薔薇十字
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「とある魔術の禁書目録の登場人物」の記事における「薔薇十字」の解説
アンナ=シュプレンゲル 超人的存在シークレットチーフと自在にコンタクトを取れる、特別なアクセス権を持つ魔術師。モデルはアンナ・シュプレンゲル(英語版)。赤みの強い金髪をロールにした上で平たく潰して先を束ねた変則エビフライのような髪型をした、10歳程度の少女の姿をしている。 古き魔術結社「薔薇十字」に所属するドイツ第1聖堂リヒトリーベレーベンの支配者で、ニュルンベルグに在住し、大陸側ドイツ式「黄金」の指導者としてウェストコットが頂戴した「シュプレンゲル書簡」で「黄金」創設許可を出したなどの逸話を持つが、「そのもの」をじかに目撃した人物は極めて少なく、証言の大半はあてにならない「名前だけの存在」。しかしながら、ある意味ではメイザースやアレイスターよりも「黄金」にただならぬ影響を与え続けてきたとも言え、つまりは魔術サイド全体と言い換えても過言ではないほどの存在。メイザースやウェストコットの女師匠アンナ=キングスフォードを正体とする説もある。一方、「所属する者はRC以外に自らを示すサインは残さない」という規律を無視していることから、掟を破る側の魔術師でもある。 伝承ではシークレットチーフである超越存在エイワスの巫女に相当する存在とされているが、実際には立場が逆で、エイワスを「愚鈍」呼ばわりして自在に使役している。オティヌスによれば、「魔神」からも脱線した別格の存在で、「魔神」を超えるほどの伝説的魔術師である。出力自体が学園都市第3位の美琴を遥かに上回っており、精神構造を掌握して支配するには最低でも天使を丸ごと奪う程度の力は必要らしく、学園都市の精神系最強である「心理掌握」でも操る事は不可能。 組織の上に立って世話焼きするのは、「黄金」がブライスロードの戦いで全てが灰に帰してからは懲り懲りだと思っていて、最初から力があったが故に常に満たされない思いを抱いており、頭の上を見上げて、天から舞い降りる奇跡を配給されて、教え導いてもらえたら十分だと思っているが、自分より上にはもう誰も存在せず、力で自分をねじ伏せて、口を開けているだけで見たこともない配給を与えてくれる真なるご主人様の存在を求めている。だが、誰かに支えてほしいと口にしているが、その気になれば自分一人で体重を支えられるから裏切りが怖くないのでいきなり手を離されても怖くないという本音が隠れており、結局は誰よりも成功や勝利にしがみついていて、それがなければ自分を保てない。上条は自分の特技の秘訣は教えないが自分だけの異能は見せびらかしたいというのは誰にとっても当たり前の感性で、自分の分は確保を終えているので自分の人生に手を抜いても満足できないと断言されている。また、正しいことを一から教えているのに、面倒くさがって勝手にショートカットして道を極めた気分だけをインスタントに味わい、失敗すると説明不足だと言って糾弾する相手をひどく嫌っており、説明を途中で遮られると普段の余裕が消えて非常に暴力的になる。「子供っぽさ」はアレイスターやメイザースをも上回るほどで、遊びのゲームにも一人だけ金切り声を上げてのめり込み、威風堂々としたミステリアスな歴史的人物のくせに全体からすれば取るに足らない細かいところを妙にこだわり、1つでも自分の思い通りにならないと異常なまでの癇癪を起こして、その解消のためなら魔術師以外の「素人」相手でも大人気ゼロの極大術式を平気な顔して振りかざし、躊躇もなく叩き潰そうとする。 マダム・ホロスに肉体を奪われており、100年以上前、アレイスターより先にエイワスを召喚して彼女を殺すように指示をしていた。なお、エイワスを派遣していたのは、アレイスターが独自に提唱していた突然変異に近いMagick系統と「薔薇十字」の隙間を埋めるためでもあった。 コロンゾンとの決着後、マダム・ホロスが死亡したことで復活を遂げ、オリジナルの「黄金」の唯一の生き残りであるアレイスターの最期にも特に感慨を示すこともなく立ち去った。インターネット上で魔術IT「R&Cオカルティクス」を立ち上げ、実体のないペーパー会社であるR&Cオカルティクスを構築するために、「薔薇十字」の遺産で生み出した古いルビーと純金細工をばら撒いて世界各地で協力を募った後、学園都市に侵入。12月24日にはR&Cオカルティクスを学園都市に広めた根丘を倒した上条に接触して宣戦布告、人が事前知識ゼロで異能に触れた場合に何をどこまで理解できるかを知るため、アレイスターが手を加える前の状態まで戻した上で、極限まで疲弊した上条当麻のどの側面が異能の力と結びつくかを観察する実験を行い、自ら手を加えた激症型サンジェルマンを上条に感染させる。同時にクリスマスという日時そのものを逆手に取った「自分が不幸ではないと確認するためのおまじない」を学園都市に蔓延させ、R&Cオカルティクスを利用した能力者たちに魔力を精製させ続けて大きな被害を与える。上条の命を救うために自分に挑んできた美琴と食蜂を容易く一蹴し、上条が入院している第7学区の病院までたどり着くが、上条がサンジェルマンと手を組んで2人で立ち向かってくるという想定外に見舞われ、最終的に薔薇の術式を解析されて敗北。その後は収監中の一方通行の隣室に投獄されるが、事前に仕込んであった「ニコラウスの金貨」でオペレーションネーム・ハンドカフスを破綻させ、「魔術の自由は科学の秩序に勝る」と断言し、自らも「ニコラウスの金貨」を用いて脱獄すると姿をくらました。脱獄後、頭脳と善性の奇跡的なバランスを持っていたメルザベスに従ってみようかと考えて行っていた悪趣味な計画の崩壊と、R&Cオカルティクス本社ビルの惨劇を世界の片隅からアラディアと共に眺め、ロベルトが巨大企業を倒すために掲げた正義が管理不能な恐怖政治を招くと予測していた。彼女達の本拠地へと迎え入れられるが、実はそれ以前からアリスに接触して上条の話を吹き込んでいた。そして船から脱走して思惑通りに上条に執心するようになったアリスを本拠地へと連れ帰り、計画が狂って怒りを見せる超絶者達を嘲笑う。12月31日には渋谷の喧騒の中に潜伏し、組織全体の利益を守るための口封じという名目で上条に倒されたアラディアを暗殺し、上条が「橋架結社」を許せない状況を作ろうとするが、アレイスターが復活させた天敵アンナ=キングスフォードに阻止され、何もできないまま呪符に封印されてしまう。 5本の指を五大属性に対応させ、指の折り曲げでオンオフを切り替え、掌の中で文字を自由に合成し、手に宿した天使を制御するという、ヘブライ語を使った薔薇の術式を操る。これにより、上条への当てつけでエイワスを右手に宿し、掌に触れるだけで次元や空間ごと削り取る「構造殺し(ストラクチャブレイカー)」、電気の流れる機械を爆弾化する「資源殺し(アーティクルブレイカー)」、自分を中心に周囲の物体を集めてスクラップの塊を遠心力で叩き付ける「重力殺し(グラビティブレイカー)」などの魔術を使った。また、絵画や音楽の中に潜んで人に寄り添う術式「プネウマなき外殻」により、銀色の輝きを放つ直径2m以上の巨大な金属球から「世界中どこにでもある」歴史や伝統といった世界最古のエッセンスを抽出し、多種多様な魔術を行使出来る。さらに、人体各部に対応するセフィロトの樹を応用し、当てた箇所の生命力の循環を遮る拳法を使う。 エイワス 詳細は「#エイワス」を参照 サンジェルマン ダイヤノイドに現れた「魔神」を名乗るもの。魔術サイドや一般社会でも有名であるサンジェルマン伯爵を名乗っている。外見は皆燕尾服を着た紳士のような外見で、藍花に接触した個体は金髪にバニースーツとジャケットという女性奇術師の舞台衣装のような恰好をしていた。 魔術サイドの中でも謎の多い存在。公式に初めて姿が確認されたのは1750年代のパリ社交界で、ミステリアスな魅力に溢れた話術の達人だったとされ、知識人の教養として一通りのオカルトを学んでいて薬品やダイヤの操作で持て囃された。自作の丸薬とカラスムギしか口にしないという伝説があり、不老不死の秘薬の製造に成功した魔術師とウワサされ、1784年ドイツにおいて公式の死亡・埋葬の記録はあるが、その後も20世紀末までたびたび自称サンジェルマンが現れている。オカルトの箔付けとして「薔薇十字」との関連も指摘されるが、開祖や弟子たちの伝説には名前が出ないので、後世になって合流した末裔と推測され、位階としては末席でドイツ第一聖堂への接触は確認されていない。 上条には自らを「オティヌスの先に立つもの」と名乗っていたが、オティヌスからはサンジェルマンは名前だけの存在で魔術サイドでは「稀代の詐欺師」とよばれ、主に宝石を操りダイヤのキズを治す伝説から炭素を操るだけの魔術師であるとされた。「魔神」としての振る舞いもアメリカによって中継されたデンマークでのオティヌスの外見と言動を参考にしての演技である。人間の頭にサンジェルマンとしての思想を同期、感染させることで、多数の人間をサンジェルマンに変えることができ、サンジェルマン同士では念話のようなものでネットワークが繋がっている。そのため「魔神」たちからもどんなに世界の位相を挿んでも新たに湧き出てくる存在として厄介視されていた。所々で黒い丸薬型の霊装「サンジェルマンの丸薬」を口にしている場面があり、インデックスとオティヌスの解析で、それが寄生性質を持つ数千数万の微生物を固めて乾燥させたものであり、乾燥機で生命活動を半分停止させた微生物たちが口の中に摂取されることで唾液などの水分で活動を再開させ人体を冒し、架空の人格を仮組みしてサンジェルマンと化すトリガーとなることが判明。よって、一本道の歴史で眺めると時代時代で断片的に目撃される、不老不死の存在のように見えていただけだった。無秩序に拡散する事で自己が希釈や変異を起こすことを恐れたのか、天然のサンジェルマンは代を重ねた事で侵食機能が弱まっており、特定の手順を踏まない限りは二次感染しないが、その一方で絶対に自然消滅することはない。 本質は微生物の群体であり、五臓六腑や血管神経を持つ肉体がないので、魔力の源となる生命力は宿主の肉体を使って確保する。また、他人の脳を使わなければ自分の思考を持続できない。肉体を分解する前の人間であったころは人に夢を与えたいだけの魔術師であり、街中で余興をして皆を驚かせ、嘘から始まった技術を誰かが追いかけて、いつの日か夢見た以上の偉業を成し遂げる誰かが現れるきっかけになることを望んでいた。しかし、魔術の道に走るきっかけの記録は自らの手で全て封印され、目的が謎めいている事からダイヤ操作の研究支援を目的とした詐欺やいたずらに政財界をかき乱す誇大妄想の持ち主として語られることが多い。 炭素を自在に操る術式「シャンボール」を得意とする。炭素で作った無数の槍による攻撃のほかに、植物細胞を細分化したうえで統合・最適化して作り出した植物質の猛獣の操作、一酸化炭素の放出、精製した石油やアルコールを引火させる、レーザー状のダイヤモンドカッター、炭素粉末による粉塵爆発といった様々な攻撃手段を備える。空気が汚れた環境なら大気を操作してダイヤの粒子を作り出すことも可能。 ダイヤノイドで上条に奇襲をかけた後、「藍花悦」を名乗る者に接触し、彼をキングアーサーの双子の妹であるアンの持つ盾の主と称して彼に傅き、フレンダの死を彼に伝えその原因を「上条当麻がいなかったから」と称して彼に上条への復讐を促す。盾の魔術の才を持つため超能力開発を秘密裏に受けていないという嘘をついて彼に魔術を使わせ副作用で上条との戦いの中で藍花を死なせることで上条の心を折ろうとした。さらに別の場所でグラビトン式の人工重力制御装置を利用し矮星爆弾を生み出し、地球を握りこぶし大の大きさに圧縮することで上条の抹殺を謀っていた。しかし、藍花悦が「加納神華」としての自分を取り戻し、サンジェルマンに反旗を翻したことで上条、浜面、麦野たち「アイテム」やステファニー、インデックス、オティヌスたちとの総力戦となり、インデックスとオティヌスにサンジェルマンのネットワークを破壊され、加納に殴り飛ばされて敗北する。 ダイヤノイドを襲撃した者は全滅したが、総数としてのサンジェルマンは世界中に散らばっており、時空を超えた不死なる存在となっていることから、その後も別のサンジェルマンが登場する。木原唯一は弱毒型サンジェルマンを利用して、上里から奪った「理想殺し」を自分に接続している。 また12月24日には、アンナ=シュプレンゲルが手を加えた軍用型と呼べるレベルの毒性を備えた激症型サンジェルマンが使い捨ての駒として上条に感染させられ、「幻想殺し」の処理速度を上回るスピードで増殖し、上条の体内で魔力を生成して副作用で肉体を蝕んでいた。しかし、宿主の説得を受けて夢を守るためにアンナに立ち向かうことを決意し、上条の肉体を使って炭素操作の魔術を使いながら彼女を撃破する。魔力精製の副作用で宿主が死亡するのを避けるため、最期は自ら「幻想殺し」の宿る右手へと移動し、命というクリスマスプレゼントを上条に渡して消え去った。 ダリス=ヒューレイン / キトリニタス アメリカ合衆国の副大統領にして、「薔薇十字」の精鋭魔術師。名門の家柄に生まれて八大学の一つを首席で卒業し、様々な人脈を駆使して秘書から政治家に上り詰めた。だが、書類の記録に残る学歴では圧倒的に劣るはずのロベルトに大統領選挙で敗れ、挙句に彼にお情けで副大統領に任命されたと感じ、自分の努力を否定されたと憤り、また科学的なテクノロジーを得た移民に生活を支配されることへの恐怖から、外から来た管理組織としてのR&Cオカルティクスに与する。 使用する魔術は薔薇系で奇跡の鉱物を生み出す4工程の3つ目で、合成物を黄の砂に埋めて適切に「発酵」させる「黄色化(キトリニタス)」を応用したもの。「砂」を被せた相手を腐らせることで「形のない養分」に置き換え、コールドスリープのように土壌の中へ染み込ませて「保存する」ことが可能。さらに上空を飛行する「ロジスティクホーネット」を利用して、液体窒素やナフサを搭載した宅配ドローンを自爆させることで寒暖の差を操り、気象条件を意のままにコントロール、砂嵐や竜巻といった複雑で大規模な砂の挙動を可能としている。工業用カッターのように超高圧で飛ばして建物を切断する、人形の口からレーザー砲のように大量の砂を吐き出して周囲を抉り取る、砂の柱でサンドバッグを作って防御する、砂を加工して鋭利なガラスの刃にする、立方体の砂岩で押し潰す、といった応用も可能。ただし、「黄色化」では「殺害」ができず、集団戦には不向きなのが欠点。 12月25日、学園都市とイギリス清教に間違った情報を与えて「オペレーション・オーバーロードリベンジ」を実行させ、R&Cオカルティクス本社ビルの切り札、真の護衛として、ヘルカリアを除く3,000万人の住民ごとロサンゼルスに存在する全生物を「消失」させる。顔に犬の顎のような籠を付けた球体関節人形に身を隠し、メルザベス=グローサリーを模した砂人形を連れ、「飼い主役と飼い犬役」を交換することで、どちらかが本物のメルザベスではないか、黒幕がメルザベスではないかと相手に疑わせようとしていた。真相を突き止めた上条を学園都市のファイブオーバーを操ることで殺害しようとしたが、イギリス政府からの情報でロサンゼルスに集結した全「妹達」に妨害され、ホワイトハウスにいた影武者の砂人形はオンライン討論会での迂闊な発言からロベルトに黒幕だとバレて銃撃戦と論戦の末に敗北、ステイルの「魔女狩りの王」が発生させた高熱でロジスティクホーネットによる気象操作を無効化され、最終手段だったロジスティクホーネットの墜落も、デジタル脊髄がメルザベスの無念に「共感」して自力で落下を止めたために失敗。最後は人形の外装と土人形に隠していた術式の核を上条に破壊され、オティヌスからは「結局4つ目の完結までは届かない魔術師」程度にしかアンナにも期待されていなかったと言われて、完全に戦意を喪失して逮捕された。
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