和音
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古典的な西洋音楽の音楽理論では、和音が和音として認定されるためには最低3音が必要であることから、三和音を基本として考えられる(実際の音楽では2音だけが同時に鳴ることもあるが、これらはすべて三和音のいずれかの音が隠れているものと考えられることが多い)。ポピュラー音楽では、和音の定義というよりも、基本の響きとして四和音を基本として考えることが多い。
それぞれの和音の機能や使用例などは和声を参照。
和音の種類
三和音(五の和音、トライアド)
ある音(根音という)と、根音の3度上の音(第3音)と、根音の5度上の音(第5音)の3つの音から成る和音を三和音(英: triad、独: Dreiklang)という[1]。三和音には、長三和音、短三和音、増三和音、減三和音がある。
上記の三和音の一覧は次の通りである。コードネームは C を根音とするときのものを表記する。
- 長三和音(メジャー・トライアド)
- 根音・根音から長三度上の音・完全五度上の音からなる和音。長調の音階での第1音、第3音、第5音とからなるとも言い換えられる[2]。
- コードネーム:C、CM、CMA、Cmaj、C△
- 短三和音(マイナー・トライアド)
- 根音・根音から短三度上の音・完全五度上の音からなる和音。メジャー・トライアドの第3音を半音下げたものとも言い換えられる[3]。
- コードネーム:Cm、Cmin、C-[4]、Cmi、C-△
- 一般的にm、mi minなどアルファベットを使う場合、マイナーはメジャーとの区別をしやすくするため小文字で表記するが、一部では大文字が使われる(特にアメリカなどの英語圏)。
- 減三和音(ディミニッシュ・トライアド)
- 根音・根音から短三度上の音・減五度上の音からなる和音[5]。
- コードネーム:Cdim、Co、Co△、Cm-5、Cm(♭5)、C--5、C-(♭5)、C dim(triad)、Cdim△
- 三和音の表記であるdim(o)は、減七の和音dim7(o7)の意味で表記されることがある(特にジャズ)。おおむね楽譜によって統一が取られているので判断できるが、そうでなければ和声的な意味合いを読み取って判断する必要がある。
- 明示的にo△と表記されていれば必ず減三和音を表す。
- 増三和音(オーグメンテッド・トライアド)
- 根音・根音から長三度上の音・増五度上の音からなる和音[6]。
- コードネーム:Caug、C+、C+5、C(#5)、C+△、C△+5、C△(#5)
四和音(七の和音、セブンスコード)
三和音に、根音の7度上の音(第7音という)を加えた和音を、四和音(英: four notes chord)または、より一般的には七の和音(英: seventh chord、独: Septimenakkord)と呼ぶ。
- 属七の和音(セブンス)
- 長三和音に、根音から短7度の音を加えた和音[7]。
- コードネーム:C7
- 長七の和音(メジャー・セブンス)
- 長三和音に、根音から長7度の音を加えた和音[8]。
- コードネーム:CM7、CMa7、Cmaj7、C△7
- 短七の和音(マイナー・セブンス)
- 短三和音に、根音から短7度の音を加えた和音[9]。
- コードネーム:Cm7、Cmi7、C-7
- 短三長七の和音(マイナー・メジャー・セブンス)
- 短三和音に、根音から長7度の音を加えた和音。
- コードネーム:CmM7、Cm maj7、C-△7、C-M7、C- maj7
- ルート音を省略すると、「E♭aug(オーグメント・コード)」になっている事に注目できる。
- 減五短七の和音(半減七の和音、導七の和音、減五七の和音、ハーフ・ディミニッシュト)
- 減三和音に、根音から短7度の音を加えた和音。
- コードネーム:Cm7-5、Cm7(♭5)、Cmi7(♭5)、CØ、C-7-5、C-7(♭5)
- 俗に言うトリスタン和音。
- 減七の和音(ディミニッシュト・セブンス)
- 減三和音に、根音から減7度の音を加えた和音。
- コードネーム:Cdim7、Co、Co7、Cm6-5、Cm6(♭5)、Cm(♭7)(♭5)、Cm(-7)-5、C-6-5、C-6(♭5)、C-(-7)-5、C-(♭7)(♭5)
- 減三和音ではなく、減七の和音をdim(o)と表記する場合がある(特にジャズ)。おおむね楽譜によって統一が取られているので判断できるが、そうでなければ和声的な意味合いを読み取って判断する必要がある。
- 増七の和音(増五長七の和音、オーグメンテッド・メジャー・セブンス)
- 増三和音に、根音から長7度の音を加えた和音。
- コードネーム:Caug M7、CM7+5、CM7(#5)、C+△7、C△7(#5)
五和音(九の和音、テンションコード)
四和音に、根音の9度上の音(第9音)を加えた和音を、九の和音(英: ninth chord、独: Nonenakkord)または五和音と呼ぶ。
- 属九の和音(長九の和音、ナインス)
- 属七の和音に、根音から長9度の音を加えた和音。
- コードネーム:C9、C7(9)、C7(add9)
- 属七短九の和音(短九の和音、セブンス・フラット・ナインス)
- 属七の和音に、根音から短9度の音を加えた和音。また、♭9thのテンション音は、根音からオクターブと短2度の関係で、根音に対してナポリの音の関係にある。
- コードネーム:C7(♭9)
その他の和音
上記の他、次の和音などを独立した和音として扱うことがある。
- C7(#9) または C7(♭10)
- 属七の和音に、根音から増9度(オクターブ+短3度)の音を加えた和音。
- コードネーム:C7(#9)、C7(♭10)、C7+9、C7-10
- C7(11)
- 属七の和音に、根音から完全11度の音を加えた和音。
- Cm7(11)
- 短七の和音に、根音から完全11度の音を加えた和音。
- C7(♯11)
- 属七の和音に、根音から増11度の音を加えた和音。
- CM7(♯11)
- 長七の和音に、根音から増11度の音を加えた和音。
- C7(13)
- 属七の和音に、根音から長13度の音を加えた和音。
- C7(♭13)
- 属七の和音に、根音から短13度の音を加えた和音。
- Csus4
- 長三和音の第3音を根音から完全4度の音にした和音。クラシック音楽では第3音は次に完全4度から3度に解決。
- C7sus4
- 属七の和音の第3音を根音から完全4度の音にした和音。クラシック音楽では第3音は次に完全4度から3度に解決。
- Csus2
- 長三和音の第3音を根音から長2度の音にした和音。
- C6
- 長三和音に、根音から長6度の音を加えた和音。
- Cm6
- 短三和音に、根音から長6度の音を加えた和音。
- C69
- 長三和音に、根音から長6度と長9度の音を加えた和音。
- Cm69
- 短三和音に、根音から長6度と長9度の音を加えた和音。
- C(add9)
- 長三和音に、根音から長9度の音を加えた和音。
- C(add4)
- 長三和音の第3音を省かずに、根音から完全4度の音を加えた和音。(非常にまれである)
- C-5 または CM-5
- 長三和音の第5音を根音から減5度の音にした和音。
- C7-5
- 属七の和音の第5音を根音から減5度の音にした和音。
- C7+5 または Caug7
- 属七の和音の第5音を根音から増5度の音にした和音。
非和声音
和音と和音を連結して和声を形成する過程で、ある和音が響いているときに、その和音の構成音以外の音が鳴らされるとき、これらの音を非和声音、和声外音などと呼ぶ。非和声音は、解決を必要とする等、和音の連結や音楽の時間的経過といった要素を無視できないため、あくまで「和声」のなかから生まれるものであり、時間の経過や連結を無視した単一の和音に、元の和音の構成音以外の音を新たに加えても、別種の新たな和音(不協和音など特殊な和音を含む)になるだけなので「非和声音」とはいえない。
和音にない音が鳴らされると、より心地よく豊かな響きが得られたり、より張りつめた緊張感のある響きや、さらにひどいと刺激的で不快な響きが得られる。不思議ではあるが、非和声音を含む和音は、それがまったく同じ和音であっても、豊かに響いたり刺激的に響いたりと、相反する効果が得られることがある。それがどのように響くのかは、その和音の前または後ろに、どんな和音が置かれているかによる。作曲家や編曲家は、どんな和音(あるいは非和声音)をどう配置するとどんな響きが得られるか十分に習得していて、もっとも効果的な非和声音の使い方をする。たとえば、非和声音による濁りが耳に快く、また、旋律が和音の縛りから解放されれば、メロディの自由な動きが可能になる。音楽は緊張と弛緩とを巧みに織り交ぜることで表現をする芸術であるので、たとえば、非和声音による響きが耳につく刺激的なものであれば、それと対照的な安定して澄んだ響きの和音とつなげることで音楽的な面白さを表現することができる。これは、協和音と不協和音とをいかに扱うかと同じである。また、旋律に和音を付ける立場からすると、もし非和声音がなければ、旋律の一音一音に異なる和音を付けることになりかねず、和音進行が縛られるだけでなく非常に煩雑となってしまうが、いくつかの音を非和声音として扱うことによって、和音進行が柔軟になり、またゆったり動かすことができるようになる。
非和声音の分類法にはいくつかがあるが、一般には次のように分類する。
- 経過音
- 2つの離れた和音構成音の間を音階的に音が動くときに生じる音。
- 刺繍音(ししゅうおん)
- 補助音とも。ある和音構成音から2度上または2度下の音に行き、元の音に戻ったときの、2度上または2度下の音。
- 繋留音(けいりゅうおん)
- 2つの和音が続くときに、最初の和音の構成音のひとつが後続する和音の構成音でないにもかかわらず、後続する和音が鳴っても引き延ばされ、2度下行または上行して後続する和音の構成音のひとつに進行したときの、引き延ばされた音。
- 倚音(いおん)
- ある和音が鳴り始めたときにいきなり鳴らされる非和声音で、繋留音同様、2度下行または上行して和音の構成音に移行するもの。
- 先取音
- 2つの和音が続くときに、最初の和音が鳴っている間に、後続する和音の構成音のひとつである音が最初の和音の非和声音として先取りされ、後続する和音において、同じ音が再び鳴らされるときの、再び鳴らされる音(繋留音の逆のようであるが、繋留音がタイであるのに対し、先取音はタイで結ばれないのが普通)。
- 逸音(いつおん)
- ある和音が鳴り始まった後に、和音の構成音から2度上行または下行して鳴らされ、次の和音へ3度逆行して解決する非和声音。後続する和音への進行方向と逆方向へ3度異なる和声音へ解決する先取音の一種と見なすこともできる。
- 保続音
- 楽曲の最後に近いところで、低音が同じ音を鳴らし続け、その上で様々な和音がまるでその低音を無視するかのように進行するとき、この低音を保続音、オルゲルプンクトと呼ぶ。理論書により、低音の方を非和声音と見るものと、さまざまな和音の方を巨大な非和声音の集団と見るものとがある。
- 上の和音の一覧において、三和音以外の和音で、三和音に付け足された第7音、第9音、完全4度の音、長6度の音などをすべて非和声音の一種と捉える理論書もある。
テンション
テンションという言葉は主にポピュラー音楽で用いられるが、これも非和声音である。また、テンションを含む和音は不協和音である。
テンションの使われ方は大きく2通りに分かれる。テンションは非和声音であるので、従来のクラシック音楽で一般的な非和声音の扱い方、つまり前述の分類のように用いられることもある。テンションが和声音に解決することをテンション・リゾルブ(英: tension resolve)という。
もう1つの用法は、主にポピュラー音楽において、テンションを和声音と同様に扱う方法である。つまり、予備も保留も繋留も考えることなく用いるのである。
- ^ 幡野 2008, p. 120.
- ^ 幡野 2008, p. 120,121.
- ^ 幡野 2008, p. 123.
- ^ 幡野 2008, p. 122.
- ^ 春畑 2009, p. 115.
- ^ 春畑 2009, p. 114.
- ^ 春畑 2009, p. 106.
- ^ 春畑 2009, p. 107.
- ^ 春畑 2009, p. 108.
- ^ Gates, Jerry (2011年2月16日). “Chord Symbols As We Know Them Today – Where Did They Come From?” (英語). バークリー音楽大学. 2013年10月22日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年10月13日閲覧。
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