死刑 死刑の概要

死刑

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/11 17:01 UTC 版)

概要

日本では現在、絞首刑で行われている。現在の多くの死刑存置国ではおおむね人命を奪った犯罪や国家反逆罪、未遂罪に対しても死刑が適用される。一部犯罪に対する刑罰を厳罰化している国々では、生命・身体の脅威になる犯罪麻薬覚醒剤などの使用、製造、人身売買など)や、生命を奪わない犯罪(汚職、通貨の偽造密輸など)などにも死刑が適用される場合がある。その一方、死刑廃止を前進するため1989年12月15日自由権規約第2選択議定書(死刑廃止議定書)が国際連合総会で採択された。2021年時点で、ヨーロッパ南米カナダオーストラリアなどの108カ国で全ての犯罪に対して死刑は廃止されている。また一般犯罪においては死刑を廃止しているが、戦時犯罪行為にのみ死刑を定めている国が8カ国あり、ブラジルイスラエルがそれに当たり、内5カ国がラテンアメリカ諸国である。

一方で、日本を含むアジア諸国(死刑を廃止している中央アジアブータンネパールカンボジアモンゴルは除く)や宗教的に応報が原則とされる中東およびアフリカ大陸諸国[注釈 1]、そして欧米文化圏では例外となるアメリカ合衆国の連邦政府及び軍隊と27州(州数は2021年4月時点[1][2]。ネブラスカ州議会は2015年に死刑を廃止したが、2016年に死刑を復活させた[3])など83カ国で死刑制度が存置されている。それとは別に、事実上廃止している国[注釈 2]が28カ国あり、韓国ロシアがそれらの国にあたる。アムネスティ・インターナショナルでは、事実上廃止国も含め死刑廃止国を144カ国としている[4][5](但し、2021年時点であり、国民民主連盟議員と著名民主活動家の2人、ミャンマー軍の情報提供を疑い女性を殺害した男性2人の計4人を2022年7月23日(推定)に執行したミャンマーも含まれる[6][7][8][9][10])。

そして、事実上廃止している国を除いた死刑存置国55カ国の内、2012年2021年の間に死刑執行された国は36カ国である。更にその中で、この期間中に死刑執行があった年が5年以上あった国は24カ国であり、死刑を存置し死刑廃止の政策や慣習が持っていないと思われる国であっても、死刑の頻度が異なったり、そもそもここ10年の間に執行がない国が特にラテンアメリカに存在する。そして、前述の24カ国の内、地域別では17カ国がアジア、5カ国はアフリカで、アジア・アフリカ以外は、アメリカ合衆国ベラルーシとなっている。また、国民の大多数が信仰している宗教の種類で見た場合、イスラム教が15カ国を占める。

死刑の歴史

ジャン=レオン・ジェロームによるローマ時代のキリスト教徒殉教の絵画。火刑、動物刑の公開処刑が描きこまれている

死刑は文明の初期段階において刑罰の中心をなすものであり、世界各地で死刑の記録が残されている。石器時代遺跡から処刑されたと思われる遺体が発見されることもある。

死刑は身体刑と並び、前近代(おおむね18世紀以前)には一般的な刑罰であった。人類刑罰史上最も古くからある刑罰であるといわれ、有史以前に人類社会が形成された頃からあったとされる[11]。また、「死刑」という刑罰でなくとも、多くの「死に至る(ことが多い)刑罰」も用いられていた。

威嚇効果が期待されていたものと考えられており、すなわち見せしめの手段であったため、公開処刑が古今東西で行われていた。火刑溺死刑、圧殺、生き埋め、(はりつけ)、十字架刑斬首(ざんしゅ)、毒殺、車裂(くるまざき)、鋸挽き釜茹石打ちなど執行方法も様々であった。近年では、死刑存置国の間でも絞首刑銃殺刑電気椅子、ガス殺、注射殺(毒殺)・服毒などに絞られつつあり、比較的肉体的な苦痛の少ないと考えられる方法を採用するのが主流となっている。刑罰の歴史上では文明化と共に死刑を制限することが顕著である[12]

刑罰として死が適用される犯罪行為も、必ずしも現代的な意味における重犯罪に限られていたわけではない。窃盗や偽証といった人命を奪わない罪状を含んだほか、社会規範・宗教的規範を破った事に対する制裁として適用される場合もあった。たとえば、中世ヨーロッパでは姦通を犯した既婚者女性は原則的に溺死刑に処せられていた[注釈 3]。叛乱の首謀者といった政治犯に対するものにも適用された。

死刑は、為政者による宗教弾圧の手段として用いられたこともあり、ローマ帝国時代のキリスト教徒迫害や、江戸時代長崎で行われたキリシタンの処刑のように、キリスト教徒の処刑が多数行われていた。一方魔女裁判のように、宗教者たちによって死に追いやられた人々も多かった。

その後、近代法制度の確立に伴い、罪刑法定主義によって処罰される犯罪行為が規定され、それに反した場合に限り刑罰を受けるというように限定された。近代法制度下では、どのような犯罪行為に死刑が適用されるかが、あらかじめ規定されている。また18世紀頃から身体を拘束・拘禁する自由刑が一般化し、死刑は「重犯罪向けの特殊な刑罰」という性格を帯びるようになった。死刑の方法もみせしめ効果を狙った残虐なものから絞首刑など単一化されるようになった。

20世紀中期以降は、死刑を存置する国家では、おおむね他人の生命を奪う犯罪のうち、特に凶悪な犯罪者に対し死刑が適用される傾向がある。ただし戦時犯罪については死刑を容認している国も残されており、上官の命令不服従、敵前逃亡スパイ行為といった利敵行為などに対して適用される場合がある。また、21世紀になっても、国によっては重大な経済犯罪・麻薬密売・児童人身売買といった直接に他人の生命を侵害するわけではない犯罪にも死刑が適用されることがあるほか、一部国家[13]では、窃盗犯であっても裁判によらず即決で公開処刑される事例が存在する。


注釈

  1. ^ 54カ国中15カ国。但し、通常犯罪のみ廃止の国や事実上の廃止国は含まれていない。
  2. ^ 10年以上死刑執行がなされておらず、死刑執行をしない政策または確立した慣例を持っていると思われる国。死刑を適用しないという国際的な公約をしている国も含まれる。
  3. ^ ただし、現在でもイスラム法を重要視している国では不倫や婚前前性交渉を理由に死刑になる場合が存在する。
  4. ^ インドネシアは2013年・2015年・2016年の3年[63][64]バーレーンは2016年と2019年[65][66]ヨルダンは2014年・2015年[67]・2017年、クウェートは2013年と2017年、オマーンは2015年と2020年、カタールは殺人の罪でネパール人出稼ぎ労働者の死刑執行があった2020年のみ[68]インドは2012年・2013年・2015年・2020年の4年、タイは強盗殺人の罪で執行された2018年の1年のみ[69]であった。
  5. ^ ラトビアはEU加盟に当たって、軍法上で死刑制度を存続させていたが、2012年に死刑を全廃した。
  6. ^ 日本では毎年1000人近い殺人犯が検挙されるが、死刑判決が確定するのは、そのうち数十人である。

出典

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