子供 日本語における表記について

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子供

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 04:00 UTC 版)

日本語における表記について

子供と浴衣兵主神社例祭(2011年)

日本における教育・法律・行政文書の世界では2000年代ごろ、「子供」という表記を差別的な印象であるなどといった理由で敬遠し、代わりに「子ども」表記を用いることが多くなった[68]

小中学校の国語においては「子」は小学校1年生で、「供」は小学校6年生でそれぞれ読みを学ぶ漢字であり、小学校の5年生までは交ぜ書きの「子ども」表記である[68]が、教科書においては小学校6年生以降でも出版社によって「子供」「子ども」両方の表記が混在していた。

例として、中学3年生の全社の検定教科書に収録されている魯迅の『故郷』では、学校図書教育出版光村図書が「子供」としているのに対して、東京書籍三省堂は「子ども」と表記している[68]。教員採用試験の参考書でも、かつての文部科学省の表記を根拠に「子ども」表記を推奨しているものがあった[68]。なお当て字ないしは誤表記として「小供」[68]や「子共」も見られた。

しかし、文部科学省が2013年(平成25年)5月に、省内で多用されてきた「子ども」の表記の経緯について調査。表記についての内規が存在しないことを確認した上で、文部科学大臣下村博文第2次安倍内閣)は省内での表記を統一するよう指示した。協議の結果、「子供」表記は差別表現ではないとの判断が示され[69]6月下旬から公用文に用いられる表記を「子供」に統一した[注 2][70]

「子供」表記への統一は、当初あくまで公文書に限るとされていたが、2010年代以降はこれに倣って公文書以外でも「子供」表記が以前に比べて増加傾向にある。前述の国語の検定教科書においても、これまで積極的に「子ども」表記を採用していた東京書籍なども、小学校6年生以降の教科書において「子ども」と表記していた部分を「子供」に改めている[71]。新聞社など民間のメディアは表記の統一を行なっていないが、毎日新聞の新聞記事における使用実態は2000年ごろ以降「子ども」表記が多数となったものの、2010年ごろ以降は再び「子供」表記が増え「子ども」と同数程度になった[72]。ただし、同社による一般へのアンケートによれば、「子ども」表記を好む読者が63.3%、「子供」表記は25.4%に留まり、「子ども」が優勢である[72]

2020年(令和2年)の神戸新聞の記事によれば、国語辞典編纂者の飯間浩明の意見として、「供」の字にまつわる差別的なイメージは「史実に基づいておらず、まったくの俗解です」と断言した上で、一方「日本語は漢字と仮名の交ぜ書きが普通であり、『子ども』が美しくないとは、必ずしも言えません」と、「子ども」表記のより柔らかなイメージについても肯定したことを紹介[73]。また、全国の地方紙にアンケートを実施したところ、多くの記者は「『子ども』の方が字面の印象が柔らかい(ので使用する)」と回答[73]。どちらの表記を選ぶかは書き手の自由であり、「ことさら競う」ことなく「好きな表記をすればよいと思います」とした[73]

児童文学作家の矢玉四郎は「子供は当て字であり、差別的な意味は全くない」と断言し、『子ども教の信者は目をさましましょう』という運動を展開している[74]


注釈

  1. ^ 公布は1911年(明治44年)。(国立公文書館「公文書にみる日本のあゆみ、明治44年(1911)3月」
  2. ^ 交ぜ書き廃止を求める団体が「子ども」表記の廃止を文科相に請願したことや、国会衆議院文部科学委員会)で交ぜ書き表記の是正についてたびたび取り上げられたことが一因とされる。(日本教育新聞、2013年7月15日)

出典

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