ガス溶接とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 工業 > 加工 > 溶接 > ガス溶接の意味・解説 

ガス‐ようせつ【ガス溶接】

読み方:がすようせつ

アセチレンガスまたは水素酸素との混合気体吹管燃焼させ、その高熱によって鉄材などの溶接を行う金属の溶接法。


ガスようせつ ガス溶接 gas welding


ガス溶接

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/09 19:53 UTC 版)

鉄パイプのガス溶断
アセチレンガスによる歩道橋の溶断

ガス溶接(ガスようせつ、英語: oxy-fuel welding、oxyacetylene welding、gas welding)とは、可燃性ガスと酸素が結び付き、燃焼する際に発生する熱を利用して金属の接合を行う溶接方法である。ここでは、金属を高い温度で酸化させ、その酸化物をガスで吹き飛ばすことによって行う、ガス溶断(ガスようだん、英語: oxy-fuel cutting)についても述べる。

使用するガス

溶接で使用する可燃性ガスにはアセチレン(酸素アセチレン溶接)、水素プロパンブタンなどのLPガスメタン石炭ガス都市ガスマップガス英語版プロパジエンメチルアセチレンとの混合物)などがある。

溶接装置の構成

可燃性ガスボンベ(アセチレン・プロパンなど)
アセトンまたはN,N-ジメチルホルムアミド(ジメチルフォルムアミド・DMFとも言う)に溶かし、それを多孔質固体にしみこませた状態にしている。プロパン・ブタンなどのLPガスは、加圧・液化した状態でボンベに充填される。
酸素ボンベ
酸素には助燃性があるため、油など燃えやすいものが付着すると引火の原因となる。このため、「油のついた手袋などでボンベを触らない」「酸素ボンベの近くに油脂可燃物を置かない」などの注意が必要であり、技能講習でも、これについての指導がなされる。
圧力調整器
ボンベの圧力は高く、そのままの圧力では溶接に適さない。そこで、一定の圧力を取り出すための「圧力調整器」をボンベに取り付ける。圧力調整器は、圧力を調整する機構と、高圧(ボンベ側)・低圧(溶接器送り側)2つの圧力計によって構成されている。安全弁、逆火防止弁などが付いているものもある。なお、ボンベと圧力調整器の接続口は、ドイツ式とフランス式の2種類がある。
ホース(ボンベと溶接器・切断器を接続する)
ガスの種類によって、色・寸法・厚さなどの規格が日本産業規格(JIS)で定められている。劣化したホースは逆火などの原因となるため、ビニールテープなどで補修せず、専用の継ぎ手をゴムバンド・針金で固定しての補修、またはホースの全交換をすることが推奨されている。
溶接器(溶断の場合は、切断器)本体
溶接器には、可燃性ガスと酸素の割合を調整して混合する「吹管」、実際に炎が出るところである「火口」にわけられる。火口はさまざまな大きさのものに取り替えることが可能で、これにより、炎の大きさを調整することができる。
溶接器にもドイツ式(JIS A型)、フランス式(JIS B型)がある。また、切断器には、7 kPaまでのものを扱うJIS 1型(低圧型)、7 kPaから130 kPaまでの圧力を扱うJIS 3型(中圧型)などがある。
点火用ライター
ガス溶接の点火のために、専用のライターが用意されている。マッチや通常のライター・高熱の金属・他のトーチを使用しないように指導がなされている[1]

安全対策

ガス溶接は、アーク溶接ほど閃光が激しくないので、作業時の装備は比較的軽いものとなる。しかし、可燃性ガスは、衝撃や高温で爆発がおきやすいため、溶接時の取り扱いを誤ると、引火・逆火[2]爆発などの大惨事を招くこともある。

アセチレンは、摂氏400度で自然発火するほか、わずかな衝撃でも分解反応によって爆発することがある。また、などはアセチレンと反応し、爆発しやすい物質になる[3]。このため、これらの金属をアセチレン溶接する時には注意が必要で、特に、アセチレンが直接これらの金属と触れないよう配慮する必要がある[4]

プロパン・ブタンは局部にたまりやすく、アセチレンより濃度が少なくても爆発を起こす。また、燃焼時に多量の酸素を消費するため、酸欠状態になりやすい。

各機器についても、容器・溶接器など、それぞれに安全装置は配備されている。しかし、容器の取り扱い、運び方ひとつについてもさまざまな注意を配る必要があるほか、溶接器などの使い方を間違えることによっても、事故を引き起こすことがある。ホース・圧力調整器などは、ごみ・埃ひとつでも動作不良・事故の原因になることもあり、取り扱いには慎重を期すことが求められる。

日本における関連資格

日本でガス溶接の業務を行うためには、労働安全衛生法と関連政令・省令に基づく講習を受け、ガス溶接・ガス溶断について習得する必要がある。「労働安全衛生規則」第83条で「ガス溶接技能講習規程」が規定されており、そのカリキュラムに沿って、学科講習と実技講習が行われている。

また、日本で大規模なガス溶接装置(アセチレン溶接装置(カーバイドからアセチレンガスを発生させるもの)またはガス集合溶接装置)を設置する際は、ガス溶接作業主任者をおく必要がある。この資格は、ガス溶接技能講習を受け、所定の実務経験をつんだものが試験を受けて取得する、厚生労働省所管の免許である。

脚注

  1. ^ ドット・ブリディガム『プロが教える溶接』スタジオタッククリエイティブ,2009年,p64,66
  2. ^ ガス切断器 逆火の危険性と発生時の処置 - YouTube sakaguchi jpチャンネル(2012/12/13公開/2016年12月10日閲覧)
  3. ^ 詳細は「アセチレン」を参照。
  4. ^ 社団法人日本溶接協会 監修『新版 ガス溶接技能者教本』改訂第2版,産報出版,p23,25

参考文献

  • 社団法人日本溶接協会 監修『新版 ガス溶接技能者教本』改訂第2版、産報出版、2008年
  • ドット・ブリディガム『プロが教える溶接』スタジオタッククリエイティブ、2009年、ISBN 978-4-88393-355-6

関連項目

リンク


ガス溶接

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 06:05 UTC 版)

溶接」の記事における「ガス溶接」の解説

可燃性ガス燃焼させて溶接部加熱する。普通はアセチレンガス酸素を使う。溶接速度遅くアーク光が発生せず溶接部が見やすいので、溶接不良発生しにくいと言われている。そのため高圧力のかかる油圧空圧配管などに使われる溶接速度遅く機材取り扱いにも免許要るなどの短所があるため、あまり一般的な溶接とは言えない関連資格に(ガス溶接作業者)などがある。またガス燃焼熱により溶融接合をするわけであるが、添加盛り上げする溶着金属左手供給しつつ進行せねばならず、両手を使うためアーク溶接より熟練要するが、発生温度比較低く温度調整も容易で薄板接合適している。

※この「ガス溶接」の解説は、「溶接」の解説の一部です。
「ガス溶接」を含む「溶接」の記事については、「溶接」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ガス溶接」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「ガス溶接」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



ガス溶接と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ガス溶接」の関連用語

ガス溶接のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ガス溶接のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ダイキン工業ダイキン工業
Copyright (C) 2025 DAIKIN INDUSTRIES, ltd. All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのガス溶接 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの溶接 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS