産業組織論
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産業組織論(さんぎょうそしきろん、英: industrial organization)とは、財・サービスの供給主体である企業および企業のグループとしての産業を考察対象とするミクロ経済学の応用分野である。経済の中心的主体である企業を扱っていることもあり、経済学の発展と共に大きく変容を遂げている。古典的な産業組織論 (Old I.O.) の他、ゲーム理論や最近の計量経済学の手法を取り入れた新しい産業組織論 (New I.O.) があり、またNew I.O.の中には理論的分析を主とするTheoretical I.O.および実証的研究を主とするEmpirical I.O.という分野に分けることができる。
- 1 産業組織論とは
- 2 産業組織論の概要
- 3 産業組織論の扱う問題
- 4 脚注
産業組織論
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戦後先進諸国の独占禁止政策に大きな足跡を遺した経済学は「伝統的産業組織論(英: Old Industrial Organization Theory)」と呼ばれ、その内部では「ハーバード学派(英: Harvard School)」と「シカゴ学派(英: Chicago School)」が互いに拮抗していた。 ハーバード学派は1930年代のチェンバリン(英: E.H.Chamberlin)とメイスン(英: E.S.Mason)の先駆的研究によって誕生し、60年代から60年代にかけてのベイン(英: J.S.Bain)やケイブス(英: R.E.Caves)らの研究によって体系的に完成され、その後ケイセン(英: C.Kaysen)、ターナー(英: D.F.Turner)、シェラー(英: F.M.Scherer)らに受け継がれた一群の経済理論・政策思想集団を指す。彼らは、「SCPパラダイム」や「集中度・利潤率仮説」と呼ばれる立場から、厳格な独占禁止政策を主張した。「SCPパラダイム」とは、産業組織を「市場構造」(市場競争および価格設定に影響を与える市場組織上の特徴)、「市場行動」(各企業が市場の需給条件や他の企業の戦略を考慮して行う行動)、「市場成果」(資源配分効率性や経済権力の分散化)という三要素に類型化して、「市場構造(英: Structure)→市場行動(英: Conduct)→市場成果(英: Performance)」という因果関係があると考えるアプローチである。また、「集中度・利潤率仮説」とは、「寡占的・独占的産業における企業間の共謀や協調的行動」や「高い参入障壁に守られた競争制限的行為のため、超過利潤が発生する」という理由から、競争的市場における市場集中度と利潤率とが相関関係を持つという仮説である。 このように厳しい独占規制を主張した「ハーバード学派」に対して、「シカゴ学派」とはノーベル賞経済学者スティグラー(英: G.J.Stigler)に道を切り拓かれ、デムゼッツ (英: H.Demsetz)、ブローゼン (英: Y.Brozen)、ディレクター(英: A.Director)、ポズナー(英: R.Pozner)らによって発展された一群の経済理論・政策思想集団を指す。その特徴は、「強固な事前均衡」と呼ばれる市場メカニズムへの強い信頼から、「価格理論のレンズ」を産業組織の分析に厳密に適用することである。そこで、彼らは市場の「自然淘汰」をくぐり抜けた企業こそ「適者生存」の具現であり、「ハーバード学派」が主張するような裁量的な政府介入は効率性を損なうので、原則的には自由市場経済が望ましいと考える。シカゴ学派は、集中度と利潤率の間の正相関は一時的不均衡にすぎず、あるにしても大企業の優れた効率性を反映するものであると反論した。 これらに対して、1970年代にハーバード学派でもシカゴ学派でもない産業組織論の第三の潮流である「新しい産業組織論(英: New Industrial Organization Theory)」が誕生した。伝統的産業組織論は完全競争モデルと独占モデルの域を出ない素朴な理論的枠組みを用いていたのに対して、新産業組織論は「ゲーム理論の静かな革命」の中で完成されたゲーム理論的手法を駆使することによって寡占市場をミクロ経済学的に分析することを可能にした。 非協力ゲーム理論を取り入れた新産業組織論は産業分析を飛躍的に発展させ、「産業経済学の理論的発展の黄金時代」とも称された。新産業組織論の主要な成果としてはコンテスタビリティ理論(英: Contestability Theory)と戦略的参入阻止価格理論(英: Strategic Limit-Pricing Theory)が挙げられる。
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(古典的)産業組織論 (Old I.O.)
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独占、寡占などのモデルを用いて、SCPパラダイムを基礎に、実証的研究(理論的なものもあるが主に実証研究が中心)を行う分野である。基礎にするモデルは、ゲーム理論や契約理論などの最近の発展というよりは、クールノー競争やベルトラン競争などの古典的なものを用いることが多い。その上で、実証研究により、市場の特徴を導き出していく。例えば、市場がどれだけ独占的であるか、弾力性はどの程度であるかなどを導き出し、最適な政策はどうあるべきかを検討する。
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