各種気体の実験と観察
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/03 23:19 UTC 版)
「ジョゼフ・プリーストリー」の記事における「各種気体の実験と観察」の解説
カルネ時代はその生涯の中で唯一、科学研究が中心となった時期であり、科学的成果もこの時期が最も多い。この時期の実験はほぼ全て「気体」に関するもので、その成果をまとめた6巻の大作 Experiments and Observations on Different Kinds of Air (英語版) (1774–86) として結実した。そういった実験はその当時まで生き残っていた四大元素説を否定し、フロギストン説を補強するものだった。フロギストン説は18世紀の理論で、物質の燃焼や酸化はフロギストン(燃素)という物質が物体から抜け出ることに他ならないとする説である。 プリーストリーの「気体」についての業績は分類が難しい。科学史家のサイモン・シャファー (Simon Schaffer) は、「物理学または化学または自然哲学の一部、あるいはプリーストリー自身の発明の非常に特異なバージョン」だと記している。しかも上述の著作には政治的な意味でも野心的で、その中で科学は「不当で不法な権威」を破壊することができ、政府には「空気ポンプや電気機械を恐れる理由」があるとしている。 Experiments and Observations on Different Kinds of Air の第1巻では、いくつかの発見を概説している。一酸化窒素(NO、"nitrous air" =「硝石の空気」)の発見、塩化水素(HCl、"vapor of spirit of salt" =「塩酸の蒸気」、後に "acid air" あるいは "marine acid air" とも呼んだ)の発見、アンモニア(NH3、"alkaline air" =「アルカリの空気」)の発見、亜酸化窒素(N2O、"dephlogisticated nitrous air" =「脱フロギストン化した硝石の空気」)の発見、酸素(O2、"dephlogisticated air" =「脱フロギストン空気」)の発見である。また、のちに光合成の発見を導くことになる実験上の発見についても記している。また、「空気の良さ」を判定するための "nitrous air test" という試験方法も開発した。これは空気槽 (pneumatic trough) を使って一酸化窒素と試験対象の気体を水または水銀の上の容器に送り込み、体積の減り方を測定するもので、水電量計の原理と同じである。気体研究の歴史を簡単に概説した後、誠実かつあからさまに自身の実験について説明している。初期の伝記には「彼の知っていることや教えようとしていることが何であっても、疑念や混乱や失敗さえもその爽やかな率直さによって軽減される」と記している。安価で組み立てが容易な実験装置についても記述している。そのため、同時代の科学者は彼の実験を容易に再現できると信じた。実験結果に一貫性が見出せない場合はフロギストン説で説明付けている。しかし、そのためにプリーストリーは気体を3種類しかないと結論付けてしまった。すなわち、"fixed"、"alkaline"、"acid" の3種である。当時の急激に進歩する化学に背を向け、それ以前の自然哲学者のように気体と「その認識可能な特性の変化」に集中した。一酸化炭素 (CO) も単離したが、それが別種の「気体」だとは気づかなかった。
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