火
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/06 01:21 UTC 版)
火の構造、しくみ
火は炎心と内炎と外炎によって構成されている[11]。最も明るいのは内炎である。これは、炭素(すす)が最も多く含まれているためである。最も熱いのは、外炎である。これは、酸素と最も多く接触しているためである。また、内炎は、不完全燃焼をおこしている。
近年では「燃焼によって解放されたエネルギーのために、燃焼している物体(や気体)は発光する」と説明することがある。
燃焼
火を付けるには、可燃物、酸素ガスのような酸化剤、それらの混合物が引火点を越えるための熱が必要である。火が点火すると、燃焼によって発生した熱エネルギーがさらなる燃焼を起こすが、燃焼し続けるには連鎖反応を生み出すよう燃料と酸素が連続的に供給される必要がある[12]。火はこれらの要素が揃わない環境では存在しない。燃料と酸素だけでなく、触媒が必要な場合もある。触媒はそれ自体が燃焼するわけではないが、化学反応を促進する役目を果たす。
火を消すには、上述の要素のいずれかを取り除けばよい。例えば天然ガスの火を消すには以下のいずれかを行えばよい。
- ガスの供給を止める - 燃料を除去する。
- 炎を何かで完全に密閉する - 酸素供給を断ち、炎の周囲にCO2を充満させる。
- 水を大量にかけ、炎が熱を発生するよりも素早く熱を奪う。冷気を吹き込んでも同じ効果が得られる。
- ハロメタンのような反応遅延剤を使う。燃焼の化学反応そのものを遅延させ、連鎖反応できなくする。
逆に、燃焼効率を高めることで火を強めることができる。そのためには化学量論的につりあいのとれた形で燃料と酸素の供給量を調整する。これによって火の温度も高くなって連鎖反応も強まるが、同時に触媒を必要とする場合もある。
炎
炎は可視光や赤外光を放つ化学反応中の気体と固体の混合物であり、その周波数スペクトルは燃焼物や中間生成物の化学組成によって異なる。木などの有機物を燃やしたり、ガスを不完全燃焼させると、すすと呼ばれる白熱した固体粒子を生じ、赤からオレンジ色の火になる。火の発する光は連続なスペクトルを有する。ガスが完全燃焼すると、炎の中では励起された分子の電子が様々な遷移を起こして単一の波長の光を発するため、やや暗い青色の光になる。一般に火には酸素が必須だが、水素と塩素が化学反応して塩化水素となる場合も炎を生じる。他にも、フッ素と水素、ヒドラジンと四酸化二窒素の化学反応でも炎を生じる。
炎の発する光は複雑である。すす、ガス、燃料の粒子などが黒体放射するが、すすの粒子は完全な黒体として振舞うには小さすぎる。また、ガス内で下方遷移した原子や分子が光子を放出する。放射のほとんどは可視光と赤外線の範囲にある。色は黒体放射の温度や燃焼に関わる物質の化学組成によって変化する。炎の色を最も左右するのは温度である。山火事の写真を見ると、様々な炎の色が見てとれる。地表付近は最も激しく燃焼しているため、有機物が最も高温で燃焼しているときの白または黄色の炎が見える。その上にはやや温度の低いオレンジ色の炎があり、さらに温度の低い赤い炎が見える。赤い炎の上では燃焼は起きず、燃焼しきらなかった炭素粒子が黒い煙となっている。
アメリカ航空宇宙局 (NASA) は、炎の形成に重力もある役目を果たしていることを発見した。重力の条件が異なれば、炎の形状や色が変化する[13]。通常重力下では対流によってすすが上に登っていくため、右の写真に見られるような形になり、黄色になる。宇宙空間などの無重力状態では対流が起きないため、炎は球状になり、完全に燃焼するため青くなる(ただし、燃焼によって発生したCO2がその場に留まって炎を包むため、ゆっくり炎を移動させないと火が消えてしまう)。この違いの説明はいくつか考えられるが、温度があらゆる方向に等しく伝わるためすすが生じず、完全燃焼するためという説明が最も妥当と見られる。
熱
様々な火や炎の温度は次の通りである。
- 酸水素ガスの炎: 2000℃ 以上
- ブンゼンバーナーの炎: 1300℃から1600℃[14]
- ブロートーチの炎: 1300℃[15]
- ろうそくの炎: 1000℃
- 紙巻きたばこ:
- 吸い込んでいないとき: 外側で400℃、内側で585℃
- 吸い込んでいるとき: 内側で700℃
- 常に内側の方が熱い。
- ^ Glossary of Wildland Fire Terminology, National Wildfire Coordinating Group, (November 2009) 2008年12月18日閲覧。
- ^ Helmenstine, Anne Marie. “What is the State of Matter of Fire or Flame? Is it a Liquid, Solid, or Gas?”. About.com. 2009年1月21日閲覧。
- ^ Lentile, Leigh B.; Holden, Zachary A.; Smith, Alistair M. S.; Falkowski, Michael J.; Hudak, Andrew T.; Morgan, Penelope; Lewis, Sarah A.; Gessler, Paul E.; Benson, Nate C. (2006). “Remote sensing techniques to assess active fire characteristics and post-fire effects”. International Journal of Wildland Fire 3 (15): 319-345 .
- ^ フレイザー, J. G.『火の起原の神話』青江舜二郎訳、筑摩書房〈ちくま学芸文庫 フ18-3〉、2009年12月。ISBN 978-4-480-09268-7。 [要ページ番号]
- ^ 山田仁史「発火法と火の起源神話」『東北宗教学』第2巻、東北大学大学院文学研究科宗教学研究室、2006年、183-200[含 英語文要旨]、ISSN 18810187、NAID 120002511902。
- ^ 「図説 火と人間の歴史」p142-143 スティーヴン・J・パイン著 鎌田浩毅監修 生島緑訳 原書房 2014年2月4日第1刷
- ^ a b c 『岩波哲学・思想事典』 [要ページ番号]
- ^ 「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p56-58 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
- ^ 後藤 淳. “ヘラクレイトスの認識論” (PDF). 2021年9月21日閲覧。
- ^ 小坂 国継. “初期ギリシア哲学者の実在観” (PDF). 2021年9月21日閲覧。
- ^ 幸田清一郎「炎の構造と温度(<特集>燃焼と爆発)」『化学と教育』第35巻第3号、日本化学会、1987年、224-225頁、doi:10.20665/kakyoshi.35.3_224、ISSN 0386-2151、NAID 110001826521、2022年4月1日閲覧。
- ^ 「図解よくわかる 火災と消火・防火のメカニズム」p6-7 小林恭一編著 鈴木和男・向井幸雄・加藤秀之・渋谷美智子・清水友子著 日刊工業新聞社 2015年6月30日初版1刷発行
- ^ Spiral flames in microgravity, National Aeronautics and Space Administration, 2000.
- ^ “Flame Temperatures”. 2010年7月13日閲覧。
- ^ “Pyropen Cordless Soldering Irons” (PDF). 2010年7月13日閲覧。
- ^ 「図説 火と人間の歴史」p42-43 スティーヴン・J・パイン著 鎌田浩毅監修 生島緑訳 原書房 2014年2月4日第1刷
- ^ シャクリー, マイラ『ネアンデルタール人 - その実像と生存説を探る』河合信和訳、学生社、1985年11月、p. 94頁。ISBN 978-4-311-20080-9。
- ^ 「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p76 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷
- ^ 「産業革命歴史図鑑 100の発明と技術革新」p60-61 サイモン・フォーティー著 大山晶訳 原書房 2019年9月27日初版第1刷発行
- ^ 「エネルギー資源の世界史 利用の起源から技術の進歩と人口・経済の拡大」p107-115 松島潤編著 一色出版 2019年4月20日初版第1刷
- ^ 「食と人の歴史大全」p15 リンダ・チヴィテッロ 栗山節子・片柳佐智子訳 柊風社 2019年7月8日第1刷
- ^ 「火と人間」p4 磯田浩 法政大学出版局 2004年4月20日初版第1刷
- ^ 「図説 火と人間の歴史」p44-45 スティーヴン・J・パイン著 鎌田浩毅監修 生島緑訳 原書房 2014年2月4日第1刷
- ^ 「図説 人類の歴史 別巻 古代の科学と技術 世界を創った70の大発明」p114-115 ブライアン・M・フェイガン編 西秋良宏監訳 朝倉書店 2012年5月30日初版第1刷
- ^ 「火と人間」p9 磯田浩 法政大学出版局 2004年4月20日初版第1刷
- ^ 「図説 火と人間の歴史」p66 スティーヴン・J・パイン著 鎌田浩毅監修 生島緑訳 原書房 2014年2月4日第1刷
- ^ 「図説 火と人間の歴史」p68 スティーヴン・J・パイン著 鎌田浩毅監修 生島緑訳 原書房 2014年2月4日第1刷
- ^ 「現代森林政策学」p26-27 遠藤日雄編著 日本林業調査会 2008年3月16日初版第1刷発行
- ^ 「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p76-78 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
- ^ 「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p85-89 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
- ^ "In Pictures: German destruction". BBC News.
- ^ a b “Napalm”. GlobalSecurity.org. 2010年5月8日閲覧。
- ^ “"Key World Energy Statistics "”. International Energy Agency (2009年). 2010年7月13日閲覧。
- ^ 「火と人間」p3-4 磯田浩 法政大学出版局 2004年4月20日初版第1刷
- ^ 「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p37-39 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
- ^ 「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p37 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
- ^ 「火の科学 エネルギー・神・鉄から錬金術まで」p39-42 西野順也 築地書館 2017年3月3日初版発行
- ^ 「図解よくわかる 火災と消火・防火のメカニズム」p20-21 小林恭一編著 鈴木和男・向井幸雄・加藤秀之・渋谷美智子・清水友子著 日刊工業新聞社 2015年6月30日初版1刷発行
- ^ 「図説 火と人間の歴史」p91-93 スティーヴン・J・パイン著 鎌田浩毅監修 生島緑訳 原書房 2014年2月4日第1刷
- ^ 「図解よくわかる 火災と消火・防火のメカニズム」p76-77 小林恭一編著 鈴木和男・向井幸雄・加藤秀之・渋谷美智子・清水友子著 日刊工業新聞社 2015年6月30日初版1刷発行
- ^ https://www.bousaihaku.com/ffhistory/11275/ 「江戸時代の大火」消防防災博物館 2022年2月16日閲覧
- ^ 「図説 火と人間の歴史」p71-72 スティーヴン・J・パイン著 鎌田浩毅監修 生島緑訳 原書房 2014年2月4日第1刷
- ^ 「森林保護学の基礎」p57-58 小池孝良・中村誠宏・宮本敏澄編著 2021年4月25日第1刷発行
火曜日
(火 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/26 01:43 UTC 版)
火曜日(かようび)または火曜(かよう)は、月曜日と水曜日の間にある週の1日。
- ^ S・ベアリング=グールド 著、今泉忠義 訳『民俗学の話』角川文庫、1955年、60頁。
- ^ 不動産・美容院・病院・飲食……業界ごとに異なる「休業日」 - PARAFT
- ^ a b なぜ不動産店は水曜日、理容店は月曜日休みが多いの? - ネタりか
- ^ 業種ごとに決まっている!?定休日のナゾとルーツに迫る! - webR25
- ^ 長野県は火曜休み!?各県で違う不動産会社の定休日事情 - スマイスターMagaZine編集部
- ^ がっちりアカデミー - TBS(2013年2月6日時点のウェブアーカイブ)
火と同じ種類の言葉
「火」に関係したコラム
-
株主は、その企業の経済的な利益を受け取る権利を持っています。その中でもよく知られているのが配当金、株主優待、新株です。配当金企業の利益をお金で受け取ることができます。配当金は、会社の利益を株主の出資比...
- >> 「火」を含む用語の索引
- 火のページへのリンク