説こうとしつつ、「弟子たちは正しく理解できまい」と考えてためらった。弟子の舎利弗が説法を請うたが、世尊は「無益なことである」と言って応じなかった。再度請うても、世尊は断った。しかし舎利弗が3度請うと、ようやく世尊は、深遠な悟りの内容を語り始めた。
『法句経物語』第137~40偈 マハーモッガラーナ長老は盗賊たちに襲われたが、たくみに身を隠して逃れた。2度目に襲われた時も、うまく逃れた。しかし長老は、「たび重なる襲撃は偶然の出来事ではなく、過去生で自分がつくった悪業因の、必然の果である」と悟り、3度目には盗賊たちに身をゆだねて殺された〔*マハーモッガラーナ長老は過去世で、自分の父母を殺していた〕。
*3度目の命令で、エクスカリバーを水中に投げる→〔剣〕3の『アーサーの死』(マロリー)第21巻第5章。
『漢武故事』10 顔駟は、文帝・景帝・武帝の3代に仕えた。最初の文帝は学問を好んだが、顔駟は武芸が得意だった。次の景帝は老成した者を好んだが、その時まだ顔駟は若年だった。次の武帝は若者を好んだが、その時すでに顔駟は老人になっており、結局ずっと不遇だった〔*しかしこれを知った武帝は、顔駟を都尉に抜擢した〕。
★4.一度目はうまく行く。二度目は失敗する。三度目に意外な結末をむかえる。
『源氏物語』「帚木」~「空蝉」 源氏は、老受領伊予守の後妻空蝉と一夜をともにする。しかし空蝉は2人の身分・境遇の差を思い、2度目には源氏を拒絶する。拒まれていっそう恋心を燃やす源氏が、3度目に空蝉の部屋へしのび入り、そこに眠る女性をかき抱くと、意外にもそれは空蝉の継娘軒端の荻だった〔*空蝉は源氏の気配を察知し、外へ逃れ出ていた〕。
『今昔物語集』巻4-1 涅槃に入ろうとする釈迦が、「1刧の寿命をとどめようか、多刧の寿命をとどめようか」と阿難に3度問うが、阿難は3度とも答えなかった。
『マタイによる福音書』第26章 イエスが「今夜鶏が鳴く前に、あなたは3度私を知らないと言うだろう」とペテロ(ペトロ)に予言する。イエスが捕えられ、「その仲間ではないか?」と人々からとがめられたペテロは、3度否認する。その時鶏が鳴き、ペテロはイエスの言葉を思い出して泣く。
*ロドリゴが踏絵を踏んだ時も、鶏が鳴いた→〔禁制〕7の『沈黙』(遠藤周作)。
『にわとり』(中島敦) 「私」がパラオにいた時のこと。病気のマルクープ老人が、「たいへんお世話になった先生(=「私」のこと)に、鶏1羽を届けてほしい」と遺言して死んだ。ところが「私」の所へは、3人の男が別々の日にそれぞれ鶏を持って来た。つまり鶏が3羽も届いたのである。1人だけに頼んだのでは、猫ばばされる恐れがあるから、老人は万全を期して、3人に同じことを頼んだらしかった。
★7.三度目の仏頭。
『鹿政談』(落語) 奈良の大仏が出来上がったのは天平時代だが、その後、地震か火事かで首が落ちたことがある。それを修理すると、元禄時代に火事でまたこの顔が溶けて下へ落ちた。それを修理して、今のお顔は3度目だそうで、もうこれで大丈夫だ。「仏の顔も3度」と言うから。
*3度の異なった問いに、3度とも同じ言葉で答える→〔一つ覚え〕4の『魔法修行者』(幸田露伴)。
*3歩あるくだけで、遠方へ行ける→〔靴(履・沓・鞋)〕1aの『オズの魔法使い』(ボーム)・〔土地〕1bの『バーガヴァタ・プラーナ』(ヴィシュヌ神話)。
「三度目」の例文・使い方・用例・文例
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