誹謗中傷 法的側面

誹謗中傷

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/21 09:41 UTC 版)

法的側面

名誉毀損罪・侮辱罪・信用毀損罪・業務妨害罪
刑事的には、個人に対する誹謗中傷では「名誉毀損罪」「侮辱罪」、企業や組織に対するものでは「信用毀損罪・業務妨害罪」が該当する。一方で、民事上は不法行為に基づく損害賠償や慰謝料を請求される場合がある。例えば、誹謗中傷を書き込んだ場合では数十万円の賠償金、執拗に書き込みを続けるなど悪質性が認められるケースでは100~200万円の賠償金もあり得る。
相手の容姿に関する「チビ」「ハゲ」「ブス」「デブ(太っている)」「ガリ(かなり痩せている)」「痩せろ」「老けている」といった誹謗中傷を名指し又は相手のSNSのコメント欄に投稿した場合は、責任を問われる可能性がある。
批判や非難と称しても、根拠そのものに瑕疵がある場合、非難の度が過ぎている場合、更には客観的事実であっても脅迫的又は批判の対象とすべきではない内容(容姿へのネガティブな指摘など)の場合は、起訴された際には誹謗中傷として罪に問われる[18]
自殺関与罪(自殺幇助・教唆)
「死ね」「死ねばいいのに」「消えろ」といった誹謗中傷では「自殺教唆罪」が該当する可能性がある[22]
脅迫罪・恐喝罪
「殺す」などと告げ、人の生命・身体・財産・名誉に対する害悪を告知した場合は、脅迫罪が成立する。さらに、害悪を告知して金品ないし財産上の利益を得た場合は恐喝罪、その他他人に義務のないことをさせた場合は強要罪が成立する[23][24]
傷害罪
傷害罪は暴行罪の結果的加重犯としての性質も有するが、その実行行為を暴行(有形力の行使)に限定していない[25]
また、「傷害」の意義は生理機能の障害と解するのが判例である[26]
そのため、言葉の暴力で精神疾患となった場合は、傷害罪が適用される[27][28]
ただし、傷害罪は原則として故意犯で(過失なら過失傷害罪になる)、人を精神障害に追い込むことに対する故意が必要であり、一般的な傷ができる暴力に比べて立証は容易ではなく、証拠集めと関連性の証明が重要となる[29]
軽犯罪法
次の場合は軽犯罪法違反となる「公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」、「不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者」

注釈

  1. ^ 非難は批判と異なり、なぜ問題なのか、どうすれば改善できるのかなどの提案的な内容を含まない。問題点と指摘されたものが実は問題とは言えず、指摘した側の単なる思い込みであるというケースもある。

出典

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