子供
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 04:00 UTC 版)
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考え方によっては、胎児も出生前発育をしている生命として子供に含める場合もある[3]。
また、親子や権威を持つ人物との相対的関係を表したり、氏族・民族または宗教内での関係を示す場合にも使われる。何らかの概念との関係を示すためにも使われ、「自然児」や「1960年代の子供」のように特定の時や場所または環境等の状況を受けている人の集団を指して用いられることもある[4]。
思慮や行動などが幼く足りない者のことも指して使われる用語もあり[2]、幼稚さや要領・主体性の無さを表す言葉として「子供っぽい」「子供らしい」「子供の使い」等の慣用句もある[5]。
なお、子供という単語は人間以外の動物にも使われたり[6]、生物に限らない、大きいものと小さいものが組みになっている状態を指して「子持ち」という表現にも使われる[7]。
自分の子、親と対になる意味の子
「子供」という言葉は、自分がもうけた子も指している[1]。広辞苑第五版では「子供」の解説の第一にその意味を挙げている[1]。大辞泉も「むすこ」(男性の子供)や「むすめ」(女性の子供)を挙げている[2]。
また、書簡において、「子供」は謙譲語として用いられる[8]。相手方を示すためには、「御子様(おこさま)」などの尊敬語が使われる[8]。
法的・社会的な基準
国際連合の児童の権利に関する条約(1989年の第44回国際連合総会で採択、1990年発効)では、子供を「
18歳未満のすべての者、ただし子供に適用される法律の下でより早く成年に達する場合は、この限りでない
」と規定している[9]。この条約は、加盟194カ国中192カ国で批准されている(日本:1994年批准)。英語の用法では、胎児も子供の範疇に含める場合がある[3]。
しかし、本来「子供」とその発達段階は明確に区分できない漸進的なものであり、その概念は歴史的に構築され、また社会や文化の相違が反映される。法律で大人と子供を定める際には、個人の成熟度合いを考慮していては法的安定性が欠如するため一律の線引きを置く必要に迫られる[10]。そのため、各法律の目的に沿って様々な用語を使いながら「子供」に対する個別の定義を行っている[11]。
日本での定義・区分
日本では、1896年(明治29年)制定の民法によって、20歳以上を成年と定めており(第4条)[12]、被選挙権(18歳以上[13])など一部の権利を除いて、飲酒(未成年者飲酒禁止法第1条)・喫煙(未成年者喫煙禁止法第1条)などを含む成人の権利が与えられる[11][14]。
- 未成年者 - 20歳未満(19歳以下)の男女[11][15]。ただし、2022年(令和4年)4月1日以降は18歳未満(17歳以下)の男女。
- 少年・少女 - 少年法第2条第1項の定義では20歳未満の男女[16]。児童福祉法第4条第1項の定義では小学校就学の始期から、満18歳に達するまでの男女[17]。
- 児童 - 児童福祉法第4条第1項の定義では満18歳に達するまでの者[17]。母子及び父子並びに寡婦福祉法第6条第3項の定義では満20歳に達するまでの者[18]。児童手当法第3条第1項や児童扶養手当法第3条第1項の定義では基本的に満18歳に達してから最初の3月31日を過ぎるまでの者[19][20]。児童の権利に関する条約第1条、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第2条第1項の定義では18歳未満の者[11]。労働基準法第56条の定義では満15歳に達してから最初の3月31日を過ぎるまでの者[11]。学校教育法第17条・第18条の定義では「学齢児童」とし満6歳になった翌日が属する学年の始まりから満12歳となった日が属する学年の終わりまでの期間にある子供[21]。道路交通法第14条第3項の定義では6歳以上13歳未満の者[11]。
- 小児 - 薬機法に基づく厚生労働省通知では7歳以上15歳未満の児[22]。
- 幼児 - 児童福祉法第4条第1項及び母子保健法第6条第3項の定義では満1歳以上就学前の者[11][17]。道路交通法第14条第3項の定義では6歳未満の者[11]。薬機法に基づく厚生労働省通知では1歳以上7歳未満の児[22]。
- 乳児 - 児童福祉法第4条第1項及び母子保健法第6条第2項の定義では生後1年未満の者[11][17]。薬機法に基づく厚生労働省通知では生後4週以上1歳未満の児[22]。
- 青少年 - 中学校卒業後20代前半くらいまでの男女(青少年保護育成条例の定義では18歳未満の男女)
- 青年 - 中学校卒業後20代後半くらいまでの男性(JICAの青年海外協力隊募集年齢では20歳から39歳まで)
- 婚姻適齢 - 民法第731条の定義では男性は18歳、女性は16歳から。ただし未成年者は父母の同意が必要(第753条)[11]。なお2022年4月1日以降は、男女とも18歳以降で、父母の同意は不要となる。
- 刑事未成年 - 刑法第41条の定義では14歳以上[11]。
- 年少者 - 労働基準法第57条、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第18条の定義では18歳未満の者[11]。
- 子ども - 国立国会図書館法第22条、独立行政法人国立青少年教育振興機構法第10条の定義ではおおむね18歳以下の者[11]。
- 新生児 - 母子保健法第6条第5項の定義では、生後28日を経過しない者[11]。薬機法に基づく厚生労働省通知では生後4週未満の児[22]。
- 勤労青少年 - 青少年の雇用の促進等に関する法律に基づく青少年雇用対策基本方針(平成28年厚生労働省告示第4号)ではおおむね35歳未満の者(おおむね45歳未満の者を対象とすることを妨げない)[11][23][24]。
また、人口統計学においては15歳未満の者を「子供」としており、総務省の人口統計でも15歳未満の人口を「年少人口」と定義している。
世界の定義・区分
国立国会図書館の調査によると、世界186か国中、成人となる年齢を18歳としている国は162にのぼる。これには、日本を除く主要国首脳会議(G7)対象国全てが該当する[14]。ただし、18歳成人は欧米諸国では1960-70年代に起こった若年層の活発な社会行動を反映して引き下げられたもので、イギリスでは1968年に定められた[14]。一方、アジアやアフリカの開発途上国では事情が異なり、早い年齢で負わせられる徴兵の義務に対応して選挙等の権利を与えるために成人年齢が設定されたとの意見もある[14]。
労働という観点から、国際労働機関 (ILO) は、ILO138号条約にて就業最低年齢をその労働内容に応じて3種類設定している。最低の年齢は、義務教育が修了する年齢とし、基本的には15歳と置くが、発展途上国では14歳とすることもできる。その一方で軽易な労働はもっと若い13歳(発展途上国では12歳)を最低年齢とする。逆に、危険な労働への就業年齢は18歳または適切な職業訓練を条件に16歳とする。なお、家庭内の農業や手伝い、アルバイトなどは対象外とする[25]。
イニシエーション
何かしらの儀礼を以って子供と大人を区分けする習慣があり、これらはイニシエーション(英:initiation、通過儀礼)の一つに上げられる。多くは試練や苦行、また身なりの変更などであった[26]。
日本では元服もこれらの一つに相当した[27]が、現在社会では廃れてしまっている。成人式も儀礼としては形骸化していると言えよう。
河合隼雄は「イニシエーションの欠如が問題になっている」と述べ[28]、ピーターパン・シンドロームや心理社会的モラトリアム発生の一因とも考えられている[26]。
注釈
- ^ 公布は1911年(明治44年)。(国立公文書館「公文書にみる日本のあゆみ、明治44年(1911)3月」)
- ^ 交ぜ書き廃止を求める団体が「子ども」表記の廃止を文科相に請願したことや、国会(衆議院文部科学委員会)で交ぜ書き表記の是正についてたびたび取り上げられたことが一因とされる。(日本教育新聞、2013年7月15日)
出典
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