アジア主要都市の最低賃金
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アジア主要都市における最低賃金都市名最低賃金月給月給(ドル換算)発効日上海月額2,590元。パートは時給23元。中国国内では、最高額である。但し、上海市と北京市と安徽省では法定最低賃金に社会保険(養老保険、医療保険、失業保険など)と住宅積立金の個人負担分が含まれていない。社会保険(養老保険、医療保険、失業保険)と住宅積立金の個人負担分は含まれていないため、企業は別途支払う必要があるそのため、企業の実質負担額は公表額より高くなる。反対に最も低い額の地域は安徽省4類の月額1,340元(2022年4月現在)である。また、上海市は1993年に最低賃金制度を導入して以来、世界金融危機の2009年と新型コロナウイルス流行による影響により見送られた2020年を除いて毎年引き上げていた。近年は引き上げ額が減少しており、2014~2015年の200元を最高に、2016年170元、2017年110元、2018年120元、2019年は60元、2020年は110元と低下している。 中国では、国が定めた最低賃金規定(2004年施行)に基づき実施されており、31の省、自治区及び直轄市(北京、天津、上海、重慶)の地域単位で最低賃金額が決定されている。(労働法第48条により、国が制度を定め、具体的基準については省、自治区及び直轄市が定めるものとされている。なお実務上は、同一の省、自治区において、地域別の経済状況等を踏まえ、最低賃金基準を更に細かく分類して定めており、地区によって基準は異なっている。)最低賃金基準は少なくとも2年に1度調整するよう義務づけられている。ただし、景気の減速を受けて広東省などのように少なくとも3年に1度の調整に改めることを通達等で明記する動きも出ている。 なお、第13次五カ年計画(2016-2020)では、企業の負担能力を考慮した上で、労働者の最低生活を保証するため、最低賃金基準の調整幅と調整頻度を合理的に確定することを求めている。 但し、学生アルバイトは適用除外。 2,590 407 2022年7月1日 バンコクバンコクの場合、日額331バーツ。タイ国内では、地域別では3番目に高い額である。地域別で最高は、プーケット、チョンブリの336バーツであり、最低はナラーティワート、パッターニー、ヤラーの313バーツである。なお、2017年9月に労働者保護法が改正され、学生、訓練生、高齢者、障害者について個別に制定できることが明記された。このうち高齢者の最低賃金については現在導入に向けた検討作業が行われている。 また、2011年に技能別最低賃金が導入され、技能開発促進法により政府が認定した技能を習得している者に対する最低賃金を高く設定することで技能の習得を促進している。技能別最低賃金は、労働省技能開発局が定める国家技能基準に基づいて業種別に3つのレベルに分かれて定められている。2018年6月から金属加工、プラスチック加工、家具製造、靴製造の16の技能が新たに対象とされ、レベル1の場合日額340~ 500バーツ、レベル2の場合日額370~ 600バーツと設定された。今後も対象となる業種や技能が拡大される方針である。レベル1(基礎)のレンガ工の場合、日額345バーツであり、レベル3(上級)のガス溶接工は日額775バーツである。但し、中央・地方の行政機関, 農業, 国営企業等は適用除外。 7,171 230 2020年1月1日 ジャカルタジャカルタの場合、月額464万1,854ルピア。インドネシア国内で、最も高い地域は西ジャワ州ブカシ市で月額4,81万6,921ルピア、逆に最も安いのはジョグジャカルタ特別州(ジョグジャカルタ市除く)で184万916ルピアだった。 また、産業別最低賃金もあるが、産業別最低賃金は一般の最低賃金よりも 5%以上高くなければならない。また、2020年に制定された雇用創出法2020年11号(雇用創出オムニバス法)により、これまで県・市の業種ごとの最低賃金を定めていた「産業別最低賃金」(UMSK)は撤廃されている。 インドネシアでは政令2015年第78号により、翌年の州別最低賃金は「前年の9月から当該年の9月期の物価上昇率」と「前年第3・4四半期と当該年の第1・2四半期のGDP成長から得られたGDP成長率」の和で定められる。労働省は物価上昇率を3.39%、GDP成長率を5.12%と定めた上で、これらの和から、2020年の州別最低賃金上昇率を8.51%とした。一方、2021年の州最低賃金をめぐっては、イダ・ファウジヤ労働相が2020年10月26日、新型コロナウイルスの流行による経済悪化に対する労働者に対する保護と労働継続性を提供すると同時に、雇用者・企業の事業継続性を維持するために、2020年の金額から引き上げないよう調整を求める旨の回状を公布した。 日系企業の工場が集積するブカシ県、カラワン県の最低賃金は、国内最高水準にあるため、経営者側にとって高い賃金上昇率が主要な経営課題となっている。 但し、企業規模10人未満、土地と建物を除外した純資産額2億ルピア未満等の企業については、25%を限度として減額できる。経営不振で最賃支給が不可能な企業は、労働者との合意に基づき最低賃金猶予措置を申請し、最賃が発効する10日前までに当該地域の労働移住局を通じて知事に免除申請することが可能である。承認を受けた場合は、最大1年間適用が猶予される。なお、最低賃金は勤続1年未満の者に適用され、勤続1年を超える場合は、労働者・労働組合と使用者間の合意書により行われるが、最低賃金より低い賃金を支払ってはならない。。 また、2000年代に入り経済成長が著しいインドネシアでは、生活必需品目の金額が急激に上昇した。これに伴い、労働者の賃上げの要求も強まり、2013年改定時のジャカルタ特別州の最低賃金額は前年月額比較で153万ルピアから220万ルピアに約45%上昇した。その後も上昇を続け、2019年の最低賃金額は10年前と比較すると3.5倍となっている。 政令78号の全国的な浸透もあり、近年インドネシアでは全国的に最低賃金は上昇傾向にある。しかし、経済成長率と物価上昇率の前年比で一律に決められることに反発する勢力もあり、実際には州毎のほか、県、市のレベルでの地域的なばらつきが大きい。たとえば、2018年10月には西ジャワ州のデポック市で労働組合が、政府があらかじめ決めた最賃上昇率8.03%では不十分であるという理由で、前年比25%の上昇を知事に強く要求する運動を起こしている。中部ジャワ州のスマラン市でも労働組合が同様の要求を行い、同市は最低賃金を国の基準をわずかに上回る8.16%増の月額2,498,588ルピアに決定した。 インドネシアの最低賃金の決定過程では、州別の法定最低賃金額をベースに、上記のように地域別の状況が反映されており、そのための労使関係の不安定さが内在している。実際の企業の現場で労働者の不満をどのように解消するかという課題も残っている。さらに、インドネシアの就業者の構成をみると、インフォーマルセクターの就業者が多いことから、最低賃金が適用されない就業者も数多く見られる。 4,641,854 315 2022年1月1日 マニラ非農業分野はマニラ首都圏の場合、日給570ペソ。但し、農業分野と従業員15人以下の小売業又はサービス業、従業員10人以下(正社員)の製造業の場合は、533ペソ。地域別で最も高い額である。逆に低い地域は、イスラム教徒ミンダナオ自治地域(コタバト市とコタバト州の63のバランガイを除く地域の農業分野)の日給290ペソである。 2018年の最低賃金の改定に伴い、これまで基本給に上乗せされていた生活手当(COLA)を基本給に統合した。 フィリピンの最低賃金は、地域別及び職種別に最低賃金が全国17の地区で定められている。全国レベルの国家賃金生産性委員会により賃金ガイドラインが作成された上で、地域レベルの地域三者賃金生産性委員会(Regional Tripartite Wage and Productivity Boards: RTWPBs)がそのガイドラインに従い、最低賃金額を決定・公示し、異議申立て期間(15日間)を経て、最低賃金命令として発効する 国家賃金生産性委員会は、賃金及び生産性に関する大統領及び議会の諮問機関で、賃金ガイドラインを作成する権限や、地域三者賃金生産性委員会が設定した最低賃金が適正かどうかを審査し、政府に勧告する権限を有する。委員の任期は5年で、労働雇用省(DOLE)長官を委員長、国家経済開発庁(National Economic and Development Authority)長官を副委員長とし、政府側から3人、使用者及び労働者代表からそれぞれ2人ずつにより構成される。 最低賃金命令は発令の日から1年間有効。 最低賃金は、以下の事項を考慮して決定されなければならないとされている。 労働者及びその家族が生活可能な額であること 使用者及びその産業自体の支払い能力を考慮した額であること 現行の賃金水準や物価の動向を考慮した額であること 国家経済の発展に資する額であること 但し、家事労働者, 個人用運転手等は適用除外。また、地域三者賃金生産性委員会により財政難であると認定された企業、新規企業及び自然災害に被災していると認定された企業、 従業員数10人未満の小売・サービス業は申請に基づき、適用除外することができる。 右列は非農業分野の最低賃金についての値を表記する。 12,350 257 2022年6月4日 ホーチーミンベトナムの最低賃金は、民間部門労働者に適用される地域別最低賃金と公務員など公的部門労働者に適用される一般最低賃金の2種類がある。前者の場合、ハノイ市、ハイフォン市、ホーチミン市を含む地域1の最低賃金は2022年7月は月額468万ドンとなった。ベトナム国内では、最高ランクの額である。他の地域は、地域2(ダナン市、バクニン省など)が416万ドン、地域3(ハナム省など)が364万ドン、地域4(地域1~3以外)が325万ドンである。 また、2022年の最低賃金額は、政府代表の労働傷病兵社会福祉省で構成する国家賃金評議会に沿う形での決定となった。 地域別最低賃金の適用対象労働者は、企業(外資系企業を含む)、協同組合、農業従事者、家族、個人及び機関・組織で働く労働者である。労働者及びその家族の生活の必要性、経済社会状況及び実勢賃金に基づき、政府の諮問機関である国家賃金評議会(労働法第92条及び政令49/2013/ND-CPに基づき設置された評議会で、労働傷病兵社会福祉省、ベトナム労働総同盟、中央レベルの使用者代表組織の3者により構成される。)の提案により、地域別最低賃金額が公表される。 後者の場合の公務員の最低賃金は、月額149万ドン(2019年7月現在)である。この最低賃金は、社会保険制度の保険料算定・給付基準として用いられている。 一般最低賃金は国営機関、政府機関、国営企業法に基づく企業で働く労働者を対象とし、国家予算の状況を鑑みて決定される。但し、職業訓練を受けた職務もしくは職位(企業により訓練された労働者を含む)は地域別最低賃金より最低でも7%以上高くすることが、2022年6月まで定められていた。2022年7月以降は、上乗せの規定はなくなったが、労働者の合意なく引き下げることはできない。 右列は民間労働者の最低賃金についての値を表記する。 4,680,000 202 2022年7月1日 ミャンマー日額は4,800チャット。ミャンマーには最低賃金を定める法律(1949年最低賃金法)があったものの、50年以上の間、実質的な効力がない状態だった。そのため軍事政権から民政移管後の2013年に実効性をもたせる目的から新たな法律が制定され、2015年9月から全国一律で日給3,600チャットとして施行されている。法律は2年に一度の最賃額の見直しを定めており、2017年2月、引き上げを検討する委員会が設立された。最低賃金の引上げを検討する委員会の設立 ミャンマーの最低賃金は、政労使の代表が参加する国家最低賃金策定委員会(National Committee for the Minimum Wage)で審議される。代表はそれぞれ、政府が閣僚級、労使が産業別業界団体やナショナル・センターなどで構成されている。最低賃金法は2年ごとの見直しを定めており、2015年9月に設定された1年後くらいから労組を中心として引上げの必要性が指摘されていた。労組側からは5600~7000チャットへの早期の引上げの必要性が訴えられていた。本格的な見直しの審議が始まったのは2017年10月からで、労働組合側は5600チャット、使用者側は4000チャットをそれぞれ主張していた。国家最低賃金策定委員会の審議は2017年12月までに終了し、日額の法定最低賃金を4800チャット(1日8時間労働)、時間給は450チャットから600チャットに引き上げとする決定が2018年1月2日に発表された。公表後、2カ月間の意見公募期間が設けられ、4092件の意見や苦情がよせられた。労働者側の意見のほとんどが5600チャットの要求を支持するものだった一方で、使用者側の意見では4000チャット以上は支払い不可能というものだった。こうした意見を踏まえて地域別および国レベルの最賃委員会で労使が話し合いをもち、3月5日に当初提案通り、4800チャットとする決定が下された。 従業員10人未満の家族経営や小規模な事業、政府又は地方政府の公務員、船員を除き、全業種を対象に全国一律に適用されている。更には、試用期間以前の必要な技術研修の期間については、3 か月以内であれば、最低賃金額の 50%を下回らない額を支払うことも認められる。また、試用期間中においては、3か月以内であれば、最低賃金額の75%を下回らない額を支払うことも認められる。これらとは別に、経済特区(SEZ)内については、最低賃金法第9条に定められているとおり、SEZ管理委員会が投資事業別に最低賃金額を決定の上、管区あるいは州の最低賃金策定に関わる委員会と協議し、国家委員会(政府[閣僚級]や産業別労働者・事業者[縫製業界を含む]などで構成される。)に提出後、閣議決定を経ることとなる。 104,000 81 2018年5月14日 ※月給は、最低月額はそのまま、日給額からは、日給額×5日×52週÷12で計算した。 ※為替レートは1米ドル当たり6.37元、31.159バーツ、14,718ルピア、48.00ペソ、23,201ドン、1,285チャットで計算した。 上記の最低月額(ドル換算)が、81~407ドルと日本の最低賃金(全国加重平均額)のおおよそ6~29%である。また、2020年時点で、一般工(正規雇用の実務経験3年程度の場合。ただし請負労働者および試用期間中の作業員は除く。そして、横浜の場合は、企業規模100名以上500人未満の基本給[ 時間外手当を除く]で働く技術係員[平均年齢:36.4歳]の月給金額)の賃金は、日本(横浜)は3,040ドルに対して、上海は686ドル、バンコクは447ドル、ジャカルタは421ドル、マニラは272ドル、ホーチーミンは266ドル、ミャンマー(ヤンゴン)は181ドルであり、日本の賃金に対して、おおよそ6%~23%である。その為、人件費を圧縮し、生産コストを抑えることが出来る。また日本では、1980年代後半から海外移転が始まり、1990年代半ばから加速した。しかし、海外移転の影響により、空洞化が起こる。その為か、製造業の就業人数が減少し、特に繊維産業は、2010年の就業者数が90年対比で4分の1まで低下している。 但し、日本では2014-2015年度以降、製造業の国内回帰が一定程度、進展している。背景には、主に4つある。 新興国での賃金の上昇、労働争議の増加といった生産コストの上昇がある。品質管理、知的財産権侵害や技術流出といった面での新興国の生産リスクが顕在化したことも、国内回帰を促した。 2000年代半ば以降上昇し、2008年から2014年半ば(世界金融危機直後の2009年を除く)にかけて高騰した燃料価格も、輸送コストの上昇を通じて、海外生産のコストを相対的に高めていった。 3Dプリンターや産業用ロボット等の技術進歩・普及により、より少ない労働力での生産が可能となり、賃金の高い先進国で生産する優位性が相対的に高まったことにある。2017年9月に発表された、オランダの大手金融機関INGのレポート(”3D printing: a threat to global trade”)は、3Dプリンターによる生産は、従来技術に比べ労働力や原材料を必要としないため、同プリンターの普及は、低賃金国で生産するメリットの低下や原材料輸入の減少を通じて、世界貿易を押し下げるとする。同レポートは、3Dプリント技術への投資が現在のペースで続くと、2060年までに世界貿易の1/4が減少すると予想している。 2012年半ば以降、円安が進展したことがある。大和総研のレポート「最近の国内回帰の動きと今後の展望 2012年秋以降の円安進行の効果が一部で顕在化」によると、歴史的に、円安に転じてから2-3年程度遅れて、海外売上高比率や海外設備投資比率が低下する傾向にあるという。日本の製造業の国内回帰傾向は、まさに円安に転じてから2-3年後に起こっており、円安が影響している可能性が高い。 また、国内の顧客の要求に素早くフレキシブルに対応するために、より顧客と距離の近い国内生産にシフトする事例も見られる。 だが一方、雇用面では、国内回帰の傾向はより限定的である。背景には、省人化投資の活発化がある。例えば、キヤノンは2017年9月、宮崎県にデジタルカメラの新工場を建設すると発表したが、ロボット等を駆使する自動化ラインを導入し、競争力を高め、2019年8月操業開始を予定している。もちろん、工場新設は新規雇用を生むが、人間の仕事の一部がロボットで代替されるために、投資・生産に比べ、雇用創出効果は限定的となる。 また、世界金融危機で落ち込んだ産業用ロボットの販売台数が2010年以降、急速に成長しており、省人化投資が進展していることが分かる。 また、国内回帰は日本だけでなく、アメリカやイギリスにもみられた。アメリカの場合、前述した新興国の賃金上昇や燃料価格高騰による輸送コストの増加、3Dプリンターや産業ロボットの普及だけでなく、2000年代半ばから、シェールガス・オイルの商業生産が可能となった結果、化学等エネルギー産業への国内投資が活発化した。また、国内の燃料コストが低下することで、米国で生産するメリットが増し国内回帰を促した。加えて、世界金融危機以降、オバマ政権、トランプ政権ともに、製造業の復活や国内回帰を目指し、税制改革、規制緩和、職業訓練の拡充など各種政策を講じてきてきたからである。 イギリスの場合も、政府が2014年から“Reshore UK”という国内回帰促進のためのワンストップ・サービスを開始した。情報提供やコンサルティング、不動産探しの支援、中小企業への財政支援などを通じてイギリス企業の国内回帰を促進しているからである。 2010年代頃より、チャイナリスクを懸念し、国内回帰ではなく中国からASEAN諸国のベトナム・ミャンマーに移す企業が現れている。1例として、日本における衣類の輸入相手国比率が、中国からは2008年の84.8%をピークにして2017年には63.1%にまで大きく低下した。代わってベトナム、インドネシア、カンボジア、ミャンマー、バングラデシュの5ヵ国(特にベトナム)が上昇している。 これは中国に集中した供給体制を分散してリスク低減を図る動きの証左といえるが、最低賃金が、2007年を境に中国とこれら5ヵ国との水準が乖離し始めており、賃金格差が生産シフトを促した要因であるとみることができる。 中国では賃金の上昇によって産業の移転が起こっている。21世紀に入ってから、世界最大の靴製造地域、珠江デルタの製造コストは急速に上昇し、外資系靴製造企業は次々とベトナム、インド等の東南アジアの国々へと移転している。アジア靴製造業協会の調査結果によると、2008年~2013年の間に、東南アジアの靴製造業が中国から30%の注文書を奪い去ったといい、中国の1,900万あまりの靴製造業従業者は極めて大きな衝撃を受けてきた。 中国大陸東部沿海地域の労働者の月給は約500ドルであるが、インドは約300ドル、ベトナムは約250ドルで、ベトナムの労働者の月給は中国の労働者の半分にすぎない。例えば、生産ラインを東南アジアに移管して、1万人を雇用した場合、1年で2000万-3000万ドルの人件費削減になる。 また、中国での靴製造企業経営は、労働力コストの上昇(2003年から2013年までに中国製靴業の工員の給料は3.5倍に伸びた。)とともに、人民元の値上がりやその他のコストの上昇で、その利益をほぼ蚕食されている。靴製造業は加工型の労働力集約型産業であり、低級部署、低技能、低賃金を特徴としているため、法定最低賃金の引き上げはその労働者の賃金上昇を推進する役割を果たすはずであった。ところが、物価の上昇、経済的レベルの向上とともに、出稼ぎ農民の機会コストは増加し、賃金と人件費コストの上昇はすでに必然的状況となった。つまり、市場経済下で賃金上昇を決める市場メカニズムの作用が、政府による法定最低賃金引き上げの作用を超えたわけである。 新興国と日本の最低賃金格差 外国人労働者は、介護や建設業といった人手不足の業種を中心として、存在感を高めている。特に、単純労働や肉体労働に従事する外国人留学生や技能実習生は近年大きく増加している。 第一生命経済研究所の星野卓也によれば、日本と新興国との間の最低賃金格差は、新興国の経済成長により、縮小している。そのため今後、日本で働く動機となっている賃金の高さが薄まってしまい、外国人労働者に頼ることは、出来なくなる可能性が出てくると指摘している。 具体的には、日本との最低賃金格差は、2005年と2018年(フィリピンは2016年)の値とIMF「World Economic Outlook」の一人当たりGDP を用いて延長推計した2024年(フィリピンは2022年)を比較すると ベトナム:46.1倍→22.0倍→16.8倍 ネパール:30.1倍→10.8倍→7.9倍 フィリピン:6.6倍→4.1倍→3.1倍 中国:14.4倍→3.6倍→2.8倍 と、最低賃金格差が縮小していること、そしてこうした傾向は今後も続いていくことが分かる。 また、中国では、日本に渡航して働くことは、渡航費用や語学などの研修費用の負担を差し引いても、割りに合わなくなりつつある。そのため、企業によっては、中国人から日本人へ雇用を切り替えている企業も出ている。 隣国の韓国や台湾は、日本と同じく少子高齢化やそれに伴う人手不足を理由に、外国人労働者をすでに積極的に受け入れている。そのため、日本との獲得競争が生じてくることが予想される。 韓国の外国人労働者数は96.2万人(2016年時点、韓国統計局)、台湾の外国人労働者数は70.6万人(2018年時点、台湾労働省)。全人口に占める割合は韓国1.9%、台湾2.9%、日本1.2%である。 3国の中で日本は長らくトップに立っていたが、賃金面では2018年に日本と韓国の水準が逆転し、韓国がすでに優位に立っている。 いずれにしろ、「単純・肉体労働の人手不足は外国人に」という発想のみでは、今後は難しくなっていくことが明らかである。人手不足に直面している企業は、いずれ設備投資による省力化、ビジネスモデルの変革、販売価格の引き上げなどによって労働生産性の改善を求められることになる。 年金受給者(老後)・ネットビジネス・家賃収入があると、住込みメイド付で優雅に暮らせます。但し、物価に関しては上昇傾向にあり、将来その生活が保障されるとは限らない。また、上記にあるジャカルタの法定最低賃金上昇率は経済成長率と消費者物価上昇率を足し合わせた合計値となるよう規定されており、後者の上昇率は、2020年予想で3.39%であった。更にベトナムの場合は、2018年のインフレ率は3.5%であった。 経済格差を利用して、(低収入の中年男性が)嫁を買うケースも多い。
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