反芻による消化吸収
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 03:49 UTC 版)
第一胃と第二胃で食物は唾液と混ぜ合わせられ、固形分と液体成分に分けられる。唾液には尿素など、共生微生物の成育を促進するものが含まれている。固形分は「食い戻し」と呼ばれる丸い塊になって口に戻り、再びよく咀嚼して繊維質を細かく砕きつつ、唾液と混ぜ合わせられる。細かく砕かれた繊維(セルロースやヘミセルロースなどを含む多糖類)および植物細胞質成分は、胃の中に共生する微生物(細菌と原生動物、それに菌類)によって分解・吸収される(この過程はシロアリが木を消化するのと同じである)。反芻胃内は嫌気性であるため、この代謝過程(発酵)で低級脂肪酸(酢酸やプロピオン酸、酪酸など)を主体とした低分子有機物が生産される。反芻動物はそれらを吸収し、好気呼吸の基質とすると共に脂肪などの再合成を行う。ただし、植物の構成成分としてセルロースと共に大量に含まれるリグニンはほとんど分解・利用されない(シロアリでは多くの種で体外共生菌を通して利用される)。また、生成された低分子有機物のうちメタン等の水に溶解しないものはゲップや放屁などで外部に放出されるため、これらも利用されない。 発酵が終了した食物残渣は共生微生物菌体と共に第三胃に送られ、水分を除去された後に第四胃に移る。第四胃で共生微生物体と食物残渣は消化され、その後小腸に送られ栄養が吸収される。このように反芻動物が実際に消化吸収しているのは、植物そのものではなく共生微生物およびその代謝産物である(哺乳類が消化吸収できる成分は反芻胃で共生微生物が事実上すべて利用してしまっている)ため、反芻動物は厳密には草食動物ではなく微生物食動物である、との見方もある[誰によって?]。
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