生物季節観測
動植物の季節に応じた状態変化を観測すること、その観測を通じて季節の変化や変化傾向を調べること。気象庁が1953年から全国的に観測調査している。
生物季節観測では特定種類の植物および動物を対象とし、植物においては発芽、開花、満開、紅葉、落葉の状況、動物においては初見と初鳴の時期が観測されている。自然に近い状態の生物を継続的に調査することで、季節の変わり具合の例年との差や地域ごとの差などを比較できる。また、身近な動植物が指標として用いられるため、手頃な生活情報としても用いられている。
生物季節観測のうち植物の観測対象としては、ウメ、サクラ、イチョウ、カエデ、など12種目が規定種目として定められている。動物ではチョウ、セミ、ホタル、トンボなど11種目が規定種目となっている。
関連サイト:
生物季節観測の情報 - 気象庁
生物季節観測(○○前線)について調べる - 国立国会図書館
せいぶつきせつ‐かんそく〔‐クワンソク〕【生物季節観測】
読み方:せいぶつきせつかんそく
気象庁が実施する観測の一。植物の開花日、動物の初見日・初鳴日などを記録し、季節の移り変わりやその年の天候の状況などをみるもの。全国で観測する規定種目と、その地域での指標となる選択種目とがある。昭和28年(1953)開始。令和2年(2020)時点では植物34種、動物23種を対象としたが、令和3年(2021)より植物6種9現象に変更。
[補説] 生物季節観測の種目一覧(無印は令和2年で終了。*印は継続中)
〈植物〉
アジサイ(開花*)
アンズ(開花・満開)
イチョウ(発芽・黄葉*・落葉*)
ウメ(開花*)
カエデ(紅葉*・落葉*)
カキ(開花)
カラマツ(発芽)
キキョウ(開花)
クリ(開花)
クワ(発芽・落葉)
サクラ〈ソメイヨシノ〉(開花*・満開*)
サザンカ(開花)
サルスベリ(開花)
シダレヤナギ(発芽)
シバ(発芽)
シロツメクサ(開花)
スイセン(開花)
ススキ(開花*)
スミレ(開花)
タンポポ(開花)
チューリップ(開花)
ツバキ(開花)
デイゴ(開花)
テッポウユリ(開花)
ナシ(開花)
ノダフジ(開花)
ヒガンザクラ(開花・満開)
ヒガンバナ(開花)
モモ(開花)
ヤマツツジ(開花)
ヤマハギ(開花)
ヤマブキ(開花)
ライラック(開花)
リンゴ(開花)
〈動物〉
アキアカネ(初見)
アブラゼミ(初鳴)
ウグイス(初鳴)
エンマコオロギ(初鳴)
カッコウ(初鳴)
キアゲハ(初見)
クサゼミ(初鳴)
クマゼミ(初鳴)
サシバ(南下の初見)
シオカラトンボ(初見)
ツクツクボウシ(初鳴)
ツバメ(初見)
トカゲ(初見)
トノサマガエル(初見)
ニイニイゼミ(初鳴)
ニホンアマガエル(初見・初鳴)
ハルゼミ(初鳴)
ヒグラシ(初鳴)
ヒバリ(初鳴)
ホタル(初見)
ミンミンゼミ(初鳴)
モズ(初鳴)
モンシロチョウ(初見)
生物季節観測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/13 08:51 UTC 版)
生物季節観測(せいぶつきせつ かんそく)は、気象庁が行う、生物季節現象(気温や日照など季節の変化に反応して生物が示す現象)で[1]を目や耳で確かめて、現象の確認できた日を記録する観測[2][3]、日本の気象庁が、季節学に基づいて行っている。
概要
生物季節観測は、1953年(昭和28年)に始まった。日本全国に分布し、一律に観測しうる「規定種目」と、地域特性などから各地の気象台が独自に選んだ「選択種目」を観測している。サクラの開花やカエデの紅葉など生活に身近な生物に着目するので人々の季節感に訴える手軽な指標である。同じ生物現象を毎年定点観測することによって、観測地点の季節の進み具合を過去と比較したり、季節の進み具合を他の地点と比較したりすることができる。いくつかの観測データは春の早まりと秋および冬の遅れを長期的傾向として示しており地球温暖化の可能性を示す具体的事例である。また、手軽にできる気象観測なので、環境教育の一環として学校などで同様の観測を行っているところもある。当初は冬服・夏服の着用などの生活季節観測も行われていたが、10年ほどで終了した[4]。
2003年(平成15年)、気象庁は16年ぶりに対象となる動植物を見直した。これまで測候所でも観測されていたが、測候所の廃止が決まっているので従来のようなきめ細かい地点での観測ができなくなってしまうことになる。
2011年(平成23年)、気象庁は平年値(2010年)を作成する際、アキアカネの過去の観測について見直した。
2018年(平成30年)9月4日、台風第21号が日本に上陸したが、この台風によって生物季節観測の指標となる各地の標本木が被害を受け、長期観測の継続性が損なわれかねない事態が発生した[5][6][7]。明らかにされているところでは、大阪城公園(大阪市中央区に所在)にある推定樹齢108年のイチョウの標本木が幹の中程から折れていることを、大阪管区気象台が報告している[5]。なお、この時点での観測対象は、動物23種目、植物34種目であった[5]。
2020年(令和2年)11月10日、気象庁は生物季節観測の種目・現象の変更を発表し、2021年(令和3年)より、気候の長期変化(地球温暖化等)及び一年を通じた季節変化やその遅れ進みを全国的に把握することに適した代表的な種目・現象を継続し、その他を廃止するとした。2021年(令和3年)1月以降の対象は、アジサイ(開花)、イチョウ(黄葉・落葉)、ウメ(開花)、カエデ(紅葉・落葉)、サクラ(開花・満開)、ススキ(開花)の6種目9現象となる。
しかしその後、日本自然保護協会などの自然保護団体や日本生態学会などの学会などをはじめとして、様々な団体・メディアから調査継続を求める声が寄せられた。それを受けて気象庁では2021年(令和3年)3月31日に、気象庁および国立環境研究所が事務局となり、全国の市民の手も借りて本調査を継続する努力をすることを表明した。
規定種目
- 植物
- ウメ、ツバキ、タンポポ、サクラ、ヤマツツジ、ノダフジ、ヤマハギ、アジサイ、サルスベリ、ススキ、イチョウ、カエデ
- 動物
- ヒバリ、ウグイス、ツバメ、モンシロチョウ、キアゲハ、トノサマガエル、シオカラトンボ、ホタル、アブラゼミ、ヒグラシ、モズ
選択種目
- 植物
- スイセン、スミレ、シロツメクサ、ヤマブキ、リンゴ、カキ、ナシ、モモ、キキョウ、ヒガンバナ、サザンカ、デイゴ、テッポウユリ、ライラック、チューリップ、クリ、ヒガンザクラ、オオシマザクラ、アンズ、クワ、シバ、カラマツ、チャ、シダレヤナギ
- 動物
- トカゲ、アキアカネ、サシバ、ハルゼミ、カッコウ、エンマコオロギ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミ、ニイニイゼミ、クマゼミ、クサゼミ、ニホンアマガエル
参考文献
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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
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- 理科年表 国立天文台編 丸善出版[要ページ番号]
脚注
- ^ “生物季節”. コトバンク. 2019年5月3日閲覧。
- ^ “生物季節観測”. 小学館『日本大百科全書:ニッポニカ』. コトバンク. 2019年5月3日閲覧。
- ^ “生物季節観測”. 小学館『デジタル大辞泉』. コトバンク. 2019年5月3日閲覧。
- ^ 金町だより第24号 水戸地方気象台、2016年5月27日発行、2020年3月29日閲覧
- ^ a b c “季節の観測が困難に…「標本木」台風で被害続々”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2018年10月14日) 2018年10月1日閲覧。※リンク切れの補足は直後の脚注で。
- ^ “季節の観測が困難に…「標本木」台風で被害続々”. kororoko1のblog (2018年10月15日). 2019年5月3日閲覧。
- ^ “台風21号 イチョウ「標本木」も被害 大阪城公園”. デジタル毎日 (毎日新聞社). (2018年9月11日) 2019年5月2日閲覧。
関連項目
外部リンク
生物季節観測
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 00:13 UTC 版)
気象庁においては、サクラの開花や満開の観測のように、成熟して赤くなったアキアカネ成虫の初見日の生物季節観測を行っている。2011年には、過去の観測において成熟前の成虫を見た日のデータが混在している可能性があることが分かったため、成熟後の観測とは判断できない一部の観測データを正常値から疑問がある値に変更した。変更した観測データは統計から削除され、平年値など大幅に変更となっている。
※この「生物季節観測」の解説は、「アキアカネ」の解説の一部です。
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生物季節観測と同じ種類の言葉
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