労働生産性
・労働生産性とは、従業員一人当りの付加価値額を示す指標であり「付加価値 ÷ 従業員数」で表される。
・投下した労働量(労働時間の量や時間によって算定)とその結果得られる生産量の割合となる。
・個別企業・業界など比較に用いられる場合もあるが、国際比較にも頻繁に用いられるものでもある。
・日本の製造業などは、生産ラインのロボット化など自動化により生産性は飛躍的に向上した。ちなみに、国際比較の結果としては、日本の労働生産性は先進7カ国中最下位で、OECD 30カ国中で20位となっておりそれほど高い結果ではない。(2007年版「労働生産性の国際比較」)
・しかしながら、生産性伸び率では先進7カ国中2位と改善が進んでいるといえる。
→日本の労働生産性(就業者1人当り付加価値):6万1862ドル(789万円/購買力平価換算)
【国別生産性比較】
1位:ルクセンブルク 10万4610ドル(1,334万円)1980年以降26年連続
2位:ノルウェー    9万7275ドル
3位:米国       8万6714ドル
4位:アイスランド   8万3546ドル
5位:ベルギー     8万0878ドル
(2007年版「労働生産性の国際比較」2005年の指数より)
・ただし、当該就労者には、国外からの流入者はカウントされていないために、国外からの就労者の多い国の指標が高くなる傾向があり、国外からの労働者の少ない日本は、比較的低い結果となってしまう。
労働生産性

労働生産性は、労働を投入量として産出量との比率を算出したもので、労働者1人あたり、あるいは労働者1人1時間あたりの生産量や付加価値で測るのが一般的です。労働生産性は、国民経済全体でみた生産性と、特定の産業、業種、企業の生産性とに分けられます。
社会経済生産性本部(理事長:谷口恒明)は2006年版「労働生産性の国際比較」をまとめました。この調査は同本部が経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国を対象に毎年実施しているもの。最新の統計である04年の各国の国内経済生産(GDP)や就業人口などから労働生産性を算出。国別に購買力平価を用いて付加価値を調整(04年は1ドル=133.72円)しています。
04年のわが国の労働生産性は、59,651ドル(798万円/購買力平価換算)で第19位、主要先進7カ国の中では11年連続最下位。第1位ルクセンブルグ(90,683ドル/1,213万円)、第2位米国(83,129ドル/1,112万円)の約66%の労働生産性です。昨年(03年/56,719ドル)より2,932ドル(5.2%)も向上したものの、順位は変わりませんでした。
 わが国製造業の労働生産性水準は78,680ドル(887万円:対前年比7.5%増)で、主要先進7カ国でみると米国に次ぐ第2位(総合3位)で「失われた10年」からの脱却が鮮明になりました。トップはアイルランド(148,811ドル/1,678万円)で、わが国の約2倍です。就業者数の減少は生産性向上のプラス要素となりますが、わが国の製造業は景気が回復局面に入った02年以降も人員の減少が続いており、これが寄与したといえるでしょう。
 
 逆に主要業種の中で最も伸び悩んでいるのはサービス業。2000年を1とした04年の労働生産性指数は、製造業が1.154であるのに対し、サービス業が1.007で、同期間でわずか0.7%しか伸びていません。雇用の受け皿ともいえるサービス業の生産性の伸び悩みが問題ともいえます。
2000年以降のわが国の実質労働生産性上昇率は年率平均1.65%で、主要先進7カ国中第2位、OECD加盟30カ国中15位。90年代後半(1995〜1999年)が0.46%(主要先進7カ国中最下位)だったことからすれば、大幅な改善をみせています。しかし、同時期の米国は2.39%と主要先進7カ国でトップであり、日米間の生産性格差は依然として拡大する傾向にあります。
わが国の就業人口は、製造業とは逆にサービス業は一貫して増加傾向にあります。情報サービスや医療・福祉、教育、レジャー・観光などの分野は新たな雇用を生み出すものの、生産性の高い製造業からサービス業への就労者シフトが進めば、国全体の生産性を低下させます。人口減少時代に入ったわが国では、生産性を向上しない限りこれまでの経済規模は維持できません。その意味でもサービス業の生産性向上が今後、大きな課題になってくると見られるでしょう。
(掲載日:2006/12/22)
生産性
(労働生産性 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/24 00:42 UTC 版)
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経済学における生産性(せいさんせい、英: Productivity)は、経済政策に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度、あるいは、資源から付加価値を産み出す際の効率の程度である。次の式で定義される[1]:
- 生産性 = 産出量 / 投入量
 
すなわち、より少ない投入量(インプット)からより多い産出量(アウトプット)が得られるほど、より生産性が高いという関係にある。ゆえに、生産活動の効率性を測る指標として利用される。
生産性には何を基準に置いて評価するかによって幾つかの種類がある。これはインプットとアウトプットの対象によって、生産性という言葉の意味が異なるためである。一定の資源からどれだけ多くの付加価値を産み出せるかという測定法と、一定の付加価値をどれだけ少ない資源で産み出せるかという測定法がある。また、それぞれの生産性の数値尺度は、それ単独で用いるよりも、他者の生産性と比較することによってさらに有用な指標(ベンチマーク)となる[2]。
生産性は、企業や国の生産実績を左右する重要な要素である。国の生産性を向上させることは、生活水準の向上につながる。それは実質所得の増加は、人々が商品やサービスといった財を購入したり、余暇を楽しんだり、住宅や教育を改善したり、社会的・環境的プログラムに貢献したりする能力を向上させるからである。また、生産性の向上は、企業の収益性向上にもつながる[3]。
また、国際的には生産性の高い産業は生き残ることが出来るため、各方面で生産性の改善が活発に行われている。実際、国際的な競争下にある製造業(貿易財)の生産性は、非貿易財であるサービス業に比べて概して高い。 生産性改善は、生産性という発想のもとである、製造業の生産ラインにおいては最も強く発揮されている。一方で、サービス業は、フローの把握や分業が進展していないこともあり、生産性の向上も遅れている。
部分的生産性
部分的生産性(英: partial productivities)は1種類の投入/産出要素で指標化された生産性である[4] 。
用いる要素の種類によって様々な部分的生産性が定義されている。次の表はその一例である。
| 算出 | |||
|---|---|---|---|
| 物的 | 付加価値 | ||
| 投入 | 資本(資本生産性) | 物的資本生産性 | 付加価値資本生産性 | 
| 労働(労働生産性) | 物的労働生産性 | 付加価値労働生産性 | |
マクロ経済学において部分的生産性とは、一般的に労働生産性のことである。また、一般的な経済指標で単に「労働生産性」と言った場合、通常は付加価値労働生産性を指す。
資本生産性
資本(機械・貨物自動車等の設備)1単位に対してどれだけ価値が産めたかを指す。通常、資本が遊ばないようになるだけ多く労働者を充てると、資本の回転率が上昇し資本生産性が高まる。ただし、この場合は労働生産性が低下する。 関係式としては、資本生産性=生産量÷有形固定資産があてはめられる。
労働生産性
   労働生産性(英: Labour productivity)は労働力1単位に対する産出量である[5]。すなわち次の式で定義される:
![]()
なお、俗にサービス残業などに因る労働強度の増加に拠って、生産あるいは利益を増やすことを生産性を上げると表現することがあるが、上記から明らかなように、その場合は労働力投入というインプットが増加しているため、仮にアウトプットが増加しても生産性が上昇するとは限らない。経済学者が生産性を上げるべきだと主張する時は、上記のようなあくまでインプット対比でのアウトプットについてであるが、これが「労働強度を高めて酷使されるという意味である」と混同される場合があり、注意が必要である。
多要素生産性
全要素生産性(英: Total factor productivity; TFP)は複数の投入/産出要素で指標化された生産性である。
通常は緩やかな上昇基調であるが、イノベーションの際に高い上昇を見せる。交通革命や情報革命などが、その革新に該当する(IT革命による全要素生産性の改善については、なお、議論の余地が有る)。
国民経済の生産性産出量としての国内総生産(GDP)を投入量としての就業者総数で除したもの。労働生産性の国際比較において使用される際には、各国の購買力平価(PPP)でUSドル換算したGDPが用いられる。
生産性と景気循環
景気循環は生産性に大きく影響している。通常、大規模なイノベーションが起こらない場合、労働生産性と資本生産性は逆の動きをする。
景気回復時には見かけ上での労働生産性の伸びが高めに出る傾向がある。これは労働者一人あたりの効率性が改善しなくても稼働率を高めることによって生産高を増加させることができるためである。逆に、景気後退時には、労働生産性の伸びが低めに出る傾向がある。
労働力の調整が硬直的な経済(終身雇用制など)の場合、資本がより循環するため、景気回復時には労働生産性が上昇し、景気下降時には労働生産性が低下する。
労働力の調整が柔軟な経済(解雇が比較的容易など)の場合、労働力がより循環するため、景気回復時には資本生産性が上昇し、景気下降時には資本生産性が低下する。
生産性の向上要因
   - 投資による資本財(生産手段)蓄積の増加
 - 教育による人的資本(労働力)の質の向上
 - 低生産部門から高生産部門への資源の再配分による効率性の向上
 - 研究開発による技術進歩[6]
 
最低賃金の引き上げ
ノーベル経済学賞受賞者ポール・クルーグマンは、近年の実証研究の蓄積に基づき、最低賃金の引き上げが雇用に正の影響を与えることを指摘する。そして賃金上昇が労働のターンオーバーを減らし生産性を高めると結論づける[7]。米国では、2016年までに最低賃金を10.10ドルまで引き上げる法案をトム・ハーキンが提出し、これに多くの主要経済学者が賛同している[8] [9]。また2020年までに米国の最低賃金を15ドルと設定する法案をバーニー・サンダースが提出した[10]。
生産性向上のための活動
電通の新入女性社員の自殺(2015年)もあり、政府が過剰な残業をなくし(労働)生産性の向上を目指して働き方改革を進めている[11]。 人材への投資による生産性の向上による経済成長を目指している[12]。
生産性の向上
各企業では、働く人がモチベーション(動機付け)を高め、やりがいを感じ組織へのエンゲージメントを高めることで、顧客付加価値をもたらす業務に集中し生産性向上を実現する活動が行われている[13][14]。
生産性の個人的要因
謙虚・誠実さは生産性と高い関連性があり[15]、生産性の高いスタッフはカルト主義者になりにくい[16]。
脚注
- ^ "生産性とは、output(産出) / input(投入)の関係を表す指標であり" 日本生産性本部「労働生産性と全要素生産性とは」『生産性データベース』 2023-06-06閲覧.
 - ^ http://www.jpc-net.jp/movement/productivity.html
 - ^ Courbois & Temple 1975, Gollop 1979, Kurosawa 1975, Pineda 1990, Saari 2006, Hitt and Brynjolfsson 1996, Sickles and Zelenyuk (2019)
 - ^ Sumanth, David J. (1997-10-27) (英語). Total Productivity Management (TPmgt): A Systemic and Quantitative Approach to Compete in Quality, Price and Time. CRC Press. p. 5. ISBN 9781574440577
 - ^ "労働生産性は労働者 1 人当たりで生み出す成果、あるいは労働者が 1 時間で生み出す成果を指標化したもの" 日本生産性本部「労働生産性と全要素生産性とは」『生産性データベース』 2023-06-06閲覧.
 - ^ スティグリッツ マクロ経済学[リンク切れ]
 - ^ Liberals and WagesP. Krugman, The New York Times, The Opinion Pages, 17 June 2015
 - ^ 75 economists back minimum wage hike CNN Money, January 14, 2014
 - ^ Over 600 Economists Sign Letter In Support of $10.10 Minimum Wage Economist Statement on the Federal Minimum Wage, Economic Policy Institute
 - ^ The rapid success of Fight for $15: 'This is a trend that cannot be stopped'S. Greenhouse, The Guardian, US-News, 24 Jul 2015
 - ^ “働き方改革の実現”. 2017年12月13日閲覧。
 - ^ “経済財政運営と改革の基本方針2017 人材への投資を通じた生産性向上”. 2017年12月13日閲覧。
 - ^ 入江 2018.
 - ^ “次世代 生産性向上方法論”. 2017年12月13日閲覧。
 - ^ Lee, Youngduk; Berry, Christopher M.; Gonzalez-Mulé, Erik (2019-12). “The importance of being humble: A meta-analysis and incremental validity analysis of the relationship between honesty-humility and job performance.” (英語). Journal of Applied Psychology 104 (12): 1535–1546. doi:10.1037/apl0000421. ISSN 1939-1854.
 - ^ Mackey, Jeremy D. (2021-06-01). “Why and how predators pick prey: Followers’ personality and performance as predictors of destructive leadership” (英語). Journal of Business Research 130: 159–169. doi:10.1016/j.jbusres.2021.03.002. ISSN 0148-2963.
 
参考文献
- 入江, 仁之『「すぐ決まる組織」のつくり方 ー OODAマネジメント』フォレスト出版、2018年。 ISBN 978-4-866800-09-7。
 
関連項目
外部リンク
- 公益財団法人 日本生産性本部
 - What Determines Productivity? (PDF) Chad Syverson, Journal of Economic Literature 2011, 49:2, 326–365.
 
労働生産性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:33 UTC 版)
労働生産性(Labour productivity)とは、労働力(単位時間当たりの労働投入)1単位に対してどれだけ価値を産めたかを指す。マクロ経済学において部分的生産性とは、一般的に労働生産性のことである。その際、生産量を物的な量で表す場合を特に「物的労働生産性」、金額(付加価値)で表す場合を「付加価値労働生産性」と言い、一般的な経済指標で単に「労働生産性」と言った場合、通常は後者を指す。 labour productivity = output volume labor input use {\displaystyle {\text{labour productivity}}={\frac {\text{output volume}}{\text{labor input use}}}} 通常、労働力が遊ばないようになるべく多く資本を装備すると、労働力の回転率が上昇して労働生産性が高まる。ただし、この場合は資本生産性が低下する。関係式としては、物的労働生産性=生産量÷従業者数、価値労働生産性=生産額÷従業者数=(生産量×製品価格)÷従業者数、付加価値労働生産性=付加価値額÷従業者数があてはめられる。 OECD諸国の時間あたりのGDPで算出した労働生産性の平均比較 (青線: OECD平均) OECD諸国の時間あたりのGDPで算出した労働生産性の推移(PPPUSD) なお、俗にサービス残業などに因る労働強度の増加に拠って生産、あるいは、利益を増やすことを生産性を上げると表現することがあるが、上記から明らかなようにその場合は労働力投入というインプットが増加しているため、仮にアウトプットが増加しても生産性が上昇するとは限らない。経済学者が生産性を上げるべきだと主張する時は、上記のようなあくまでインプット対比でのアウトプットについてであるが、これが「労働強度を高めて酷使されるという意味である」と混同される場合があり、注意が必要である。
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