属格とは? わかりやすく解説

ぞっ‐かく〔ゾク‐〕【属格】

読み方:ぞっかく

genitive case印欧語などでの格の一。主に所有所属などの関係を示す格。日本語ではふつう、格助詞「の」で表す。

「属格」に似た言葉

属格

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/21 05:01 UTC 版)

属格(ぞっかく、: genitive case: casus genitivus: родительный падеж)は、名詞代名詞の一つで、主に所有を表す。英語では所有格(possessive)、ドイツ語では2格(der zweite Fall)とも呼ぶ。スラヴ語派については生格(せいかく)と呼ぶが、これは訳語の違いにすぎない。

日本語では主に格助詞」で表される(日本語では体言を修飾できる格はこれだけなので連体格とも呼ばれる)が、インド・ヨーロッパ語族の属格は、それだけでなく以下のような幅広い用法がある。

所有
所有およびそれに類する関係を表す。もっとも一般的な機能である。ただし、多くの言語では人称代名詞の所有を表す時に属格でなく、所有限定詞が用いられる。
  • his parents(彼の親)
意味上の主語目的語
動詞的な意味を持つ名詞を修飾し、意味上の主語・目的語を示す。
  • 怒り(神怒ること)
  • 真実追求(真実追求すること)
  • 日本語では連体修飾の中の主語も、属格で表される:神怒った日
部分の属格
全体の一部分であることを示す。
  • He is the tallest of the three.(彼は三人のなかで一番背が高い)
  • He is of noble birth. (彼は高貴な生まれである)
また、物質(不可算)または多数のものの一部を指して、主格または対格の代わりに用いる用法として、スラヴ語の部分生格・数量生格などがある。フランス語イタリア語の部分冠詞・不定冠詞複数(下記)も同様に用いられる。
  • Я выпил(а) немного воды.(私は水を少し飲んだ。)
  • Два молодых студента разговаривают. / Пять молодых студентов разговаривают.(2人/5人の若い学生が話している。)
  • Я прочитал(а) две интересные книги. / Я прочитал(а) пять интересных книг.(私は2冊/5冊の面白い本を読み終えた。)
分離の属格
奪格に由来する。
  • He is independent of his parents. (彼は両親から独立している。両親については、彼は独立している。)
  • rob 人 of 物(人から物を奪う。物について、人から奪う。)
  • Я вернулся с почты.(私は郵便局から帰って来た。)
同格の属格
同じものを説明したり言い換えたりする。
  • The concept of right  権利概念
副詞的属格
名詞の属格を副詞的に用いる用法。
英語のalways、sometimes、backwardsなど語尾に-sのついた形や、otherwise(-waysに由来)、once(one-s)などの副詞はこれに由来し、スラヴ語でもよく用いられる。
形容詞的用法
形容詞的な抽象名詞で修飾することで、形容詞と同等のことを表現する。
  • A man of importance (重要人)
  • 国家的事(現在は形容動詞で「国家的事」と言うのが普通だが、明治から昭和戦前期まではこの言い方が普通だった)、緑洋服、裸
否定の属格
リトアニア語などでは否定文の直接目的語が対格でなく属格となる。フランス語では不定冠詞・部分冠詞を伴う直接目的語は否定文では基本的にはde(英語のof)という形となり、現在の扱いとしては冠詞であるものの、同様の傾向が見られる。ロシア語でも同様に否定、あるいは不存在を表す際に生格が用いられる。
  • У меня нет брата.(私には兄弟がいない。)

英語では、このうち所有は所有格として名詞(-'s)および人称代名詞に格形が残存しており、また意味上の主語も所有格で表す場合があるが、それ以外の属格の用法は前置詞ofに置き換えられた。なお近年は、's および my, your などの所有形は格ではないという説が有力である。例えば the girl next door's cat (隣の少女の猫) では、's は the girl next door というにかかり、door という語にかかっているのではない。したがって 's を接語と見なす言語学者が増えている。

ドイツ語では、単数男性名詞、単数中性名詞で「-s」を付け女性名詞、複数形では無変化であるが、どちらも冠詞や形容詞が属格に伴う変化を行う。他の名詞を修飾する場合には被修飾語のあとに付けるのが原則であるが、前に付けることもあり、その場合被修飾語の冠詞は省略される。現代語では「von」+三格(与格)で代用するのが普通である。人称代名詞の属格は所有関係には使われない。また、英語の人称代名詞の所有形に当たる働きをするものが別にあり、所有代名詞という。

ロマンス語(フランス語、イタリア語、スペイン語など)では基本的に格変化が消失したため、属格はすべてde/diといった前置詞に置き換えられた。 なお、英語の人称代名詞の所有格に相当する機能は所有形容詞によって表す。

  • フランス語の部分冠詞(du, de la)と不定冠詞複数(des)、およびイタリア語の部分冠詞(del, della, dei, delle etc.)は、部分の属格がde/di+定冠詞で置き換えられ、それが冠詞として定着したものである。
  • フランス語とイタリア語には、中性代名詞en/neというものがあるが、これは属格相当語句(de/di+名詞類、部分冠詞+名詞類など)を指し示す「属格代名詞」とでもいうべきものである。通常の人称代名詞・指示代名詞に欠けている属格をこれにより補っている。

星の名前

恒星名前は国際的に、また英語内でも、固有の名前がある場合以外は、通常ギリシャ語のアルファベット一字と属格形のラテン語星座名を合わせたものによって表される。こと座 (Lyra) の属格は Lyrae であり、こと座で最も明るいベガは「 α Lyrae 」(こと座α星)と表される類である。この命名法は発案者のヨハン・バイエルにちなんでバイエル符号と呼ばれる。


属格

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 05:43 UTC 版)

古代ギリシア語の格変化」の記事における「属格」の解説

属格の基本的な意味は「所有」だが、古代ギリシア語から消滅した奪格(ablative)の機能併せもっている名詞とともに血縁:Σωκράτης ὁ Σωφρονίσκου、「ソクラテス。ソフロニスコスの息子」。 所有:ἡ οἰκία τοῦ πατρός、「父の家」。 物質材質:τεῖχος λίθου、「石の壁」内容中身:δέπας οἴνου、「ぶどう酒の盃」。 値段:δοῦλος πέντε μνῶν、「5ムナー(古代ギリシア通貨)の値段付いた奴隷」。 著者:Δημοσθένους λόγος、「デモステネス議論」。 原因:γραφὴ κλοπῆς、「窃盗による告発」。 性質:πολίτου ἀρετή、「市民美徳」。 名称:᾿Ιλίου πτολίεθρον、「イリオントロイ)の町」。 部分:πότερος τῶν ἀδελφῶν;、「兄弟のうちの誰が?」。 主語表現:ὁ φόβος τῶν πολεμίων、「敵が抱く恐怖心」。 目的語表現:ὁ φόβος τῶν πολεμίων、「敵に対す恐怖心」。 形容詞とともに所属帰属:νεὼς τοῦ ᾿Απόλλωνος ἱερός、「アポロン捧げられ神殿」。 参加:μέτοχος τοῦ πόνου、「仕事参加して」。 能力:ἐγκρατὴς ἑαυτοῦ、「自分自身への制御力」。 充足:πλέος εὐφροσύνης、「喜び満ちて」。 知識記憶:ἔμπειρος τῶν ὁδῶν、「道をよく知っている(道の識者である)」。 価値値段:πλείστου ἄξιος、「多大な価値のある」。 副詞とともに:πέραν τοῦ ποταμοῦ、「川の対岸に」。πῶς ἔχεις δόξης;、「君はどんな意見持っているか?」。 動詞とともに参加:μετεῖχον τῆς ἑορτῆς、「彼らは祭り参加していた」。πίνειν τοῦ οἴνου、「ぶどう酒を飲む」。 利益:ἀπολαύειν τοῦ βίου、「生を享受する」。 記憶配慮:ἐπιλανθάνεσθαι τῶν φίλων、「友人たちのことを忘れる」。κήδεται ἑαυτοῦ、「自分自身気を付ける」。 接触開始:λαμβάνειν τῆς χειρός、「手でつかむ」。ἄρχεσθαι τῆς παιδείας、「教育始める」。 願望意図:ἐραν τῶν ἀδυνάτων、「不可能なことを要求する」。τυγχάνειν τοῦ σκοποῦ、「目標達する」。 支配・権力:ἐβασίλευε τῶν Περσῶν、「彼はペルシャ人たちを支配していた」。 豊富:εὐπορεῖν χρημάτων、「多額お金所持する」。 判断告発:ἀσεβείας κρίνειν、「不信心から判断する」。 売買:πρίασθαι 'ταλάντου、「1タラント単位で買う」(タラント古代ギリシア重量単位)。 知覚:ἀκούω τῶν λόγων、「私は言葉聞いている」。 κατά-の複合動詞:καταγελᾶν τίνος、「人をあざ笑う」。 その他の前置詞との複合動詞:ὑπεραλγῶ τῆς πατρίδος、「祖国苦痛感じる」。 分離:παύεσθαι μάχης、「戦闘停止する」。 欠如欠落:πόλις κενὴ ἀνδρῶν、「人がいない町」。 比較:νεώτερος σοῦ、「君よりも若い」。 原因:θαυμάζω σε τῆς σωφροσύνης、「私は君の節制称賛する(私は節制により君を称賛する)」。 感嘆:φεῦ τοῦ ἀνδρός、「ああ、男よ!」。 時間:ἑκάστου ἔτους、「毎年」。 空間: θέουσαι πεδίοιο、「平原走って」。 行為者: πρὸς πάντων ἐπονομαζόμενος、「世界中呼ばれている」。 絶対的属格: οὐδενὸς κωλύοντος、「誰もそれを妨げことなく」。

※この「属格」の解説は、「古代ギリシア語の格変化」の解説の一部です。
「属格」を含む「古代ギリシア語の格変化」の記事については、「古代ギリシア語の格変化」の概要を参照ください。

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属格

出典:『Wiktionary』 (2021/09/21 12:37 UTC 版)

名詞

ぞっかく

  1. 名詞・代名詞における一つで、主に付加される語句当該語に属することを表わす日本語に訳す場合は「~の」というように訳される場合が多い。英語については所有格スラヴ語派については生格という。

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