人称代名詞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/26 01:58 UTC 版)
人称代名詞(にんしょうだいめいし、personal pronoun)とは、人称に関する代名詞である。
概要
一般に話し手を指す一人称、受け手を指す二人称、それ以外の人、物を指す三人称に分けられ、数が区別されることが多い。一部の言語では性も区別する。また、一部の言語(例えばアイヌ語)で、この三種類のどれとも文法的に異なる人称(一人称複数包括形、不特定の一般の人に関する表現など)を四人称と呼ぶことがある。フランス語では一般の人を表すのに三人称単数の代名詞onが用いられるが、これは文脈に応じて一人称または二人称の意味で用いられることも多い。
敬意や社会的な遠近により代名詞を使い分けることがある。例えばヨーロッパの諸言語では、一般に聞き手を表す代名詞に親称と敬称の2つが有る。フランス語では二人称単数tuの代わりに二人称複数vousを敬称として用いる。ドイツ語では二人称単数duおよび二人称複数ihrの代わりに三人称複数Sieを用いる(最初の字を大文字にする)。英語はかつてフランス語と同じように、二人称複数のyouを二人称単数thouの代わりに用いたが、thouが廃れてしまった。
一人称複数を、聞き手を含む場合(包括形)と聞き手を含まない場合(除外形)とで区別する言語がある。例えばインドネシア語では包括形がkita、除外形がkamiである。中国語の普通話では包括形が「咱们」(咱們)、包括・除外どちらにも使えるのが「我们」(我們)である。
中国語では、三人称単数はtāで表すが、現代以降、欧米語を倣って性別などにより「他」(男性または不明)、「她」(女性)、「牠」(動物)、「祂」(神)、「它」(その他)と漢字を書き分けることがある。
日本語の場合、体系上の人称代名詞は「われ(我)」「なれ(汝)」「かれ(彼)」「たれ(誰)」であるが、実際には人称代名詞は敬語法などの待遇表現と密接に結び付いており、西洋語の人称代名詞のような使い方はできない。指し示される人物との社会的関係や場面によって、「自分」「あなた」などの人称代名詞を使い分けたり、「先生」、「社長」、「おじいさん」のような社会的身分を表す語で代用したりしなければならない。同様の複雑な人称代名詞の用い方は、ベトナム語、マレー語、ペルシア語などにも見られる。また、日本語の人称代名詞は概して時代による変化が激しい。例えば「貴様」は尊敬語から罵倒語になり、「てめえ」は一人称から二人称に転じている。体系上の人称代名詞も例外ではなく、「われ」「なれ」は既に共通語の口語としては廃れ、元来性別と関係なかった「かれ」は男性に限定されるとともに恋人(男性)を指す用法も生じている。
性(sexとgender)
言語によっては、人称代名詞に男女の区別がある(たとえば、英語のhe/him/hisは男に対して、she/her/hersは女に対して使われる)。ノンバイナリーの人の場合、どの代名詞を使用すべきかが自明ではない。そこで、自己同一性が男でも女でもない人を含めて、言及される当人が自分向けの人称代名詞を選択できるようにするべきだという考え方がある(英語 preferred gender pronoun; PGP)。PGPは、名札や電子メールの署名に付記されることがある[1]。
英語では、この考え方に基づき、性別を明示しない複数人称代名詞 they/them/theirs が一人の人を指して用いられる場合がある。この場合、動詞は複数形になるのが一般的で、再帰代名詞は複数 themselves であったり単数的な themself であったりするが、前者の方が広く通用する[2]。
脚注
- ^ Suzanne E. Rowe (January 2020). “They/Them/Theirs”. Oregon State Bar Bulletin: 17-19 .
- ^ “Singular “they”” (英語). https://apastyle.apa.org. 2022年8月7日閲覧。
関連項目
人称代名詞(主語と目的語)
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「ノヴィアル」の記事における「人称代名詞(主語と目的語)」の解説
人称単数複数1人称 Me Nus 2人称 Vu Vus 3人称(男性) Lo Los 3人称(女性) La Las 3人称(共性) Le Les 3人称(中性) Lu Lus ノヴィアルでは主格と対格の代名詞が同じであることに注意。 英語の“one, they, you”のような非人称代名詞はonで表す。 標準的な語順は英語と同じくSVOである。したがって、対格を主格と区別するための標識は不要である。 例 Me observa vu - 「私は君を観察する」 Vu observa me - 「君は私を観察する」 よって、対格(直接目的語)はほとんどの場合主格(主語)と等しくなる。しかしながら、両義性の問題がある場合には任意で対格語尾の-m (子音の後では-em)を利用できるが、ほとんど使用されていない。前置詞のemはこの語尾と等価である。 人称所有形容詞は代名詞に-n(子音の後では -en)を加えることによって作られる。事実上これは代名詞の属格(所有格)であり、menは「私の」と「私のもの」の両方を意味する。 例 men hunde - 「私の犬」 Li hunde es men - 「その犬は私のものだ」 前置詞のdeもde me、de vuなどのように所有表現を作る。
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人称代名詞
「人称代名詞」の例文・使い方・用例・文例
- 人称代名詞
- 動作主の行為が動作主自身に作用することを示すために-selfが付加された人称代名詞
- 遠称の人称代名詞
- 愛人や配偶者を指す対称の人称代名詞
- 男性を指す対称の尊敬表現の人称代名詞
- 女性を指す対称の人称代名詞
- 若い女性を指す遠称の人称代名詞
- 不定称の人称代名詞
- 男性を示す対称の人称代名詞
- 役人を指す対称の人称代名詞
- 対称の人称代名詞
- 僧を指す対称の人称代名詞
- 複数の人を指す他称の人称代名詞
- 他称の人称代名詞
- 男性を指す,自称の人称代名詞
- 老人を指す自称の人称代名詞
- 単数の人を指す自称の人称代名詞
- 複数の人を指す自称の人称代名詞
- 近称の人称代名詞
- 男性を指す近称の人称代名詞
人称代名詞と同じ種類の言葉
代名詞に関連する言葉 | 指示代名詞(しじだいめいし) 対称代名詞(たいしょうだいめいし) 反射代名詞(はんしゃだいめいし) 人代名詞(じんだいめいし) 人称代名詞(にんしょうだいめいし) |
名詞に関連する言葉 | 集合名詞(しゅうごうめいし) 抽象名詞(ちゅうしょうめいし) 人称代名詞(にんしょうだいめいし) 固有名詞(こゆうめいし) 反照代名詞(はんしょうだいめいし) |
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