ステマ
「ステマ」とは、広告宣伝であることを消費者に分からないように一般の消費者の口コミや評価に偽装して行われるマーケティング活動のことを意味する表現。当該商品・サービスの関係者が、善意の第三者による公正な判断を装い、当該商品・サービスに高評価(好評価)を下すことで、消費者の購買意欲を刺激しようとする。
ステマは「ステルスマーケティング」の略であり、その語源は英語の stealth marketing(隠密的マーケティング活動)である。ただし、英語圏では stealth marketing よりも undercover marketing(アンダーカバーマーケティング)という呼称の方がよく用いられる。
欧米ではステマもといアンダーカバーマーケティングが法的に禁じられている。日本は欧米に比べて規制がゆるい。日本では、タレント・スポーツ選手・インフルエンサー等によるステマが、ときどき発覚する。
ステマの手法は「有名人に依頼して商品を紹介してもらう」方法と「口コミサイトに高評価レビューを投稿する」方法の2種類におおむね大別される。どちらにしても、広告目的の「作られた評価」であり、それが秘匿されている、という点に変わりはない。
宣伝広告では商品・サービスの長所ばかりが言及され、難点は隠されるが、口コミは長所も短所も忌憚なく論われる。商品やサービスの品質および満足度を確かめる手がかりとしては、宣伝より口コミの方が信頼性が高いといえる。もし自分の好きな有名人がその商品を愛好し薦めているとなれば、より強い購入動機にもなり得る。もしそれがステマでなく真っ当な口コミ評価だったらの話であるが。
ステマ自体を規制する法律は、2020年現在の日本にはまだない。ただし悪質なステマは法的処罰の対象となる場合がある。たとえば、商品・サービスの内容の一部や欠陥を故意に隠して宣伝・販売を行うことは「景品表示法」に抵触する場合がある。また、使用経験がない商品の体験談を投稿するような行為は「軽犯罪法」に抵触する場合がある。
ステマは消費者を騙す行為に他ならない。たとえステマが法的にセーフであったとしても、大半の消費者から倫理的に拒絶される。ステマが発覚すると消費者から大きな反感を買う。いわゆる炎上さわぎの祭状態に至り、不買運動に発展することもある。有名人がステマに加担した場合は、当の有名人もイメージ低下・社会的評価の低下といった社会的制裁を避けられない。
ステマが発覚した場合に当事者に付与されるネガティブなイメージが、どの程度まで定着するかは、状況によって異なる。場合によっては何年経っても忘れ去られず、ウェブ検索エンジンで商品名を入力した際に「(商品名) ステマ」のように関連キーワードが提示される状況がずっと続くかもしれない。
企業とインフルエンサーによるステマが発覚して炎上騒ぎに発展する流れの一例。ある企業が美容関係の新製品を売り出すために、ステマを実施することを決定。そこで美容の専門家としてインスタに多数のフォロワーを持つA氏にステマ投稿を依頼。A氏は若い女性への影響力が大きい、美容のカリスマ、インフルエンサーである。企業は製品とを提供すると同時に、彼女のインスタに製品に関するポジティブな投稿をするように依頼。A氏は承諾し依頼通りの投稿を行った。彼女の投稿を目にしたフォロワーはA氏が薦める製品ということで大いに注目した。これを契機に購入に踏み切った者も少なくなかった。同製品は多大な売り上げを記録した。企業はA氏に報酬を支払った。ところが「宣伝通りの効果が得られなかった」という悪評や、入金してから未だに製品が届かないといった苦情が、徐々に増えていった。売り上げは鈍化。そして公的機関の調査によって企業が悪質な商品を販売する詐欺的行為を行っていたことが判明。同時にA氏はステマによって不法行為の片棒を担いでいた(フォロワーを騙していた)ことが明らかになる。一連の騒動は大々的な炎上騒ぎに発展。企業は倒産。A氏は謝意を表したがバッシングは収まらず、インスタのアカウントを削除。個人のイメージも低下・悪化。この騒動を理由に他企業と開発したコラボ製品の販売は中止となり、A氏は影響力も社会的地位も失う。
ステマ行為には、いくつかの弊害も生み出している。まずは口コミの混乱と、いわゆる「ステマ厨」を生んだことである。ステマ厨とは、インターネット上の口コミ・レビューに対して「それはステマだ」と指摘するユーザーのことである。
ステマ行為は、真っ当な口コミやレビューがステマ認定されてしまう、口コミの信憑性が揺らぐ、という懸念にも繋がる。レビュワー自身が実際に当該商品・サービスを利用し、これがかなり好印象だったので、正直に高評価しただけなのに、これが信じてもらえなくなる。ステマ厨にステマ認定され、あまつさえ「ステマ乙」などと言われる。
ステマ行為は消費者トラブルの増加にも繋がる。とりわけ粗悪品がステマの対象になった場合。良品はステマに頼らなくても一般消費者の口コミによって真っ当に高く評価される。そういう真っ当な評価が期待できない粗悪品を売りつけようとする企業がステマを使う場合が割と多々ある。宣伝内容が詐欺まがいレベルの場合もある。不良品を平気で送る場合もある。商品を発送しない場合まである。
「ステマの対義語」は特にない。しいて挙げれば「真っ当なマーケティング活動」ということになるだろうが、言葉の上ではステマもマーケティングの下位概念のひとつに過ぎない。
ステルス‐マーケティング【stealth marketing】
ステルスマーケティング
【英】stealth marketing
ステルスマーケティングとは、消費者に宣伝行為・販促活動であることを悟られないような形で行われる宣伝・販促活動のことである。英語ではundercover marketing(アンダーカバーマーケティング)と呼ばれることが多い。
「マーケティング」という言葉には市場調査や分析、競合調査、販売戦略の立案、流通チャネルの選定・確保、といった多種多様なプロセスが含まれ得るが、「ステルスマーケティング」という語におけるマーケティングはもっぱら「宣伝」の意味において用いられる。
ステルスマーケティングは、典型的には、売り手・広告主の側から依頼を受けた人物が売り手とは無関係な第三者を装って好評を伝える、という形で行われる。中立的な立場からの公正な評価であるかのような体で、あるいは一般消費者の素朴な感想という体で、評判がよいことを世間に発信するわけであるが、ステルスマーケティングは売り手側からの依頼に応じた「仕込み」としてこれが行われる。すなわち「やらせ」である。
ステルスマーケティングは売り手や広告主とは無縁の第三者の感想として伝わるため、一般的消費者も素直に受け入れやすい。口コミサイトや体験記を綴るブログなどに口コミ情報として紛れ込ませればバイラルマーケティングの効果を狙いやすくなり、あるいはタレントに公式ブログやテレビ等で発信させればバズマーケティングの効果を狙いやすくなるといえる。
ただしステルスマーケティングは、それが宣伝活動であるという実態を秘匿して行われる活動であり、一般的にはモラルに反する行為とされ、たいていの一般消費者からは忌避されている。口コミで好評が拡散していた折に、その好評が実はステルスマーケティングによるものだったと発覚した場合、好評が一転して悪評に転じ、炎上騒ぎに発展する場合も少なくない。
ステルスマーケティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/22 02:48 UTC 版)
ステルスマーケティング(英語: stealth marketing)とは、消費者に広告と明記せずに隠して、非営利の好評価の口コミと装うなどすることで、消費者を欺いてバンドワゴン効果・ウィンザー効果を狙う行為。「ステマ」の略語で知られる。やらせやサクラなどもこの一例に分類される[1][2]。映画などの映像の中に目視では認識できない短時間の画像などを挿入して脳内に刷り込む宣伝方法で、ステルス機のように相手に気づかれずに宣伝する手法が語源とされる[要出典]。
注釈
- ^ 口コミサイトにオーナーが契約すれば、自社の口コミは自己の判断で削除が可能である(大手のグルメサイトなど)
出典
- ^ a b c 「虚の時代[2]――サクラ操り やらせ広告」『朝日新聞』2009年5月1日付朝刊、第13版、第34面。有名店や新規開店やセールの行列、歌手や俳優や選手の周辺で騒ぐ人たちの一部は、サクラ派遣会社が時給2000円程度で動員。芸能人がブログで商品を取り上げると一回90〜300万円。ほか
- ^ 日経クロストレンド. “相次ぐ「ステマ」、違法ではなくても「よいステマ」は存在せず”. 日経クロストレンド. 2020年3月20日閲覧。
- ^ “Twitterで見掛ける“一般人風”漫画紹介アカウント、実は電子書籍サイトのステマだった―― 運営会社「誤解を招く表現となってしまった」(ねとらぼ)”. ねとらぼ. 2021年4月16日閲覧。
- ^ “ミキのツイートに京都市が100万円 ステマとの指摘も:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年3月20日閲覧。
- ^ “「アナと雪の女王2」にステマ騒動、ディズニーも認め謝罪”. デイリー新潮. 2020年3月20日閲覧。
- ^ “ステマ?後絶たず、日本は法規制なし 漫才コンビツイート問題、問われる発信側倫理|社会|地域のニュース|京都新聞”. 京都新聞. 2020年3月20日閲覧。
- ^ a b “Revised FTC Guidelines: Blogger Beware”. www.law.com (2009年10月21日). 2012年1月17日閲覧。
- ^ a b DIRECTIVE 2005/29/EC OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL of 11 May 2005 - EUR-Lex 2005年5月11日配信
- ^ “ステマビジネス横行で揺らぐネットの信頼性〜Wikiも被害、サムスンの逆ステマ発覚”. Business Journal (2013年11月15日). 2014年11月8日閲覧。
- ^ “The Reviewer Who Wasn't There”. 2001年6月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月12日閲覧。
- ^ “ステマって何?|5分で分かるステマの意味と有名事例6選”. LISKUL. 2014年11月7日閲覧。
- ^ “Undercover Marketing”. Product Placement News (2007年1月16日). 2014年11月7日閲覧。
- ^ a b “ほしのあきは氷山の一角 ネットでステマ芸能人リスト増殖中”. Excite (2012年12月17日). 2014年11月7日閲覧。
- ^ a b c d 「ステルスマーケティングとは」 ITpro 最新IT用語解説、2008年5月30日。
- ^ “ピース綾部ブログが謎の「魚拓削除」 「ペニオク」嘘記事めぐり憶測広がる”. J castニュース (2012年12月19日). 2014年10月12日閲覧。
- ^ “「ユーキャン新語・流行語大賞」候補語が発表 「いいね!」「ステマ」「うどん県」も”. ITmedia. (2012年11月8日) 2014年11月6日閲覧。
- ^ “【速報】9万人が選んだ『ネット流行語大賞』 金賞はアノ言葉”. ガジェット通信. (2012年12月7日) 2014年11月6日閲覧。
- ^ 野口智雄『マーケティングの基本』(第2版)日本経済新聞社〈日経文庫 ビジュアル〉、2005年3月。ISBN 4-532-11903-0。[要ページ番号]
- ^ “Federal Trade Commission - 16 CFR Part 255: Guides Concerning the Use of Endorsements and Testimonials in Advertising” (PDF). FTC (2009年). 2012年1月17日閲覧。
- ^ "FTC Publishes Final Guides Governing Endorsements, Testimonials" (Press release). FTC. 5 October 2009. 2012年1月17日閲覧。
- ^ “ソーシャルメディアの時代なので、クチコミマーケティングを再考しよう:6”. www.advertimes.com (2011年9月26日). 2012年1月17日閲覧。
- ^ * “New UK Law Criminalizes Stealth Marketing Techniques”. www.seomoz.org (2008年6月3日). 2012年1月17日閲覧。
- “ステルスマーケティング手法を禁止する新しい英国の消費者保護法(前編)”. web-tan.forum.impressrd.jp (2008年6月30日). 2012年1月17日閲覧。
- ^ 「ステマ 歯科・エステでも相次ぐ」『産経新聞』2012年1月15日29面
- ^ “歯科、美容外科の口コミサイトでもやらせ書き込み、業者特定急ぐ”. 産経新聞. (2012年1月15日) 2012年1月18日閲覧。
- ^ 消費者庁、評価操作の“ステマ”は不当表示、景表法ガイドラインを一部改定
- ^ 嘘のブログ…ほしのさんら立件見送りへ 「詳細知らず」軽犯罪法も時効 産経新聞 2013年2月8日
- ^ ステルスマーケティングとは?意味・法律・違法性・事例
- ^ “「ステマ」規制、10月から 政府、景表法不当表示に指定”. 毎日新聞. (2023年3月28日) 2023年3月28日閲覧。
- ^ “口コミ装う宣伝はステマ、依頼主を行政処分の対象に 10月から規制”. 朝日新聞. (2023年3月28日) 2023年3月28日閲覧。
- 1 ステルスマーケティングとは
- 2 ステルスマーケティングの概要
- 3 法規制
- 4 脚注
ステルスマーケティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 00:59 UTC 版)
「ヤフー (企業)」の記事における「ステルスマーケティング」の解説
100%子会社のTRILL株式会社が運営する女性向けファッション情報のキュレーションサイト「TRILL(トリル)」で、2014年11月~2015年5月までの期間、「広告表記のない記事広告」を掲載しており、外部メディアに配信されていたことが発覚した。これは広告を編集コンテンツと誤認させて届ける行為である。この問題を受け、ヤフー株式会社が自社およびグループ会社を調査したところ、Yahoo!ロコ、carview!、みんカラ、Yahoo!映像トピックス、TRILL、Yahoo! BEAUTY、スポーツナビなどで同様に「広告表記のない記事広告」を掲載しており、Yahoo!ロコ、TRILL、スポーツナビでは記事広告が外部メディアに配信されていた。
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ステルスマーケティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/13 23:52 UTC 版)
「実況プレイ」の記事における「ステルスマーケティング」の解説
公式側が一部のゲーム実況者に宣伝を依頼し、実況者がそのことを告げずに商品を紹介するケースもある。 マイクロソフトはXbox Oneを使用した30秒以上の動画を投稿したユーザーに、再生回数1000回につき3ドルを支払うキャンペーンを実施。投稿者に報酬が支払われること自体に問題はないが、アメリカ合衆国連邦取引委員会のガイドラインでは「報酬を受け取って商品を宣伝する場合にはそのことを明示しなければならない」とされている。
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ステルスマーケティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 12:13 UTC 版)
デビッド・マニング事件(2001年) ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが「架空の映画評論家」を作りあげ、自社の映画作品を絶賛していたステルスマーケティング事件。ソニーは合成音声でラジオ出演させるなど偽装工作を行った。 俳優を利用したステルスマーケティング(2003年) ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ(現・ソニーモバイルコミュニケーションズ)は、俳優60人を雇い、ステルスマーケティングを行っていた。主要都市で旅行者に扮した俳優は通行人に自社製品で写真を撮らせ、その過程で製品の機能について熱心にアピールすることで「ソニーの製品はクールだ」と伝えるというもの。ライターのマルコム・グラッドウェル(英語版)は、「詐欺紛いの行為であり、常識的にあり得ない。真実が知れれば大きな反発を生むだろう」と見解を示している。 ゲートキーパー問題(2004年) 複数のサイトにおいて任天堂、マイクロソフトなどの他社製品を中傷、自社製品を宣伝する書き込みがあり、それが同社の本社からの書き込みであることが発見される。さらに、これを契機に多くのブロガーらが自身のウェブサイトでドメイン名検索を実施したところ、2000年ごろから「少人数ではとても行えない規模」で、同様の書き込みがあったことが発覚した。 PlayStation Portableファンブログヤラセ問題(2006年) ソニー・コンピュータエンタテインメント(米国)が、個人ブログと偽り他社製品を中傷、自社製品の宣伝を行うサイトを運営していた。 YouTube再生回数不正問題(2012年) ソニー・ミュージックエンタテインメントのYouTubeアカウントにおいて再生回数が不正に水増しされていたため、再生回数が大幅にマイナス修正された。 PlayStation Vita問題(2014年) ソニー・コンピュータエンタテインメント(現・ソニー・インタラクティブエンタテインメント)がPlayStation Vitaについて、実際には使えない機能を顕著な特徴として宣伝した。当社やその広告店の社員によるものだと明示的に示すことなしに、社員のTwitterアカウントを通じての投稿が、消費者に直接的に宣伝を行うなどして消費者に誤解を与えたと、アメリカ合衆国連邦取引委員会の指摘を受け、消費者に25ドルか50ドル相当の商品引換券を提供することで和解した。
※この「ステルスマーケティング」の解説は、「ソニー」の解説の一部です。
「ステルスマーケティング」を含む「ソニー」の記事については、「ソニー」の概要を参照ください。
ステルスマーケティング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/30 00:38 UTC 版)
「ラグジュアリーカード」の記事における「ステルスマーケティング」の解説
ラグジュアリーカードはステルスマーケティングを多用することでも知られる。 ツイッターでは、BC-Mediaという無関係の第三者を装い「ステータスカードに関するアンケート調査」などと謳うツイートをプロモーションに使いながら、その実、ラグジュアリーカードを絶賛し勧誘するステルスマーケティングを行っている。 また「クレカ編集部」など第三者を装い、ラグジュアリーカードを「問答無用の圧倒的ステータス」「持っているだけで、リッチなデキる男感が伝わる」などと絶賛するブログ記事を装ったステマ広告を多用することが指摘されている。
※この「ステルスマーケティング」の解説は、「ラグジュアリーカード」の解説の一部です。
「ステルスマーケティング」を含む「ラグジュアリーカード」の記事については、「ラグジュアリーカード」の概要を参照ください。
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