避難訓練
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/22 19:11 UTC 版)

避難訓練(ひなんくんれん)は災害、戦争、個人または集団で行われる犯罪時における攻撃、乗り物での事故を想定した避難の訓練のこと。
避難訓練は、避難経路を覚え、災害時のパニック状態を抑制し、いざという時の手順を覚える為に行われる訓練である。また、近くの避難所を覚える訓練でもある。
種類
- 火災
- 自然災害 : 津波、竜巻(アメリカ合衆国オクラホマ州など)を含む。
- 犯罪(テロリストや不審者)対策 : 日本では地下鉄サリン事件や附属池田小事件の影響。
- 戦争 : 空襲やミサイル着弾を想定(イスラエルや大韓民国[1]など)。
避難訓練と同時に行われるもの
日本の学校における避難訓練
日本の小中学校では、児童生徒に対し、年に数回の避難訓練を行っている。例として東京都では教育課程に公立幼稚園・小学校・中学校・特別支援学校では年11回、高等学校では年4回の避難訓練を入れている[2]。
学校では避難時の心構えをまとめた標語が作られており、「おかしも」などといった標語を用いて、慎重な行動をするように促している。ちなみに、おかしもは「押さない、駆けない、喋らない、戻らない」の頭文字をとったものである[3]。これらの標語は地域や教える学校によって一部差異があるが(「駆けない」の代わりに「走らない」が入った「おはしも」、「近寄らない」を加えた「おかしもち」など)、基本的には焦らず、冷静に行動・判断を促すよう教えている。
避難訓練が逆効果になった個別例
2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震で、岩手県釜石市で拠点避難所(津波が収束した後の2次避難所)として指定されている「鵜住居地区防災センター」に避難した住民のうち54名が、津波にのまれて亡くなった。
2010年5月と、2011年3月3日(震災のちょうど一週間前)には、高台にある一次避難所(津波発生時の緊急避難所)でなく、この二次避難所を避難先として避難訓練が行われていた。高齢者への負担軽減のための措置・配慮だったが、逆に誤った刷り込みを産む結果となってしまった[4]。
日本の保育園で実際に行われた訓練
東京都世田谷区の認証保育所「砧南らる保育園」では、まず初めに、保護者と職員間で電話連絡訓練が行われる。事前に訓練用の保護者名簿を作成し、園児たちの午睡中、クラスごとに担任が訓練であることをことわってから、保護者に連絡事項を伝える。その後、火災が発生したという想定で、職員は初期消火と園児たちの誘導にあたる。またこの園では、煙体験用のテントの中に親子で入るという取り組みが実施されている。最後は親子で一緒になって、水消火器を使った消火訓練を行う[5]。
千葉県柏市の幼稚園型認定こども園「くるみ幼稚園」では、不審者対応訓練の際、「不審者」「刃物」などの言葉を使わないようにしている。不審者を刺激せず、園児たちを不安にさせないように、「凶器を持たない不審者→お花」「刃物を持った不審者→バラ」といった用語を、あらかじめ全職員で取り決めている。これを踏まえて、不審者役の職員が園に現れてから退去するまでの一連の流れを訓練する形となっている[6]。
日本の根拠法令
- 災害対策基本法 : 防災訓練を規定。
- 消防法 : 火災に対応した避難訓練に特化した規定。学校、病院、事業場、工業場、百貨店など具体的な場所も指定。
- 津波防災地域づくりに関する法律 : 東日本大震災後に施行。
関連項目
- 災害対策基本法 - 災害発生前から発生後の国や地方自治体などの各機関がどのように対応すべきかを定めている法律。
- 災害救助法 - 災害が起きた直後の応急救助に対応する法律。
- 三助 (政策) - 防災における自助・共助・公助
- 避難所 - 指定避難所。
- 避難場所 - 指定緊急避難場所。
- 自主防災組織 - 防災活動を行う共助の中核となる住民組織
- 地区防災計画 - 避難訓練や防災訓練などを行って作成される防災計画。
- 避難行動要支援者 - 避難行動に支援を要する人を示す。要配慮者、要援護者、要支援者。
- 災害図上訓練 - 実際の避難方法を想定して行う図上訓練(机上訓練)
- 逃げ地図 - 地域住民が自身で作成する避難地形時間地図(防災マップ)
- タイムライン (防災) - 住民一人ひとりのマイ・タイムライン(防災行動計画)、逃げキッドなど。
- 防災訓練 - 災害などに備えた訓練一般
- ストップ、ドロップ&ロール - アメリカで教えられる着衣着火時の対応で、「止まって、倒れて、転がって」の意。
関連書籍
- 天野珠路 編『写真で紹介 園の避難訓練ガイド』かもがわ出版、2017年5月3日。ISBN 978-4780309096。 NCID BB2390513X。
- 瀧本浩一 編『地域防災とまちづくり―みんなをその気にさせる災害図上訓練(第6版)』イマジン出版、2023年2月1日。 ISBN 978-4872999266。 NCID BD0083627X。
- 逃げ地図づくりプロジェクトチーム 編『災害から命を守る 「逃げ地図」づくり』ぎょうせい、2019年11月28日。 ISBN 978-4324107140。 NCID BB29394598。
脚注
注釈
出典
- ^ 北の空襲を想定、韓国で過去最大規模の退避訓練(読売新聞2010年12月5日)2012年5月18日閲覧
- ^ 避難訓練の手引 - 東京都教育委員会
- ^ こどもの防災教室 - 日野市役所
- ^ 訓練で使ったのに…津波にのまれた拠点避難所 - 読売新聞 2011年3月24日
- ^ 天野珠路『写真で紹介 園の避難訓練ガイド』株式会社かもがわ出版、2017年5月15日、50‐51頁。
- ^ 天野珠路『写真で紹介 園の避難訓練ガイド』株式会社かもがわ出版、2017年5月15日、34‐36頁。
外部リンク
避難訓練
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:45 UTC 版)
衆議院議員会館で避難訓練実施 5月19日、衆議院議員運営委員会「院内の警察および秩序に関する小委員会(小渕恵三委員長)」は、永田町の衆議院第二議員会館で消防演習および避難訓練を実施した。避難訓練については「会館7階で出火、館内に煙が充満、逃げ遅れ多数」という想定で実施され、特に救助袋を使った避難に重点が置かれた。小渕恵三委員長(のちの官房長官、首相)も救助袋の中に入って避難を体験した。 日本各地で実施された消防避難訓練 5月26日午前には大阪府庁舎で消防避難訓練が行われた。先ずは各課の火気取扱責任者約200人が参加して「別館8階の食堂から出火」を想定した消火訓練が行われ、その後に屋上で「消火器取扱い訓練」へと進んだが、屋上出入口の鍵が開いていなかったために守衛が慌ててカギを取りに行くという不手際があった。その後に救助袋を使った避難訓練へと移っていった。東消防署のはしご車など4台の消防車両も訓練に参加した。救助袋は庁舎の高さ25メートルから30メートルに設置され、23人の職員が実際に袋の中を滑り降りて避難を体験した。高層階から滑り降りることを尻込みする人も多く、脱出に成功する度に拍手が起こるなど、全体としては緊張感に欠ける避難訓練となった。 大阪市内では6月9日午後に「雑居ビル」での避難訓練も行われた。銀行や飲食店など22テナントが入居する阿倍野区の9階建て商業ビルで「1階から出火、火災は上層階に延焼、逃げ遅れ多数」という想定で訓練が実施された。ビルの自衛消防隊員約70人が避難誘導の手順と経路を確認した。阿倍野消防署からは、実際にはしご車など計6台の消防車両がサイレンを鳴らして出場し、屋上に取り残された人や煙に巻かれて逃げ遅れた人をビル内部に進入して30分足らずで救助した。また救助袋を使った避難訓練も実施され、ビル利用者らはビル6階から9階の3か所に設置された救助袋を使って避難を体験した。 6月20日午前には、心斎橋の百貨店と南消防署合同で消防訓練が実施された。「7階の屑入れにタバコが投げ込まれ、紙ごみが燃え出して文具売り場に延焼した」という想定で訓練が始まった。百貨店側が119番通報し、すぐに館内放送で火災発生を全館に報知した。その後に非常口を開け、防火シャッターを降し、店内の消火栓を使用して消火、出場した消防隊員を火元へ誘導するという一連の手順を確認した。屋上での逃げ遅れを想定してはしご車による救出訓練も行われた。店員47人と南消防署の消防車両5台が訓練に参加した。 東京都内では、高層雑居ビルが多く林立する新宿などの繁華街で避難訓練を実施する動きが相次いだ。特にキャバレーや飲食店が入居する小規模な雑居ビルで火災に対する危機感が強く、東京消防庁の管轄する消防署に避難訓練実施を要請するビルが多く見られた。消防署員から避難訓練の方法や注意事項の説明を受けたあと、実際にはしご車や救助袋を使ってビルの窓から地上へ脱出する訓練が各所で行われた。百貨店やホテルなどでは防災設備の点検を中心とする内容となった。都内では訓練が行われる度にビルの下には大勢の見物人が集まって訓練を見守り、世間のビル火災に対する関心の高さを伺わせた。 地方都市でも高層ビル火災に対する危機感は強く、長野市消防局は5月29日に長野駅前の百貨店で「中高層ビル立体消防訓練」と題する消防総合訓練を実施した。訓練には従業員の他に買い物客も参加した。7階からの出火を想定し、発煙筒を焚くと同時に従業員による避難誘導訓練が開始され、7階滞在者は救助袋を使用した避難を体験した。火災延焼の想定のもと放水訓練も実施され、消防車5台によって一斉放水がおこなわれた。人命救助訓練では、ビルの内部探索やはしご車による救助、高所救助者に対してロープを打ち込み、レスキュー隊員がロープを伝って救助を実演することもおこなわれ、従業員らも右訓練を体験した。
※この「避難訓練」の解説は、「千日デパート火災」の解説の一部です。
「避難訓練」を含む「千日デパート火災」の記事については、「千日デパート火災」の概要を参照ください。
「避難訓練」の例文・使い方・用例・文例
- その避難訓練には何が必要ですか
- あれはただの避難訓練でした。
- 昨日、避難訓練が実施されました。
- 今日会社で避難訓練がありました。
- 明日は避難訓練だ。
- 私たちはこれから避難訓練を始めます。
- 私たちは今から避難訓練を行います。
- 私たちは今から避難訓練を始めます。
- これは避難訓練です。
- 今日は避難訓練がありました。
- 実験室からの出火を想定して避難訓練が行なわれた.
- 避難訓練が始まると生徒は安全な場所へ誘導される.
- 富士山噴火に備えた避難訓練
- 2月18日,日本航空(JAL)と東京消防庁は,富士山の起こり得る噴火に備えて避難訓練を行った。
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