ウシ 利用

ウシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/25 08:02 UTC 版)

利用

食用

肉は牛肉として、また乳は牛乳として、それぞれ食用となる。食用は牛の最も重要な用途であり、肉・乳ともに人類の重要な食料供給源の一つとなってきた。牛乳も牛肉も、そのまま食用とされるだけでなく、乳製品や各種食品などに加工される原料となることも多い。

年老いて乳の出が悪くなった乳牛経産牛は、肉質は硬くなって低下し、体も痩せ細ってしまう[36]。21世紀初期の日本の場合、こういった個体は廃用牛の扱いを受け、安値でペットフード用など人間向けの食用以外に回されるのが一般的である[36]。しかし、再肥育して肉質を高めることで[注釈 3][36]人間向けの食用牛としての市場価値を“再生”させることに成功している業者もいるにはいる[36]

皮革

生薬

胆石牛黄(ごおう)という生薬で、漢方薬の薬材[注釈 4]。解熱、鎮痙、強心などの効能がある。救心、六神丸などの、動悸息切れ・気付けを効能とする医薬品の主成分となっている。日本薬局方に収録されている生薬である。

牛の胆石は千頭に一頭の割合でしか発見されないため[37]、大規模で食肉加工する設備を有する国が牛黄の主産国となっている。オーストラリア、アメリカ、ブラジル、インドなどの国がそうである。ただし、BSEの問題で北米産の牛黄は事実上、使用禁止となっていることと、中国需要の高まりで、牛黄の国際価格は上げ基調である。

現在では、牛を殺さずに胆汁を取り出して体外で結石を合成したり、外科的手法で牛の胆嚢内に結石の原因菌を注入して確実に結石を生成させる、「人工牛黄」または「培養牛黄」が安価な生薬として普及しつつある。

牛糞

糞は肥料にされる。与えられた飼料により肥料成分は異なってくるが、総じて肥料成分は低い。肥料としての効果よりも、堆肥のような土壌改良の効果の方が期待できる。また、堆肥化して利用することも多い。園芸店などで普通に市販されている。

乾燥地域では牛糞がよく乾燥するため、燃料に使われる。森林資源に乏しいモンゴル高原では、牛糞は貴重な燃料になる。またエネルギー資源の多様化の流れから、牛糞から得られるメタンガスによるバイオマス発電への利用などが模索されており、スウェーデンなどでは実用化が進んでいる。

また、インドなどの発展途上国では牛糞を円形にして壁に貼り付け、一週間ほど乾燥させて牛糞ケーキを作製し、燃料として用いている(匂いもなく、火力も強い)[38]

アフリカなどでは住居内の室温の上昇を避けるために、牛糞を住居の壁や屋根に塗ることがある。

胆汁

水彩画では胆汁をぼかし・にじみ用の界面活性剤として用いる。

タウリンtaurine)は牛の胆汁から発見されたため、ラテン語で雄牛を意味する「タウルスtaurus)」から命名された。


注釈

  1. ^ 古来日本の、牛に牽かせる屋形車である「牛車(ぎっしゃ)」はその一種。
  2. ^ より正確な元の数値が損なわれないよう、単位「千頭」でも表記しておく。
  3. ^ 番組内では「噛めば噛むほど味わい深い」と評している。
  4. ^ 日本では『続日本紀』などに記述が見られ、一例として、文武天皇2年正月8日条(ユリウス暦換算:698年2月23日の条)、「土佐国から牛黄が献上された」と記されている他、11月29日条(ユリウス暦換算:699年1月5日の条)にも、「下総国が牛黄を献上した」など、各地から献上品としての記録が見られる。

出典

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