広告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 01:07 UTC 版)
トリプルメディア
ネット、SNSの一般化に伴い、従来からの「有料の媒体」といった視野では、マネジメントの対象としても、現象の理解としても、広告が捉えきれなくなってきた。そこで、従来の「支払ったメディア(ペイドメディア、paid media)」に加えて、自社の公式サイトや自社発信の投稿のSNS記事などの「所有するメディア(オウンドメディア、owned media)」、いわゆるクチコミである「獲得したメディア(アーンドメディア、earned media)」の3つのメディアを有機的に連携しマネジメントしたり、マーケティングコミュニケーションの基本として認識することが国際的に提唱されている[19]。 その後、「獲得したメディア(アーンドメディア、earned media)」の中にも「マスメディア露出」と「消費者・生活者による口コミ・拡散」は2つに分けて考えるべきではないか、という考え方が出てきて、「消費者/生活者による口コミ・拡散」はShareされたメディアなので、Shared Mediaと呼べば、その頭文字4つをPESOと呼ぶことが広告業界で唱えられた。 このネット上のクチコミを踏まえたメディア認識の拡大は、インフルエンサーや投げ銭やリツイートする人々もまたメディアである、という広告の定義の現代化である。
広告コンテンツ
従来からの広告論が、その産業界の構造に準じて「広告メディア」の分類から広告を理解しようとしていた。このページの項目建てもその流れにある。しかしながら、ネットの一般化によって、必ずしもメディアを中心に広告を分類、認識することが適切ではない場合も増えてきた。本質的に「広告コンテンツ」つまり「広告のメッセージ」と「演出要素」をこのページでも章立てしていく必要性がある。その場合の項目には「デザイン」「コピーライティング(キャッチコピー)」「動画」「画像」「デジタルコンテンツ」「タレント」「音楽(コマーシャルソング)」「その他の広告コンテンツ」「レコメンデーション機能」また「イベント」「スポンサード」などが考えられ、それらの知識を持つ者から適切に記述され、整理されることが期待されている[20]。
広告の規制
広告の内容については、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)や医薬品医療機器等法などの法令、業界の公正競争規約などで規制されるほか、各メディアで独自の広告掲載基準を持っており[21]、表現が基準に合わない場合には修正を要請されたり、場合によっては掲載を拒否されることもある。しかし、掲載基準の運用は全体的に甘いため、誇大表現の広告が後を絶たず、特に不動産業や貸金業(中でもスポーツ新聞や夕刊紙などで広告している、トイチと呼ばれる登録間もないサラ金業者)など社会問題を引き起こしている業種も存在する。そのほか、屋外広告物法のような規制も存在する。
また「広告」とは分からないような記事、あるいは明示しないコンテンツを装う「ステルスマーケティング」は、WOMマーケティング協議会(WOMJ)が2009年頃から自主規制し、消費者庁は2011年頃から不適切な広告実践として違法化している。成功報酬型広告(アフィリエイト)についても不適切な実践が多い。
業種に対する規制
上述のとおり第二次世界大戦中は広告税が存在したが内容についての規制ではなかった。
現代の日本では、法令や自主基準などによる、特定の業種に対する広告の規制もある。医療機関、医業等(病院・診療所など)の広告は医療法第69条で規制されてきたが(診療科目や診療時間・休診日、住所、電話番号、地図程度しか出せなかった)、2001年に規制が一部緩和された(医師名、所属学会、ホームページURLなど)。
弁護士や法律事務所の広告も、統括組織である日本弁護士連合会(日弁連)の方針で規制されていたが、2000年10月より撤廃された。主に債務整理、破産手続等を担当する法律事務所を中心に、一般に対する広告が目立つようになった。かつては銀行など個々の金融機関の広告も規制されていたが、撤廃されている。
一方、タバコの広告は、1990年代以降、財務省令などで規制が強化された。法規制ではない自主規制では、アルコール飲料(酒類)や貸金業などの広告がある。特に貸金業の広告は、一般紙や放送メディアでは条件が厳しくなっているか、断られる場合も多い。
- ^ Hong Liu, Chinese Business: Landscapes and Strategies (2013), p. 15.
- ^ 第2版,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),百科事典マイペディア,ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,マーケティング用語集,精選版 日本国語大辞典,デジタル大辞泉,ブランド用語集,世界大百科事典. “広告とは”. コトバンク. 2022年6月3日閲覧。
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- ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(2) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第47巻第1号、2015年10月31日、53–83頁。
- ^ 水野, 由多加「[研究ノート 近現代文芸の中の広告(3) : 明治期以降の文学作品中の言説渉猟]」『関西大学社会学部紀要』第48巻第1号、2016年11月15日、113–138頁。
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- ^ 『大藏省令第149号廣告税法施行規則ニ依リ結社指定』、官報。1942年。
- ^ 東洋経済オンライン 広告市場は09年度も大幅減少に! メディアは火だるま(1)
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- ^ a b 清水公一(2018)『広告の理論と戦略』第18版、第2刷、創成社、187-190ページ。
- ^ a b 電通広告事典プロジェクトチーム「電通広告事典」2008 電通
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- ^ 水野由多加「ネーミングは広告である : ネーミングライツの意義と公共性」『都市問題』第114巻第1号、2023年1月1日、54–63頁、doi:10.32286/00027809。
- ^ [1]
- ^ 水野由多加「〈論文〉商業現象に見出される「広告とは言及されない広告」―現象理解のタテ糸あるいは補助線としての広告研究―」『商経学叢 = Shokei-gakuso: Journal of Business Studies』第64巻第2号、2017年12月31日、45–85頁。
- ^ 産経新聞の例・産経新聞媒体資料インターネット版より
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