土壌改良
土壌改良
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/08 03:53 UTC 版)
土壌改良(どじょうかいりょう)とは、耕作に不適な土壌を改良し、圃場の地力(生産力)を増進させるために、土地に資材を投入して土壌の理化学性および生物性を改良することである。
土壌改良のための資材を土壌改良材と呼ぶ。広義には土壌の性質に変化をもたらす資材全般を指し、水はけといった物理性を改善する客土材などのほか、酸性土壌を矯正する石灰と言った肥料に分類される資材も一部含む。元来は1950年代に開発された、団粒形成を促進する高分子資材のことを狭義に指したが、現在は意味合いが広がっている[1][2]。1984年には地力増進法によって政令指定土壌改良資材が定められるようになり、1996年改正の同施行令では12品目が政令指定されている。
土の3相
土の3相(固相・液相・気相)の比率が4:3:3程度となっている土が、一般的に作物の栽培に適した土とされている[3][4]。
- 固相: 土の粒子などの固形成分(孔隙以外の部分)
- 液相: 土中水分
- 気相: 土中の空気部分
土の団粒構造
粘土や砂などの粒子、有機物由来の腐植などが集まって固まったものを団粒と呼ぶ。団粒によって構成される土壌は、団粒の内外に適度な毛管・非毛管の孔隙が存在し、排水性と保水性を兼ね備える(団粒構造)。これに対して団粒化が進んでおらず粒子がバラバラの状態(単粒構造)は、一般に構造が緻密になりやすく、粒子の細かい粘土であれば目詰まりを起こして水はけが悪くなったり、粒子の粗い砂であれば保水性に欠けるなど、作物の栽培に不都合を生じる。
団粒は、乾いた土地では硬い粒状に表れ、湿った土地では軟らかい塊状に表れる[5]。
粘土や腐植に由来する団粒は、マイナス電荷を帯びており、アンモニアやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの陽イオンを吸着し貯蔵する能力(陽イオン交換容量)を持つ。そのため一般に肥もちが良い[6][7]。
土壌微生物
豊富な有機物を含み、適切に管理された土壌中には様々な種類の微生物が生存し、お互いに影響を及ぼしあいながらバランスを保っている。この微生物バランスが崩れ、作物に害を与える細菌などの微生物が著しく増加すると、土壌病害を起こす。
土壌改良の方法
排水性の改善
粘質土の土壌は一般的に水はけが悪く、排水性を改善するために砂を投入するなどの土壌改良が行われることがある。
保水性の改善
砂質土において水持ちが悪い場合は保水力の改善のための土壌改良が行われることがある。粘質土の投入、ピートモスなどの保水性向上資材などの投入が行われる。
団粒化の促進
土の団粒化は微生物の働きによって生成された物質により粒子がまとまることにより進行する。このため有機物を適切に投入し、水分を微生物の活動が活発になるよう保持することで団粒化が促進される。一方で微生物によらずに土壌を団粒化する目的で高分子系土壌改良材が用いられることもある。
土壌改良材
土壌改良材、土壌改良資材とは、土壌に施用することで土壌に物理的、化学的、生物的変化をもたらし、農産物等に適する変化をもたらすことを目的として土地に施される物であると、地力増進法などに定められている[8]。また政府に認められた改良資材を政令指定土壌改良資材という。
- 有機質系:動植物の遺体が主成分である。
- 無機質系:鉱物を粉末に又は高温処理し多孔質にしたもの等。
- 高分子系:分子数の多い化学物質が主成分である。
- ポリエチレンイミン系
- ポリビニルアルコール系
出典
- ^ 川口桂三郎「土壌改良剤」『化学と生物』第1巻第3号、日本農芸化学会、1962-1963、 137-142頁、 doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.1.3_137。
- ^ 江川友治「土壌改良剤 フミン酸系の資材を中心に」『燃料協会誌』第42巻第9号、日本エネルギー学会、1963年、 620-627頁、 doi:10.3775/jie.42.9_620。
- ^ “土づくりQ&A 環境・土壌の物理性編 Q-07 土壌の三相分布とは?”. ホクレン農業協同組合連合会. 2017年7月21日閲覧。
- ^ 吉田吉明 (2009年8月4日). “美味しい農産物と土づくり 土壌診断にもとづく土づくりと効率的な施肥 第6回 露地野菜・畑作の土壌診断と土づくり(2)”. 農業協同組合新聞. 農協協会. 2017年7月21日閲覧。
- ^ “土壌の世界 どんな構造になっているの”. 国立科学博物館. 2017年7月20日閲覧。
- ^ これならできる自然菜園. 農文協. (2012年8月30日)
- ^ “「現代農業」用語集: 塩基置換容量(CEC)”. ルーラル電子図書館. 農文協. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 地力増進法 - e-Gov法令検索 第十一条 土壌改良資材の表示の基準
- ^ a b 政令指定土壌改良資材の概要 農林水産省
参考文献
- “土壌改良”. コトバンク. 朝日新聞社. 2017年7月20日閲覧。
- “土壌改良資材”. コトバンク. 朝日新聞社. 2017年7月20日閲覧。
- 「2 土づくりと施肥改善 土壌改良資材」 『神奈川県作物別施肥基準』神奈川県、2013年3月 。
- “団粒構造”. コトバンク. 朝日新聞社. 2017年7月20日閲覧。
- “単粒構造”. コトバンク. 朝日新聞社. 2017年7月20日閲覧。
- 「1 土壌の基礎知識」 『新潟県における土づくりのすすめ方』新潟県、2005年2月 。
関連項目
外部リンク
- 地力増進法及び関連法令等 - 農林水産省
土壌改良
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 09:05 UTC 版)
ミミズは土を食べ、そこに含まれる有機物や微生物、小動物を消化吸収した上で粒状の糞として排泄する。それによって、土壌形成の上では、特に植物の生育に適した団粒構造の形成に大きな役割を果たしている。そのため、農業では一般に益虫として扱われ、土壌改良のために利用される。表層性ミミズよりも土中性ミミズの方が土壌改良効果が高いとされる。また、ミミズは1日あたり体重の半分から同量程度の餌を摂取し、その糞が良質な肥料や土壌改良剤として利用できることから、積極的に生ごみ等の有機物をミミズの餌として与え、その糞を肥料として利用するミミズ堆肥化という手法がある。 進化論で有名なチャールズ・ダーウィンは、晩年、ミミズの研究もおこなっている。ミミズの土壌形成に果たす役割は人類社会において古くから知られていたが、それを最初に学術的に研究したのは彼であった。進化論の中で「植物が生えている土はミミズの体を何度も通ってきている」と述べている。最近では、このエピソードを紹介する子供のための絵本も出版された。 ただし、ツリミミズ科のサクラミミズ Allobophora japonica のように、糞として排泄した土塊がイネの苗を覆って機械による稲刈りに支障を与えたり、クソミミズなどは草地に生息し、地表に多くの糞塊を積み上げるのでゴルフ場の芝生を汚損することから、害虫として扱われるものもある。また、北アメリカの北部では、ミミズの増加による森林地帯の土壌荒廃が問題となっている。即ち、北米大陸の高緯度地方では、1万年余り前まで氷床に覆われていたため、ミミズは分布しておらず、氷床が消失して回復した森林は、ミミズによる土壌変化が不要な形で形成されてきたが、近年、釣り客が捨てたミミズが増殖したことにより、結果的に土壌を荒らされることとなり、被害が出ている。
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