気象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/13 14:51 UTC 版)
気象現象の一覧
晴れ、曇りなどを除いた気象現象を挙げる。
- 降水 - 固体または液体の水が降る現象。
- 雨(rain) - 液体の水滴が降るもの。
- 雪(snow) - 白色の柔らかい氷の結晶が降るもの。
- 霧雪(snow grains) - 直径1mm以下の氷の結晶が降る雪。
- 霙(sleet) - 雨と雪が混在しながら降るもの。
- 霰(graupel) - 直径5mm未満の氷の粒が降るもの。
- 雪あられ - 白色不透明の霰。内部に隙間が多く砕けやすい。
- 氷あられ - 半透明の霰。表面が滑らかな球状で砕けにくい。
- 雹(hail) - 直径5mm以上の氷の粒や塊が降るもの。
- 凍雨(ice pellet) - 透明な氷の粒が降るもの。
- 細氷(diamond dust) - 低温弱風の晴天時に地表付近で生じた微細な氷の結晶が降る現象。ダイヤモンドダスト。
- 雨には降り方による分類もある。
- 露(dew) - 大気中の水蒸気が物体の表面に凝結し、水滴が一様に付着するもの。
- 凍露 - 露が凍結したもの。
- 霜(frost) - 大気中の水蒸気が地面や物体の表面に昇華し、氷の結晶が一様に付着するもの。
- 霧氷(rime) - 地面や物体に氷の結晶が層状に付着するもの。
- 樹氷(soft rime) - 過冷却の霧や雲粒が吹きつけられてできた、白色不透明でもろい霧氷。
- 粗氷(hard rime) - 過冷却の霧や雲粒が吹きつけられてできた、半透明の霧氷。
- 樹霜 - 昇華による霧氷。
- 雨氷(glaze ice) - 過冷却の雨が地面や物体の表面に付着して凍結し、透明な氷の層をつくるもの。
- 着雪 - 比較的高温で降る湿った雪が吹きつけて物体表面に付着するもの。
- 霧氷、雨氷、着雪をまとめて着氷現象と呼ぶことがある。
- 氷柱(icicle) - 徐々に凍結しながら地面に向かって延長してできる、氷の柱。
- 氷筍 - 氷柱と反対に、徐々に凍結しながら空へ向かって延長してできる、氷の柱。
- 霜柱(needle ice) - 地中の水分が凍結してできる、氷の柱。
- 結氷 - 海、湖、川などの水面が凍結するもの。
- 靄(mist) - 大気中の水蒸気が凝結してできた微小な水滴が浮遊していて、水平視程が1km以上10km未満のもの。
- 霧(fog) - 大気中の水蒸気が凝結してできた微小な水滴が浮遊していて、水平視程が1km未満のもの。
- 煙霧(haze) - 乾いた微粒子が大気中に浮遊している現象。
- 風塵 - 風によってちりや砂が吹き上げられるもの。
- 砂嵐(sandstorm) - 激しい風によって、ちりや砂が空中高く吹き上げられるもの。一般に、水平視程が1km未満のものをいう。
- 降灰(falling ash) - 噴火による火山灰が降下する現象。遠方まで到達することがある。
- スモッグ(smog) - 煤煙の混じった霧(ロンドン型スモッグ)、または排気ガスが変質した煙霧(光化学スモッグ、ロサンゼルス型スモッグ)。
- 吹雪 - 強風を伴った降雪。
- 地吹雪(blizzard) - 地面などの積雪が強風により吹き上げられる現象。降雪を伴うものは吹雪という。
- 靄、霧、煙霧、風塵、砂嵐、吹雪、地吹雪などは視程障害現象と呼ぶことがある。
- 風(wind) - 大気の流れ。
- 地球規模の風(大気循環を参照)
- 大陸 - 地域規模の風
- 海陸風、川風、湖風 - 水面と地面の比熱容量(温まりやすさ)の差により、季節や日単位で風向を変える風。また、谷状の地形により風の通り道となって吹く風。
- 滑昇風、滑降風、山谷風 - 地形の影響により、斜面に沿って空気が昇降するために起こる風。
- フェーン(foehn) - 山越えの高温な強風。
- ボーラ(bora) - 山越えの冷涼な強風。
- ハブーブ(haboob) - 砂嵐を伴った強風。
- ブリザード(blizzard) - 地吹雪を伴った強風。
- モンスーン(monsoon)(季節風) - 一般に、季節により風向が変わる風を指す。季節性の降雨を指す場合もある。
- スコール(squall) - 急激に風速が増加する突風。積乱雲のもとで起こることが多く、熱帯地方に多くみられる。にわか雨を伴うことが多く、雨のことを指す場合もある。
- 突風
- 凪(calm) - 風が穏やかまたは全くない状態。
- 雲(cloud) - 大気中の水蒸気が凝結してできた微小な水滴が浮遊しているもの。一般に、地面に接していないものをいい、観測地で地面に接している場合は霧となる。
- 大気光学現象(大気光象) - 大気中の成分や水滴、氷晶等を通して光が変化を起こすことで生じる現象。
- 虹(rainbow) - 雨などの水滴により色が分かれた円弧状の光が見えるもの。
- 彩雲(iridescent cloud) - 水滴により雲がまだらに色づいて見えるもの。
- 光冠(corona) - 水滴や微粒子により太陽や月の周りに円形の光の輪が見えるもの。
- 光輪(ブロッケン現象)(glory, Brocken spectre) - 水滴により対日点を中心とする色が分かれた円形の光の輪が見えるもの。また、これに影が写り込むもの。
- 暈(halo) - 氷晶により太陽や月の周りに円形の光の輪が見えるもの。主に太陽から22°(内暈)、46°(外暈)のところにできる。
- 幻日(sun dog) - 氷晶により太陽や月の両側の同じ高度に光が見えるもの。
- 幻日環(parhelic circle) - 氷晶により天頂を中心として太陽や月を通る光の輪が見えるもの。
- 環天頂アーク(circumzenithal arc) - 氷晶により天頂を中心とする円弧が太陽や月の上方に見えるもの。
- 環水平アーク(circumhorizontal arc) - 氷晶により天頂を中心とする水平に近い円弧が太陽や月の下方に見えるもの。
- 外接ハロ・タンジェントアーク(circumscribed halo, tangent arc) - 氷晶により太陽や月の周りに楕円形の光の輪が見えるもの。また、内暈に接する開いた円弧が見えるもの。
- 太陽柱(sun pillar) - 氷晶により太陽や月、その他の光源などから垂直に延びる光の柱が見えるもの。
- 朝焼け・夕焼け(morning/evening glow) - 日の出や日没時に空が赤や橙色になるもの。
- 薄明光線(crepuscular rays) - 雲の切れ間から太陽光線が伸びるもの。
- 蜃気楼(mirage) - 大気の密度差に起因する屈折により、遠くの水平線付近の物体が浮き上がったり歪んだりして見えるもの。
- 雷 - 大気中(対流圏内)で起こる放電・発光現象。
- 超高層雷放電 - 成層圏以上の層で起こる放電・発光現象。対流圏の雷と対になって起こる。
- 気圧配置や大気の分布に関する現象
ある季節にのみ生じるような気象を特に季節現象という。日本では梅雨、秋雨などがある。
なお、風を除いた主要な気象現象は、大まかに4つに分類することがある[15][16]。
- 大気水象(たいきすいしょう, hydrometeor) - 主に水からなる水滴や氷の粒が、落下、上昇、浮遊、付着、状態変化などをする現象。
- 大気塵象(たいきじんしょう, lithometeor) - 主に砂塵やその他の微粒子などからなる粒子が、落下、浮遊、上昇、付着などをする現象。
- 大気光象(たいきこうしょう, photometeor) - 大気中で観測される、光学的な現象。
- 大気電気象(たいきでんきしょう, electrometeor) - 大気中で観測される、電気的(電磁気学的)な現象。
分類名のアルファベット表記は、ギリシャ語のmeteor(大気現象)と各現象の種類を示す語をあわせたもの。大気光象以外の分類名はあまり用いられない。
気象現象のスケール
気象現象の規模は大小様々で一括りにして扱うのは困難で、規模によって現象を記述する方程式が異なる(規模の異なる現象は、単なる拡大や縮小ではなく、その現象を支配する物理法則が異なる)ことから、規模によって分類するのがふつうである。一般的には、オーランスキー(Isidoro Orlanski)が考案したものを一部修正したものを用いることが多い。
スケール名 | 水平規模km(m) | 現象例 | ||
---|---|---|---|---|
マクロスケール (大規模) |
マクロαスケール | 惑星スケール | 10000km以上 | 超長波、プラネタリー波、巨大高気圧 |
マクロβスケール | 総観スケール | 2000 – 10000 km | 温帯低気圧、高気圧 | |
メソスケール (中規模) |
メソαスケール | 1000 – 2000 km | 前線、熱帯低気圧(台風) | |
200 – 1000 km | ||||
メソβスケール | 20 – 200 km | スーパーセル、集中豪雨、海陸風 | ||
メソγスケール | 2 – 20 km | 積乱雲、ダウンバースト | ||
マイクロスケール 又はミクロスケール (小規模) |
マイクロαスケール | 0.2 – 2 km(200 - 2000m) | 積乱雲 | |
マイクロβスケール | 0.02 - 0.2 km(20 - 200m) | 竜巻、塵旋風、ビル風 | ||
マイクロγスケール | 0.002 - 0.02 km(2 - 20m) | 風の乱渦(風の息) |
上記の区分は水平規模で区分したものであるが、継続時間とも相関性がある。下記は世界気象機関(WMO)による気象現象の継続時間ごとの分類である。
スケール名 | 継続時間 | 現象例 |
---|---|---|
気候スケール | 数か月 | 超長波、プラネタリー波、巨大高気圧 |
温帯低気圧、高気圧 | ||
総観スケール | ||
数日 | 前線、熱帯低気圧 | |
スーパーセル、集中豪雨、海陸風 | ||
メソスケール | ||
数時間 | ||
積乱雲、ダウンバースト | ||
マイクロスケール 又はミクロスケール | ||
数十分 | 積乱雲、竜巻 | |
数分 | 積乱雲、塵旋風、ビル風 | |
数秒-数十秒 | 風の乱渦(風の息) |
天気予報で用いる天気図は総観スケールの状態を表現するものである。総観スケールの天気図は総観スケールの現象しか表現できず、それより大きな現象や小さな現象は正確に表現できない。しかし、中緯度では総観スケールの現象が天気に関して支配的、つまり総観スケールの現象を把握しておけば大方の天気の予想ができる。また主要な先進国の多くは中緯度に位置することから、近代気象学が始まって以来最もよく使用されてきた。
気象に関連する現象
- 大気海洋相互作用や遠隔相関によるもの
- エルニーニョ・南方振動(ENSO, エルニーニョ・ラニーニャ) - 太平洋赤道域東部の海水温が異常高温・異常低温となり、その影響で天候変化が世界に及ぶもの。
- 北大西洋振動(NAO) - 北大西洋アゾレス諸島付近とアイスランド付近で相関する気圧変化傾向により、北アメリカやヨーロッパなどに天候変化が及ぶもの。
- 北極振動(AO) - 北極と北半球中緯度で相関する気圧変化傾向により、冬を中心に北半球に天候変化が及ぶもの。
- マッデン・ジュリアン振動(MJO) - インド洋や太平洋の赤道域で対流活動が活発な領域が周期的に移動することに伴い、周辺地域に天候変化が及ぶもの。
- 太平洋十年規模振動(PDO) - 太平洋各地で約20年周期で相関する気圧変化傾向により、周辺地域に天候変化が及ぶもの。
- 成層圏準2年周期振動(QBO) - 赤道上空の成層圏で約2年-2年半の周期で風向が変化するもの。
- 成層圏突然昇温(SSW) - 成層圏で気温の急激な上昇が起こるもの。
- ダイポールモード現象(IOD) - インド洋熱帯域の東部と西部で相関する海水温が以上となり、周辺地域に天候変化が及ぶもの。
- 気候変動
注釈
- ^ 例えば、雨や風は地形の形成に大きく関与している。また、大気の温度や気圧などと海洋の温度などが影響しあう海洋大気相互作用などがある。
- ^ 80kmより上空では組成が変化し、約170km以上では酸素が主成分、約1,000km以上ではヘリウムが主成分、そのさらに外側では水素が主成分となる。
- ^ 一例として、日本の気象業務法は第2条1項で「気象」を「大気(電離層を除く。)の諸現象」と定義しているが、電離層は一般に高度80 - 500km程度とされる。
- ^ 緯度や季節により異なるが、中緯度では高度50kmまで気温が上昇、50 - 80kmでは再び低下していく。
- ^ 成層圏と中間圏ではブリューワー・ドブソン循環と呼ばれる循環構造を持つ風が吹いている。
- ^ 大気が存在しない場合、地球の表面温度は太陽放射と等しい黒体放射温度となると考えられている。これを平均すると-20℃となる。
- ^ 地球が発している放射エネルギーを地球放射という。地球放射は主に赤外線で、波長8 - 11μm付近が最も強い。
- ^ 太陽活動の変化や地球と太陽の距離の変化により数%の変動がある。
出典
- ^ a b 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ a b c d e 根本順吉、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ a b c 小学館『デジタル大辞泉』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 三省堂『大辞林』第3版. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 日立デジタル平凡社『世界大百科事典』第2版. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “気象”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ a b 八耳 2008.
- ^ a b c 仁科 2014, p. 1.
- ^ a b 平塚和夫 [1]、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “天気”. コトバンク. 2017年8月1日閲覧。
- ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』. “天気”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “天候”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ 仁科 2014, p. 2.
- ^ 吉野正敏、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “気候”. コトバンク. 2017年8月1日閲覧。
- ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “気候”. コトバンク. 2020年2月3日閲覧。
- ^ “地上気象観測”. 福岡管区気象台. 2020年2月3日閲覧。
- ^ “地上気象観測”. 金沢地方気象台. 2020年2月3日閲覧。
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