石 用途

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 18:52 UTC 版)

用途

石器、石の道具

石は手に入りやすい硬い材料であり人類最初の材料といわれている[3]。そのため狩猟農耕調理といったあらゆる用途に利用されてきた[3]

石器と石器時代

石器とは、石を(素材に)用いて製作、使用する道具である[4]

人類と石器とのかかわりのはじまりは250万年以上昔にさかのぼると推定されている[4]。「打ち割り面を複雑に組み合わせた加工」を基準にして考古学では、人類が石器として使い始めた明らかな証拠、としているので、(もっと現実的に考えると、石を打ち割らないで、そのまま道具として使用するような)単純な石の利用は、250万年よりさらにさかのぼると考えられる[4]

(人類の歴史は数百万年とされているが)人類の歴史の大部分は石器時代であり、およそ200万年にわたっている[5]。「石器時代」という用語は、人類の歴史をその利器の材質で区分する用語であり、石器時代・青銅器時代・鉄器時代と3つに区分する歴史の区分法のひとつである。

年代や地域も明記せずにやや乱暴に説明すると「石は加工性・成形性・精密性に劣り、大型の容器を成形できなかったため、"時代が下るとともに"  石器から粘土製の土器へ移行した[3]」ということになってしまうが、年代や地域の違いを明記してしっかりと説明すると次のようになる。

石器時代がいつまで続いたかは、地域によって異なっていた。旧大陸(つまりヨーロッパ・アジア大陸など)では石器時代が終わりを告げたのは紀元前3000年ころであったが[5]、それはあくまで旧大陸の話であって、西暦1492年に、コロンブスがアメリカ大陸に到着した段階でも、当地の原住民は、まだ石器を主に使い金属器を使わない石器時代の状態であったのである[5]。当時、中米でも一部の場所を除きほとんどの場所で、南米でもアンデス地帯など一部の場所を除いてほとんどの場所で、石器時代にとどまっていた[5]。つまり世界全体を概観すれば、一部の地域を除き、多くの地域で、今からわずか五百年ほど前まで人類の石器時代は続いていたのである。

建材

時計の軸受け

腕時計の中の石(ルビー)

機械式時計の歯車の軸受けに、摩耗に強い石(宝石)が使われる。耐摩耗性に優れ硬度が高い結晶から削り出した軸受けを使う。より具体的にはルビーサファイアなどから削り出す。軸受けに宝石を使っている数が多いほど、概して耐久性と長期的な精度が良くなるので、機械式時計の性能を表すのに「n 石」と表現する場合がある(nは自然数)。たとえば「17石時計」や「21石時計」などと呼んでおり、時計の盤面に「17 jewels」などと表記されている。この数が、長期間の使用でも精度が変化しにくいことを表す目安となっている。手巻き腕時計では17石、自動巻腕時計では21石を使っていれば十分な性能を発揮する[6]。なおアナログ式クオーツ時計においては可動部が少ないため、石の数は機械式時計に比べて少ない (安価なものに関してはないものも多い)。

武器・兵器としての石

石は投げつけることで相手を殺傷することができる。古代から狩猟に使われたり、戦闘武器兵器として使われた。

石はありふれていたので、人は戦う時、とりあえず手近にある石を手にとる、ということをしてきた歴史がある。日本では手で投石する戦闘行為を「印地」(いんじ)といい、熟練者を「印地打ち」と称した。戦国時代には石合戦などの行事が行われていた、石つぶて隊とも。

やがて何らかの機構を使って手で投げるよりも遠くへ飛ばそうとするようになり、多くの国で投石器カタパルトバリスタ石弓(石も跳ばせる様にした物)などが開発され、投石専門の投石兵が組織された。

ダビデ像。(ミケランジェロ作。16世紀。フィレンツェ、アカデミア美術館。)左肩に投石帯をのせている。

古代イスラエルのダビデは、石でゴリアテを倒したとされる。そのダビデの姿を描いたミケランジェロの有名なダビデ像は左肩に帯状のものをのせているが、これは投石のための道具である。

なお、闘いで石を手にとる、という行為は古代や中世で終わったわけではない。現代でも例えばパレスチナの人々は、彼らを迫害するイスラエル人と闘おうとする場合、銃などを手に入れられない代わりに、地面に落ちている石を拾い投げつけて抗議行動を行った(第一次インティファーダ)。

スポーツ

カーリングには花崗岩で作られた「ストーン」が用いられる。

碁石

囲碁オセロなどの一部のボードゲームでは駒のことを「石」と呼ぶ[7][8]

囲碁や連珠で使われる石は碁石と呼ばれ、黒いものと白いものがある。高価なものになると、黒石は那智黒石という石から作られている。白石のほうは、ハマグリの貝殻から作られているものが多い。安価なものでは黒・白ともにプラスチックや硬質ガラスなど、石以外の素材で作られるが、すべて石と呼ばれる。

布石」「定石」「捨て石」といった語は、石を使う囲碁の用語として生まれ、のちに転用されたものである。

オセロでは一般に樹脂製のものが使われるが囲碁に倣って石と呼ばれる。

石焼として鉄板のように使用することがある。また、アフリカのケニアでは、odowa と呼ばれる石を食用とする。この石は歯よりも柔らかく、歯を磨く効果もあるという。味は塩みも甘みもなく、食感が楽しめる。鉄分が含まれるため、鉄分が不足しやすい妊婦などが好む[9]

石を食べない動物(犬や豚など)が、石を口に含んだり飲み込んだりする行動をStone chewingと呼ぶ[10]


  1. ^ a b c d e f g h i 広辞苑第六版【いし 石】
  2. ^ a b c d 山口裕之『ヒトは生命をどのように理解してきたか』講談社、2011年
  3. ^ a b c 小山田了三、小山田隆信『材料技術史概論 第3版』東京電機大学、2001年、9頁。 
  4. ^ a b c コトバンク 石器
  5. ^ a b c d コトバンク 石器時代
  6. ^ 『腕時計大百科』グリーンアロー出版社 ISBN 4-7663-3146-X
  7. ^ 囲碁の道具 日本棋院、2022年1月22日閲覧
  8. ^ オセロってなに? メガハウス、2022年1月22日閲覧
  9. ^ Why Kenyan women crave stones(BBC 参照日:2018.5,15)
  10. ^ Publication : USDA ARS”. アメリカ合衆国農務省www.ars.usda.gov. 2024年1月28日閲覧。
  11. ^ 学芸の小部屋「渦巻きと太湖石」”. www.toguri-museum.or.jp. 戸栗美術館. 2021年3月2日閲覧。
  12. ^ 平野恵. “好古から考古へ —近世から近代へ継承された学問の形態—”. umdb.um.u-tokyo.ac.jp. 東京大学総合研究博物館. 2020年9月14日閲覧。
  13. ^ 荻野, 慎諧『古生物学者、妖怪を掘る』NHK出版NHK出版新書〉、2018年。ISBN 978-4140885567 (第二章四節「奇石考『雲根志』『怪石志』を読む」)


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品詞の分類

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