相対性理論
相対性理論とは
相対性理論とは、アルバート・アインシュタインが発表した物理学の理論で、どこかに絶対的な原点を置く座標系ではなく観測者の立場によって互いの時空間が「相対」して変わるものとしてとらえるものである。一言でわかりやすく言うと光の速さは一定であるとし、時空間は歪むものととらえる理論である。重力は時空(時間と空間)のゆがみで表され、より大きい質量による大きなゆがみに他の物体が引き寄せられるとして重力を説明する。相対性理論は「特殊相対性理論」とそれを改良した「一般相対性理論」からなる。特殊相対性理論は1905年発表。一般相対性理論は1915~16年に発表された。特殊相対性理論内では式E=mc2(エネルギー=質量×光の速さの二乗)があり、簡単に言うとエネルギーと質量が変換可能であることを示す。相対性理論によってさまざまな物理現象を説明、予測できる。アイザック・ニュートンによる万有引力理論をより深く広範囲に適用できる優れた理論として、相対性理論は現代物理学の根幹を成すものとなっている。万有引力は重力を「引く力」と説明するが、天体を観測すると計算上合わない例外があった。相対性理論はこれを説明でき、理論の正確性は天体観測や高速ロケットを用いた実験により証明されている。GPSにもこの理論が使われており、相対性理論を使わなければ実際に誤差が生じる。英語では、相対性理論は「theory of relativity」。特殊相対性理論は「special theory of relativity」、一般相対性は「general theory of relativity」である。しばしば冠詞「the」をつけ「the theory of relativity」、また「アインシュタインの発表した相対性理論」という意味で「Einstein's theory of relativity」と書く。
特殊相対性理論とは
特殊相対性理論は慣性運動する観測者がどのように観測し、また他の観測者に観測されるのかについて述べた理論である。そこでは「光速度不変の原理」を土台に理論が展開される。これは、真空中では光源がどんなに動こうと光の速さは変わらないことを前提に考えるということである。例えば、電車に乗っている人が電車の床にボールを落とせばI字型に手元に跳ね返ってくる。同時に、静止した状態で電車を外から見ている人にはボールはV字形に移動しているように見え、より移動距離が長く見える。これをボールではなく光で考えると、光の速度は一定で変わらないので、電車の中の人から見える光の移動にかかった時間と、電車の外の人から見たより長い距離の光の移動にかかった時間が異なることになる。光の速さが変わらない代わりに、時間の進み方が観測者によって変わる。双子のパラドックス(または時計のパラドックス)はこのような時間の流れの違いを問題にした思考実験である。静止している人Aのもとを高速で離れて戻ってきた人Bは、静止していたAより時間の経過が遅くなっていることが特殊相対性理論から予測される。一方同理論から、高速で移動したBを基準とすればAが高速で離れていくように見えるため、Aのほうが時間の経過が遅いように見えるはずだ、というものである。このような二者の同時性を考えるとき時空図を用いそれぞれの座標を落とし込み理解することができる。また、空間も物体と別に存在するものでなく、時間と合わせて4次元時空と考える。物体は高速で動くほどその質量は大きくなり、運動方向に対して収縮する。
一般相対性理論とは
一般相対性理論では、重力を時空間の曲がりで説明し、より広範な状況における物理法則が扱われる。その実際の観測例となるのが「重力レンズ」である。これはブラックホールなど大きな質量によって曲がる空間により、ブラックホールより後方の天体があたかもレンズのように曲がる光となって観測者に届く現象である。1919年にエディントンが皆既日食を利用し太陽の重力によりわずかに曲がる光を観測したと発表し、相対性理論が注目を浴びることとなった。この理論では等価原理が重要な要素である。これは重力質量と慣性質量が等価であるとする考えである。例えば自由落下するエレベーター空間内部の無重力状態と、無重力空間にあるエレベーター内空間は内部の人間からはどちらも同じと捉えられるというものである。または、無重力空間で急上昇するエレベーター内で慣性の力を受けることと、地上で重力を感じている状態を同等と考える。これにより特殊相対性理論の「特殊」な状況に限定した事象からより一般的な事象を扱えるようになった。
一般相対性理論は物体、時間、空間を個別に扱わず互いに関連し不変ではないものとした。巨大な重力をもつ天体であるブラックホールの解明にも大きく寄与する。中心となる方程式はアインシュタイン方程式で、重力場の力学を記述する。この理論によって予言された重力波(大きな質量によってゆがむ時空が光速で伝播する宇宙物理現象)は、2016年に重力波望遠鏡で観測されたと発表された。
相対性理論と量子力学の概念の違い
量子力学は電子や光子などごく微小な世界から発展した現代物理学の分野である。素粒子の存在と位置を確率で求める。その始まりはプランクの「エネルギー量子仮説」である。非常に小さな値であるプランク定数を用い、ある振動数の光が持つエネルギーは不連続な量をとることを示す。従来の自然科学では自然現象の値は連続するものと考えられていたため、プランクの仮説は非常に画期的であった。ニールス・ボーアは原子内の電子の軌道半径(不連続な値をとる)について「量子条件」を提唱、原子が放つ光の振動数を「振動数条件」で説明し、量子力学に貢献した。量子力学は「観測」が結果に与える影響が大きく、観測者と観測対象を一元的に捉えなければならない性質がある。コペンハーゲン解釈では、素粒子は観測されていないとき「波」であり、観測によって波が収縮し確率的に一点に「粒子」として存在する性質だと考える。また、位置と運動量は同時に特定できない。このような素粒子の性質を実際観測するために「ダブルスリット透過実験」がある。この結果縞干渉が確認され電子の波の性質が確認された。
シュレーディンガーは波動関数(物質波の状態を示す)を含めたシュレディンガー方程式を発表し、波動力学が発展した。量子力学は発展途上であるがすでにコンピューターや電子機器には量子力学が使われており、量子コンピューターも開発されている。量子論以前の物理学は相対性理論も含め古典物理学に分類される。アインシュタインは光量子仮説を提唱し量子論に貢献したが、決定論的な物理学に固執し生涯量子論に賛同しなかった。ミクロの世界から発展した量子力学とマクロな世界で重力を扱う相対性理論は相性が悪く、双方の理論の統合が今後の物理学の課題となっている。
相対性理論
相対性理論とは、物理学の理論の一つで、アルベルト・アインシュタインによって提唱された。この理論は、物理法則が全ての慣性系で同一であるという特殊相対性理論と、重力を幾何学的に解釈する一般相対性理論の二つから成り立つ。 特殊相対性理論は、光の速度が観測者にとって常に一定であるという事実に基づいている。これにより、時間の経過や物体の長さが観測者の速度によって変わるという時間膨張や長さ収縮といった現象が導かれる。 一方、一般相対性理論は、重力を空間と時間の歪みとして理解する。これにより、重力の存在する場所では時間が遅く進むという時間の遅延や、光の経路が曲がる光の偏向といった現象が説明される。
相対性理論
「相対性理論」とは・「相対性理論」の意味
#アルベルト・アインシュタインが提唱した「相対性理論」とは・「相対性理論」の意味「相対性理論」とは、物理学者であるアルベルト・アインシュタイン氏により定義された現代物理学の基本的理論だ。特殊相対性理論と一般相対性理論の総称として相対性理論と言う。相対性理論を一言で言うと、時間や空間は相対的なものであり、光の流れは絶対的なものであるという理論だ。アルベルト・アインシュタイン氏は相対性理論を提唱し、当時の物理学を根本から覆した。
##時間や空間は相対的なもの
相対性理論の定義の1つとして挙げられるのは、時間や空間は相対的なものであるという考えだ。つまり、時間や空間は人によって異なり、同様ではないという理論である。通常で考えると、誰もが同じ時間の流れを共有し、1つの物質に対して同様の物として捉えると解釈されている。例えば、1分間は誰にとっても同じ1分間であると思い、50cmの物質もやはり誰にとっても同じ50cmであると思うのではないだろうか。
しかし相対性理論では、時間の速さや物質の大きさはそれぞれ見る者や感じるものによって異なるという定義である。つまり、これらは絶対的なものではなく相対的なものであるという理論だ。
アルベルト・アインシュタイン氏は時間や空間の相対的理論に関して、物理の専門家でない人に対して分かりやすく解説している。その内容とは、「ストーブに手を直接当てて1分間過ごす時間とかわいい女の子と一緒に過ごす1分間は同じ1分間とは言えない。ストーブに手を当てる1分間は1時間ほど長く感じるが、かわいい女の子と共に過ごす1分間は瞬く間に過ぎ去ってしまうだろう。それこそが相対性理論だ。」と述べている。
##光の流れは絶対的なもの
相対性理論のもう一つの定義として挙げられるのは、光の流れは絶対的なものという考えだ。アルベルト・アインシュタイン氏が相対性理論(特殊相対性理論)を発表する前は古典論的物理学に基づき、光の速さは完全に静止した物体から計測するものだという考えであった。
古典論的物理学の原点となったのは、速さの観点に対する疑問であった。例えば自動車が一定の速度で走行していた場合、静止した人物が感じる自動車の速度と並行して走行している自動車が感じる速度では速度の感じ方が異なる。そのため何を基準として速度を計測すればよいかという疑問点が生じた際に、宇宙において完全に静止している場所から計測すべきであるという考えを採用したのである。
しかし、アルベルト・アインシュタイン氏は古典論的物理学に対して相対的理論の根幹となる光の流れは絶対的なものと言う考えを投げかけた。どの慣性系から光の速さを計測しても変わることはなく、それは絶対静止系であっても動きを伴う物質であっても同じであるという理論の元にである。
##特殊相対性理論と一般相対性理論
アルベルト・アインシュタイン氏が1905年に発表した特殊相対性理論においては、時間や質量、長さといった概念は、観測者が存在する慣性系により異なる相対的なものであるが、唯一光の速さだけは絶対的なものと言う理論を提唱した。後の1915年から1916年にかけて発表した一般相対性理論では、特殊相対性理論の適用範囲を拡大し、重力と加速度運動を取り込んでいる。一般相対性理論においては、重力場における時空のゆがみをリーマン幾何学を基に提唱した。リーマン幾何学とは、曲面を変形した2次元のものとみなし、曲面上の幾何学を多元的に表現したものである。
特殊相対性理論と一般相対性理論に基づくと、物体が動くスピードは光の速さ(c)に近くなるほど時間は遅くなり、そして長さが縮んでいくこととなる。ある質量を持った物体が動く際には質量(m)に合わせたエネルギー(E)が必要だ。その関係式はE=mc2と表すことができる。
##相対性理論の法則式:E=mc2
アルベルト・アインシュタイン氏の相対性理論から導き出されたE=mc2は、わずかな物質でも膨大なエネルギーを持っていること、またはエネルギーから物質を誕生させることが可能ということを表している計算式だ。
わずかな物質が膨大なエネルギーを持つということの具体例としては、原子力発電などで用いる放射性物質の核分裂や核融合が挙げられる。エネルギーから物質を生み出すのは、加速器を用いて粒子と粒子を衝突させることにより、すべての物質の根源となる素粒子を発生させ、そこから物質が生成されるという仕組みとなっている。
相対性理論を表すE=mc2と言う計算式は、無限の可能性を秘めているため「世界で最も美しく、そして最も恐ろしい計算式」と称されている。
##時間は縮む
相対性理論によって時間は縮むということが立証された。光の速さに近づけば近づくほど物体の質量は増大し、必要となるエネルギーも比例して大きくなる。時間が相対的なものの具体例としては、ウラシマ効果が挙げられる。ウラシマ効果とは日本の昔話である浦島太郎に由来しているが、これは現代における宇宙船にも通じるものがある。例えば、光速で進んで行く宇宙船の搭乗員は、地球に帰還した際に年をとっていないことが挙げられる。なぜなら、1秒間に地球を7周半するのが光の速さであるため、宇宙船の搭乗員にとっての1秒は、地球上の人にとっての7.5日分となるからだ。そのため、地球を基準として考えると、宇宙船内では時間が縮んでいると考えられる。
##相対性理論の提唱者・アルベルト・アインシュタインの功績
相対性理論の提唱者であるアルベルト・アインシュタイン氏は、1921年に相対性理論でノーベル物理学賞を受賞した。同年には、科学に対する多大なる功績である相対性理論に対し、イタリア科学アカデミーによりマテウチ・メダルを授与されている。1925年には科学分野において最も歴史があるコプリメダルを授与された。その後もフランスやイギリス、ドイツで名だたる権威の化学賞を受賞している。
##平和主義者であったアインシュタイン
アルベルト・アインシュタイン氏は平和主義者であった人物だ。広島の平和活動家である谷本清牧師との面会時には、原子爆弾開発の根幹を成している相対性理論の発明を悔やみ、謝罪したと言われている。また、湯川秀樹氏と面会した際も同じく相対性理論に関する自責の念から涙を流して謝罪した。1955年に逝去する前年には、「もし広島と長崎に落とされた原爆の開発を予見していれば、特殊相対性理論の研究は破棄していたであろう。」と語っている。
##一般相対性理論の立証
特殊相対性理論は、アルベルト・アインシュタイン氏による高速粒子加速器を用いた実験で立証されている。しかし、一般相対性理論は、アルベルト・アインシュタイン氏により立証されてはいなかった。そのような中、2020年に東京大学の香取秀俊教授研究チームにより、一般相対性理論が立証されることとなる。光格子時計という300億年に1秒しか誤差が出ない超高精度な時計を用い、東京スカイツリー展望台と地上2か所において計測を実施した。すると、地上よりもスカイツリーの時間は速く進んでいたのである。この実験により、一般相対性理論に通じる「重力の小さい場所においては、重力の大きい場所よりも速く時間が進んでいる」ということが立証された。
#その他・日本のバンド「相対性理論」とは・「相対性理論」の意味
日本には相対性理論と言う名前で音楽活動しているバンドがいる。2006年の9月に結成され、2009年1月には、2枚目のアルバム「ハイファイ新書」がオリコンデイリーアルバムチャートで4位を記録した。2010年7月にはスマップのアルバムに楽曲提供し、アニメ作品『四畳半神話大系』のエンディングテーマ曲を手掛けている。近田春夫や高橋幸則、砂原良徳など日本を代表するトップテクノミュージシャンとのコラボも数々行っているバンドだ。
相対性理論は、ヴォーカルのやくしまるえつこ氏が中心のバンドで、そのほかのメンバーは数回チェンジしている。独特の歌詞とリズム、魅惑的なウイスパーヴォイスが評判となり、カルト的人気を誇っている。しかし、ヴォーカルのやくしまるえつこ氏の体力がないという理由からツアーなどは行っていない。相対性理論と言うバンド名の由来は、やくしまるえつこ氏の父が科学者であったことが由来となっている。
そうたいせい‐りろん〔サウタイセイ‐〕【相対性理論】
読み方:そうたいせいりろん
アインシュタインによって確立された物理学の基礎理論。1905年発表の特殊相対性理論は、光速度がすべての観測者に対して不変であることと相対性原理に基づいて、互いに等速度運動する観測者どうし(慣性系)に対して、電磁気学を含むすべての物理法則が同じ形で成立することを定式化したもの。この理論によると、時間は観測者によって異なるという相対的なものとなる。1915年発表の一般相対性理論は、等価原理と相対性原理に基づいて、互いに加速度運動する観測者どうし(加速系)を含む全座標系に対して、すべての物理法則が同じ形で成立することを定式化したもの。これによって万有引力の現象が説明された。
相対性理論
時間・空間・エネルギーの本質と関係を示したもの
アルバート・アインシュタインがつくり上げた相対性理論は、ニュートンの古典的力学の範囲で足踏みしていた宇宙の研究を、飛躍的に前進させました。想像するだけの未知なる世界だった宇宙を、まさに手の届くところまで近づけたのです。相対性理論は、時間・空間・エネルギーの本質と関係を示したもので、以後、現在にいたるまでのさまざまな宇宙理論をみちびき出すことになりました。「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」があり、かんたんにいうと、特殊相対性理論は限られた条件の運動に、一般相対性理論はすべての運動に適用されるのものです。一般相対性理論は、重力の影響による空間や時間のゆがみなど、衝撃的な内容と、それらが執に観測で実証されるなど、「予言」の劇的な証明とあいまって称賛され、20世紀最大の発見といわれています。
相対性理論
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概要
相対的に等速直線運動する2つの観測者(慣性系である座標系)の間において、物理法則は互いに不変とする相対性原理と光速度が観測者の速度の影響を受けず一定であるという2つの仮説・原理をもとに、絶対静止系のような定常的な計量に触れずに根本的物理法則を説明する試みがあり、1905年に論文発表された。今日「特殊相対性理論」と呼ばれているこの理論では、特に、光速に準じた高速移動をする観測者間の時間と空間の関係に対して、従来のニュートン力学よりも正確な理解が著され、ニュートン力学に見られた実験事実との齟齬を発展的に克服した。また、特殊相対性理論は、電磁気学における座標変換(ローレンツ変換)に関する理解を前進させ、電磁気学の理論体系をより発展させた。
特殊相対性理論に続いて、1915 - 1916年に一般相対性理論が発表された。一般相対性理論では、等価原理すなわち「速度の変動によって生じる重力と質量のもたらす重力とは区別がない」という仮説・原理から、非慣性系を含めたあらゆる座標系における力学現象の理解を進めた。具体的には、重力を座標系の計量として理解することで、特に、宇宙や巨大天体の構造と力学的挙動についての新たな理解をもたらした。
重力以外の他の力(電磁気力、強い相互作用、弱い相互作用)は、相対性理論の体系に付加的・補足的に組み込むことは可能であるが、相対性理論の根本的量子化を含めて、これら他の力との統合的・統一的理解は、なお現代物理学の課題となっている。
歴史

1905年、アルベルト・アインシュタインにより一つの論文(アインシュタインの原論文の一つ)が発表された。1906年の発表[2]において、マックス・プランクは相対論(ドイツ語: Relativtheorie)という表現を用い、 このセッションにおける議論の中でアルフレート・ブヘラが初めて相対性理論(ドイツ語: Relativitätstheorie)という表現を用いた。
特殊相対性理論の発表後、アインシュタインは対象を慣性系に限らずに適用できる理論の構築に取り組み、重力場について考察した一般相対性理論へと発展させた。1916年の論文で、重力場の基礎方程式であるアインシュタイン方程式の最初の定式化がなされた。1917年のアインシュタインの論文では、定常宇宙の前提のもとで宇宙定数が追加された。後にエドウィン・ハッブルらの観測により宇宙が膨張していることが明らかとなり、これに関わる宇宙定数の議論・理解も進められた。
特殊相対性理論
特殊相対性理論は、2つ(以上)の等速直線運動をする慣性系群について、両者に互いに区別はなく、対等・等価な存在であることを原理とした力学理論である。ここでは、光速度は物理定数として、あらゆる観測者(慣性系)からの観測に対して不変の定数である。また、宇宙の何処にも絶対的な距離や時間の普遍の尺度が存在せず(絶対空間、絶対時間の否定)、物理現象はただ観測者に固有の時刻・座標に基づいてのみ理解されるものであり、その観測者はすべてが等価である(相対的である)ことが示されている。これらは、光速度を有限と仮定し、慣性系から慣性系への変換、ローレンツ変換を考える際、ローレンツ変換は変換をこなった後と前では物理法則は変わらないという条件と、光速度は変わらないという条件から、計算すると、時間や空間は絶対ではないということが求められる。[3]
一般相対性理論
特殊相対性理論では慣性系のみを原則として扱う。一方で、一般相対性理論では、「観測者が感じる力」とは「座標系の加速運動」と等価であるとの原理を出発点として、力学現象を座標系の計量(時空間の歪み)として捉え、これを定式化している。この試みはアインシュタイン方程式として大成し、特に重力と物質の分布・運動に対する統一的な理論となった。細かく言うと、一般座標変換の普遍性と、一般相対性原理を利用している理論である。[4][5]
反「相対性理論」
相対性理論は、その意味することが正しく理解されたかということを別論として、物理学を始めとする自然科学の分野のみならず、社会的現象としても広く受け入れられた。
その反面として、その結論に同意できない立場などが、科学的反論ではなく、反-相対性理論とでも言うべき一種の社会的運動となった。特に、これはアインシュタインがユダヤ系であり平和主義者であるということが、国家主義者に嫌悪され、第一次世界大戦でドイツが敗戦した後には、パウル・ヴァイラントにより、『ドイツ物理学』を拠り所にした反相対性理論キャンペーンが張られたりもした[6][注釈 1]。
ドイツ物理学
物理学者の世界においても、ユダヤ的であるという理由でアインシュタインの業績を認めない、フィリップ・レーナルトやヨハネス・シュタルクらの「ドイツ物理学」の一派があった。彼らは、相対性理論の結果は認めるがそれをアインシュタインの成果としないという立場のゆえに、「E=mc²の発見はフリードリヒ・ハーゼノールに帰せられる」などの主張を行い、アインシュタインを「ユダヤ物理学」として攻撃した[7] 。
1921年にアインシュタインはノーベル物理学賞を受賞したが、これは光電効果の発見を理由としており、相対性理論を対象としての授与ではなかった。この理由の一つとして、ノーベル物理学賞は、それによって人類が非常に大きな利用価値を得るような物理学の最近の発見に対して与えられるべきものとされるが、相対性理論は当初、新しい現象を主張するものではなく、それまでに知られていた多くの現象を統一的に、より簡単に理解する一つの原理を与えるものであり、これが「発見」と言えるか、また、利用価値があるものかは未知であった[注釈 2]。もう一つの理由として、相対性理論は、純粋物理学の理論であるにもかかわらず、すでに政治的論争の対象になっており、もしスウェーデン科学アカデミーが、相対性理論に対してノーベル物理学賞を与えるとなれば、同アカデミーも、その論争に巻き込まれる危険があったためとされる[8]。
ドイツ物理学の一派は、ナチス政権が成立するとそれに同調したが、政権崩壊とともに勢力を失った。
疑似科学
第二次世界大戦終結後においても、相対性理論の結果自体を認めないという言説は散発し、書籍等にもなり一般に流布されているが、一般的な学術分野においては支持されておらず、マーティン・ガードナー『奇妙な論理』で取り上げられているように疑似科学とみなされている。
実用
光速に比べて「十分に遅い」運動現象を日常とする人類にとって、絶対時間の否定等の相対性理論の世界観は、直観として受け入れ難いものではある。しかしながら、多くの実験事実は相対性理論の思想あるいは帰結によく整合し、現代物理学の核心的体系の一つとなっている。このような、特殊相対性理論および一般相対性理論の成果とするところは、広く技術的な応用に取り入れられている[注釈 3]。
GPS
GPSは原子時計を使用しているが、人工衛星に搭載された時計は重力による時空の歪みによって地上との時間の流れにわずかな差が生じる。それを補正するために一般相対性理論が使用されている[9][10][11]。
脚注
注釈
出典
- ^ 『相対性理論とは コトバンク』 - コトバンク
- ^ Planck, Max (1906). “Die Kaufmannschen Messungen der Ablenkbarkeit der β-Strahlen in ihrer Bedeutung für die Dynamik der Elektronen”. Physikalische Zeitschrift 7: 753–761.
- ^ 『ランダウ・リフシッツ「場の古典論」』東京図書株式会社。
- ^ 『物理学者のすごい日常』インターナショナル新書。
- ^ 『アインシュタイン方程式を読んだら「宇宙」が見えた』ブルーバックス。
- ^ 矢野p.148
- ^ 矢野p.149-p.151
- ^ 矢野p.177-p.179
- ^ “【半導体】カーナビはアインシュタインのおかげ!!”. 2021年6月17日閲覧。
- ^ “GPSと物理”. 2021年6月17日閲覧。
- ^ “身近に潜む相対論”. 2021年6月17日閲覧。
参考文献
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この節には参考文献や外部リンクの一覧が含まれていますが、脚注による参照が不十分であるため、情報源が依然不明確です。
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- メラー 著、永田 恒夫, 伊藤 大介 訳『相対性理論』みすず書房、1959年。
- 矢野健太郎『アインシュタイン伝』新潮社〈新潮文庫〉、1997年6月1日(原著1968年)。ISBN 978-4101219073。
関連項目
相対性理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/12 02:33 UTC 版)
相対性理論での参加作品については該当記事「相対性理論」を参照。
※この「相対性理論」の解説は、「永井聖一」の解説の一部です。
「相対性理論」を含む「永井聖一」の記事については、「永井聖一」の概要を参照ください。
相対性理論
「相対性理論」の例文・使い方・用例・文例
- アインシュタインの相対性理論は計り知れないほど重要で偉大な発見である
- 私には相対性理論は理解できない
- 彼は特殊相対性理論を提唱した。
- その教科書は、相対性理論の一般的な入門書です。
- 相対性理論を理解する科学者は少ない。
- 相対性理論の創案者はアインシュタインであった。
- アインシュタインの相対性理論は私にはちんぷんかんぷんだ。
- アインシュタインといえば相対性理論を思い出す。
- アインシュタインという名から私達は相対性理論を連想する。
- 相対性理論.
- アインシュタインの相対性理論.
- 相対性理論は宇宙観を一変させた.
- アインシュタインの相対性理論は時間と空間に対する私たちの概念を大きく変えた.
- 相対性理論によって
- 彼女は新しい相対性理論を提案した
- 相対性理論はこれらの作者により俗化された
- この新しい理論はアインシュタインの相対性理論からの恩恵を受けている
- 特別な相対性理論または一般相対性理論に関連があるか、の対象となる
- 重力(等価原理に基づく)を含む特殊相対性理論の一般化
- 英国の理論物理学者で、相対性理論を量子力学に適用し、反物質と陽電子の存在を予測した(1902年−1984年)
相対性理論と同じ種類の言葉
- 相対性理論のページへのリンク