反芻
「反芻」とは、人が思考を繰り返すことを意味する表現である。
「反芻」とは・「反芻」の意味
「反芻」とは、草食動物が、食べたものを胃から口に戻して、改めて咀嚼し直すことを指す言葉である。反芻を行う草食動物としては、牛が代表的である。牛は胃を4つ持っていて、食べた草はまずひとつ目の胃に蓄えられる。そこで微生物の力を借り、草の繊維を分解する。その際に、微生物の分解を助けるために、2つ目の胃がポンプとなり、消化中の草を口に戻す。そうして、咀嚼をし直すのが反芻のメカニズムである。反芻を行う動物は、蹄の数が偶数である、偶蹄目の中に含まれる。偶蹄類の中で反芻を行うものは、反芻類や反芻亜目と呼ばれる。反芻は、心理学の用語としても使用される。人間の記憶が、何度も思い出されてしまうことを指した言葉である。本来は脳の深いところに仕舞われ、そのまま忘れられるはずの記憶が思い出される様子を、草食動物の反芻に例えた比喩表現だ。心理学において、人の反芻は、鬱病などの疾患に繋がりかねないものと考えられている。また、精神疾患が原因で、引き起こされる反芻もある。
また、人が特定の記憶を定着させるために、何度も同じ内容について考えることを、反芻と呼ぶ場合もある。学生の試験勉強やビジネスシーンでは、限られた時間内に知識を身に付けるために、反芻が重要視されることが多い。
「反芻」の熟語・言い回し
反芻するとは
「反芻する」は、「反芻」を動詞形にした表現である。「反芻」は、草食動物が食べたものを胃から口に戻して噛み直すことや、人が同じ記憶を繰り返し思い出したりすることを表す名詞だ。そのため、「胃から口に戻して噛み直す」「同じ記憶を思い出す」といった動詞として使用する場合は、「反芻する」という表現を使用する必要がある。
反芻する癖とは
「反芻する癖」は、人が同じ記憶を思い出してしまうことが、癖になっている状態を示す表現だ。無意識の内に嫌な記憶が何度もフラッシュバックしたり、暇になると同じ記憶を思い出そうとしたりすることは、「反芻する癖」と表現できる場合が多い。
言葉を反芻するとは
「言葉を反芻する」は、人が頭の中で、記憶としての言葉を何度も思い出してしまうことを示す表現である。反芻では、言葉だけでなく、映像や画像などを思い出すことも多い。その中から言葉を思い出すことに限定するために、「言葉を反芻する」という表現が用いられる。
頭の中で反芻するとは
「頭の中で反芻する」は、人が脳内で、同じ記憶を繰り返し思い出すことを示す表現だ。同じ記憶を思い出す反芻は、頭の中で行われる。そのため、心理学における「反芻する」は、「頭の中で反芻する」と同義の表現として扱われる。
反芻思考とは
「反芻思考」は、人が同じ記憶を思い出してしまうことを指す言葉である。心理学における反芻は、反芻思考とほぼ同義のものとして扱われる。
反芻的とは
「反芻的」とは、何度も繰り返してしまう性質を指す言葉である。主に、人が同じ記憶を繰り返し思い出してしまう性質を指す。ただ、反芻類の動物のような性質を表すために使用することも不可能ではない。
反芻されるとは
「反芻される」は、「反芻する」の受け身表現である。人が繰り返し思い出す記憶や考え、反芻類の動物が食べたものなどが主語となる場合、「反芻する」ではなく「反芻される」を使用する。
「反芻」の使い方・例文
反芻類の動物が、食べたものを胃から口に戻して噛み直すことを指す場合、「反芻」は次のように使用できる。「この動物は反芻をするため、周囲には独特の臭いが漂っている」
「あの動物は牛に似ているが、反芻はしない」
「牧場の牛の中に数頭、上手に反芻ができていないものがいるそうだ」
人が同じ記憶を思い出してしまうという意味で使用する場合は、以下の表現となる。
「彼女は良くない記憶を反芻する傾向があるため、常にストレスを感じている」
「反芻思考を止めるために、心理カウンセラーに助言を求めようと思う」
「彼は、心理学で反芻を専門的に研究している」
「彼女は嫌な記憶を反芻しないよう、身体トレーニングに集中している」
ものごとを繰り返して頭に定着させるという意味であれば、以下のように使うことができる。
「今日覚えたことを忘れないよう、頭の中で反芻させているところだ」
「彼は反芻をする習慣がないから、大事なことをすぐに忘れてしまう」
「今日の講義では、教師が学生に対して、反芻して記憶を定着させる方法をレクチャーした」
反芻
反芻とは、反芻の意味
反芻とは、牛や羊などが一度飲み込んだ食物を胃から口の中に戻し、再び噛んでからまた飲み込むこと。転じて、言葉や経験についてくり返し考え、よく味わうことである。読み方は「はんすう」である。英語では、 rumination と表現する。反芻の「反」は「かえ(る)・かえ(す)」とも訓じ、くり返すといったニュアンスが含まれている。「芻」は「まぐさ・わら」とも訓じ、牛馬の飼料という意味合いがある。
反芻は「牛が草を反芻する」「反芻動物(牛や羊など)」「反芻胃」などの用法のほか、「思い出を反芻する」のように思考を繰り返すといった意味合いでも用いられる。
反芻の使い方、例文
反芻の類語
何度も思い出して考えるといった意味合いの「反芻」の類語には、「咀嚼(そしゃく)」や「思い出す」などの表現が挙げられる。反芻は、繰り返すという意味合いであるのに対し、「咀嚼(そしゃく)」は食物を歯で噛み砕くことである。転じて、細かくして分かりやすくするといったニュアンスもある(例:子どもでもわかるように文章を咀嚼して伝える)。「反芻」は何度も思考を繰り返すのに対し、「思い出す」は突発的に頭に浮かぶといったニュアンスでも用いられる(例:クラスメートの名前を思い出した)。反芻を用いた複合名詞の一つである「反芻思考」は、ネガティブなことを思い悩み続けることを指す。「反芻思考」が長引くと抑うつ状態などに陥ってしまう傾向にあることから、「抑うつ的反芻(rumination:ルミネーション)」とも呼ばれる。
反芻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/11 18:27 UTC 版)
反芻(はんすう、rumination)は、偶蹄目の草食動物の多くが行う食物の摂取方法。
出典
- ^ Matsuda I, Murai T, Clauss M, Yamada T, Tuuga A, Bernard H, Higashi S.Regurgitation and remastication in the foregut-fermenting proboscis monkey(Nasalis larvatus). Biol Lett. 2011 Mar 30. 外部リンクも参照のこと
- ^ 西川大志, 松永美希, 古谷嘉一郎、「【原著論】反すうが自動思考と抑うつに与える影響」 『心理学研究』2013年 84巻 5号 p.451-457, doi:10.4992/jjpsy.84.451。
注釈
- ^ ラクダ類より、反芻をしないイノシシ類やカバ・クジラ類の方が反芻類により近い関係にある。
- ^ 従来、偶蹄類中でも反芻亜目とラクダ亜目はどちらも反芻をすることから特に近縁と考えられていた。
- ^ この過程はシロアリが木を消化するのと同じである。
- ^ シロアリの多くの種では体外共生菌を通して利用される。
- ^ 反芻動物はそれらを吸収し、好気呼吸の基質とすると共に脂肪などの再合成を行う。
- ^ 哺乳類が消化吸収できる成分は反芻胃で共生微生物が事実上すべて利用してしまっている。
- ^ あくまで宗教上の定義であって、実際のウサギやイワダヌキは食べた物を胃から口へ戻す能力を持たない。
- ^ 反芻(反すう)思考、ぐるぐる思考とも呼ばれている。
反芻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/30 09:47 UTC 版)
ウシ目(偶蹄目)の動物(ウシ・シカ・ヤギなど)は、多くが一旦飲み込んで胃内に入れた食べ物を、胃から口中に戻して再び噛む反芻と呼ばれる動作を行う。また、4つの胃を持ち、第1胃には繊毛虫と細菌類が大量に住み、摂取した食物の分解発酵をしている。これらの消化機構により、他の哺乳類が消化吸収できないセルロースなどを栄養として取り込むことが出来る。
※この「反芻」の解説は、「消化」の解説の一部です。
「反芻」を含む「消化」の記事については、「消化」の概要を参照ください。
反芻
「反芻」の例文・使い方・用例・文例
- 改めて反芻してると、何だか恥ずかしいぞ。
- 彼は先生のことばをくり返し反芻した.
- (反芻動物について)咀嚼(反芻食塊)
- 反芻動物に驚くべき反芻の力がある
- 瞑想にふけっている間、牛が反芻するようにぐるぐると思いめぐらしながら彼は目前の静水域に目を休ませた
- 反芻する
- 牛は反芻する
- (反芻動物または豚のように)肢の末端にある2つの部分に分かれた蹄
- 反芻しない有蹄動物:馬
- 偶数の機能的な爪先を持つ、正獣下綱(ブタ、ペッカリー、カバ、および反芻亜目の動物を含む)の有蹄の哺乳動物の目
- 胃が4つ(時に3つ)の区画に分割された様々な反芻を行う有蹄類の総称
- 反芻動物の胃の最初の区画
- 反芻動物の第二胃
- 反芻動物の胃の3番目の部分
- 反芻動物の胃の4番目の房
- 空洞の角を持つ反芻動物
- ヤギの同類で、羊毛で覆われたたいてい角を持つ反芻哺乳動物
- 羊の近縁だが鬚とまっすぐな角を有する非常に多くの敏捷な各種の反芻動物
- 長い脚と上後方に向いた角を有する、旧世界産の優美な反芻動物
- 北米西部の平原地帯にいる駿足のカモシカに似た反芻動物で、小さくて枝分かれした角を持つ
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