フロギストン説
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フロギストン説(フロギストンせつ、英: phlogiston theory [floʊˈdʒɪstən, flɔ-]、独: Phlogistontheorie [ˈfloːɡɪstɔn-])とは、『「燃焼」はフロギストンという物質の放出の過程である』という科学史上の一つの考え方である。フロギストンは燃素(ねんそ)と和訳される事があり、「燃素説」とも呼ばれる。この説そのものは決して非科学な考察から生まれたものでなく、その当時知られていた科学的知見を元に提唱された学説であるが、後により現象を有効に説明する酸素説が提唱されたことで、忘れ去られていった。
注釈
- ^ ニトラス・エアー・テストとは、ニトラス・エアー(現在の用語では一酸化窒素すなわちNO)を使ったテストである。一酸化窒素は空気と混ぜると、空気中の酸素と結合して
2NO + O2 → 2NO2
という反応が起こる。ニトラス・エアーは水に溶けないが、この反応で発生した二酸化窒素(NO2)は水に溶ける。そのため、この反応を水上で行うと、発生した二酸化窒素が水に溶け、その分気体の容積が減少する。
一般にニトラス・エアー・テストは、水上で空気とニトラス・エアーを2:1の容積比で混ぜる。一般の空気の場合、反応後の気体の容積は1.8となる(つまり残りの1.2は二酸化窒素として水に吸収される)。酸素濃度の低い空気(プリーストリーいうところの「悪い空気」)では、反応できる酸素の量が少ない分、発生する二酸化窒素の量も減り、結果的に反応後の気体の容積は1.8よりも大きくなる。このように、反応後の容積を比較することで、気体の「純度の良さ」(現在の用語でいうと、空気中の酸素濃度)を調べることができる(島尾(1992) p.656)。
- ^ スウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレは、プリーストリーによる実験に先立つ1771年から1772年にかけて、二酸化マンガンや酸化第二水銀などから酸素を分離することに成功し、これを「火の元素」と呼んでいた。しかしこの実験は論文の出版作業が遅れ、実際に世に出たのはプリーストリーの発表後の1777年となってしまった。(グリーンバーグ(2006) pp.127-130 など)
- ^ ただしこの解釈は、現在の観点からみると誤りである。
- ^ 科学史家バーナード・セッフェの言葉。井山(1987) p.120より。
参照元
- ^ 青木他(1981) p.142
- ^ アシモフ(1977) p.61など
- ^ サバドバリー(1988) p.76
- ^ a b c 青木他(1981) p.140
- ^ 山本(2009) p.58
- ^ 肱岡(2003) pp.89-90
- ^ サバドバリー(1988) p.74
- ^ 青木他(1981) pp.141-142
- ^ 園部(1995) p.16
- ^ 園部(1995) pp.16-17
- ^ アシモフ(1977) p.62
- ^ 大野(1992) p.660
- ^ 青木他(1981) p.143、山本(2009) p.353
- ^ 山本(2009) p.353
- ^ 井山(1987) p.119、サバドバリー(1988) p.76
- ^ a b c d 青木他(1981) p.143
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- ^ 小山(1991) pp.25-27
- ^ a b アシモフ(1977) p.70
- ^ 山本(2009) p.295
- ^ アシモフ(1977) pp.67-68
- ^ アシモフ(1977) pp.68-69
- ^ アシモフ(1977) p.69
- ^ a b 紫藤(1988) p.87
- ^ a b 島尾(1992) p.657
- ^ 山本(2009) pp.350-352
- ^ ブロック(2003) pp.82-83
- ^ 山本(2009) p.356
- ^ 原(1973) p.69
- ^ a b c 原(1973) p.70
- ^ 島尾(1992) p.658
- ^ 島尾(1992) p.659
- ^ a b 原(1973) p.72
- ^ アシモフ(1977) pp.80-81
- ^ a b ブロック(2003) p.88
- ^ ブロック(2003) p.89、原(1973) pp.73-74
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- ^ ブロック(2003) p.90、原(1973) pp.74-75
- ^ 小山(1991) p.29
- ^ ブロック(2003) p.89
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- ^ 青木他(1981) p.149、井山(1987) p.120
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- ^ 川島(2005) pp.217-218、グリーンバーグ(2006) pp.100,140-141
- ^ 青木他(1981) p.148
- ^ 青木他(1981) p.148、久保(1959) pp.27-28
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- ^ 杉山(1974) p.210
- ^ a b c 紫藤(1988) p.86
- ^ 井山(1987) pp.118-119
- ^ 山本(2009) pp.353-354
- ^ 井山(1987) p.121
- ^ 井山弘幸「近代化学の成立」(渡辺編(1982) p.163)
- ^ a b c 井山弘幸「近代化学の成立」(渡辺編(1982) p.164)
- ^ 原(1973) p.52
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- ^ グリーンバーグ(2006) p.128
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- ^ 渡辺他(1980) p.75
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- ^ a b 化学大辞典(1964) pp.87-88
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- ^ バターフィールド(1978) p.210
- ^ たとえばサバドバリー(1988) pp.76-77
- ^ グリーンバーグ(2006) p.102
- ^ ラヴワジエに消された男?:ジョーゼフ・プリーストリ再考、河野俊哉
- ^ たとえば化学大辞典(1964) pp.87-88
- ^ バターフィールド(1978) pp.125-126
- 1 フロギストン説とは
- 2 フロギストン説の概要
- 3 研究者によるフロギストンの解釈
- 4 評価
- 5 脚注
フロギストン
出典:『Wiktionary』 (2021/06/26 10:06 UTC 版)
語源
発音(?)
- ふ↗ろぎ↘すとん
名詞
フロギストン
翻訳
- イタリア語: flogisto (it) 男性
- ウクライナ語: флогістон (uk) (flohiston)
- 英語: phlogiston (en)
- オランダ語: phlogiston (nl)
- スウェーデン語: flogiston (sv)
- スペイン語: flogisto (es)
- スロヴァキア語: flogistón (sk)
- チェコ語: flogiston (cs) 男性
- 朝鮮語: 플로지스톤 (ko)
- ドイツ語: Phlogiston (de) 中性, Caloricum (de)
- ノルウェー語:
- ハンガリー語: flogiszton (hu)
- フィンランド語: flogiston (fi)
- フランス語: phlogistique (fr) 男性
- ヘブライ語: פלוגיסטון (he)
- ポーランド語: flogiston (pl) 男性
- ポルトガル語: flogisto (pt) 男性, flogístico (pt) 男性
- ロシア語: флогистон (ru)
フロギストンと同じ種類の言葉
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