貨幣乗数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/08/18 09:11 UTC 版)
Jump to navigation Jump to search貨幣乗数(かへいじょうすう、英語: money multiplier)とは、マネタリーベース/ハイパワードマネー1単位に対し、何単位のマネーサプライを作り出すことができるかを示すものである。信用乗数(しんようじょうすう、英語: credit multiplier)ともいう。
数学的説明
マネーサプライ(数式では と表記)は公衆が保有する通貨(currency、数式では と表記)と預金(deposit、数式では と表記)に分解される。また、中央銀行がコントロールできるマネタリーベース(数式では と表記)は公衆が保有する通貨と銀行が中央銀行に預金する準備金(reserve、数式では と表記)に分解される。つまり、
となる。ここで(1)式を(2)式で割り、その式の分母・分子を で割ると、
となる。(3)式の分母・分子にあるは現金・預金比率を表し、分母にあるは準備・預金比率を表す。(3)式に を乗じると、
となり、(4)式の右辺にある の係数 が貨幣乗数であり、マネーサプライは貨幣乗数とマネタリーベースの積の形で表現される。
貨幣乗数の変化による影響
上記(4)式より現金・預金比率の上昇(低下)或いは準備・預金比率の上昇(低下)により、貨幣乗数は低下(上昇)し、マネーサプライを減少(増加)させることとなる[1]。
関連項目
脚注
- ^ 分母・分子ともに現金・預金比率 があるため、現金・預金比率の上昇(低下)だけでは、貨幣乗数の変化は判断できないが、準備・預金比率ならば、が上昇すれば、貨幣乗数は低下する。(Abel and Barnanke (2007)(伊多波他訳(2007)p.801))
参考文献
- Abel, Andrew B. and Ben S. Barnanke:Macroeconomics, 5th Edition(2005) Addison-Wesley Publishing Company Inc. (伊多波良雄・大野幸一・高橋秀悦・谷口洋志・徳永澄憲・成相修 訳『エーベル/バーナンキ マクロ経済学 下 マクロ経済政策編』、シーエーピー出版、2007年、ISBN 978-4-916092-73-1)
貨幣乗数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 14:28 UTC 版)
貨幣乗数は、与えられた一定量のベースマネーと準備率に対して、商業銀行が創出しうる広義流動性(ブロードマネー)の最大量を示すために使用されるヒューリスティックな手法である。適格な準備金の一部は銀行の外部で現金として保有されているため、この理論上の最大値に達することはない。中央銀行は最近、ベースマネーの額を固定するのではなく、金利目標を追求して間接的に銀行の信用供与をコントロールしているため、貨幣乗数が示す上限が実際の信用創造に制限を課すことはない。
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